木下研究室 鈴木 遼 従来の主な情報漏えい対策の目的は, 個人情報や 企業機密のような秘密情報がそのまま丸ごと漏え いをしないようにすることだった. しかし, 一つ一つの情報それ自体は秘密情報でな かったとしても,それらが複数集まり何らかの推論 を施すことによって, 秘密情報を抽出できてしまうこ ともある. 通常のcovertchannel解析では困難だった推論をグ ラフを用いて表現する.ハイパーグラフを用いることで 同じオブジェクトに適用する複数の推論を表現可能に する. 推論を考慮した情報漏えいの解析が可能となる. S0 S1 S2 O1 R O2 R O4 R O5 S4 S5 R R O3 S3 R R R R O2 (S0,S1) O1 R R (S1,S2,S4) R O5 R R R (S1,S3,S4) O3 (S0,S3,S4,S5) O4 (S0,S2,S5) twitter利用者のアカウント,プロフィール,登録リスト などからmixiのアカウントが発見された. mixiのコミュニティから大学名,入学年度が発見.そ れからの類推により,所属サークルも割り出された. facebookのアカウントも発見,顔写真も漏えい.そし て過去のtwitterからの「○階から見る景色」「そん なに○○が食べたいか」といった発言からアルバイ ト先の情報も割り出された. twitter つぶやき つぶやき1 登録リスト アカウント プロフィール mixi つぶやき2 facebook アカウント 大学名 入学年度 サークル アカウント 顔写真 アルバイト先 目次 ACLとcovert channel(従来の情報漏えい対策) ACL :誰がどの情報にアクセスできるかをまと めたリスト covert channel:ACL上で意図しない情報漏 えいを起こす可能性がある経路 推論を考慮した依存関係のリスト化 有向グラフのリスト着色としてのモデル化 ハイパーグラフでの拡張 不自由なACLを判別するアルゴリズム Subject(利用者)をS1,S2.Object(情報)O1,O2とする S1はO1 に対してread 可能でO2 に対してread とwrite 可能 であり, S2 はO1 に対してはread もwrite も不可能でO2 に対 してread 可能であることを意味している. しかし,S1がO1の内容をO2 にwrite することにより本来S2が読めないO1の 情報をO2を中継して読むことが可能となる. R:Read,情報の読み込み W:write,情報の書き込み Φ:読み書き不可 ACL ACLの情報の 流れをグラフ化 S1 S2 O1 O2 グラフ上での実線は read, 破線はwrite , 矢印の向きは情報の 流れを意味する. S1 S2 O1 O2 従来のcovert channel対策では殆 どがφになってしまい,使い物になら ないACLとなってしまう. covert channel があるからといって実際に情報漏え いが起きるわけではない. 実際にアクセスしたかどう かを考慮して監視する必要性がある. Object間に何らかの推論規則が存在する場合,これ も考慮しないといけない. この二つの問題を同時に考慮できるモデルを提案す る. 推論を考慮した依存関係のリスト化 ACL 依存関係のリスト S1 推論元オブジェクト 推論 導出オブジェクト O1 R O2 O1,O2,O3 ⇒ O4 R O3 R O4,O6 ⇒ O5 O4 Φ O3,O6 ⇒ O8 O5 R O6,O8 ⇒ O7 O6 R O4 ⇒ O6 O7 Φ O8 R 有向グラフのリスト着色としてのモデル化 色集合(C)={C0,C1,C2,C3,C4,….…Cn} (C0,C2) (C0,C1,C3) (C3,C4) (C1,C2,C4) 各ノードに塗ってもよ い色のリストが与え られている. リストに従って塗るこ とをリスト着色という. オブジェクト間の依存関係をグラフ化する. 推論元オブジェクト 推論 導出オブジェクト O1,O2,O3 ⇒ O4 O4,O6 ⇒ O5 O3,O6 ⇒ O8 O6,O8 ⇒ O7 O4 ⇒ O6 O3 O1 O4 O2 O5 O6 O7 O8 オブジェクト間の依存関係をグラフ化する. S0 S1 S2 S3 O1 R S4 色集合(S)={S0,S1,S2,S3,S4} (S1,S3) R O2 R R O3 R R O4 R O5 R O6 R R R O7 R R R O8 R R R O1 R R (S0,S2) R R R O3 (S0, S1,S4) (S0,S2,S3) (S0,S2,S3) R O4 R O6 O2 (S0,S1,S2,S3,S4) O5 (S0,S3,S4) O7 O8 (S0,S1,S4) 色集合(S)={S0,S1,S2,S3,S4} 色を塗るということは情報 を読んだとする. (S1,S3) O1 (S0,S2) リスト着色ならば情報漏え いが起きていない. リスト着色でなければ情報 漏えいが起きている. O3 (S1,S0,S4) O4 (S0,S2,S3) (S0,S2,S3) O6 O2 (S0,S1,S2,S3,S4) O5 (S0,S3,S4) O7 O8 (S0,S1,S4) オブジェクト間の依存関係をグラフ化する. 