2・3 サービス提供の基本姿勢 社会福祉法人そうそうの杜 NPO法人地域自立支援推進協議会JOTO (大阪市城東区地域自立支援協議会) 荒川 輝男 個人と支援者がどのように向き合っていくのかという 目的で知的障害のある人の自己決定を中心に論じ る。 (1)エンパワメントの視点から • ケース事例① *Cさん●●の箱折を行う。「前はできへんかったけどできるよ うになった」嬉しそうに話されている。午後の休憩時間に当番の Aさんが、Cさんに「2階のBさんにコーヒーをお願いしていい」と 言われたが「なんでうちがやらなあかんねんの?」と断られる。 スタッフが代わりに運び、休憩時間にCさんに「Aさんは階段を 上がるのがしんどいのは知っているでしょ?みんなで助け合わ なアカンてずっと言っているのにどうして気持ちよく手伝えな かったの?」と尋ねると「ごめんな」とのこと。「今度からみんな でちゃんと助け合いましょう」と伝えると「うちもやるわ」と反省し ていた。 ケース事例② *Aさん●●の箱折を行う。黙々と取り組まれている。当番も しっかりと責任を持って行われている。 「今度の歯医者は金曜日の3時半からなんですけど・・・。」と 相談されるため「3時の休憩の後に行きましょう」と伝えると「そ うします」返事をされた。 ケース事例③ *社会福祉法人の経営する救護施設に就職している45歳の男性 仕事内容…厨房補助 健康面…糖尿病 定期的に通院 血糖値が高くなることがあり、HbA1cの 値が変動する。 単身…ヘルパーの家事援助 夕食は職場の好意で食べてから帰る。 栄養管理…職場の栄養士と支援者と相談の上配慮してもらっている。 アルコールはビールが大好き 職場の同僚の方から「栄養士には内緒で時々職場の同僚と飲みに行っても いいでしょうか」と相談を持ちかけられた。 ↓ 就労支援担当と地域生活支援担当は相談されて悩んでいる。 ↓ 職場を訪問し、栄養士に話をして、同僚の人にも健康状態を説明してそれか ら考えるとのこと…支援者の対応 ◎エンパワメント論から 一般的には、個人や集団が自らの生活への統御感を 獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与える ようになること「身体障害者ケアガイドライン」 厚生労働省 (2003年) • 社会的に不利な状況におかれた人々の自己実現を 目指しており(中略)、長所、力、強さに着目して援助 すること。サービス利用者が自分の能力や長所に気 付き、自分に自信が持てるようになり、ニーズを満た すために主体的に取り組めるようになることを目指 す。 ◎本人の「ことば」から どれだけ本人の思いが発せられているか? ↓ ~したい ↓ 本当の思いなの? ◎知的障害をどう理解するか? 難しい定義は別にして (2)ストレングスケアマネジメント 参考 ◎筑波大学院大学 小澤温教授 ◎ストレングスモデル解説『相談支援』所沢しあわせの里 ホームページから ①ストレングスの視点の重要性 従来のケース会議や支援計画でイメージされてきたこと・・・ 課題や問題を解決すべく頭をひねる。 ↓ 結果、難しい課題に対して本来の意味での支援計画ではな く、何となく短期・中期・長期目標を設定して終わり、また在宅の 場合は、サービス利用調整に終始しているのではないだろう か。 例…就労移行支援の利用の場合は、長期目標のほとんどが就職となるのではないだろうか ②関係性の構築 その人のことを良く知る⇔関係性の構築・・・アセスメント 行動や言葉にはその人なりの意味づけがある。 例 会社の同僚と飲みに行く ●糖尿病があるから、本人は飲みだしたら制限できないから 止めさせなければならない ・・・客体化 ●職場の人と交流したいのだろう。 時には、ワイワイと飲みたいのかな。 社会人だから遊びも必要だろう。 ・・・共有化 情報の共有化…支援者間で生活者としての位置付けの中で意味づけを考 えること。 ウイークネス=ストレングス 課題や問題に対して視点を変えてみれば新たな側面が見出 されるし、環境のストレングスや個人のストレングスに着目して いくことで、弱い部分(問題や課題)を強みに代えていくことがで きる。 