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科学者が見つけた
「人を惹きつける」方程式
第8章 「人生」の名文方程式
3041-6005
上出 桂子
「人生」の名文方程式の技巧
●塩野七生
①文頭ひらがな
②否定=漢語、肯定=やまと言葉
●相田みつを ①語尾親近感
②断定納得
●土門拳
①瞬間活写
②人生活写
ここで言いたい「頭の良い男」とは、なにごとも自らの頭
で考え、それにもとづいて判断をくだし、ために偏見にと
らわれず、なにかの主義主張にこり固まった人々に比
べて柔軟性に富み、それでいて鋭く深い洞察力を持つ
男、ということになる。
塩野七生『男たちへ』文春文庫 14ページ
文章の最初が、すべてひらがなではじまっている。
→各文が読点で区切られていても、話が途切れる
感じがせず、流れるような読みやすい文体
なんのことはない、よく言われる自分自身の「哲学」を
持っている人ということだが、哲学と言ったってなにも
むずかしい学問を指すわけではなく、ものごとに対処
する「姿勢(スタイル)」を持っているかいないかの問題
なのだ。だから、年齢にも関係なく、社会的地位や教
育の高低にも関係なく、持つ人と持たない人のちがい
しか存在しない。
塩野七生、同上、14ページ
漢語とやまと言葉に書き分けることで表現にコントラス
トを出す。
→主張したい内容を際立たせる
トマトにねえ いくら肥料やったってさ メロンにはならねんだなあ
トマトとね メロンをね いくら比べたって しょうがねんだなあ
トマトより メロンのほうが高級だ なんて思っているのは 人間だけだね
それもね 欲の深い人間だけだな
トマトもね メロンもね 当事者同士は 比べも競争もしてねんだな
トマトはトマトのいのちを 精一杯生きているだけ
メロンはメロンのいのちを いのちいっぱいに 生きているだけ
相田みつを『にんげんだもの』文化出版局 15ページ
「・・・にねえ ・・・やったってさ ・・・ならねんだなあ」と語尾をのば
して話しかけるような口調
→読み手の心の壁を取り払い、読者をその気にさせる
やさしい言葉で「・・・だけ」と断定をする
→読者を納得させ、思考を詩人にゆだねる
宗匠は破片を頭から浴びたが、茶筅を拭う姿勢のまま坐ってい
られた。顔色一つ変えず、そんな突発事故など、どこにもない
みたいだった。僕は、「ウム、これはホンモノだ」と感動した。
宗匠は静かに破片を払い落としながら「まだ写真は終わらない
のでしょう?」と僕に聞かれた。「ハア、まだです」と答えると、騒
ぐ人々を皆座敷から退かせた。そして座敷中の破片を丁寧に
掃き取らせた。
土門拳『風貌』講談社文庫 80ページ
「茶筅を拭う姿勢のまま」と流れる動作の1コマを、一文に収める
→文章によってこの瞬間を固定する
「突発事故」で「騒ぐ人々」に対し、宗匠は静かに「退かせた」
→周囲の人と宗匠を、対照的に浮かび上がらせている
まとめ
• 「人生」の名文方程式では、文頭や文末と
いった、他の方程式では使われていない部分
に重点を置いているものが多いと感じた。
• 「人生」を取り扱う文章で大切なことは、読者
を文章に引き込ませることだと感じた。
• 難解な内容の文章も、すごく読みやすく感じ
た。