稲葉ゼミ第二回書評 「データブック 食料」西川 潤

稲葉ゼミ第二回書評
「データブック 食料」西川 潤
岩波ブックレット
(2008年8月6日発行)
06A2050H 木内健司
概要
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食料価格の高騰、食の安全意識の高まり、
深刻化する飢餓―世界の、日本の「食」を
めぐる環境が大きく変わりつつある。その
要因は何なのか?これからどうなっていく
のか?このことを最新のデータをもとに著
者が解説する。
稀少化する食料、資源
稀少化→食料価格の高騰
原因(需要面)とは?
①穀物輸入量の増加
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・人口増加
・アジア等の高成長国での食肉需要の増加→飼料
用穀物の輸入増加
(例)東アジアの年間食肉消費量(1人あたり)
1984年―約20キロ→1997年―約40キロ
というように2倍に!
②アメリカでのバイオ燃料の増加
食料価格高騰の原因(供給面)とは?
①世界的に農地が工業用地、道路等に転用されて
いった
②気候変動、地球温暖化により旱ばつ、熱波や虫害
といった問題に農業がさらされ易くなったこと
③農地の土壌劣化、水利用の可能性が低下
↑
これらすべての要因により、供給余力が低下傾向にあ
ることも、価格上昇を下支えする原因となっている。
日本の農業
1、経済復興期(1946~54年)
食料増産が至上の課題。
水稲の生産量は1945年には583万トンだったが、国の手厚い保護
によって55年には1200万トンに→工業化の前提としての食料自給
を成し遂げる
2、工業化と先進国へのキャッチアップ(1955~94年)
農業基本法(1961年)の制定
・米価安定、農業支援政策を中心に農工間の所得均衡を維持する
・農業の「選択的」拡大を進めて、特定作物における生産性を向上
させ、「自立農家」を育成→農業構造の近代化
3、ポスト工業化と自由化(1995~2006年)
・諸外国から農産物市場開放、自由化を迫られる。
・保護農政の象徴であった食糧管理法は1995年に廃止、代わりに食糧
法が定められる→米の取引が政府後見の下で自由化
・1999年食料、農業、農村基本法を具体化→2005年食料、農業、農村
基本計画
この計画の目標は、
(1)食料の安定供給をはかり、自給率を現在の40%(熱量ベース)から
2015年に45%まで高める。
(2)農業の多面的な機能の発揮
(3)農業の担い手を育成し、自然環境機能を発展させ、持続可能な農
業の実現
(4)農村コミュニティの全国的発展
しかし、現実の政策はタテ割りでバラバラに進められ、思ったようには進
んでいない。
4、戦後50年の日本農業の変化
・1960年から2006年にかけて、農家人口率は39%から6%へ
・専業農家211万戸→44万戸 兼業農家394万戸→144万戸
・耕地が休耕や放棄で完全に利用されなくなった。
5、最近10年間の農村の2つの変化
①農村の高齢化が進行し、農業の担い手の問題がクローズアップ
2005年の基幹的農業従事者の約6割が高齢者(65歳以上)
農業、農村の後継者、担い手をどう育成するか?
(著者が考える是正策)
→若者、女性、外国人は「資産がない」という共通点を持つため、農村へ
の受け入れが難しいが、人材こそが資産であるという視点を持ち、受け
入れていく。
②都市と農村の所得格差拡大
2005年の農村対都市の所得は、1:1.64
(著者が考える是正策)
・農畜水産物の高付加価値化、輸出化を進める
・耕作放棄地をうまく利用
まとめ
著者は最後に、「世界でも、そして日本でも、農業、食料に
おける根本問題は、けっして価格上昇の問題ではない。
食料不足の問題でもない。これらは、問題の結果として生じ
た現象にならない。根本問題は、農・蓄・水産業が営利性、
効率性の下に持続可能性を失っているという問題なので
ある。」としている。
本書に対する私見
・ページ数が少ないので抵抗なく読める。
・2008年8月に発行された本であるので、新しいデータを
見ることができ、食料についての新しい情報を知ることが
できる。
・問題点とそれに対する著者の考えが述べられているので、
参考にすることができ、自分もその問題について考えさ
せられる。
・食料問題というのは、さまざまな原因が結びついている問
題だと改めて感じた。