スライド 1

地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
地理空間情報の提供・流通を図るための個
人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
【地方公共団体向け】
開発担当者 :国土交通省国土計画局
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
1.概要と学習目標
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地理空間情報活用人材育成プログラム
1.1
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
本講義の背景
◎背景
• 平成19年「地理空間情報活用推進基本法」
• 平成20年「地理空間情報活用推進基本計画」
誰もがいつでもどこでも必要な地理空間情報を使った
り、高度な分析に基づく的確な情報を入手し行動できる
「地理空間情報高度活用社会」の実現を目指す。
• 地理空間情報の提供・流通の促進が必要
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地理空間情報活用人材育成プログラム
1.1
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
本講義の学習目標
◎学習目標
○地理空間情報の提供・流通を促進する際に発
生しうる個人情報保護・知的財産権の権利処理
などの問題及びそれに対処するための基本的な
考え方について学ぶ。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.地理空間情報の提供・流通を促進する際に発生し
うる問題及びその対処方法に関する基本的な考え
方
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.1 地理空間情報活用の際の問題点など
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.1 地理空間情報活用の際の問題点など
①地理空間情報を扱う際の問題点について
個人情報の保護
個人情報を含んでいる
ケース
地理空間情報には、個人情報を
含むものもあるため、個人情報
保護法制の遵守に十分な配慮が
必要
知的財産権等の取扱い
著作権等の知的財産権の
対象となっているケース
データの二次利用の許諾の考え
方等の知的財産権の具体の処
理の方法を明確にしておくことが
必要
○個人情報の取扱いに関する
ガイドラインの策定
・保護措置が必要な情報かどうかの判断指針
・法令等で閲覧が認められている情報の提供
の在り方
・個人情報保護のための加工措置や提供制限
措置
・有益な情報の提供を促進するための適切な
情報管理手法
○知的財産権等の取扱いに関
するガイドラインの策定
特
に
重
要
・元データの知的財産権等の処理や業務
受注者との契約関係等
・二次利用の許諾や制限、データ利用約款
等
国の安全に及ぼす影響
その公開が国の安全に
影響を及ぼすおそれが
あるケース
国の安全は、国民生活・国の発展と
繁栄に不可欠であり、地理空間情報
の流通の拡大により害されてはなら
ない
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○地理空間情報の活用推進との
バランスを取りつつ、国の安全
の観点から配慮すべき事項に
ついて適切な枠組みの構築を
図る
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.1 地理空間情報活用の際の問題点など

地方自治体が整備・提供する地理空間情報は、「著作権法」、「情報公開法」、「地方自治法」、「補助金適正
化法」、「測量法」、「個別法」などの法制度により、以下のように位置付けられる。
1.
創作性を有する地理空間情報は、著作物として位置付けられるため、適正な権利処理に基づく情報
流通を促進することが期待される。(著作権法)
2.
行政が保有する地理空間情報は、不特定多数の者に販売することを目的として発行されているものを
除き、行政文書として位置付けられるため、個人情報など不開示情報を除き、積極的な情報提供が期
待される。(情報公開法)
3.
行政が保有する地理空間情報の著作権は、公有財産として位置付けられるため、適正に管理・運用
すると共に、有効に利活用されることが期待される。(地方自治法)
4.
行政が補助金等を活用して特定目的のために整備した地理空間情報であっても、行政投資の多重投
資を回避する観点から、その目的を既に満たし支障を及ぼさない範囲で、適正かつ有効に利活用する
ことが期待される。(補助金適正化法)
5.
行政が保有する地理空間情報は、測量法や個別法によりその提供及び利用等について規定されてい
る場合があるが、二次利用を促進するという観点からは、当該法制度に則りつつ最大限利活用を推
進することが期待される。(測量法、個別法)
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*1:ベクター形式:個別の地物を個別の図形で表すファイル形式。
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
地理空間情報活用人材育成プログラム
2.1 地理空間情報活用の際の問題点など
②政府における検討体制(検討チーム)について
地理空間情報の活用推進に関する関係府省の連携・調整の体制
○地理空間情報活用推進会議
<体制>
議長 内閣官房副長官(政務及び事務)
議長代理 内閣官房副長官補
副議長 内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省の各担当局長級
構成員 その他の関係省庁の局長級
<検討事項>
①地理空間情報の活用の推進に共通する施策 ②地理情報システムに係る施策 ③衛星測位に係る施策
再 掲
○地理空間情報活用推進会議幹事会
議長 内閣官房内閣審議官
議長代理 内閣官房内閣参事官
副議長 内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、国土交通省の各担当課長級
構成員 その他関係省庁課長級
○衛星測位ワーキンググループ
○地理情報システムワーキンググループ
議長 内閣官房内閣参事官
議長代理 内閣官房内閣参事官(宇宙開発戦略本部事務局)
副議長 内閣府、総務省、外務省、文部科学省、
経済産業省、国土交通省の各担当課長級
構成員 その他関係省庁課長級
議長 内閣官房内閣参事官
議長代理 国土交通省国土計画局参事官
