バリア皮膜とポーラス皮膜

固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流
-アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
山形大学工学部 物質化学工学科
助教授 工学博士 立花 和宏
〒992-8510 山形県 米沢市 城南4-3-16
TEL&FAX:0238-26-3137
mailto: [email protected]
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/2614/
アウトライン
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1. 緒言
2. バルブメタルのアノード酸化
2-1 バルブメタルの高電場機構による皮膜生成機構
2-2 アノダイジングレシオ、絶縁性、耐電圧、漏れ電流
2-3 アノード酸化皮膜の表面欠陥と電流集中
3. カソード材料によるアノード酸化皮膜の表面欠陥の顕在化
3-1 非水溶液環境下におけるアノード酸化皮膜
3-2 炭素材料接触によるアノード酸化皮膜の漏れ電流
3-3 アノード酸化皮膜の化成電圧と固体電解コンデンサの耐電圧
4. カソード材料によるアノード酸化皮膜の表面欠陥の修復
4-1 カソード材料としての二酸化マンガンと導電性高分子
4-2 アノード酸化皮膜の修復とカソード材料の電位
4-3 アノード酸化皮膜の修復と水分
5. 結言
タンタル/二酸化マンガンコンデンサ
カソード集電体
アノード集電体
タンタルワイヤ
0.5mm
タンタル焼結体
バルブメタル(M)のアノード酸化
• M+nMH₂O→MO +2nH⁺+2ne
MO は酸化皮膜を示す。この反応と同時に金
属のアノード溶解反応
• M→M²ⁿ⁺+2ne
および酸化物の溶解反応
• MO +2nH⁺→M²ⁿ⁺+nH₂O
高電場機構の概念図(アルミニウムの場合)
Internal structure
Potential V
Al
Al2O3
V 
j  f 
 
Current density j
Electric field
Distance
Film thickness δ
線形と非線形な関数
V 
j f 
 
非線形
線形
高電場機構のモデル(ホッピング機構)
電位
地金
不働態皮膜
エネルギーレベル
電場強度小
ホッピング
確率小
電場強度
Al3+
O2-
酸化物の
最上位エネルギー
溶液電位
電場強度大
電流
高電場機構
j  A exp Be
ファラデーの法則
j:電流密度
e:電場強度
  kq
δ:皮膜厚み
q:電気量
ホッピング
確率大
電流一定のアノード酸化
j  A exp Be
電流密度一定
電場強度一定
定電流印加時の高電磁場機構による
アルミニウムの不働態皮膜成長
皮膜膜厚∝電気量
電位
皮膜成長
Al
Al2O3
電位勾配∝電流密度の対数
Al3+
j  A exp Be
O2電極電位
溶液電位
電位勾配
電流
電流
距離
アノダイジングレシオ
j  A exp Be
j M 
 

