銀河中心領域拡散X線放射 松本浩典 (名古屋大学KMI現象解析研究センター) 内容 • 銀河中心diffuse X線放射 – 熱的放射 • 鉄の 6.7keV, 6.9 keV輝線 – 銀河中心領域 (l~0deg, b~0deg) – バルジ領域(l~0deg, b~1deg) – リッジ領域 (l~10deg, b~0deg) 非熱的放射(中性鉄蛍光X線)については、時間があれば。 X-ray image of the GC region Chandra image (100分角×40分角) Wang et al. 2002, Nature, 415, 148 20arcmin ~ 60pc •たくさんの点源 (X線連星系) •Diffuse放射 Red: 1 – 3 keV Green: 3 – 5 keV Blue: 5 – 8 keV 銀河中心diffuse X線スペクトル Suzaku Koyama et al. 2007, PASJ, 59, 245 X線天文で非常に重要な輝線です 答え: 鉄の特性X線 6.4keV 中性鉄のKα輝線 (Fe I) 6.7keV ヘリウム状イオン鉄のKα輝線 (Fe XXV) 6.9keV 水素状イオン鉄のKα輝線 (Fe XXVI) 他の特性X線 Fe I Kβ Ni I Kα Ni XXVII Kα & Fe XXV Kβ Fe XXVI Kβ & Fe XXV Kγ Fe XXVI Kγ すざくX線CCDイメージ 鉄の分布 (3deg × 0.5deg) Fe I (neutral) Fe XXV (He-like) Fe XXVI (H-like) 鉄の分布 6.4keV 6.7keV 6.9keV • 高階電離の鉄 – 6.7 keV 輝線と 6.9 keV の輝線: 似ている • 中性の鉄 – 6.4 keV 輝線 – 高階電離鉄分布とかなり異なる。よりpatchy。 高階電離鉄の起源と、中性鉄の起源は、別に考える必要がある。 銀河中心diffuse X線 リッジ領域 (l~10deg, b~0deg) バルジ領域 (l~0deg, b~1deg) 中心領域 (l~0deg, b~0deg) 銀河中心の高階電離鉄の起源 • 宇宙線中の鉄原子核と、星間ガスの荷電交換反応? – 中性鉄輝線をも同時に説明しようとする野望。 • 高温ガス? どうやって区別する? He状イオン鉄輝線の微細構造を使用。 荷電交換反応 宇宙線中の鉄原子核 Fe+26 He-like Fe line (6.7keV) Fe+24 星間ガス (主に H, He) Fe+25 H-like Fe line (6.9keV) 宇宙線中の鉄イオンが、星間ガス中の水素やヘリ ウムから電子を強奪する。 ヘリウム状イオン鉄輝線の微細構造 Highly resolved 6.7 keV line (ASTRO-H衛星ならこう見えるはず) Energy W z yx X線CCDでは、これらを分解できない。 あわせて一本の輝線とみてしまう。 輝線の中心エネルギーは、微細構造線の含まれる比率による。 荷電交換反応の場合 E=0 13.6eV n=1 n~25 H n=2 6.7keV line n=1 Fe XXV • 電子は高エネルギー準位に 入る。 – エネルギー保存則 • 電子は下の準位に落ちてい く。 • n=2 の各準位(l=0, 1)は、統 計的に埋まっていく。 電荷交換反応の場合 統計的に埋まっていく Z: 6637eV Y: 6668eV X:6682eV W: 6701eV すざくX線CCD分解能 中心値~6666eV •x, y, z 輝線は w 輝線と同程度出る。 •6.7keV輝線の中心エネルギー ~6666 eV. E 優先的に埋まる 高温ガスの場合 • 基底状態の電子が、衝突 (電磁相互作用)でn=2に 上がる。 – 電気双極子遷移 – スピンは反転しない すざくCCD 分解能 中心値~6685eV z y x w • 1P1 準位が優先的に埋ま る • W 輝線が強い • 中心エネルギー~6685eV すざく衛星観測結果 6680 +/- 1 eV 1. 荷電交換反応 Hi res CCD z w 6666eV 2. 高温ガス z 高温ガス起源を支持 (Koyama et al. 2007) w 6685eV Hi res CCD 高温ガスの温度を測定する。 