副議長 国土交通省大臣官房技術調査課長
国土交通省国土地理院企画部長
構成員 その他関係省庁課長級
○個人情報保護・知的財産に関する
検討チーム
議長 国土交通省国土計画局参事官
議長代理 国土交通省国土地理院企画部長
構成員 その他関係省庁課長級
調整
○国の安全に関する検討チーム
議長 内閣官房内閣参事官(安危)
構成員 その他関係省庁課長級
○基盤地図情報整備・更新に関する
検討チーム
議長 国土交通省国土地理院企画部長
構成員 その他関係省庁課長級
地理空間情報産学官連携協議会
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調整
民間
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.1 地理空間情報活用の際の問題点など
③ガイドラインの目的・位置付け
地理空間情報の活用に関しては、個人情報の取扱及び二次利用促進それぞれについて、政府でガイドラインを策
定(平成22年9月)。
■本ガイドラインの目的及び適用範囲
目的
適用範囲
地理空間情報の活用
における個人情報の
取扱いに関するガイ
ドライン
・国、地方公共団体等において、有益な地
・国、地方公共団体等が取り扱
う地理空間情報を対象とする。
理空間情報を活用していくため、個人情報
保護のための適切な措置をとり、情報を提
供する側も安心して、地理空間情報の提供、
利用ができるようにする。
地理空間情報の二次
利用促進に関するガ
イドライン
・知的財産権等の権利の侵害や、それを懸
念した地理空間情報活用の萎縮が生じな
いように、データの二次利用の許諾の考え
方等の知的財産権等の具体の処理の方法
を明確にし、より付加価値の高い地理空間
情報を作成し提供できるようにする。
・国、地方公共団体等が二次利
用を行う場合と、他者が二次
利用する地理空間情報を国、
地方公共団体等が提供する場
合を対象とする。
■本ガイドラインの位置付け
本ガイドラインは、法的拘束力を伴うものではなく、あくまで行政機関等が保有する
・地理空間情報の提供・流通を行う上で望ましいと考えられる個人情報の取扱いに関する標準的な考え方
・地理空間情報の二次利用を促進する上で望ましい知的財産権等の標準的な処理の考え方
を整理したもの
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.2 個人情報保護(基礎編)
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.2 個人情報保護(基礎編)
①個人情報保護法に関する基礎
◎一般法としての個人情報保護法
(個人情報の保護に関する法律)
個人情報保護法制の体系イメージ
↓
◎国の行政機関対象⇒行政機関個人情報保護法
◎独立行政法人等 ⇒独立行政法人等個人情報保護法
◎地方公共団体
⇒個人情報保護条例
なお、独立行政法人等個人情報保護法は、政府の一部を構成するとみられる法人を対象とし
ているため、同法の内容は、行政機関個人情報保護法に準じたものである。
【関連】情報公開法
○行政機関の保有する情報の公開に関する法律
○独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
→対象文書(行政文書・法人文書)の範囲
行政機関の職員・独立行政法人等の役職員が職務上作成し、又は取得し
た文書、図画及び電磁的記録であって、職員・役職員が組織的に用いるも
のとして、当該行政機関・独立行政法人等が保有しているもの。
事業分野ごとのガイドライン
※1
※2
※3
※4
個人情報の保護に関する法律
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律
地方公共団体において制定される個人情報保護条例
(出所)内閣府
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.2 個人情報保護(基礎編)
②個人情報の定義
他の情報と照合した場合の個人の特定容易性について、差異がある。
法律・条例
個人情報の定義
個人情報保護法
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、
生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情
報と容易に照合 することができ、それにより特定の個人を識別することができるこ
ととなるものを含む。)をいう。
行政機関個人情報保護法/
独立行政法人等個人情報
保護法
「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、
生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情
報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる
ものを含む。)をいう。
三重県個人情報保護条例
個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等
により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特
定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
西宮市個人情報保護条例
個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、
特定の個人が識別され得るものをいう。
市川市個人情報保護条例
個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は他の情報と照合すること
により識別され得るものであり、文書、図画、写真、フィルム、磁気テープ、磁気ディ
スクその他規則で定めるものに記録されるもの若しくはされたものをいう。
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
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2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
①地理空間情報における個人情報の考え方
地番や居住番号等の特定の位置参照情報を含む地理空間情報
⇒不動産登記情報や市販の住宅地図(誰でも閲覧可能)との照合により特定個人が識別可能
⇒GIS上で管理すれば、多くの情報と面的、ビジュアル的に照合が可能
他の情報と照合することによって特定の個人を識別することができる情報
は「個人情報」であり、上記の地理空間情報も原則個人情報である!