本人の感じ方、見方⇒大事 ・マイナスの評価 ⇒ 働きたい…無理と思うか 働きたい…意欲があると思うか 社会的な視点必要 ●グループスーパービジョン (ケース会議) 1.担当者やサビ管が一人のケースを見ることに限界がある。 2.関係性の問題や担当者(サビ管)の個人の経験や知識では 利用者を支援していくには必要な様々な視点をカバーしにくい。 3.一定の期間の支援が継続している場合には有効である。 4.直接的な担当者以外の参加も含め、直接利用者のことを知 らなくても素朴な疑問やアイデアを出し合うことで様々な観点か ら利用者のイメージを共有し、話し合うことが重要。 ストレングスモデル解説『相談支援』所沢しあわせの里 ホームページから ① ストレングスとは? ストレングス(Strength)とは、英語で「強さ・力」の意味です。 ストレングス・モデルは、その人が、元来持っている「強さ・力」に着目して、それを引き出 し、活用していくケース・マネジメントの理論・実践の体系です。 チャールズ・ラップ/リチャード・ゴスチャ著『ストレングスモデル』によると、ストレングスに は、4つの種類があります。 個人の属性(性質・性格) その人がどういう人かを表すものです。「ユーモアがある」「人なつこい」「努力家である」 などです。 才能・技能 その人が持っている才能や技能のことです。「生け花を教えることができる」「ホームペー ジを作ることができる」「ギターを弾ける」などです。 関心・願望 その人が関心を持っているもの、強く願望しているもののことです。ストレングス・モデル では、もっとも重要視されています。「海外旅行へ行きたい」「料理を教えたい」「漫画家に なりたい」などです。 環境のストレングス その人の持っている資産、人間関係、近隣の地域資源など、その人の外にあって活用 することのできるものが環境のストレングスです。「お金には困っていない」「親戚のおじさ んが近所で見守ってくれる」「商店街が近くにある」などです。 ストレングスモデル解説『相談支援』所沢しあわせの里 ホームページから ② リカバリーの過程 ストレングス・モデルのケース・マネジメントでは、その人のリカバリー の過程に着目してアセスメントを行い、支援を行なっていきます。スト レングス・アセスメントでは、その人の過去の情報が重要視され、スト レングス・アセスメント・シートにも、そのための欄が設けられていま す。 リカバリーの過程を理解する リカバリーが、その人の人生を通してどのように展開していくかを理 解することはとても重要です。下の図において、波線で表されている のは、ある人の人生だと思ってください。山のように高くなっている部 分は、人生の好調期で、その人は、希望に満ち、自分の人生をコント ロールできていると感じることができます。逆に、谷のように低くなっ ている部分は、苦難の時期で、その人は人生に打ちのめされたよう に感じ、また希望を失います。 ストレングスモデル解説『相談支援』所沢しあわせの里 ホームページから ③ ストレングス・アセスメントの目的 その人(=利用者・クライエント)と協働するための基礎として、その人および環境のストレングスについて情報を 収集すること ストレングス・アセスメントをどのように行うか 情報は、会話をしながら集めます(面接や調査を通してではありません)。 アセスメントは、その人のストレングスを、ふだんの生活環境の中で探し出すために、地域のさまざまな場所・場面 で、継続的に行なっていきます。 情報は、具体的で、詳細で、(それを読めば、誰のものか分かるように)個性的なものでなければなりません。ま た、その人自身の言葉で書き記すべきです。 支援者(原文:ケースマネージャー)は、(7つの)それぞれの生活領域について、その人の技能、才能、実績、で きること(能力)、その人が分かっていること、気に掛けていること、情熱を抱いているものを、見いだし、とり上げ て、書き記します。 その人の関心、欲求、希望、願望を、それぞれの生活領域に書き記します(現状維持の希望でもかまいませ ん)。 地域資源を活用しようとした(しようとする)過去および現在の試みは、それぞれの生活領域において、その人なり に考えてうまくやった(やろうとする)対処方法として書き記すべきであり、成功体験の欠如とか、失敗として見なす べきではありません。 