2009年度 東海目録研修会及びユーザー会 病院図書室業務の基礎講座シリーズ その5 「病院図書室の利用者教育」 東海地区の事例報告 「看護師に必要な図書室サービスと利用教育」 山田赤十字病院研修センター 小林美香子 2009年8月25日(火) 本日の内容 1.山田赤十字病院研修センター図書室の紹介 2.日本赤十字社(山田赤十字病院) キャリア開発ラダーについて 3.枠組み「研究」のキャリア開発ラダー別支援研修と 図書室利用教育・指導 4.地域の他施設の研究支援と図書室利用教育・指導 5.新人臨床研修制度化に対応した図書室作り 6.まとめ 病院概要 各種指定 ●地域医療支援病院 ●地域がん診療拠点病院 ●臨床研修指定病院 ●救命救急センター ●地域災害拠点病院 など • 許可病床数 ●伊勢市 Mie Pref, Japan • • • • 655床 (一般 651床、感染症4床) 入院一日平均 513人 外来一日平均 1,169人 平均在院日数 12.9日 平均病床利用率 81.8% (平成20年度実績) 研修センターの設置 (平成18年4月1日) <研修センター設置の経緯> • 105年間継続した山田赤十字看護専門学校の閉校 (明治34年3月~平成18年3月末迄) <研修センター設置目的> • 山田赤十字病院職員教育 (部門教育としての看護職研修全てを含む) • 教育的機能を目的とした活動 • 看護職確保対策 <図書室概要> • 資料1 山田赤十字病院 図書室 利用案内 研修センターの活動の推移 2006年 2007年 (平成18年度 ) (平成19年度) 2008年 (平成20年度) 2009年 (平成21年度) *予定を含む 職員研修の一元化(企画・運営) 看護職継続教育の一元化(企画・運営) 新人看護師教育プログラムの作成・運営 救急標準化教育 (ICLS,JPTEC,ISLS) 図書室の教育機能の充実 地域の医療・福祉関連施設から研修の受け入れ 臨床研修評価受審 ☆ TQM活動 大規模災害防災訓練(企画・運営) ☆ がん緩和ケア研修 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ワークライフサポート相談室の開設 (産業カウンセラーの配置) アロマボランティア活動場所の提供 (女性職員向けリラクゼーション支援) アロマトリートメント ※ 研修センターが中心の活動 ※ ☆ 病院の委員会等と共同の活動 研修センター職員構成 研修センター長 (看護師) 研修センター 事務主事(臨時) 研修センター 事務主事(委託) 副研修センター長 (医師・嘱託) 研修課長 (看護師) 研修係長 (看護師) 図書主事 (委託) 図書室業務担当者 職 種 図書主事 (委託・非司書) 研修係長 (看護師) 担当業務 専任 ・日々の実務 (図書室管理・相互貸借・ 利用指導) 兼務 ・図書委員会事務局 ・起案書作成 ・利用指導 利用教育・指導実績(2008年度分) 対 象 開催月 回数 のべ人数 4月 1 70 4月 1 10 ③実習生・教員 実習初日など 12 87 ①新人看護師 4月 5 50 7月 1 8 随時 5 8 ①新入職員 1. オリエンテーシ ②研修医 ョン 2. 文献検索指導 ②メディカルアシスタント ③看護師 日本赤十字社事業局看護部 「キャリア開発ラダー」 山田赤十字病院 「キャリア開発ラダー」 看護実践能力向上のためのキャリア開発ラダー導入の実際:日本赤十字社事業局 看護部編、日本看護協会出版会、2008. キャリア開発ラダー導入目的 1)赤十字の看護職員として必要な看護実践能力を 段階的に明示し、その到達を目指すことによって 看護の質向上をはかる。 