ただし、個人情報に該当しても、ただちに利用・提供が不可能となるわけではない。保有個人情報
の利用目的以外の利用・提供の検討が必要である。
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-1個人情報該当性の判断について(提供可否判断フロー(概論))
第Ⅰ段階
単体のみで
個人を識別できるか
識別
できる
Y
第Ⅱ段階
他の情報と重ね合わせ、照合させ
た場合に特定個人を識別できるか
N
第Ⅲ段階
利用及び提供の制限の
例外事項として提供が
できる情報か
Y
識別
できる
N
○提供
できる
Y
可能
△条件付提供可能
N
▲一部加工により提供可能、または不可
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-2個人情報該当性の判断について(提供可否判断フロー(詳細))
◇前提
・個人情報の有用性に配慮し
つつ、個人の権利利益を保
護する(個人情報保護法)
◇第1段階
単体データのみで判断
個人情報か
No
・行政の適正かつ円滑な運営
を図りつつ、個人の権利利
益を保護する(行政機関法)
◇第2段階
他の情報と重ね合わせ、
照合させた場合の判断
B 単体では個人
識別情報でない
データ
個人情報保護の
観点を踏まえて
No
C 他の情報と重ね合わ
せ・照合させても、特定個
人を識別できない情報
重ね合わせ、照合に
より特定個人を識別で
きるか
Yes
提供可能
Yes
D 他の情報と重ね合わせ、
照合させることにより、特
定個人を識別できる情報
A 単体で個人
情報
◇第3段階
保有個人情報の利用目的以外の利用・提供の判断
• 個人情報の利用目的
や利用方法の制約や、
安全管理措置等につ
いての条件の付与が
必要か
◇提供時の条件付与の判断
Yes
Yes
・他の法令に定めがあるか(行政機関法第8条1項)
提供時に条件は必要か
・利用目的以外の利用・提供制限の例外に該当す
るか (行政機関法第8条2項)
E 利用目的以外の利
用・提供が認められる
情報(条件付)
条件付き提供
可能
F 利用目的以外の利
用・提供が認められる
情報
提供可能
No
【保有個人情報の利用目的以外の利用・提供制限の例外】
行政機関法第8条第2項の各号に基づき判断する(以下、抜粋(例示))
◇技術的な措置等による提供
No
•本人の同意があるか
•同一実施機関内での事務の遂行等への利用に相当な理由があるか
•他行政機関での事務の遂行等への利用に相当な理由があるか
•統計の作成、学術研究を目的とするか
•本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるか
•その他、特別な理由があるか
※これらに該当する場合であっても、本人又は第三者の権利利益を不当に
侵害するおそれがあると認められるときは、保有個人情報を利用・提供して
はならない。
秘匿処理することで個人
識別できなくなるか
Yes
G 秘匿処理により提
供する情報
一部加工によ
り提供可能
H 秘匿処理が困難な
情報
提供不可
No
※行政機関個人情報保護法をモデルに基本的な考え方を提示したもの
※保有個人情報の利用目的内の利用及び提供については、本判断フローの対象外
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2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-3個人情報該当性/提供可否の判断について (地番情報の例)
地番等の特定の位置参照情報を含む地理空間情報について、答申による判断を踏ま
え、個人情報該当性及び提供可否の判断についての考え方を例示すると、
【第一段階の判断】
・単体データのみで個人は識別できない。
【第二段階の判断】
・誰でも閲覧が可能な不動産登記簿等の情報と照合することにより、特定の個人が識別され
る情報に該当する。
【第三段階の判断】
・保有する個人情報が利用目的以外の利用・提供するうえで、
①他の法令に定めがある(行政機関個人情報保護法第8条1項)、
または、
②利用目的以外の利用・提供制限の例外に該当(行政機関個人情報保護法第8条2項)
<YES>→ 提供時の条件付与判断
<NO> → 技術的な措置(秘匿処理)等による提供判断
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2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
参考
②-4個人情報該当性/提供可否の判断について (判例)
・情報公開法による判断を参考にすると、開示の可否判断に係る見解は分かれている。
・地方公共団体ごとに設置されている個人情報保護に係る諮問機関(情報公開・個人情報保護審査会等)の活用等が求められる。(ただし、
諮問機関の位置づけ・役割は団体によって異なるため留意が必要。)
※地番情報等に関する判例
○都市再生街区基本調査成果図における「個人の
財産」に係る判断(高松高裁 平成20年(行コ) 第
20号要旨)
(個人情報該当性について)
仮に筆界・地番・現況図記録部分のうち、地番及び現況図記録部
分を除いた後の情報についても、インターネット等で公開されている
座標値を有する航空写真等と容易に照合することができ、現況の
土地の占有状況と筆界との整合状況が判読できることから、個人
の財産に関する情報に該当する。
(公領域情報該当性)
基本調査成果図の公図部分は、公図上の特定の筆界点を街区点
に近づけるという補正が施されており、法令の規定により公にされ
ている公図と同一の情報ということはできない。また、基本調査成
果図には、座標値という新たな情報が付加されており、法務局で閲
覧できる公図とは内容が異なることからも公領域情報に該当しない。
(開示・不開示の利益にかかる比較考量論について)
基本調査成果の公開が現在及び将来の国民が安心して豊かな生
活を営むことにつながり、公共の福祉が増大すると主張するが、極
めてあいまいで漠然としたものであり、公にする利益は認められな
い。
→ よって不開示することが妥当
○地番図における「土地の区画、付番状況、土地の位置、形状及
