コロイド化学と界面化学

環境表面科学講義
http://www.iamp.tohoku.ac.jp/~liquid/MURA/kogi/kaimen/
E-mail: [email protected]
村松淳司
分散と凝集
分散と凝集

分散とは何か


凝集とは何か


溶媒中にコロイドが凝集せずにただよってい
る
コロイドがより集まってくる
物質は本来凝集するもの

分子間力→van der Waals力
分散と凝集 (平衡論的考察)


凝集
 van der Waals力による相互作用
分散
 静電的反発力

粒子表面の電位による反発
凝集
分散
分散と凝集


考え方
van der Waals力による相互作用
静電的反発力
Vtotal = VH + Vel
VH : van der Waals力による相互作用エネルギー
Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー
分散と凝集
考え方
Vtotal = VH + Vel
VH : van der Waals力による相互作用エネルギー
Vel : 静電的反発力による相互作用エネルギー
Vtotalが正→粒子は分散
Vtotalが負→粒子は凝集
静電的反発力
静電的反発力

粒子表面は電荷を帯びている
 証拠:電気泳動など
これが静電的反発力の源ではないか

ここからスタートする

表面電荷
粒子表面の電荷

イオンの周りの電子雲と同じ
離れるほど電位は小さくなる

では、なぜ電荷を帯びるのか

粒子が電荷を帯びる理由

酸化物の場合
 -Si-O-H → -Si-O– + H+
 プロトンが解離して負電荷
 空気の場合

何らかのイオンが吸着
電位は遠ざかると下がる
 Helmholtz理論
 Gouy-Chapman理論
 Stern理論
Helmholtz理論
Gouy-Chapman理論
拡散二重層
直線で下がる
Stern理論
Stern面
拡散二重層
Slip面
現実的にはどう考えるか




