全二重通信と半二重通信の混在環境における問題

進捗報告
九州大学システム情報科学府
情報知能工学専攻
林健太朗
前提




移動端末はMobile IPv4により通信
Anycastサーバは分散的に配置
アップリンクよりもダウンリンクの使用帯域が大きい
サービスを想定
この時移動端末がAnycastサーバへ通信を開始する
 トランスポート層では、移動端末の識別子をHome
Address
、Anycastサーバの識別子をAnycast Addressとする
2
現状の問題１



ダウンリンクのパスが長く、遅延時間が大きい
複数の移動端末の通信によりHAに負荷が集中
ダウンロード速度が遅くなる
Mobile Node
(Care of Address)
Home Agent
(Home Address)
カプセル化(CoA宛)
アップリンク
ダウンリンク
IP Anycast
IP(HoA宛)
Anycastサーバ
群のうち、最も近
いサーバへ配送
MNに近い
される
Anycast Server
(Anycast Address)
* ( )の中は割り当てら
れたIPアドレス
3
現状の問題２


端末の移動により最も近いサーバが変わったとする
通信相手が変わるので通信が途切れてしまう
AからBへ移動
地点A
Mobile Node
(Care of Address)
地点B
セッションが切断
IP Anycast
Anycastサーバ群
のうち、最も近い
サーバへ配送さ
れる
地点Aに近い
Anycast Server
(Anycast Address)
IP Anycast
地点Bに近い
Anycast Server
(Anycast Address)
4
研究の目的

問題１と問題２を解決し、Mobile IP上でのAnycast通
信を改善すること

問題１の解決手法
 ダウンロードにおいて、HAを経由せず、サーバから直接移
動端末へ通信

問題2の解決手法
 移動により最も近いサーバが変わっても通信相手を変え
ない
 最も近いサーバとの通信ではなくなるが、通信は途切れな
い
5
提案手法

準備
 移動端末とAnycastサーバに特殊なプログラムをインスト
ールしておく
 デーモン？カーネル？

プログラムの内容
 IDとロケータの対応表を独自に持つ
 ID元ID宛てパケットをロケータ元ロケータ宛てのパケットで
カプセル化する機能を持つ
 受信時はカプセル化を解除するだけ
 制御メッセージ：
カプセル化要求・応答メッセージ
対応表更新要求・応答メッセージ
6
提案手法

IDとロケータの対応を以下のように定義する
 Mobile
IP側 [ID：HoA 、ロケータ：CoA]
 Anycastサーバ側 [ID：AnA 、ロケータ：UnA]
* 各略語は図の通り
* Anycastサーバのユニキャストアドレスを、
ロケータと呼ぶのは、飛躍があるかもしれない
Mobile Node
割当：Care of Address（CoA）
Home Agent
割当：Home Address(HoA)
Anycastサーバには
AnAとUnAの二つの
アドレスを割り当てる
A地点に近いAnycastサーバ
割当1：Anycast Address(AnA)
割当2：Unicast Address-A(UnA-A)
B地点に近いAnycastサーバ
割当1：Anycast Address(AnA)
割当2：Unicast Address-B(UnA-B)
7
提案手法：通信開始時
①AnA宛てに通常通りパケットを送信
②Anサーバはカプセル化要求メッセージをHoA宛てに送信
③HAはCoA宛てにカプセル化して転送
Home Agent
(HoA)
②カプセル化要求
メッセージ(HoA宛)
③転送
ダウンリンク
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
①(AnA宛)
AnAのロケータ：
UnA-Aの情報を
含んでいる
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
Mobile Node
(CoA)
地点A
地点B
8
提案手法：通信開始時
④メッセージ情報から対応表を更新(以降の送信はカプセル化)
⑤カプセル化応答メッセージ、およびカプセル化要求メッセージを
AnA宛てに送信 (UnA-A宛てパケットでカプセル化)
Home Agent
(HoA)
⑤カプセル化応答＆要求メッセージ
(AnA宛をUnA-A宛てでカプセル化)
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
HoAのロケータ：
CoAの情報を含
んでいる
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
④対応表更新
Mobile Node
(CoA)
地点A
地点B
9
提案手法：通信開始時
⑥メッセージ情報から対応表を更新(以降の送信はカプセル化)
⑦カプセル化応答メッセージをHoA宛てに送信 (CoA宛てパケットで
カプセル化)
Home Agent
(HoA)
⑦カプセル化応答メッセージ
(HoA宛をCoA宛てでカプセル化)
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
⑥対応表更新
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
Mobile Node
(CoA)
地点A
地点B
10
提案手法：通信開始時
⑧以降、カプセル化したパケットを、お互い直接、送受信する
Home Agent
(HoA)
⑧カプセル化したパケットの送受信
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
Mobile Node
(CoA)
地点A
地点B
11
提案手法