び土地の利用区分」に係る判断 (大阪高裁 平成21年(行コ)
第65号要旨)
(法令・条例、法律上義務を有する国機関等指示により公にできない情報)
土地の区画、付番状況、位置、形状は、不動産登記によって公開が予定されている
から、地方税法22条でいう「秘密」に当たらないため、標記「秘密」にも当たらない。
また、土地の利用状況は通常外部から容易に認識できることから標記「秘密」にあ
たらない。
(通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる個人情報)
個々の土地の位置、形状に関する情報は、不動産登記により公開が予定されてい
るから標記の「個人情報」に当たらない。土地の位置・形状に関する情報と、公開又
は容易に入手できる情報により、当該土地に対する課税の有無や課税標準額等を
相当程度推測できるとしても、不動産を対象とする固定資産税の性質上やむを得な
い面があり、情報自体に他人に知られたくないと望むことが正当とはいえない。
(市、市と国等との間における調査、検討等の意思形成過程に関する情報)
本件情報を公開することにより「不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ」「特定
の者に不正に利益を与え、もしくは不利益を及ぼすおそれ」が生じると認める証拠
はない。
(市、国等が行う立入検査、試験、入札その他の事務事業に関する情報)
土地の位置、計上や利用状況などは現地の見分により、所有者等は不動産登記に
より、第三者が容易に知りうることであり、情報提供者が提供に応じない蓋然性が
高いとは認めがたいため、公開により事業執行に支障が生じる恐れが生じるといえ
ない。
→ よって開示することが妥当
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-5個人情報の目的外の利用・提供が認められるケースについて
○ 行政機関個人情報保護法第8条第2項において、個人情報の利用目的以外の利用・提供制限
の例外として、以下の規定に該当する場合が掲げられている。
(本人の同意等)
・ 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。
(行政機関等の内部又は相互間における利用・提供)
・ 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個
人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
・他の行政機関、独立行政法人等又は地方公共団体に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を
受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を
利用することについて相当な理由のあるとき。
(第三者を含む者への提供)
前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき(※1)、本人
以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき(※2)、その他保有個人情報を提供することについて特別の
理由のあるとき(※3)。
(※1)の例 : ・医師に対し、学会発表のため、診療諸記録ファイル等を提供する場合。
(※2)の例 : ・医療機関に対し、個人の病状を照会するため診療録を提供する場合。
(※3)の例 : ・国民年金基金連合会に対し、加入資格確認のため健保給付ファイルを提供する場合。
・公益法人に対し、国の委託事業の実施のため求職台帳を提供する場合。
・国の行政機関における幹部公務員の略歴(氏名・生年月日・出身地・学歴・職歴等)の一般への公表。
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-6個人情報該当性/提供可否の判断について (都市計画図等の例)
【第一段階及び第二段階の判断】
個人は識別できない。
提供可能
・都市計画基本図及び都市計画図において取得する事項(法令により規定)
に個人情報は含まれていない。
※法令に基づく範囲内で整備されている場合は取得する事項に個人情報は
含まれないが、希に、取得する事項を拡張している地方公共団体もある。
その場合は、個人情報が含まれていないか、確認する必要がある。
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2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-7 個人情報該当性/提供可否の判断について (住居表示台帳の例)
住居表示台帳等の特定の位置参照情報を含む地理空間情報について、個人情報該当性及び提供可否の判断につ
いての考え方を例示すると、
【第一段階の判断】
・住居表示法第9条に基づく基礎番号のみでは個人は識別できない。
※住居表示法第9条の規定により、関係者から請求があったときは、当該台帳又はその写しを閲覧に供さなければならない旨が規定されている。
【第二段階の判断】
・但し、市町村の運用により住居表示台帳に記載された住居番号及び旧新対照表情報に記載された新住所
表示欄の記載については、現地を見分したり市販の住宅地図等と照合することにより、当該建物の居住者等に
係る特定の個人を識別することができるものであることから、個人情報に該当する可能性が高いと考えられる。
・一方、住居表示法の第9条の規定により、住居番号については表示等を義務づけられていることから、法令の
規定により又は慣行として公にされている事実があると認められる。
■利用・提供に関する基本的な考え方
・行政機関個人情報保護法第8条第2項第2号又は第3号の各号に規定する「当該保有個人情報を利用する
ことについて相当の理由のあるとき」に係る例外規定に相当する個人情報保護条例上の規定に該当する場合
が多いと考えられる。そのため、適切な行政目的に即した者である限りにおいて、行政機関等における内部
