ロジスティクス工学 第5章 安全在庫配置モデル サプライ・チェインの設計と管理 3.3節 リスク共同管理 第6章 戦略的提携 第8章 製品設計とサプライ・チェイン設計の統合 補助資料:OptSCMによる在庫管理入門 http://www.logopt.com/OptSCM/optscm.htm からpdfファイルをダウンロード可能 東京商船大学 久保 幹雄 在庫配置の原則 • 在庫はまとめておいた方が少なくて済む! <- 統計の基礎(「サプライ・チェインの設計と 管理」pp.24-25,Excel Table2-2.xls 参照) 統計量 年間需要の 期待値 年間需要の 標準偏差 変動係数 (標準偏差/平均) 顧客1 24,237 4,658 0.192 顧客2 20,905 3,427 0.173 合計 45,142 6,757 0.150 リスク共同管理(risk pooling) • 「サプライ・チェインの設計と管理」p.64 3.3節,Excel Table3-5.xls 参照(商品Aの需要) (リード時間は1と仮定している.) 週 マサチューセッツ ニュージャージー 計 平均 39.25 38.625 77.875 標準偏差 13.17736154 12.0467838 20.7118841 1 33 46 79 2 45 35 80 安全在庫 24.77343969 22.64795355 38.9383421 3 37 41 78 4 38 40 78 5 55 26 81 6 30 48 78 7 8 18 58 18 55 36 113 発注点 Q(発注量) 補充目標点 64.02343969 132.0774184 156.8508581 61.27295355 131.0216267 153.6695803 116.8133421 186.0406168 224.9789589 練習問題5-1 • 「サプライ・チェインの設計と管理」p.64 3.3 節のスイカ紡の事例における表3.6(p.66) の商品Bの在庫レベルを計算するための Excelファイルを作成せよ. • リード時間が1でなく,標準偏差1をもつ正 規分布と仮定したときの,商品A,Bの安全 在庫を計算せよ.(ヒント:p.64の公式を用 いる.) サプライ・チェインにおける 在庫削減の手法 • 複数拠点の在庫を1ヶ所に集約する! -> リスク共同管理(risk pooling) • 製品のバリエーションを増やすのを,なるべくサプライ・ チェインの下流(需要側)でやる! ->遅延差別化(delayed differentiation) また,そのために製品設計(サプライ・チェインの設計)か ら変える! ->製造のための設計(design for manufacturing) , ロジスティクスのための設計(design for logistics) 平均,安全,最大在庫量 • 需要の平均μ=100,標準偏差σ=100の正 規分布(正確には負の部分を切り取った分 布:切断正規分布) • サービスレベル(品切れを起こさない確率) 95%->安全在庫係数 1.65 在庫量= L+安全在庫係数 L 平均,安全,最大在庫量のExcelに よる計算(demand1.xls) =100*A2 リード時間(T) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 平均需要 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 =B2+1.65*100*SQRT(A2) 最大需要 265 433 586 730 869 1004 1137 1267 1395 1522 1647 1772 1895 2017 2139 2260 2380 2500 2619 安全在庫 165 233 286 330 369 404 437 467 495 522 547 572 595 617 639 660 680 700 719 =C2-B2 3000 2500 2000 平均需要 最大需要 安全在庫 1500 1000 500 0 0 5 10 リード時間 15 20 直列多段階モデル 発注後ちょうどL日後に品目(商品) の補充を行うことを保証している. 保証リード時間 =0 部品 外部 工場 平均需要量=100個/日 標準偏差=100 の正規分布 保証リード時間 =0 小売店 工場 卸 2日 1日 1日 30円 40円 供給 生産時間 3日 在庫費用(商品の価値) 10円 20円 Excelによる表現1(scm1.xls) 保証リード時間:発注後から補充までの日数(アスクルなら1日) 0段目と4段目の保証リード時間は固定 変数(ここを変える!) 