推論元オブジェクト 推論 導出オブジェクト O1,O2,O3 ⇒ O4 O4,O6 ⇒ O5 O3,O6 ⇒ O8 O6,O8 ⇒ O7 O4 ⇒ O6 色集合をサブジェクト(S), ノードをオブジェクト(O) として扱う. 色集合(S)={S0, S1,S2,S3,S4} (S1,S3) O3 (S1,S0,S4) O1 (S0,S2) O4 (S0,S2,S3) (S0,S2,S3) O6 O2 (S0,S1,S2,S3,S4) O5 (S0,S3,S4) O7 O8 (S0, S1,S4) P =「任意の頂点v に対して, v を終点とする全ての 有向辺(u1,v),・・・,(uk,v) の始点ui が同一色で塗 られているならば, v とuiも同じ色でなければならな い.」とした時に推論による情報漏えいの安全性を 以下のように定義できる. 定義:条件Pを満たす着色がリスト着色ならばその 着色は推論に対して安全である. u1 V u3 u2 (S1,S2,S4) 推論元オブジェクト 推論 導出オブジェクト O1,O2 ⇒ O4 (S0,S1) O1,O3 ⇒ O4 O1,O2,O4 ⇒ O5 O1 O1,O3,O5 ⇒ O2 通常の有向グラフでは表現でき なかった依存関係のリストもハ イパーグラフで表現することが できる. O2 O5 (S1,S3,S4) O4 O3 (S0,S3,S4,S5) (S0,S2,S5) P = 「任意の頂点v に対して, v を終点とする全て の有向辺A, B の始点集合A が同一色で塗られて いるならば,B の頂点も同じ色で塗られなければな らない.」としたときに推論による情報漏えいに対す る安全性を以下のように定義することができる. 定義:ある条件P がリスト着色ならばその着色は推 論に対して安全であるという. ACLと推論リストを合わせた 時にどうやってもリスト着色 ができない推論に対して不 自由なACLが存在する. 実際に情報を読み込む前に 与えられたグラフが不自由な ACLであるかを判別するアル ゴリズムを次に提案する. 色集合(S)={S0,S1,S2,S3,S4,…Sn} (S1,S3) O3 (S1,S0,S4) O1 (S0,S2) O4 (S2,S3) O6 O2 (S0,S1,S2,S3,S4) O5 (S0,S3,S4) (S0,S2,S3) O7 O8 (S0,S1,S4) Step1.グラフ全体のノードの中からリストの数が1であるも のから色を塗っていく. Step2.その次にL≧2のノードにも色を塗って全てのノード の色を塗る. Step3.塗り終わったら,グラフの中から推論によりノードの 色が決まるものが存在すればその色に変更する. 推論を全て行い、リスト着色の条件を満たせば少なくても 安全なサブジェクトの色分けが存在するからACLに問題が ないと判別することができる. 色集合(S)={S0,S1,S2,S3,S4,…Sn} (S0,S3) また,右の図のような場合の 時にO5が推論によりS0,S3 のどちらかに塗らなければ ならない場合は両方のパ ターンを記述しておく. (S0,S1,S4) O2 O1 (S0,S2) O7 (S0,S2,S3) O3 (S3,S4) O5 O6 O4 (S0,S3,S4) (S1,S3,S4) ACLのアクセスタイミングと推論問題を両方表現可 能なモデルを提案した. 推論的依存関係をハイパーグラフでモデル化した. ACLのアクセスタイミングをハイパーグラフの頂点 着色で表現した. ACLと推論リストを合わせた時にどうやってもリスト 着色ができないグラフを判別するアルゴリズムを提 案した. 提案モデル上でどのような問題設定をすれば良い か. 推論による情報漏えいの可能性が検出された場合, どのようにACLを修正すれば良いか. アルゴリズムを用いてACLの安全性をどのように評 価するか. 鈴木 遼,鈴木一弘,森住哲也,木下宏揚,“推論による情報漏 えい防止のためのハイパーグラフによる依存関係のモデル 化” 電子情報通信学会 情報セキュリティ研究専門委員会 (ISEC研), 2011年 暗号と情報セキュリティシンポジウム (SCIS2011),2F3-1,2011年1月 鈴木一弘, 鈴木遼, 森住哲也, 木下宏揚,“ 推論による情報 漏えい防止のためのハイパーグラフモデル”信学論D(載録 決定) 鈴木遼, 鈴木一弘, 森住哲也, 木下宏揚, “ 推論による情報 漏えい防止のためのハイパーグラフによる依存関係のモデ ル化の改良”技術と社会・倫理研究会(SITE),2012 年3 月 (予定)
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