利用及び行政機関等相互間の提供については特段の問題はないと考えられる。
・一方、行政機関等以外の者への提供については、統計の作成又は学術研究の目的に該当する利用限定の
場合一般に支障は無いが、それ以外の目的に利用する場合には、各地域における利用・提供に係る住民意識
と利用ニーズ等踏まえ、個人の権利利益の保護の要請と情報提供することによる利益とを比較考慮の上、
判断すべきである。
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-8 個人情報該当性/提供可否の判断について (統計情報の例)
住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数に関する個人情報該当性
/提供可否判断について、
【第一段階及び第二段階の判断】
個人は識別できない。
提供可能
・総務省自治行政局において公表している住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び
世帯数の集計結果については、その過程において統計処理され、個人が識別されない
形で使用されることが前提であることから、特定個人が識別されることはない。
※例外的に、市町村が独自に公表している集計結果のうち、集計後の合計数が極めて
少数になる場合において、個人の年齢が類推される等により個人の権利利益を
害する恐れがあると認められるときは、統計処理に係る技術的措置(統計情報の
グルーピング、トップコーディング)を講じることが適切である。
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2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-9 個人情報該当性/提供可否の判断について (空中写真の例)
【第一段階及び第二段階の判断】
個人は識別できない。
提供可能
・現在の技術水準では、地上画素寸法5cm程度の撮影が空中写真が撮影、
提供されるようになっているが、この解像度では人の顔の識別や自動車の
ナンバーの判読は依然困難。
・撮影時に記録される情報は、評定要素など個人の特定にはつながらない
情報のみであり、他の情報と照合しても個人を識別するには至らない。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.3 個人情報保護(地理空間情報編)
②-10 個人情報に係る技術的な秘匿措置等の例
秘匿措置等の例
措置の概要
識別情報の削除(マスキング)
・個人の識別に繋がる情報を削除した上で提供する。
識別情報のグルーピング
・個人の識別に繋がる可能性がある値をグループ分けし、階級区分として表記する。(例:34歳
の場合、31~35歳と表記)
識別情報のトップ・コーディング
・個人の識別に繋がりやすい情報(例:100歳以上の高齢者世帯等)を、特に大きな値や小さな
値を○○以上としてまとめて表記する。
地域単位による集計
・町丁目、メッシュ等による集計を施した情報を提供する。
・ただし、集計後の合計が少ないために、個人の特定に繋がりやすい場合も想定される。上記の
グルーピング及びトップ・コーディングの加工措置もあわせて必要。
デジタル画像の解像度低減
・個人の権利利益侵害に結びつかないように、空中写真等の解像度を低減して提供する。
・測量調査技術協会の検討によれば「屋上や庭先の人物が識別できないもの、自動車種が特定
できないもの、その他個人の財産や生活状況が類推できないもの」までに解像度を低減するべ
きとされている。
レイヤの分離
・地理空間情報をレイヤ別に保有し、個人に関する情報に該当すると思われる項目が記載され
たレイヤの表示や提供を制限。
縮尺の制限
・番地までの住所や建物が特定されないよう、そのポイントが表示される縮尺を制限する。(主に
プライバシー情報に適用される)
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.4 知的財産(基礎編)
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.4 知的財産(基礎編)
①知的財産権とは何か
知的財産権:知的な創作活動によって何かを創り出した人に付与される「他人に無断で利用
されない」といった権利のこと。「知的所有権」「無体財産権」もほぼ同義。
著作権
著作者の権利
⇒ 著作物を保護
著作隣接権
⇒ 実演等を保護
特許権(特許法)
知的財産権
産業財産権
その他
⇒ 発明を保護
実用新案権(実用新案法) ⇒ 考案を保護
意匠権(意匠法)
⇒ 物品のデザインを保護
商標権(商標法)
⇒ マーク等の営業標識を保護
回路配置利用権(半導体集積回路の回路配置に関する法律)⇒回路配置を保護
育成者権(種苗法)
⇒ 植物新品種を保護
営業秘密等(不当競争防止法) ⇒ 企業秘密や商品の表示等を保護
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.4 知的財産(基礎編)
②著作権制度の概要
著作権は、国際的なルール(ベルヌ条約)に従い、以下のような権利によって構成されている。
著作権の範囲と内容について定めたのが「著作権法」。
著作者の権利
(著作権)
著作権(広義)
著作者人格権
・・・ 公表権、氏名表示権、同一性保持権 など
著作権(財産権) ・・・ 複製権、公衆送信権、翻訳権、二次的著作物の創作権等
○著作物:小説、講演、音楽、美術、映画、コンピュータ・プログラム、データベースなど
○著作者:著作物を創作した者
○「著作者の権利」の付与:著作物を創作した時点で「自動的」に付与(登録不要=無
方式主義)
○財産権の各種権利の意味:他人が無断で「○○すること」を止めることができる
○著作者人格権の保護期間:著作者の生存中(ただし、死後も侵害行為は不可)
○著作権(財産権)の保護期間:創作のときから著作者の死後50年まで(例外:無名
・変名の著作物及び団体名義→公表後70年、映画著作物→公表後70年)
実演家等の
権利
実演家人格権
・・・ 氏名表示権、同一性保持権 など
著作隣接権(財産権) ・・・ 許諾権(録音権、放送権など)、報酬請求権など