zF   
電流密度一定
電場強度の逆数
=アノダイジングレシオ
式量Mに102×10-3 kg mol-1、
密度にρ=3.1×103 kg m-3、
z=6、フファラデー定数に
F=96485.309 C・mol-1、電位
上昇速度1V/sを与える電流密
度jとして24.7Am-1を与えると
1.4nm/Vが得られる。
電圧一定のアノード酸化
電場強度減少による
電流密度減少
j  A exp Be
アノダイジングレシオの増加
皮膜成長による
電場強度の減少
定電位印加時の高電場機構による
アルミニウムの不働態皮膜成長
電位
皮膜生成電流
皮膜溶解電流
&電子電流
電極電位
溶液電位
電流
時間
電流
皮膜生成電流
漏れ電流(皮膜溶解電流&電子電流)
時間
絶縁性
耐電圧の大きさ
イオン電流だと・・・
漏洩電流の少なさ
イオン電流だと・・・
再アノード酸化
電子電流だと・・・
電子なだれ
腐食
皮膜修復
電子電流だと・・・
酸化分解
電流リーク
絶縁性と漏洩電流-非線形関数
絶縁破壊領域
漏洩電流
漏洩
電流
領域
漏洩電流は完全に0ではないし、
耐電圧を超えて流れる電流も無
限大ではない。
耐電圧
地金
皮膜
炭素
電池反応電流
アルミニウム/炭素界面
皮膜生成電流
漏洩電流
絶縁破壊電流
抑制
腐食電流
アルミニウム/電解液界面
バルブメタル/炭素・電解液の界面の機能(アルミニウムの場合)
種々の電流担体による電流経路の並列接続
電流経路1
電流経路2
電流経路3
非線形抵抗を持つ電流経路の並列接続
j=
O2-
+
Al3+
+
e-
?
・・・ =
電流はもっとも耐電圧の小さい回路を流れ、
全体の耐電圧はもっとも耐電圧の小さい回路と等しい!
電流経路ー液体電解質
アノード酸化皮膜
液体電解質
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2-
e-
O2
皮膜導電性と生成する皮膜
皮電
膜解
の質
密ア
度ニ
オ
ン
の
種
類
、
腐食
腐食
ポーラス型
ポーラス型
バリヤ型
バリヤ型
ア
ル
ミ
ニ
ウ
ム
ス
テ
ン
レ
ス
高電場機構
イオン伝導
イオン伝導
電子伝導
電子伝導
酸素欠損、皮膜厚
サイクリックボルタモグラムのシュミレーション
500
Current / μA・cm
-2
400
300
200
1st Cycle
100
0
2nd Cycle
-100
-10
0
10
電位比例電流成分
20
30
40
Potential vs. Ag / V
漏洩電流を考慮し高電場機構モデルによるバルブメタルの
アノード酸化のサイクリックボルタモグラムのシュミレーション
皮膜表面の活性点と電流集中
電位
Al
AlOx/2F3-x
電流集中
残余電流
アニオン吸着
電流
活性点への電流集中と微小電極
試料極
対極
試料極
対極
不働態皮膜
試料極
対極
試料極
対極側
非線形抵抗の直列接続
バルク
j=
界面
バルク
+
+
?
・・・ =
印加電圧はもっとも耐電圧の高い箇所に印加される!
バルクと界面-線形と非線形
液体電解質
アノード酸化皮膜
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2
O2バルク
(線形)
e-
+
界面
(非線形)
バルク
(線形)
+
金属の有機電解液アニオンに対する反応
BF4Al
Nb
Ta
Ti
Zr
Hf
PF6-
ClO4-
◎不働態化
◎不働態化
▲Cl で腐食
38
19
21
▲腐食
▲腐食
○不働態化
3.2
3.8
6.5
▲腐食
▲腐食
○不働態化
3.0
4.0
6.5
△溶媒の分解
△溶媒の分解
△溶媒の分解
4.6
4.6
4.6
△溶媒の分解
△溶媒の分解
△溶媒の分解
4.6
4.6
4.6
○不働態化
○不働態化
▲腐食
再アノード酸化時のクロノポテンショグラム
8
(A)
7
6 Polarization
Intermittent
Re-polarization
5
4
3
2
1
0
AA
-1
LiBF4
AA
LiBF4
8
7
Poteintal vs. Ag/ AgCl / V
6
5
4
3
2
1
LiBF4
AA
LiBF4
(B)
0
AA
-1
8
(C)
7
6
5
4
3
2
LiPF6
1
AA
LiPF6
0
AA
-1
-2
0
10
20
Time / s
10
20
電気二重層キャパシタの接触抵抗として測定
地金
皮膜
欠陥
炭素
電池反応電流
アルミニウム/炭素界面
皮膜生成電流
漏洩電流
絶縁破壊電流
抑制
腐食電流
0.3
アルミニウム/電解液界面
0.2
0.1
0
-0.6
-0.4
-0.2
0
-0.1
-0.2
-0.3
0.2
0.4
0.6
0.8
1
電気二重層キャパシタのシミュレーション
0.3
0.3
容量線形項、
ラプラシアン項
あり、LiCoO2
電池正極模型
0.2
0.1
0.2
0.1
0
-0.6
-0.4
-0.2
理想的な
コンデンサ
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
-0.6
-0.4
-0.2
dQ
 0.1  0.05V
dV
  V  0.3  2 

 0.5 exp  
  0.2  


R  0 .5
-0.1
-0.2
-0.3
0.5
0.3
0.2
0.4
0.6
0.8
1
dQ
 0.5
dV
R  0.1
-0.2
-0.3
0.4
ハイブリッド
キャパシタ模型
0.4
0
-0.1
容量線形項あり
ELDC模型
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0
-0.6
-0.4
-0.2 -0.1 0
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
dQ
 0.5  0.05V
dV
  V  0.3  2 