段階 生産時間 在庫保管比率×価値 保証リード時間 入庫リード時間 補充リード時間 正味補充時間 総在庫費用 外部 部品工場 工場 0 3 2 0 10 20 0 0 0 0 0 0 0 3 2 0 3 2 0 1732.050808 2828.427125 卸 小売り 1 30 0 0 1 1 3000 1 40 0 0 1 1 4000 11560.47793 Excelによる表現2 入庫リード時間:品目発注後に生産を開始できるまでの日数 = 段 階 生 産 時間 在 庫 費用 保証リード 時間 入庫リード 時間 補充リード 時間 正味補充時間 総在庫費用 0 1 2 0 3 2 0 10 20 0 0 0 0 0 0 0 3 2 0 3 2 0 1732.050808 2828.427125 3 4 1 30 0 0 1 1 3000 1段階目の入庫リード時間=0段目の保証リード時間 1 40 0 0 1 1 4000 11560.47793 Excelによる表現3 補充リード時間:品目発注後に生産が完了するまでの日数 + = 段 階 生 産 時間 在 庫 費用 保証リード 時間 入庫リード 時間 補充リード 時間 正味補充時間 総在庫費用 0 1 2 0 3 2 0 10 20 0 0 0 0 0 0 0 3 2 0 3 2 0 1732.050808 2828.427125 3 4 1 30 0 0 1 1 3000 補充リード時間=入庫リード時間+生産時間 1 40 0 0 1 1 4000 11560.47793 Excelによる表現4 正味補充時間=補充リード時間ー保証リード時間 ー = 段 階 生 産 時間 在 庫 費用 保証リード 時間 入庫リード 時間 補充リード 時間 正味補充時間 総在庫費用 0 1 2 0 3 2 0 10 20 0 0 0 0 0 0 0 3 2 0 3 2 0 1732.050808 2828.427125 3 4 1 30 0 0 1 1 3000 1 40 0 0 1 1 4000 11560.47793 正味補充時間(日)の間の最大需要量分だけ安全在庫を もっていれば,在庫切れがおきない! Excelによる表現5 総在庫費用=在庫費用*安全在庫係数(=1)*需要の標準偏差(=100)*√正味補充時間 = 段 階 生 産 時間 在 庫 費用 保証リード 時間 入庫リード 時間 補充リード 時間 正味補充時間 総在庫費用 0 *100*SQRT( 1 2 0 3 2 0 10 20 0 0 0 0 0 0 0 3 2 0 3 2 0 1732.050808 2828.427125 3 ) 4 1 30 0 0 1 1 3000 1 40 0 0 1 1 4000 11560.47793 正味補充時間(日)の間の最大需要量分だけ安全在庫を もっていれば,在庫切れがおきない! Excelによる表現6(最適解) 段階 生産時間 在庫保管比率×価値 保証リード時間 入庫リード時間 補充リード時間 正味補充時間 総在庫費用 外部 部品工場 0 3 0 10 0 0 0 0 0 3 0 3 0 1732.050808 工場 卸 2 20 2 0 2 0 0 小売り 1 30 3 2 3 0 0 1 40 0 3 4 4 8000 9732.050808 最適解 4日間の最大需要量 3日間の最大需要量 保証リード時間 0 0 2 3 0 需要 部品工場 工場 卸売業者 小売店 生産時間 3 2 1 1 在庫保管比率×価値 10 20 30 40 直列多段階モデルに対する 動的計画法(DP: Dynamic Programming) • • • • h(i): 第i段階の在庫費用 T(i): 第i段階の生産時間 D(t,i): t日間の第i段階の最大需要量 f(L,i): 第i段階における保証リード時間がLのときの最小 費用 • 再帰方程式 f(L,i)= min {f(LI,i-1)+h(i)*D(LI+T(i)-L,i)} LI • 初期条件 f(L,0)=0 for all L i i-1 0 1 LI 2 L 3 4 直列多段階モデルに対するDP(1) 宣言とデータ読み込み n=4 'Number of Stages Lmax = 10 '保証リード時間の最大値 Dim T() As Integer '生産時間 Dim h() As Integer '在庫費用 Dim f() As Long 'f(L,i):第i段階の保証リード時間がLのときの最小費用 Dim prev() As Integer 'prev(L,i): f(L,i)の最小値を達成するための第i-1段目の保証リード時間 ' ReDim T(n) As Integer