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編)
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ①-1
地理空間情報に係る知的財産権(著作権)の考え方について(著作物性の判断)
著作権の形態
地理空間情報は、著作権法上、主に「地図又は図形の著作物」、「写真の著作物」、「編集著
作物」、「データベースの著作物」に該当する可能性
著作物として認められるには、
1)思想又は感情を、
2)創作的に表現し、
3)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する
という3つの要件を満たす必要がある。
全ての地理空間情報が著作物
に該当するわけではない
地理空間情報に係る著作物性の判断の視点
地図の著作物性
各種素材の取捨選択、配列及び表現方法を総合した創作性をもって著作物性が認められたケースがある。
台帳・統計の著作物性
構成する情報について、素材の選択や配列に創作性がある場合には、編集著作物として認められる可能性がある。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ①‐2
地理空間情報に係る知的財産権(著作権)の考え方について(著作物性の判断)
例)1/2,500都市計画基本図の著作物性
(「地図としての著作物」と「データベースとしての著作物(ベクタ形式の地図データファイル)に該当する可能性)
• 以下の理由から、著作物として認められる可能性は低い。
著作物の形態
地図としての
著作物性
データベース
としての著作
物性
著作物性が認め
られる可能性
著作物性の判断の視点
極めて低い
・大縮尺の地図は中縮尺以下の地図と比較して、建物等の地物を
省略することなく地図上で表現している。また、作業規定等で詳細
に作業内容が規定されており、素材としての取捨選択における創
意工夫が介在する余地は乏しい。
極めて低い
・JPGISに基づいた製品仕様書を各地方公共団体が定め、それに
従って作成されている。また、このデータ作成に係る製品仕様書
は、国が公表したガイダンスに基づいている。
・所定の仕様に忠実に従って作成されており、作業者の創作性を
発揮する余地がない。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ①‐3
地理空間情報に係る知的財産権(著作権)の考え方について(著作物性の判断)
例)道路台帳の著作物性
(「編集著作物としての著作物」と「データベースとしての著作物に該当する可能性)
• 以下の理由から、道路台帳(帳票及び付図)著作物として認められる可能性は低い。
著作物の形態
編集著作物
としての
著作物性
データベース
としての
著作物性
著作物性が認め
られる可能性
著作物性の判断の視点
極めて低い
・(帳票及び付図)記載される内容は事実としての情報であり、記載
される内容は事実としての情報であり、素材としての取捨選択に
おける創意工夫が介在する余地は乏しい。
極めて低い
・素材の選択制については、上記紙で管理されている場合と同様
に創作性の介在する余地は乏しい。
・情報分類体系については、ケースバイケース
(各地方公共団体に導入されている管理システムによっては創作性が認め
られる場合も考えられるが、データを一部抜粋して利用することについては、
権利の侵害に該当しない場合が多いと考えられる。)
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ② -1
地理空間情報に係る知的財産権(著作権)の考え方について(提供・流通を見据えた民間事業者等との契約のあり
方について(契約のバリエーションなど))
著作権は、
発注者又は受託者のいずれかが創作性を発揮したかによって
その帰属が異なる。
費用負担した者に著作権が帰属するわけではない。
契約等であらかじめその帰属を決定しておかないと提供・流通段階
でトラブルが発生するおそれ
提供・流通を見据えた受託者との契約のあり方(バリエーション)
①受託者(民間事業者等)から発注者に著作権を全部譲渡する場合
②著作権を発注者と受託者(民間事業者等)との共有にする場合
③著作権を受託者(民間事業者等)のみに帰属させるが、発注者における庁内利用は可能とする場合
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ② -2
地理空間情報に係る知的財産権(著作権)の考え方について(提供・流通を見据えた民間事業者等との契約のあり
方について(契約のバリエーションなど))
地理空間情報の円滑な提供・流通に
資する著作権の処理に係る契約が重要
○例1:著作権を発注者に譲渡するように定める契約文例
「・・・受託者は、本契約によって製作を行った○○地理空間情報について、一切の知的財産権、中間成果物及
びその他本成果について発生する全ての権利(著作権法第27条、同28条に定める権利を含む)を発注者に譲
渡するものとする。・・・また、発注者から使用許諾を得た者が本成果を利用する際に、受託者は著作者人格権を
行使しないものとする。」
○例2:著作権を発注者と受託者(民間事業者等)との共有にする契約文例
「・・・本契約によって製作を行った○○地理空間情報について、一切の知的財産権、中間成果物及びその他本
成果について発生する全ての権利(著作権法第27条、同28条に定める権利を含む)を、受託者と発注者で共有
するものとする。ただし、受託者は、発注者が下記に列挙するような利用をすることについて、あらかじめ無償か
つ無制限で包括的に同意するものとする。(記)・・・・」
○例3:著作権を受託者(民間事業者等)のみに帰属させるが、発注者における庁内利用は可能と
する契約文例
「・・・本契約によって製作を行った○○地理空間情報について、一切の知的財産権、中間成果物及びその他本
成果について発生する全ての権利(著作権法第27条、同28条に定める権利を含む)を、受託者が専有するもの
とする。ただし、受託者は、発注者が下記に列挙するような利用をすることについて、あらかじめ無償かつ無制限