 0.5 exp  
  0.2  


R  0 .5
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
dQ
 0.5  0.02V
dV
R  0.5
炭素とアノード酸化皮膜との接触抵抗
酸化皮膜の接触抵抗
接触抵抗R/Ω
Nb
Nb近似線
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
Al
Al近似線
Ta
Ta近似線
y = 238.17x + 143.33
y = 38.255x + 260.2
y = 10.256x + 127.96
0
5
25
20
15
10
アノード酸化電位/V vs Ag/AgCl
30
35
電流経路-炭素接触時
アノード酸化皮膜
液体電解質
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2
O2炭素
欠陥部顕在化
Ta
e-
電流リーク
e-
電流経路ー二酸化マンガン
アノード酸化皮膜
水分
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2
O2欠陥部顕在化
Mn3+ 二酸化マンガン
Mn4+
Ta
e-
O2-
皮膜修復
電流リーク
e-
化成
欠陥部
電解
コンデンサ
コンデンサ組み立て後
O2-
Al
Al
誘電体皮膜
欠陥部
固体電解質
(水分無し)
固体電解
コンデンサ
Nb
電解液
(水分が修
復)
Nb
誘電体皮膜
電解コンデンサと固体電解コンデンサの比較
電流経路-導電性高分子
アノード酸化皮膜
水分
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2
O2-
導電性高分子
欠陥部顕在化
eTa
e-
電流リーク
h+
カソード材料の自然電位
ポリチオフェン
H3PO4
LiBF4
0.199V
-0.063V
MnO2
C
0.928V 0.421V
0.547V 0.048V
水分濃度とクロノポテンショグラム
Nb/Nb2O5/MnO2/LiClO4
Water content 2000ppm
P otential vs.A g/V
50
45
Nb/Nb2O5/LiClO4
Water content 2000ppm
40
35
Nb/Nb2O5/MnO2/LiClO4
Water content 50ppm
30
25
Nb/Nb2O5/LiClO4
Water content 50ppm
20
0
100
200
T im e/sec
300
400
まとめ
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1. 緒言
2. バルブメタルのアノード酸化
2-1 バルブメタルの高電場機構による皮膜生成機構
2-2 アノダイジングレシオ、絶縁性、耐電圧、漏れ電流
2-3 アノード酸化皮膜の表面欠陥と電流集中
3. カソード材料によるアノード酸化皮膜の表面欠陥の顕在化
3-1 非水溶液環境下におけるアノード酸化皮膜
3-2 炭素材料接触によるアノード酸化皮膜の漏れ電流
3-3 アノード酸化皮膜の化成電圧と固体電解コンデンサの耐電圧
4. カソード材料によるアノード酸化皮膜の表面欠陥の修復
4-1 カソード材料としての二酸化マンガンと導電性高分子
4-2 アノード酸化皮膜の修復とカソード材料の電位
4-3 アノード酸化皮膜の修復と水分
5. 結言
9
1.45
8
80
60
40
20
水系
1.4
1.35
1.3
1.25
1.2
100
200
300
400
5
4
3
1
1.05
0
水系、二酸化マンガン
40
0
500
1.8
1000
1500
Tim e/sec
500
1000
1500
Tim e/sec
No.1(M nO 2圧着)
3.5
No.2(M nO 2圧着)
1.6
3
3
2.5
2
1.5
1
Potential/V vs.A g
1.4
Potential/V vs.A g
P otent ial/V vs.Ag
6
2
1
3.5
7
1.1
500
Tim e/sec
水系、炭素
1.15
0
0
Potential/V vs.Ag/AgCl
100
Potential/V vs.Ag/AgCl
Potential/V vs.Ag/AgCl
1.5
120
1.2
1
0.8
2.5
2
1.5
0.6
1
0.4
0.5
非水系、ポリチオフェン
N o.1(C 圧着)
非水系、炭素
0.2
0
0
500
1000
Time/sec
非水系、二酸化マンガン
0.5
N o.2(C 圧着)
1500
0
0
0
500
1000
Tim e/sec
1500
0
500
1000
Tim e/sec
1500
電流経路
アノード酸化皮膜
液体電解質
Ta5+
腐食
OHTa5+
アノード酸化
H+
電気分解
O2
O2欠陥部顕在化
Mn3+ 固体カソード材料
Mn4+
Ta
e-
O2-
皮膜修復
e-
電流リーク
h+