通信中のそれぞれの送信パケットの状態
IP Src:UnA-A Dst:CoA IP Src:AnA Dst:HoA データ
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
ダウンリンク
Mobile Node
(CoA)
アップリンク
IP Src:CoA Dst:UnA-A IP Src:HoA Dst:AnA データ
12
提案手法：端末移動時

端末移動時の振る舞い
 移動しても最も近いサーバが変わらない場合(１)
 移動した結果、最も近いサーバが変わった場合(２)

2つの振る舞いを説明する

通信を継続することが目標
13
提案手法：端末移動時１

最も近いサーバが同じ時
①端末が通信中にA地点からA’地点へ移動する
②CoAがCoA’に変わりHAへ位置登録
Mobile Node
(CoA‘)
地点A‘
Home Agent
(HoA)
②位置登録
①端末が移動
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
地点B
14
提案手法：端末移動時１

最も近いサーバが同じ時
③端末は対応表更新要求メッセージをAnA宛てに送信(UnA-A宛て
パケットでカプセル化)
④メッセージ情報から対応表を更新
Mobile Node
(CoA‘)
Home Agent
(HoA)
地点A‘
③対応表更新要求メッセージ
HoAの新しいロ
ケータ：CoA’の情
報を含んでいる
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
④対応表更新
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
地点B
15
提案手法：端末移動時１

最も近いサーバが同じ時
⑤Anサーバは対応表更新応答メッセージをHoA宛てに送信(CoA’
宛てのパケットでカプセル化)
⑥以降、移動前と同じように直接通信可能
Mobile Node
(CoA‘)
Home Agent
(HoA)
地点A‘
⑤対応表更新応答メッセージ
⑥直接送受信
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
地点B
16
提案手法：端末移動時２

最も近いサーバが変わる時
①端末が通信中にA地点からB地点へ移動する
②CoAがCoA’に変わりHAへ位置登録
Home Agent
(HoA)
②位置登録
①端末が移動
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
Mobile Node
(CoA‘)
地点B
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
17
提案手法：端末移動時２

最も近いサーバが変わる時
③端末は対応表更新要求メッセージをAnA宛てに送信(UnA-A宛て
パケットでカプセル化)
④メッセージ情報から対応表を更新
Home Agent
(HoA)
HoAの新しいロ
ケータ：CoA’の情
報を含んでいる
Mobile Node
(CoA‘)
④対応表更新
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
③対応表更新要求メッセージ
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
地点B
18
提案手法：端末移動時２

最も近いサーバが変わる時
⑤Anサーバは対応表更新応答メッセージをHoA宛てに送信(CoA’
宛てのパケットでカプセル化)
⑥以降、移動前と同じように直接通信可能
Home Agent
(HoA)
⑥直接送受信
Mobile Node
(CoA‘)
Bに近いAnサーバ
(AnA、UnA-B)
⑤対応表更新応答メッセージ
Aに近いAnサーバ
(AnA、UnA-A)
地点A
地点B
19
考察

端末の移動について
 １、２の場合、ともに通信を継続できている

移動による最も近いサーバの変化
 2の場合も１の場合と同様の手順を踏んでいる
 移動先に関わらず、それまで通信中であったサーバとの
通信を継続するため、通信は途切れない

ダウンリンクパスについて
 最初の通信のみHAを経由する必要があるが、それ以降は
直接通信できている
20
考察

移動端末からのAnycast以外の通信について
 Anycastサーバは、通信相手が移動端末であるか判断で
きないため、全ての通信相手にカプセル化要求を行うが、
応答を返すのは移動端末のみである
 移動端末にとっては、カプセル化要求を受け取ると、必ず
カプセル化を行うが、カプセル化要求を行うのはAnycast
サーバのみである
 つまり移動端末とAnycastサーバ間の通信でのみ、カプセ
ル化要求と応答が成り立つので、他の通信に問題はない
21
まとめ

Mobile IP上でのAnycast通信の問題を改善するため
の手法を提案した
 問題１：HAを経由するダウンリンクパス
 問題２：移動による最も近いサーバの変化

提案手法
 実際の宛先をカプセル化により制御する
 カプセル化により直接通信が可能になる
 どこへ移動しても、通信中のサーバと通信を継続可能

課題
 IPｖ６の場合
22

Download Report