で包括的に同意するものとする。(記)・・・・」
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ③-1
二次利用促進の観点からの地理空間情報の提供・流通段階における留意点
■著作権法上の留意点
(1)契約における定めのない地理空間情報の利用
誰が権利を保有するかを検討することが必要である。
(2)地理空間情報の二次利用の許諾を行う場合
行政機関等が著作権を単独で保有し、行政財産として管理されているときは、国有財産法及び地方自治法における処分等の制限
に係る規定に抵触する行為は禁止されていることに留意する必要がある。
(3)地理空間情報に著作物性が認められない場合
利用規約や委託契約によって利用範囲が制限されていない限り、発注者はすべての形態での提供・流通の管理が可能。
※いずれの場合でも、測量成果である地理空間情報を利用させる場合には、測量法による複製又は仕様の承認の手続きが必要となる。
■著作権等の権利の所在に関する留意点
地理空間情報の4つの整備形態毎に、想定される権利の所在と留意点は、以下に整理される。
①行政機関等が自ら地理空間情報を整備する場合
行政機関等が著作者人格権及び著作財産権を保有するため、自らが当該地理空間情報についての二次利用のあり方を判断し、
決定することが可能である。
②行政機関等が民間事業者等に外部委託して地理空間情報を整備する場合
1)行政機関等が著作権を有する形態
業務委託者から発注者に著作権等を全部譲渡する旨の契約を締結する又は受託者の創作性が認められない程度に詳細かつ
標準的な仕様を提示し、詳細な作業指示を行うことが必要。
2)民間事業者等が著作権を有する形態
行政機関等は自らの行政事務・事業の円滑な遂行に支障が無いよう、仕様書や契約書において特定の行政目的に係る利用が
可能となるよう約定することが必要。
③行政機関等が民間事業者等から地理空間情報を購入する場合
元となる地理空間情報の著作物性の有無の確認、また、著作物性を有する場合は著作権を有するものへの利用許諾を得る
必要がある。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.5 知的財産(地理空間情報編) ③-2
二次利用促進の観点からの地理空間情報の提供・流通段階における留意点(つづき)
■著作権等の権利の所在に関する留意点(つづき)
④行政機関等が民間事業者等と共同で整備する場合
当該情報は共同著作物となるため、基本的にその基本的人格権の行使については著作者全員の合意が必要であり、著作権法上
の権利の行使においては著作者全員の同意を得る必要がある。
■財産分類情報留意点
・著作権に係る金銭的価値が客観的に明白な場合
国有財産又は公有財産としての管理を行うことが妥当である。
・外部委託整備又は外部購入の場合
当該地理空間情報に係る著作物性が認められる可能性が低い場合でも、著作権が存するものとして権利処理を行い、行政上の
利用・提供に支障が生じないものとする方法が考えられる。
■提供・流通を促進する利用約款等のあり方
1)地理空間情報を「私的利用」のために複製・加工する場合
利用者が著作権者の許諾なく複製することができる。但し、加工に当たっては、同一性保持権との関係について留意が必要である。
2)地理空間情報の無加工のまま複製し配布する場合
①無償配布
行政機関等が提供している地理空間情報については、流通促進の観点から、出所の表示や地理空間情報の同一性が確保される
限り、利用約款等を付した上で、許諾することが望ましい。
②有償配布
行政機関等が保有する地理空間情報が既に無償でインターネットにより提供されている場合、その情報を無加工のまま複製し、
有償で配布する行為については、あらかじめ協議を求めることが望ましい。
3)地理空間情報を加工した上での配布
行政機関等が保有する地理空間情報を、個人や民間事業者等が加工した上で配布する行為は、有償又は無償に関わらず新たな
産業創出等の観点からは望ましいが、出所の表示や責任の所在等を記した仕様約款等の添付を条件に、許諾することが望ましい。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.6 今後の予定等
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
2.6 ガイドライン策定後のスケジュール
• 平成22年度
–
–
–
–
国、地方公共団体向けガイドライン策定(平成22年9月)
地方公共団体等への説明会や意見交換会の開催
地方公共団体、民間事業者等からの意見聴取
地方公共団体における実証的検討
• 平成23年度(今後)
さらに今後
– 普及・啓発、さらなる見直し
– 別途、民間事業者向け提供・流通のあり方の検討 等
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
最後に・・・
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
本テキスト、国の地理空間情報に関する施策等に関する問い合わせ
○本テキスト、国の地理空間情報に関する施策等に関する問い合わせは参事官室まで
国土交通省国土計画局参事官室
連絡先 TEL:03-5253-8353(直通)
国土計画局参事官室の業務
•
地理空間情報活用推進会議※の事務局として、特に地理情報システム(GIS)に関するとりまとめを担当。
•
地理空間情報の活用及びGIS利用の推進、国土情報の整備等に係る施策を展開。
※地理空間情報活用推進会議
・政府の地理空間情報に関する活用推進を図る組織であり、関係府省によって構成される。
・事務局:内閣官房、国土交通省国土計画局、国土地理院。
○地理空間情報に関する国の施策、国土計画局の取組等は以下のHPでご覧いただけます。
・GISポータルサイト(地理空間情報活用推進会議GISポータルサイト作業チーム)
http://www.gis.go.jp/
・地理空間情報活用推進会議ホームページ(内閣官房)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sokuitiri/index.html
