甲賀地域障害児・者サービス調整会議 「特別支援教育部会」 2013年11月26日(火) 発達障害者のある方の支援 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 滋賀障害者職業センター 糸 原 宏 明 障害者職業センターにおける 発達障害者へのサービス、支援状況について ご紹介させて頂きます *障害者に対して ・職業相談、職業評価 ・職業準備支援 ・ジョブコーチ支援 *事業主に対して ・障害者の雇用管理に関する助言・援助 ・ジョブコーチ支援 ・職場復帰支援(リワーク支援) 平成24年度滋賀障害者職業センター 新規取扱状況 ※新規利用者256人の内訳 難病者 その他 高次脳 9% 1% 3% 発達障害 身体障害 6% 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳 知的障害 47人、18% 46人、1 8% 精神障害 114人、44% 平成24年度 職業準備支援 障害別利用者の割合 ※支援開始者41人の内訳 高次脳8% 発達障害 21人 51% 知的 4人・9% 精神 11人・27% 職業評価の視点 ~本人の課題を見極め、 対処方法を検討する~ ◆指導の課題 まだ達成していないが、指導により達成が見込 まれる課題。 ◆配慮の課題 まだ達成しておらず、今後も達成するのは難し いと思われる課題(達成するとしても、それには 長い時間がかかると予測される課題)。 環境の整備や人的支援 職業評価 生活歴や職業経験の聞き取り、作業検査や模擬的就労 場面(実際の職場に近い環境での作業)の実施等を通 じ、ご本人のセールスポイントや、負担になりやすいこと などを整理し、適応しやすい職場環境などを知り、就職に 向けた今後の進め方について考えていくことを目的にし ています。 *就業支援の方針 本人を変える ⇒職業準備支援 環境を変える ⇒ジョブコーチ支援 ※就労の可否判定や職種を見極めるものではありませ ん。今後の就労の進め方を検討するためのものです。 個人特性の評価 健康状態 体力 身体機能 など 性格 知的能力 学力 など 身体的側面 金銭管理 移動能力 社会生活 など 精神的側面 社会的側面 職業的側面 指示理解 作業能力 労働意欲 職業興味 など 職業環境の評価・地域や雇用環境の評価 評価における4つの側面 ①身体的側面 身長、体重、握力、荷物の運搬、健康状態 など ②精神的側面 学力(漢字、計算)、知能検査(WAIS-R)、東大式 エゴグラム、POMS、内田クレペリン精神検査 など ③社会的側面 社会生活能力調査票 など ④職業的側面 厚生労働省編一般職業適性検査(紙筆、器具)、 ワークサンプル、職業レディネス・テスト、職業ストレ ス検査 など 発達障害の方の評価のポイント ・障害の受容・自己理解 客観的に自分を見るのが苦手、自己肯定感の低さ ・考え方、行動、 ・コミュニケーションの傾向 受け取り方が特徴的 ・職業観 強いこだわり 作業面での特徴も評 価しますが、ご本人の ・ストレスの処理の仕方 特徴的な考え方など 別の視点で考える難しさ、不安感 全体像を把握します。 ・作業上のつまずきやすさ 特性上のうまくいかなさ 職業準備支援 利用者(発達障害者)の傾向 ①職歴がほとんどない。 (あるいは、ごく短期の就労で離職。) →課題意識が薄い場合も多い。 ②職歴あり。職場で不適応。 →「どうしてだろう?」と考え、「障害かも・・・」と捉えはじめて相談 支援機関等の利用開始。 →うつ病などを発症し、受診の際、「発達障害」と診断、告知され る。 10 ◆ 職業準備支援 ◆ ・いろいろな作業場面の体験を通して職業適性を確かめます。 ・ご自身の対応スキルUPを図ります。 (職場で必要なコミュニケーションやストレス対処など) ・特性の自己理解をサポートします。 ・支援を受けながら作業することを体験します。 *受講期間:2~12週間程度 *時間:月~金 9:15~15:45 *個別カリキュラムによる支援 受講者の特性に応じた カリキュラムを作成 一人ひとりの課題等に応じた支援内容や、支援期間を設定します。 (費用は無料。ただし、交通費、昼食代等は自己負担) 11 発達障害者就労カリキュラム 12 ●発達障害者就労支援カリキュラム 【スキル付与支援と自閉症スペクトラムの障害特性との関連】 職場対人技能 コミュニケーション 職場でのコミュニケーションの基礎的スキル 社会性 対人行動、身だしなみ等基礎的スキル 想像力 不安や混乱となりうる事項への対処スキ ル 問題解決技能 リラクゼーション技能 マニュアル作成技能 ナ ビ ゲ I シ ョ ン ブ ッ ク 作 成 13 Aさんの事例 ~職業センターでの取り組みを通して~ A X年 Aさんの支援経過 夏 高校3年生 (学校の先生の勧めで医療機関受診⇒アスペルガー) X年+2年 3月 介護関係の専門学校を卒業(試用期間中に解雇) X年+2年 5月 障害者職業センター利用(職業評価) X年+2年 7月 ケース会議 X年+2年 7月 ↓ 職業準備支援(12週間) X年+2年10月 X年+2年10月~ 障害者雇用・生活支援センター、障害者職業センター でフォローアップ中 職業センターでの相談(職業評価)の中で・・・ A 自分に向いている仕事をさがしたい <ケース会議> ご本人、母、ハローワーク、雇用・生活支援センター、職業センター 職業評価の状況から見えた課題 *実習時にうまく質問出来なかった経験から、コミュニケーションにおける課 題意識はある。障害についてはよくわからない様子(性格からきているもの でずっと前からのもの)。 ⇒本人が気付いている課題だけではなく、障害の自己理解が課題 職業準備支援を提案 「障害の理解を深めながら自分に合った仕事をみつけてい こう」 ●職業準備支援の中で・・・① 作業支援+個別相談 できることは 何だろう・・・ *模擬的就労場面で体験した作業 部品組立、検査、ピッキング、事務課題、袋詰め A A わかったこと ・定型、反復作業は得意だと思う。忘れっぽいけどメモを 見返すと確実にできた。 ・慌てずに点検・確認すればミスは減ることがわかった。 ●職業準備支援の中で・・・② 職場対人技能(SST) こんなふうに確認 すればいいんだ! *SSTでの気付き ・他の人のロールプレイを見て、「自分もできるように なりたいと思った」。 ・「たとえ怒られることがあっても確認することは重要 だと思った」 A ●職業準備支援の中で・・・③ 講座+個別相談 このようなサポートがあるんだな A *講座『ジョブコーチ支援について』で気付いたこと ・ジョブコーチ支援があることがわかった。相談しながらだと仕 事の質が上がると思った。できれば活用したい。 ●職業準備支援の中で・・・④ *職場体験実習(食堂の食器洗浄) 職場体験実習 ・聞き方、質問の仕方がわかった(「これも洗うんですか」と意 欲的)。 ・こうした方が良いよと言われ、見本を見せてもらえて直すこ とができた。 A ●Aさんのまとめ~体験からの気づきをふまえて~ ナビゲーションブックの作成 僕はこうです! A ●職業センターの支援を振り返って ~次の一歩に踏み出せたのは?~ A ニーズ: 就職したい! でも、何ができるのか、わからない・・・ 職業準備支援プログラムでの体験、相談を通して A 職場のマナーを知ることが出来て役だった。 面接のやり方や自分の長所を見つけられて良かった。 働くための土台をつくる・・・ ・自分のことを良く知る →できることがわかる。 ・どんな対処方法があるのか知る→自分に合いそうなもの を選んでやってみたら、前よりもできた。 ・何か困ったことがあっても、こうすれば大丈夫・・・ (例えば、誰かと相談する。) 自分がわかってきた、 自分にできそう、やってみよう・・・ (自己認知が進む → 自己効力感) どのような経験を積むか? それをどのようにサポートするか?
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