第9回 商法Ⅱ 2006/12/04 2015/10/1 1 前回の内容 取締役と会社との関係 監視義務 内部統制システム構築義務 競業避止義務 利益相反取引 取締役の報酬 2015/10/1 2 経営の意思を決める人たち 甲社の代表取締役Aは、甲社の保有する時 価1億円相当の不動産をBに売り渡した。 しかし、甲社の取締役Cはこれに反対し、代 表取締役Aによる不動産の譲渡は、取締役 会の決議を経ずに行われたものゆえ、無効 であると主張している。ちなみに、甲社の総 資産は45億円である。 2015/10/1 3 取締役会の決定権限 一 取締役会設置会社の業務執行の決定 二 取締役の職務の執行の監督 三 代表取締役の選定及び解職 一 二 三 四 重要な財産の処分及び譲受け 多額の借財 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 2015/10/1 4 取締役の代表権 代表取締役とは、会社の業務を執行し、会 社を代表する機関 旧商法では必ず設置! 会社法では任意 委員会設置会社では代表執行役 2015/10/1 5 取締役の代表権の比較 取 締 役 会 を 設 置 し な い 場 合 2015/10/1 取 締 役 会 設 置 会 社 の 場 合 6 取締役会を設置しない場合 取締役 会社を代表します! 取締役が2人以上 各自会社を代表 株式会社の業務は、原則として取 締役の過半数の一致で決定 2015/10/1 7 取締役会設置会社の場合 取締役 株主総会 代表取締役 取締役会 2015/10/1 8 代表取締役の行為の効果 代表権の制限 第三者に対する責任 代表権の濫用 決議に基づかない行為 代表取締役のなした行為は会社が責任を 負います! 2015/10/1 9 代表取締役の行為の効果 代表権の制限 内部的取り決め 2015/10/1 10 代表取締役の行為の効果 第三者に対する責任 (代表者の行為についての損害賠償責任) 第三百五十条 株式会社は、代表取締役その他の代表者が その職務を行うについて第三者に加えた損害 を賠償する責任を負う。 2015/10/1 11 代表取締役の行為の効果 代表権の濫用 代表権の「逸脱」: 客観的に代表権の範囲外の行為 代表権の「濫用」: 代表権の範囲内の行為であるものの、 その内心に濫用の意思(自己又は第 三者の利益を図る)がある場合 2015/10/1 12 代表取締役の行為の効果 決議に基づかない行為 〈 判例 〉 取締役会の決議を要する旨の定款規定がある にもかかわらず、決議をせずに代表取締役が 行った取引行為は有効である。ただし、相手方が、 決議の相手方が決議を経ていないことを知りま たは知ることができた場合に限り無効である。 2015/10/1 13 一般には社長と呼ばれています 甲社の代表取締役Aは、会社を代表して、 高利の金融業者Bから金を借りた。 しかし、Aは、借りた金を会社に使う意図は なく、自らの借金の返済にあてるつもりだっ た。BがそのようなAの意図を知りながら金 を貸していた場合、甲社は、AがBより借り た金を返済しなければならないだろうか。 2015/10/1 14 代表取締役ではないが代表取締役? Aは、甲社の取締役だが、代表権を持たないにも かかわらず、社長という名称を与えられて、甲社 の経営を切り盛りしていた。 当初はまじめに社長として役割を果たしていたA だが、やがて、自己の利益を図るために手形を 乱発しはじめた。 2015/10/1 15 代表取締役ではないが代表取締役? 甲社はAを社長の職から解き、 手形金の支払を請求してきた者に対しては、「A は実際には代表取締役ではなかったから、その 振り出した手形について甲社が支払う義務はな い」と主張した。 この主張は正当か。 2015/10/1 16 表見代表取締役 A取締役 甲社 代表権× 「社長」名称の付与 自己の利益 手形振出 2015/10/1 17 表見代表取締役(会社法354条) 株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、 副社長その他株式会社を代表する権限を有する ものと認められる名称を付した場合には、当該 取締役がした行為について、善意の第三者に対 してその責任を負う。 実質上代表権を有しないにもかかわらず、外 観上代表取締役として扱われる者 2015/10/1 18 表見代表取締役の趣旨 社長、専務取締役、常務取締役等の名称を使 用することを認められた取締役(表見代表取締 役)であっても、実際に取締役会により代表取 締役として選任されていなければ、代表権を有 しない しかし、通常一般に代表取締役に付される名称 を使用している場合、取引の相手方はその者 が代表権を有するものと誤信するおそれがあ る 2015/10/1 19 表見代表取締役の要件 要件 外観の存在 (代表権を有すると認められる名称の使用) 外観の付与(会社の帰属性) 外観への信頼(相手方の善意) 2015/10/1 20 表見代表取締役の要件1 外観の存在 (代表権を有すると認められる名称の使用) 社長、副社長、専務取締役、常務取締役のほか 、取締役会長、副会長、総裁、理事長、代表取締 役代行者の名称も含まれる 2015/10/1 21 表見代表取締役の要件2 外観の付与(会社の帰属性) 取締役が称していただけでは足りず、名称の使 用を会社が承認していたか、名称の使用を知り ながら黙認していたという事情が必要 2015/10/1 22 表見代表取締役の要件3 外観への信頼(相手方の善意) 相手方は善意・無過失であることを要する (判例) 会社法908条との関係 2015/10/1 23 会社法908条との関係 外観への信頼(相手方の善意) 登記しなければならない事柄は、たとえ事実が発 生していたとしても、登記及び公告行われた後で なければ、その事実を知らない第三者に対してそ れが発生していると主張することができない。 登記に特別の効力を賦与する必要性 2015/10/1 24 会社法908条との関係 登記をすれば一般に登記を知らない第三者に対 しても登記事項について知っているものと扱われ る 取引の迅速・円滑を旨とする商取引の性質上、 取引の相手方に登記簿の閲覧を求めるのは妥 当でない 354条は908条の例外を定めたもの 2015/10/1 25 表見代表取締役? 取締役以外の者が名称を使用した場合 取締役でもない単なる使用人がかかる名称を 使用した場合にも会社法354条の類推適用を認 める 実際の地位がどうであれ、相手先の取 引安全の保護の必要性は同じ 2015/10/1 26
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