・国土計画局GISホームページ
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/gis/index.html
・地理空間情報高度活用社会に関する参考ページ(政府広報番組へのリンク)
「G空間で安心・便利な社会に!〜地理空間情報の活用」 (http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2669.html )
「G空間社会ってナニ?〜地理空間情報の活用」 (http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2620.html)
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
3.まとめ・質疑応答
(このページから後ろは、講義用であり、教材には含みません)
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
ふり返り ①
再 掲
◎学習目標
①地理空間情報の提供・流通を促進する際に発
生しうる個人情報保護・知的財産権の権利処理
などの問題及びそれに対処するための基本的な
考え方について学ぶ。
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
ふり返り ②
地理空間情報を扱う際の問題について
再 掲
個人情報の保護
個人情報を含んでいる
ケース
地理空間情報には、個人情報を
含むものもあるため、個人情報
保護法制の遵守に十分な配慮が
必要
○個人情報の取扱いに関する
ガイドラインの策定
・保護措置が必要な情報かどうかの判断指針
・法令等で閲覧が認められている情報の提供
の在り方
・個人情報保護のための加工措置や提供制限
措置
・有益な情報の提供を促進するための適切な
情報管理手法
知的財産権等の取扱い
著作権等の知的財産権の
対象となっているケース
データの二次利用の許諾の考え
方等の知的財産権の具体の処
理の方法を明確にしておくことが
必要
○知的財産権等の取扱いに関
するガイドラインの策定
特
に
重
要
・元データの知的財産権等の処理や業務
受注者との契約関係等
・二次利用の許諾や制限、データ利用約款
等
国の安全に及ぼす影響
その公開が国の安全に
影響を及ぼすおそれが
あるケース
国の安全は、国民生活・国の発展と
繁栄に不可欠であり、地理空間情報
の流通の拡大により害されてはなら
ない
○地理空間情報の活用推進との
バランスを取りつつ、国の安全
の観点から配慮すべき事項に
ついて適切な枠組みの構築を
図る
•地理空間情報の活用における個人情報の取扱いに関するガイドライン( http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sokuitiri/220901/honbun01.pdf )
•地理空間情報の二次利用促進に関するガイドライン( http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sokuitiri/220901/honbun02.pdf )
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地理空間情報活用人材育成プログラム
地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
ふり返り ③
再 掲
個人情報保護法に関する基礎
個人情報保護法制の体系イメージ
◎一般法としての個人情報保護法
(個人情報の保護に関する法律)
◎国の行政機関対象⇒行政機関個人情報保護法
◎独立行政法人等 ⇒独立行政法人個人情報保護法
◎地方公共団体
⇒個人情報保護条例
※1 個人情報の保護に関する法律
※2 行政機関の保有する個人情報
の保護に関する法律
※3 独立行政法人等の保有する個
人情報の保護に関する法律
※4 地方公共団体において制定され
る個人情報保護条例
(出所)内閣府
【関連】情報公開法
○行政機関の保有する情報の公開に関する法律
○独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
事業分野ごとのガイドライン
地理空間情報における個人情報の考え方
◎地番や居住番号等の特定の位置参照情報を含む地理空間情報は、原則個人情報
(他の情報と照合することによって特定の個人を識別することができる情報は「個人情報」)
◎ただし、個人情報に該当しても、ただちに利用・提供が不可能となるわけではない。
保有個人情報の利用目的以外の利用・提供の検討が必要である。
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地理空間情報の提供・流通を図るための個人情報や二次利用に伴う著作権等の取扱い
地理空間情報活用人材育成プログラム
ふり返り ④
著作権制度の概要・著作権の種類
再 掲
著作権は、国際的なルール(ベルヌ条約)に従い、以下のような権利によって構成されている。
著作権の範囲と内容について定めたのが「著作権法」。
著作者の権利
(著作権)
著作者人格権
・・・ 著作者の人格的利益を保護する権利。
(公表権、氏名表示権、同一性保持権 など)
著作権(財産権)
・・・ 著作者の財産的利益を保護する権利。
(複製権、公衆送信権、翻訳権、二次的著作物の創作権など)
著作権(広義)
実演家人格権
実演家等の
権利
・・・ 氏名表示権、同一性保持権 など
著作隣接権(財産権) ・・・ 許諾権(録音権、放送権など)、報酬請求権など
地理空間情報に係る著作物性の判断の視点
(全てが著作物に該当するわけではない)
◎地図の著作物性・・・
各種素材の取捨選択、配列及び表現方法を総合したところに、地図の著作物性を認めることができる。
◎台帳・統計の著作物性・・・
構成する情報について、素材の選択や配列に創作性がある場合には、編集著作物として認められる可能性がある。
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