He-like Fe K α(6.7keV) H-like Fe Kα (6.9keV) He-like Fe Kβ(7.9keV) 輝線強度の比を利用 I(6.9keV)/I(6.7keV): イオン化温度 I(7.9keV)/I(6.7keV): 電子温度 6.9keV輝線強度/6.7keV輝線強度 高温ガスの温度分布(銀径方向) イオン化温度 kT = 5~7 keV •イオン化温度 ~ 電子温度 ~ 5 – 7keV •l = 0.2deg ~ -0.4 deg でほぼ一定 高温ガスの質量測定 連続成分の光度を利用 Thermal bremsstrahlung Power-law Lx ∝ np ne V √T np ne V ~ 1060 cm-3 高温ガスの質量とエネルギー • Total emission measure (nenpV)~ 1060 cm-3 • 高温ガスは少なくとも1deg (~150pc) に分布 – V ~ 1062 cm3 – ne ~ 0.1 cm-3 (ne ~ np) • Total thermal energy E ~ 3/2 (ne + np) kT V ~ 10 53 erg • Total mass M ~ 8000 Msun エネルギー収支 • 高温ガスの温度 (kT~6keV) >> 重力ポテンシャル (kT~400eV). – Mgal ~ 2e11Msun, Rgal ~ 20kpc (G Mgal mp)/Rgal ~ 400eV • 高温ガスは逃げていく。 – 1 degree 以上に分布 (~150pc) – 音波が横切る時間スケール ~ 105 years. • 音波の速度 (kT~6keV) ~ 108 cm/s • 全熱エネルギー ~1053 erg ~1048 erg/year のエネルギーが注入されなければならない。 銀河中心部150pcの領域だけで、100年~1000年に一発の 超新星が必要。 対抗説: 分解できない点源の寄せ集め • 高温ガスを持つ暗い点源がたくさん集まっていたらよい。 – 最有力候補: 激変星Cataclysmic Variable (白色矮星連星系) • 空間密度 ~ 3x10-5 pc -3 主星 降着流 Accretion stream kT=1—25keV 磁場を持つ白色矮星 Surface of white dwarf 激変星(CV)のX線スペクトル Example of CV spectrum 3本の鉄輝線を持つ。 EW of 6.7keV EW of 6.9keV CV GC hot gas ~200eV ~400eV ~100eV ~150eV Chandraの銀河中心長時間観測(1Msec): 全光度の40%しか点源に分解で きない (Revnivtsev, Vikhlinin, and Sazonov 2007, A&A, 473, 857). 銀河中心高温ガスを全部CVで説明するのは難しそう。 銀河中心高温ガスの起源 よくわかっていない。 • 超新星爆発説 – エネルギー注入源として最もポピュラー。 • 特性X線を利用した撮像観測で、新X-ray SNRが銀河中心 でよく見つかる。 – kT~6keVの超新星残骸は知られていない。 • 通常 kT~1keV程度 • 過去の銀河中心核の活動? • その他? – 磁気的なもの? バルジ領域: 点源の重ね合わせ Chandra image at (l, b)=(0.113°, -1.424°) 黒:全スペクトル 青:点源 赤: 黒-青 Chandra spectrum 点源分解率(青/黒) Revnivtsev et al. 2009, Nature, 458, 1142 バルジ領域のdiffuse X線の起源は、銀河中心とは異なりそうだ。 リッジ領域 (|l|>1deg, b~0deg) 銀径1度以上にも3本の鉄ラインは存在する。 = Galactic Ridge X-ray Emission (GRXE) Iron line from GRXE Yamauchi et al. 2009, PASJ, 61,295 Uchiyama 2010, PhD thesis I(6.9keV)/I(6.7keV) リッジ領域のイオン化温度 (水素状鉄Kα/ヘリウム状鉄Kα) リッジ領域の温度は、中心領域より低い。 Chandra Deep observation (90ksec) Ebisawa, Maeda, Kaneda, Yamauchi, Science, 2001 (l,b)=(28.45deg, -0.2deg) 点源では説明できなかった Ebisawa, Maeda, Kaneda, Yamauchi, Science, 2001 リッジ放射を点源で説明す るために必要なレベル この観測で検出 された点源 リッジ放射の起源は? • 高温ガス? – 中心領域より温度が低い。 • なぜ? – エネルギー収支の問題は、より深刻になる。 • 分解できない点源の重ね合わせ? – Chandra 100ks観測でも検出できないほど暗い – ヘリウム状鉄Kα輝線の等価幅: 300 – 900 eV • CVにしては大きすぎる。 やはり起源は未解決 銀河中心熱的放射のまとめ バルジ領域 (l~0deg, b~1deg) CVの重ね合わせ リッジ領域 (l~10deg, b~0deg) 起源不明 • 高温ガス? • CVの重ね合わせ? 中心領域 (l~0deg, b~0deg) 高温ガス (kT~6keV)
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