実測できるのはζ電位
ζ電位=Stern電位と置ける
それなら、ζ電位=Stern電位を表面電
位と見なして考えよう
Stern理論ではなく、Gouy-Chapmanの拡
散二重層理論を実社会では適用
表面電荷
拡散層だけを考える
1.拡散層中のイオンの濃度はボルツマン分布に従う
æ - z + ey ö
(1)
n + = n0+ expç
÷
è kT ø
æ z - ey ö
n - = n0- expç
÷
è kT ø
n: 拡散層中のイオンの個数濃度
n0: バルク溶液中のイオンの個数濃度
z: イオンの価数
k: ボルツマン定数
T: 温度
y: 問題にしている点における電位
+,-: 陽イオン、陰イオンを表す
表面の電位:
y0 は電位決定イオンのバルク活量c によって、
RT c
y0 =
ln
(2)
zF c0
R: 気体定数
c0: c at y0 = 0
拡散層内における電位は、Poisson の式
¶ 2y ¶ 2y ¶ 2y
r
Dy = div (grad y ) = 2 + 2 + 2 = ¶x
¶y
¶z
e re 0
を基礎にして求められる。
er: 溶液の比誘電率
e0: 真空の誘電率
r: 電荷密度
(3)
r: 電荷密度
は、対称型電解質( z + = z - = z, n0+ = n0- = n )に対して、
r = ze( n + -n- )
ì æ zey
= nze íexpç î è kT
ö
æ zey
÷ - expç
ø
è kT
æ zey ö
= -2nze sinhç
÷
è kT ø
öü
÷ý
øþ
(4)
従って、
平板電気二重層に対する、Poisson-Boltzmann 式は、
(3),(4)式から x 方向だけを考えて
d 2y 2nze
zey
=
sinh
(5)
2
dx
e re 0
kT
(5)式を積分して、
zey
æ zey 0 ö
tanh
= tanh ç
(6)
÷ exp( -kx )
4kT
è 4kT ø
zey kT << 1 なら、(5)式は、
d 2y
2
=
k
y
2
dx
2 2
2
nz
e
2
ただし、k =
e re 0 kT
(7)
(8)
25℃水溶液では特に
k = 3.3 ´ 109 z c
(9)
(7)式を解くと、
y = y 0 exp( -kx )
(10)
このκは、Debye-Huckelパラメータと呼ばれる。
次に平板電気二重層間の相互
作用を考える
平板間の相互作用をまず考えよう
溶液中の2枚の平行平板(板間距離: h)に
作用する力 P は
P = PE + PO
(15)
静電気成分 + 浸透圧成分
(電気力線により内側に引かれる力)+
(対イオンの浸透圧により外側へ押される力)
PE = -
e r e 0 æ dy ö
2
ç
÷
2 è dx ø
PO = ( n + + n - )kT - 2nkT
(16)
PO は常に PE よりも大きく、板は反発力を受ける
板の接近過程で表面の電位y0 が変化しなければ、
PE の寄与を無視して、(1)と(16)の PO の式から、
板の受ける反発力 PR(h)は単位面積あたり
(このときの考え方は、2つの平板の丁度中間の
面と無限遠の面を考え、中間の面上では、対称性
から電場は零、無限遠の平面でも電場は零である
から、浸透圧成分のみを考えればよい、というこ
とになる)
zey h / 2
ì
ü
PR ( h ) = 2nkT ícosh
- 1ý
kT
î
þ
y2/h: 板間の中央における電位
(17)
相互作用が弱ければ、yh/2 は単独の電気二重層の
電位ys(h/2)の2倍と考えて、
zey / 4kT << 1 then tanh( zey / 4kT ) @ zey / 4kT
より、(6)式から、
(この近似は、後述するように、
y<20 mV のとき成立する)
8kT
hö
æ
y (h / 2) =
g expç - k ÷
ze
2ø
è
æ zey 0 ö
g = tanhç
÷
è 4kT ø
(18)
(19)
(17)式で
zey h / 2 / kT << 1 then PR ( h ) @ nkT {zey h / 2 / kT }2
より、これに(18)式を代入して、
(この近似は、kh>1、つまり、h が電気二重層の厚さ
よりも長いところで成り立つ
2
近似には cosh y @ 1 + y を使用した)
すると、
PR ( h ) = 64nkTg 2 exp( -kh )
(20)
従って、平板間の電気二重層の相互作用エネルギーは
h
64nkT
¥
k
VR ( h ) = - ò PR ( h ) dh =
g 2 exp( -kh )
(21)
次に球形粒子間の相互作用を
考える
次に球形粒子間の相互作用を考えよう
Derjaguin近似から球形粒子の相互作用力へ
Derjaguin 近似:
半径 a1 と a2 の球形粒子の最近接距離 H のとき
(H<<a1,a2)
æ a1a 2 ö
÷÷VR ( H )
PR ( H ) = 2p çç
è a1 + a 2 ø
(22)
(21)と(22)より a1=a2=a のとき、
PR ( H ) =
64pankT
k
g 2 exp( -kh )
(23)
従って、半径 a の球形粒子の相互作用エネルギーは
H
VR ( H ) = - ò PR ( H ) dH
¥
=
64pankT
k
2
g exp( -kh )
2
(24)
いま、
zey 0 / 4kT << 1 then tanh( zey 0 / 4kT ) @ zey 0 / 4kT
のとき、(23),(24)式は
(zey0=4kT は、1:1 電解質で 25℃で、
y0=103 mV のとき成立、
y0=20 mV 以上では、zey0/4kT と tanh{ zey0/4kT}に、
1%以上のずれが生じる
ので、20mV 以下でこの近似は成り立つとしてよい)
PR ( H ) = 2pae r e 0ky 0 exp( -kh )
2
VR ( H ) = 2pae r e 0y 0 exp( -kh )
(25)
2
(13)式を使うと、
(26)
PR ( H ) = 2pae r e 0ky 0 exp( -kh )
(25)
VR ( H ) = 2pae r e 0y 0 exp( -kh )
(26)
2
2
(13)式を使うと、
PR ( H ) =
VR ( H ) =
2pas
2
ke re 0
2pas
2
k e re 0
2
exp( -kH )
exp( -kH )
s 0 = e re 0ky 0 (13)
(27)
(28)
van der Waals相互作用
van der Waals力の近似式
aA
PA ( H ) = 12 H 2
aA
VA (H ) = 12 H
A は Hamaker 定数
(29)
(30)
凝集の源
全相互作用エネルギーは
2pas 2
aA
PT ( H ) =
exp( -kH ) 2
ke re 0
12 H
(31)
2pas 2
aA
VT ( H ) = 2
exp( -kH ) k e re 0
12 H
(32)
が得られる。
あるいは、
VT ( H ) = 2pae r e 0y 0
2
aA
exp( -kh) 12 H
(33)