2)教育背景やライフスタイルの異なる個々の看護 師の教育ニーズにあった継続教育の体系化をはか り、教育の効果・効率を高める 3)看護実践能力を考慮した適切な人員配置を行う 4)個人の看護実践能力向上の動機づけとなるよう 支援する 5)看護職員の仕事の満足を促進する 赤十字医療施設のキャリア開発ラダーの 看護実践能力の到達目標 Ⅴ 施設全体に影響力を及ぼしながら医療の質向上 をもたらす看護活動を行う赤十字事業の推進者 Ⅳ 看護部門全体に影響力を及ぼしながら医療の質 向上をもたらす看護活動を行う者 Ⅲ 自部署においてリーダーシップを発揮しながら看 護活動を行い、スタッフの指導にも関わり、災害 時の救護活動に従事できる者 Ⅱ 自部署で自律して看護活動ができる者 Ⅰ 指導や助言を得ながら看護活動ができる者 資料2 山田赤十字病院キャリア開発ラダー看護実践能力の到達目標及び指標 資料3 枠組み「教育」「研究」看護実践能力の指標 よくあるできごと 図書主事の悩み 「看護師さんが何を調べたいのか漠然としてい てさっぱり分かりません。ちょっと図書室に来 て下さい」 1.「調べたいことが何か」を看護師自身が分かっていない場合が多い →日常臨床の問題意識がどこから発生してきたかを丁寧に聞き取る (「研究テーマの絞込み」「問題の明確化」) 2.キーワードを抽出し、いざ文献検索! (書籍なのか、雑誌なのか?) レベルⅠ支援 対象者:平成21年4月 新入職者54名(既卒者含む) 日 時:平成21年4月22日 12:50~16:50 平成21年4月23日 13:00~17:00 場 所:図書室 担当者:研修係長、図書主事 方 法:1グループ3~10名単位を1時間かけて実施 教 材:資料4 「図書室の活用と文献検索」 レベルⅠ支援 スケジュール 開催日時 グループ名 人数 4/22 12:50~13:50 (60分) 1-A 1-B 9 13:50~14:50 (60分) 2-A 2-B 5 14:50~15:50 (60分) 3-A 3-B 8 15:50~16:50 (60分) 4-A 4-B 8 4/23 13:00~14:00 (60分) 5-A 5-B 8 13:00~14:00 (60分) 6-A 6-B 5 13:00~14:00 (60分) 7-A 7-B 8 13:00~14:00 (60分) 8-A 8-B 3 レベルⅠ支援 グループ別指導内容 PC No1. 担当:研修係長 PC No2. 担当:図書主事 10分間 (全員) 図書室オリエンテーション ミニレクチャー 20分間 (半数ずつ) Aグループ: ①日本看護協会HP ②医薬品医療機器情報提 供HP Bグループ: ①医中誌Web 利用体験 ②一次資料の探し方 20分間 (半数ずつ) Bグループ: ①医中誌Web 利用体験 ②一次資料の探し方 Aグループ: ①日本看護協会HP ②医薬品医療機器情報提 供HP 10分間 (全員) まとめ アンケート記入 レベルⅡ支援 • 看護研究小委員会から課題提示 「看護実践の中で生じた疑問や課題に関し、現 時点で明らかになっていることを調べ、発表す る」 • 文献検討発表会:平成21年12月6日(日) • 発表時間:8分間 • 図書室担当者は、利用者が課題を達成する ための支援を行う レベルⅢ支援 • • • • • 対象者:看護研究に取り組む者 日 時:随時 場 所:図書室 担当者:研修係長、図書主事 方 法:個別対応の文献検索指導 (代理検索よりも自立への支援を行う) • 看護研究小委員会と図書室は、表裏一体の 関係にある 事例①レベルⅢ支援 研究小委員会への相談内容 「PEGの入っている患者さんの便性について、 NSTメンバーから『自分の病棟には下痢の患 者が多い』と指摘された。本当にそうなのかと 思い、PEG挿入患者のカルテを調べてみた。 これからどのように研究を進めていけばよい かを教えて欲しい。文献検索したことない」 ○月○日 ○:00、図書室でお会いしましょう 事例①レベルⅢ支援 図書室にて 1.