Compact Nuclear Starbursts in Seyfert 2 Galaxies

セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
アブストラクト
今西昌俊 (国立天文台 光赤外研究部)
活動銀河中心核であるセイファート銀河の、中心AGN周囲のダスト・分子トーラス中に生じて
いるであろう、“中心核スターバースト”の規模を、定量的に見積もり、以下の結果を得た。
(1) 1型と2型セイファート銀河で、“中心核スターバースト”の光度に差異はなく、AGN統一モデルを支持する。
(2) “中心核スターバースト”とAGNの光度は相関があり、物理的結び付きを示唆する。
1.はじめに
セイファート銀河は、中心核が非常に明るい銀河である。
超巨大ブラックホールに物質が落ち込む際の重力エネルギー
を解放して、明るく輝いている 活動銀河中心核(AGN)の
一種に分類される。
トーラスは分子ガスに富むため、スターバーストが生じやすい
場所である。我々は、“中心核スターバースト”と名付ける。
中心核スターバースト
(Fabian et al. 1998 MN 297 L11
Imanishi 2003 ApJ 599 918)
セイファート銀河には、可視光線で幅の広い(半値幅で
秒速数千キロ)輝線を示す1型と、示さない2型が存在する。
超巨大ブラックホール
AGNの統一モデルによれば、この違いは、中心の超巨大
ブラックホールの周囲に存在する、トーラス状のダスト・
Are such starbursts present?
分子ガスを見る方向の違い(2型の中心核が、トーラスに
How to study?
ブロックされている)によって説明される。
一番内側の、ダスト昇華温度に近い1000Kのダストが、
波長3umの連続光の主要な放射源
2.問題点
“中心核スターバースト“は、トーラスにエネルギーを注入し、膨らませる可能性がある。その場合、2型として観測されやすい。
つまり、2型の方が、1型より、中心核スターバーストが強いことが予想される。一方、統一モデルによれば、1型と2型は、本質
的に同じなので、強さに差異はないと予言する。どちらが正しいのだろうか?
3.我々の研究
CfA、12umサンプル中の、32個の2型と、25個の1型セイファート銀河の、地上3umスリット分光観測
利点
1 PAH放射を用いて、AGNとスターバーストを区別できる。(PAH放射を用いて、星生成のみを取り出せる)
2 吸収が小さい(可視光の約6%)ので、観測値から、スターバーストの規模を定量化できる。 ← UV/可視に対する利点
3 広がった母銀河の星生成放射を除去できる。 ← 衛星に対する利点
4. 結果
スペクトルの例
中心核スターバースト
とAGN光度の比較
縦軸:
光量
横軸:観測波長(ミクロン)
縦軸:中心核
スターバースト
の光度
5. 議論と結論
横軸:AGN光度の指標
1 PAH放射の観測値から見積もられる中心核スターバーストの光度(PAH光度の約1000倍)は、
銀河全体の光度の、ほんの一部にしか寄与していない。
2 AGN光度で規格化すると、中心核スターバーストの光度は、1型、2型で差異はない。
3 中心核スターバーストとAGNの光度は統計的に相関が確認され、物理的結び付きを示唆する。
得られる示唆
中心核スターバーストが、トーラスの分子ガスを錯乱させ、超巨大ブラックホールへの質量降着を促進。
ただし、トーラスを膨張させるほど強力ではない。
6. 将来計画:トーラス中の中心核スターバーストの直接撮像
1 高階励起のCOと低階励起のCOの比の空間変化
2 PAHマッピング
ALMA
赤外干渉計
Imanishi 2003 ApJ 599 918
Imanishi & Wada 2004 ApJ 617 214