ReDim h(n) As Integer ReDim f(Lmax, n) As Long ReDim prev(Lmax, n) As Integer 'Read Data For i = 0 To n T(i) = Cells(2, i + 2).Value h(i) = Cells(3, i + 2).Value Next i 直列多段階モデルに対するDP(2) 初期化とDPアルゴリズム 'Initialize For i = 1 To n For L = 0 To 9 f(L, i) = 999999 Next L Next i 'DP For i = 0 To n - 1 For L = 0 To 9 For L2 = 0 To 9 If L + T(i + 1) - L2 >= 0 Then dummy = f(L, i) + h(i + 1) * 100 * Sqr(L + T(i + 1) - L2) If f(L2, i + 1) > dummy Then f(L2, i + 1) = dummy prev(L2, i + 1) = L End If End If Next L2 Next L Next i 結果 f(L,I) L=0 L=1 L=2 L=3 L=4 L=5 L=6 L=7 prev(L,I) L=0 L=1 L=2 L=3 L=4 L=5 L=6 L=7 1 1732 1414 1000 0 0 0 0 0 2 4472 3732 1732 1414 1000 0 0 0 3 6928 4472 3732 1732 1414 1000 0 0 4 9732 6928 4472 3732 1732 1414 1000 0 1 2 3 4 0 0 0 0 1 2 3 4 3 0 0 1 2 3 4 5 2 0 1 2 3 4 5 6 3 0 1 2 3 4 5 6 Min{ 1832+h(2)*10*sqrt(2) 1414+h(2)*10*sqrt(3) 1000+h(2)*10*sqrt(4) 0 +h(2)*10*sqrt(5)} =20*10*sqrt(5) =4472 最適値 f(0,4)=9732 最適保証リード時間 4段階=0 (顧客の保証リード時間 は0だから) 3段階 prev(0,4)=3 2段階 prev(3,3)=2 1段階 prev(2,2)=0 の順に読む. 木ネットワークの場合1 (入庫リード時間) 入庫リード時間: 品目発注後に生産を開始できるまでの日数 入庫リード時間=max{3,10}=10日 3日 保証リード時間 10日 木ネットワークの場合2 (補充リード時間) 補充リード時間:品目発注後に生産が完了 するまでの日数 入庫リード時間=max{3,10}=10日 3日 保証リード時間 生産時間=1日 10日 補充リード時間=10+1=11日 木ネットワークの場合3 (正味補充時間) 正味補充時間=補充リード時間ー保証リード時間 =11ー0=11日 入庫リード時間=max{3,10}=10日 3日 保証リード時間 10日 保証リード時間 =0日 生産時間=1日 補充リード時間=10+1=11日 木ネットワークの場合3 (安全在庫) 正味補充時間=補充リード時間ー保証リード時間 =11日 3日 保証リード時間 10日 安全在庫 =11日間の 最大需要量 保証リード時間 =0日 補充リード時間=10+1=11日 木ネットワークの場合5 (保証リード時間を増やすと...) (保証リード時間が)11日までは在庫が減少! 安全在庫も11日までは減少! 3日 保証リード時間 10日 保証リード時間 =1,2,・・・日 生産時間=1日 補充リード時間=10+1=11日 共同管理係数α 倉庫 需要地点1 N(100,100) 平均100 標準偏差100 正規分布 需要地点2 N(100,100) 最大需要量 平均需要量 1/ (最大需要量1 平均需要量1 ) (最大需要量2 平均需要量2 ) 需要の相関 (共同管理係数による安全在庫の変化)demand2.xls 1600 安全在庫 共同管理係数=1 共同管理係数=2 共同管理係数=3 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 0 5 10 15 20 木ネットワークモデルの例 0日 0日 1 (6日) 6 (3日) ?日 ?日 3 (3日) 0日 4 (3日) ?日 5 (3日) 4日 需要 平均=100 ?日 標準偏差100 ?