下痢の定義、便性の観察方法を調べる必要あり 1)NANDA-I看護診断 定義と分類 2009-2011 (医学書院) 2)看護診断ハンドブック第8版(医学書院) 3)MEDISーDC (http://www.medis.or.jp/) (財)医療情報システム開発センター 看護実践用語標準マスター(看護観察編) 事例①レベルⅢ支援 事例①レベルⅢ支援 「カルテを調べる前にここ(研究相談、図書室) へ来た方がよかったんですね。下痢と一言で 言っても、便の表記方法はバラバラでした。こ れからどう進めていけばよいのでしょうか?」 • 研究相談の場、そして図書室に気軽に足を 運ぶ利用者を増やす。 • そのためにできることは? 事例②レベルⅢ支援 研究小委員会への相談内容 「事例①の看護師から、『研究はスタートする前 に相談に行った方が良い』と教えてもらいまし た。 糖尿病教育入院患者さんに1週目が終わった ところで目標設定をしてもらっていますが、具 体的な目標設定ができるようになって欲しい と思ってます。どのように進めれば研究になり ますか?」 1.問題の明確化 2.キーワード抽出「コーチング」「糖尿病」「目標管理」「地域連携パス」 事例②レベルⅢ支援 図書室にて 1.文献検索方法の指導 1)医中誌Web 2)JDreamⅡ(日本看護協会会員登録) 3)メディカルオンライン レベルⅣ・Ⅴ支援 • 対象者:認定看護師・専門看護師・認定看護 管理者など • 日 時:随時 • 場 所:図書室 • 担当者:研修係長、図書主事 • 方 法:文献検索サポート、情報提供 事例③ レベルⅣ・Ⅴ支援 図書室への相談内容 「来年、当県にて日本看護学会(小児看護)が 開催されることになった。学会準備委員会委 員を任命されたので、最近の小児科看護に 関する話題を知りたい」 1.小児関連雑誌「小児看護」 「小児科」「小児科臨床」「小児外 科」バックナンバーの目次集を提示 2.司書アシストを利用し、 「小児看護」 「小児科臨床」の特集 からキーワードを抽出 (他職種連携・食育・プレパレーションなど) 事例④他施設看護師への支援 図書室への相談内容 「点滴静脈注射の穿刺時、看護師が感染予防 のために手袋を装着しなければならないが、 どの程度遵守されているのかを研究したいの で文献検索の方法を教えて欲しい」 キーワード抽出 「点滴」「感染予防」「手袋着用」「意識調査」 「CDCガイドライン」 事例④他施設看護師への支援 文献検索支援 1)医中誌Web 2)JDreamⅡ 3)メディカルオンライン 4)CiNii 5)厚生労働省科研費DB検索 6)J-STAGEにて関連学会検索、 文献ダウンロード 平成21年7月9日「保健師助 産師看護師法および看護師 等の人材確保に関する法律 の一部を改正する法律案」 が衆議院本会議で可決、成 立した。 同法は2010年4月に施行さ れる。 まとめ 1.組織の発展と個人のキャリア開発を支援す る図書室つくり 2.「保健師助産師看護師法」および「看護師等 の人材確保に関する法律」の改正を受け、教 育機能を充実させた図書室つくり 3.「安全・安心」な医療を提供するためには、 多職種チーム医療の実践が必須。学術情報 の提供を担う図書室担当者は、チーム医療 推進の要である。 参考文献 1)松井和世,谷眞澄,松本ゆかり他:人が人を育てることで組織 は成長する,看護,61(5) ,p58~63 , 2009. 2)池田由美子,大林由美子,松尾文美:日本赤十字社の教育・ 医療施設連携による採用内定者への支援, 61(10) , p77~81 , 2009. 3)小林美香子:国試に出題される医療安全(1)安全を守るため の技術〈院内感染対策〉 ,医療安全, 6(1) , p102~106 , 2009. 4)小林美香子:国試に出題される医療安全(2)医療安全管理と 保健師助産師看護師法、医療安全, 6(2) , p92~96 , 2009. 5)小林美香子:国試に出題される医療安全(3)薬剤の知識と取り 扱い,医療安全, 6(3) , p108~112 , 2009.
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