ストレングス・アセスメントのプロセスが、その人自身のものであることをより実感してもらうために、さまざまな工 夫をすべきです(たとえば、その人自身に記入してもらう、その人にコピーを渡す、情報をどの項目に書き記すべ きかをその人に聞いてみる、など)。 その人にとって意味のある文化的、民族的、人種的な情報があれば書き記すべきです。 支援者は、より強固な個別計画を作り上げるために、グループ・スーパービジョンでストレングス・アセスメントを 使用します。 ストレングスモデル解説『相談支援』所沢しあわせの里 ホームページから ④ グループ・スーパービジョンとは アメリカのカンサス州では、精神障害者へのケースマネジメント実践 において、支援機関内でグループ・スーパービジョンという形での スーパービジョンが行なわれています。 基本的な形として、4名のケースマネージャーと1名のスーパーバイ ザー(経験を積んだケースマネージャー)によってチームが形成され ます。理想的には、週1回のミーティング(グループ・スーパービジョ ン)で、1回2時間、2名~4名のケースが扱われるとされています。 グループ・スーパービジョンの機能としては、(ⅰ)ケース・マネー ジャー同士の肯定と支持、(ⅱ)利用者の支援に関するアイデアを生 み出すこと、(ⅲ)ケースマネージャー同士の学びの機会になること、 の3つが挙げられています。 (3)個別支援計画作成について ◎重要な視点 利用者の主体的な参加(利用者と支援者の協働) 利用者の役割の重視 様々な変化の可能性 ◎アセスメントの様式 ・利用者としっかりと向き合うこと ・利用者の全体像を捉えること ・支援過程全体を通じたアセスメントを反映すること ・支援計画に結びつくものであること ・記入する情報の内容や量が実用可能であること ・利用者・関係者から聞き取りや日々の関わり通して得た情報を大事に記録 しておく。 ●これをアセスメント用紙に随時付加していく ●変化が大きくなれば支援計画の作り直し(計画変更) ●決められたモニタリングの期間だけでなく、随時変更をしていくことが大事 アセスメントの用紙を埋めることが目的ではなく利用者を良く知ろうとするためのツールとして 位置付ける。 ◎「わたし」の意志=自己決定 「わたし」を取り巻く他者たちの声に満たされた多声的な構造を 有することでより豊かになるのではないだろうか。 「わたし」の自己決定に「あなた」が必要であること 関係性について 「あなた」 = ↓ 「世界」 「わたし」 の成立 「あなた」とは、一般的には、母親の存在が重要である。 「わたし」と「あなた」の関係のなかから見えてくる思い 利用者が思いを創出・確認できるようになるプロセス(動機付 け)を支援することを重視している。 その際、そもそも自己決定とは単一の人間によってなされるも のではなく、「わたし」と「あなた」という関係のなかで行われるも のであると考える。 すなわち、支援者である「あなた」が「わたし」の自己決定に関 わることを恐れず、「あなた」の考え方や価値観、思いを素直に 見つめ直し、「わたし」の思いと向かい合わせることでしか、本 当の「わたし」の思いは獲得できない ◎求められる責任 相談支援の過程に「わたし」が主体的に関われるプロセスが必 要。 ケアマネジメントは誰のものなのか ーー「わたし」のケアマネジメントであるーー 利用者の主体的な参画により権利問題の面、利用者に生の 主体は自分であると言う事を通じてエンパワメントが図られる。 (4)サービス管理責任者の役割 1.内部 支援計画の作成 スタッフへのSV機能 2.外部へ 利用者の世界を拡げる為の地域との関わり ①エンパワメントと権利擁護の視点(日常の支援の中に折り込みなが ら支援現場を創っていく。 ②その過程で本人中心の計画につながっているかを常に検証し続け ること。 ③利用者個人や家族や事業所・施設の課題を地域で共有化する努 力をし、本当の意味での外部との連携ネットワークを確立する。
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