日 2 (2日) 1日 7 (3日) 平均=100 標準偏差100 木ネットワークモデルの例データ(scm2.xls) =MAX(B6,C6) =F6 =MAX(D6,E6) 地点番号 生産時間 在庫保管比率×価値 外部需要量 保証リード時間 保証リード時間 入庫リード時間 補充リード時間 正味リード時間 総在庫費用 需要量 1 2 6 1 3 2 1 4 3 1 5 3 1 6 3 2 6 6 9 9 1 0 4 6 6 9 6 6 9 9 12 0 0 0 0 11 0 0 0 0 2188.972362 200 200 200 200 200 =B7+B2 =B8-B6 7 3 3 3 3 100 100 4 1 4 1 1 1 4 4 0 3計 0 857.3651497 3046.337511 100 100 =B3*1.65*B11*SQRT(B9)(右にコピー) すべての地点に安全在庫を配置 (保証リード時間=0) 地点番号 生産時間 在庫保管比率×価値 外部需要量 保証リード時間 保証リード時間 入庫リード時間 補充リード時間 正味リード時間 総在庫費用 需要量 1 2 6 1 3 2 1 4 3 1 5 6 3 1 3 2 0 0 0 0 0 4 0 6 6 6 3 9 6 6 3 9 808 808 572 990 200 200 200 200 1 0 3 2 933.3809512 200 3 3 100 4 4 1 4 0 0 100 7 3 3 100 1 1 1 4 3計 857.3651497 4968.986098 100 木ネットワークモデルの最適解 11(=9+3-1)日分 の在庫 6日以下 0日 1 (6日) 6 (3日) 9日 6日 3 (3日) 4日以下 4 (3日) 9日 4日 需要=100 5 3(=1+3-1) 1日 (3日) 日分の在庫 6日 2 (2日) 1日 7 (3日) 需要=100 在庫シミュレーション(各在庫地点にお ける日々の在庫管理方策) =INT(1.65*3*SQRT(4))+1 =INT(NORMINV(RAND(),10,3)) 期(日) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 需要量(平均 10,標準偏差3 の正規乱数) 10 10 10 10 14 12 13 11 8 14 注文到着量 (リード時間4) 発注量 10 10 10 10 14 12 13 11 8 14 =B6 10 10 10 10 14 12 =C2 =E6+F6 安全在庫量(1.65 期末在庫ポジション ×標準偏差× 注文未到着量 (=安全在庫量+注 sqrt(リード時間) (期末) 文未到着量) 10 6 4 1 0 6 4 44 46 49 50 44 46 50 50 50 50 50 50 =C3+C4+C5+C6 =E5-B6+D6 ペケトン社の例 (遅延差別化と押し出しと引っ張りの境界) 3円 2円 在庫保管費用 =1円 1 2 3 4 生産時間=1日 5 6 需要 N(1,1) 平均1,標準偏差1 の正規分布 7 8 9 練習問題5-2 • ペケトン社の例において,保証リード時間 を変化させたときの在庫費用を計算するた めのExcelファイルを作成せよ. • 保証リード時間を色々と変えることによっ て(What If分析によって)良好な解(総在 庫費用を小さくするような各在庫地点の保 証リード時間)を求めよ. ペケトン社の例(遅延差別化) 工程の順序を変えることによって 在庫が低減->遅延差別化 (delayed differentiation, postponement) 在庫保管費用 =1円 3円 3 2円 4 1 2 5 6 需要 N(1,1) 練習問題5-3 • 遅延差別化を適用した後のペケトン社の例にお いて,保証リード時間を変化させたときの在庫費 用を計算するためのExcelファイルを作成せよ. • 保証リード時間を色々と変えることによって (What If分析によって)良好な解(総在庫費用を 小さくするような各在庫地点の保証リード時間) を求めよ. • 顧客に対する保証リード時間を1日から0日に変 化させた場合を考えよ. 押し出しと引っ張りの境界 保証リード時間 =1日 布調達 トレーナー 製造 染め工程 押し出し型(push)生産 押し出しと引っ張りの境界 デカップリング地点 保証リード時間 =0日 布調達 トレーナー 製造 トレーナーの在庫を2日分にするための見込み生産 押し出し型(push)生産 染め工程 注文を確認後に染め工程開始 引っ張り型(pull)生産 遅延差別化の方法 • ロジスティクスのための設計(design for logistics) 部品の共通化 モジュール化 標準化 • 作業工程の遅延化 • 作業工程の入れ替え
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