アニマルセラピー 高齢者の健康向上にアニマルセラピーを! 小池豊士 獣医師、NPO法人 動物介在教育・療法学会 (メディカルケア由比ガ浜訪問看護リハビリステーション) 1 アニマルセラピーとは アニマルセラピーとは、動物と触れ合わせることで人間の ストレスを軽減させたり、あるいは当人に自信を持たせた りといったことを通じて精神的な健康を回復させることが できると考えられている。 アニマルセラピーは、動物を身近に感じることが心を癒す という点に注目した療法である。 2 アニマルセラピーとは <立証されている効果> 1、高齢者福祉や難病など長期間の入院を余儀なくされている 患者に対し情緒面での好作用によるQOL(生活の質)の改善 2、情緒生涯や精神疾患などで対人関係に疲弊していた人の回復期 における効果 3、身体障害者に対し動物を介在させることによるリハビリ効果 ☆注意点 動物愛護の観点からセラピードッグに対する配慮や、動物が嫌いな人や動物恐怖症の人も いるので、環境に配慮して慎重に行う必要がある。また、精神の抑うつが強いと逆に負担 になる危険性もある。 3 アニマルセラピーとは 不登校や引きこもりといった問題、あるいは小児がんなど の治癒力強化を目指す技術の1つとして知られ、乗馬やイル カなど、情緒水準が高度と言われる哺乳類との交流を通じ て、他者を信頼できるようになるという。 馬を通じたアニマルセラピーは、モンゴル国で盛んに行わ れている。日本でも近年、乗馬療法、治療的乗馬、ホース セラピー、障害者乗馬などの名称で行われている。 4 ペット飼育と医療費削減効果 Headey,2008 • 中国で行われた 調査では、犬の飼い 主は、より頻繁に運動し、 良く睡眠をとり、 良い健康状態であることを報告し、病気による欠勤 日が 少なく、通院回数も 少なかった。 Anderson,1992 • オーストラリアで行われた心臓病の患者を 対象とした調査では、 血 圧、トリグリセライ ド、コレステロールと ストレスの指標となる数値 を比べたとき、 ペットを飼っている人 の方が、ペットを飼っていない 人に比べて 低かった。 Headey, 2004 • ペット飼育による医 療費削減の効果に ついての調査では、ドイツで は7547億 円、オーストラリアで は3088億円の節約 効果が 5 あった 。 ペット飼育と医療費削減効果 Johnson,2007 • アメリカンの公的 住宅の居住者と特 別に訓練された犬 とハンド ラーを組ませて行った散歩プログラムにおいて、 健康上の減量効果 があった。 Motooka,2006 • 高齢者の自律神経 活性における犬の 散歩の効果についての調査で は、心拍変動の高周波 (HF)値(副交感神経の指標)は、犬との 歩中有意に上昇 し、3 日間継続した 散歩によってより上昇した。自 宅で過ごす間は、犬がいる方が有意に上昇した。 Goldmeier, 1989 • 人は社会的に孤立した状態になると、複合的ストレスが生じ、抑 うつ状態に陥りやすくな る。しかし、ペットの飼い主は、飼い主で ない人よりもうつ的状況になる確率が低い。 6 高齢者施設への訪問活動 表情の変化 •無表情であった人 が表情を取り戻す 笑う or 怒るなど •犬に視線を向けて、 犬の姿を目で追う 発語の変化 • 普段、暴言が多い 人でも「いいこ」「か わいいね」「おり こう」「すごいねえ」な どの褒め言葉を発 する • 「フードを食べた」 「持ってきた」「オス ワリした・フセした」と いうような、指示 に従う達成感を表す言葉を発する 五感への刺激 • 犬の動きを見る • 犬をなでる • 犬が手を舐める • 犬がさわる(手をかけたり、つついたり) 7 • 犬の臭い • 犬の声 • アイコンタクト(コミュ ニケーション) 現状と課題 高齢者の現状 10歳未満の子どもの数より多いペット人口 •家庭犬のトレーニングの普 及(ドックトレーナーの増加) •ペット産業の多様化(犬の幼稚園、 ペットシッターなど) •毎年36万匹もの犬と猫が捨てられ、殺処分され ている 家庭犬・保護犬の 現状 受入れ施設のアニマルセラピーの認知度が低い • 公衆衛生上の問題、動 物アレルギー、動物嫌いなど • ボランティア(ハンドラー&セラピー ドック)の不足 • 活動資金の問題 アニマルセラピー 受入れ施設のアニマルセラピーの認知度が低い • 公衆衛生上の問題、動 物アレルギー、動物嫌いなど • ボランティア(ハンドラー&セラピー ドック)の不足 • 活動資金の問題 8 鎌倉の社会福祉を考える事業計画(1) 1、アニマルテラピー講習会&実習 in 鎌倉:医療・介護 関係者向け ・日時:2014年3月12日(水)13時~16時 ・場所:SDA鎌倉キリスト教会(鎌倉市由比ガ浜1-11-21, tel. 0467-22-5952) ・講師: 的場美芳子 日本獣医生命科学大学 講師、動物介在教育・療法学会 副理事長 動物介在教育・療法学会 http://asaet.org/about/post.html 《名誉顧問 養老孟司(東京大学名誉教授)》 ・参加者:デイサービス利用者様(10名)、介護・医療関係者、 テラピードッグ2頭とトレーナー 計30名を予定 2、鎌倉の高齢者福祉とアニマルテラピーについて(仮題):鎌倉市民向け ・日時:4月中旬を予定 ・場所:調整中 ・講師:養老孟司(動物介在教育・療法学会名誉顧問/東京大学名誉教授) 的場美芳子 日本獣医生命科学大学 9 ・参加者:鎌倉一般市民、医療・介護・獣医療 関係者、行政関係者他 鎌倉の社会福祉を考える事業計画 (2) 3、アニマルセラピー講習会(アドバンスコース、5月以降) ➡ セラピー犬& ハンドラー の育成 ☆ 本企画事務局担当:小池豊士 (動物介在教育療法学会、神奈川県獣医師会、頼朝会、メディカルケア湘南代表) 連絡先: tel. 0467-91-5303、Fax:0467-67-9190 (メディカルケア由比ガ浜訪問看護リハビリテーション) 携帯:090-6532-3594 [email protected] 10 セラピードッグ(家庭犬の育成) 1.家庭犬の適正飼育の指導 2.家庭犬の基本的なしつけの指導 3.愛犬を伴なっての社会貢献を紹介 4.ハンドラー&セラピー犬のトレーニング 11 ナイチンゲールの言葉 近代看護法の始祖であるナイチンゲールは、 1859年、ペットが病人に与える影響について 「小さなペットは病人、特に長期にわたる慢性病 患者にとって素晴らしい仲間になる‥動物に餌を 与えたり、身の回りの世話をすることができれば、 励まされるに違いない」と書いています。 臨床経験豊かなナイチンゲールは、患者への癒し 効果を実感として理解していたようです。 12
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