労働安全衛生の基礎

労働安全衛生の歴史 ①
紀元前1550年
エジプトのパピルスに外傷、災害傷48例が記載されている
(強制労働の奴隷がピラミット建設)
紀元前370年頃
鉛中毒による腹痛(鉛疝痛)が記載されている
(古代の労働は、奴隷が主体。生命、健康は問題視しない)
752年(天平勝宝4年)
奈良東大寺大仏建立時に水銀中毒が発生された
1524年
フランスで銀、水銀、鉛などの有害物質の防ぎ方に関する
パンフが出版(世界初の職業病に関する最古の文書)
1556年
採鉱技術書に、粉塵問題が記載される
1637年
中国(明)の「天工開物」の中で
砒素中毒、酸欠について記載
1673年
佐渡の医師が銀山の「煙毒」に対し紫金丹を投与
労働安全衛生の歴史 ②
1700年
ラマツィーニ(伊)の産業医が「職人の病気」を出版
(作業と作業環境の病因について解説)
1713年
改訂版を出版 53職業の病気、症状、治療法、予防法を
解説(水銀中毒、鉛中毒、ガンなど)
1788年
英国・改良煙突清掃取締法により、8歳未満の就労禁止
1833年
英国・工場法制定により、工場監督官が任命
1869年
独国・職業法制定・労働衛生行政が拡大
1874年
米国・婦人の労働時間を1日/10時間、週/160時間規制
1842年(天保13)
生野銀山で煙毒予防のため「梅干」が支給される
(当時の坑内労働者30歳ぐらいで死亡したといわれる)
労働安全衛生の歴史 ③
1875年(明治8)
仏国の医師・マイエは富岡製糸所から生野鉱山に
フランス人の診断に当たった(日本初の産業医)
1879年(明治12)
コレラ大流行(患者16万人、死亡10万人)
1888年(明治21)
後藤新平「私欲業衛生法」を雑誌に連載
1911年(明治44)
工場法が議会通過したが、不況により施行延期
1916年(大正5)
工場法が施行
1931年(昭和6)
労働者災害扶助法、同責任保険法公布
1947年(昭和22)
労働省設置法により「労働省」が設置
労働基準法、労働者災害補償保険法などが施行
1948年
世界保険機構(WHO)発足
1972年(昭和47)
労働安全衛生法、同施行規則等
公布
労働安全衛生法及び関連政省令
日本国憲法第27条
すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。賃金、就業時間、休憩その他勤労条
件に関する基準は、法律で定める。児童はこれを酷使してはならない。
・労働基準法施行規則
・年少者労働基準規則
・女性労働基準規則
・事業付属寄宿舎規定
・建設業付属寄宿舎規則
労働基準法(労基法)
男女雇用機会均等法
労働安全衛生法
労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平11告53)
労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平11告53)
事業場における労働者の心の健康づくりのための指針(平12.8)
労働安全衛生規則(昭47.政令318)
労働安全衛生施行令 他 14の規則等
労働者災害保険法---労働者災害補償保険法施行令・施行規則
労働災害防止団体法-----労働者災害防止団体法施行規則
雇用保険法-----雇用保険法施行令------雇用保険法施行規則
労働者派遣法
安全衛生委員会の設置
安全委員会
衛生委員会
委員の構成
①総括安全衛生管理者又は事業の実施を
統括管理する者1名
②安全管理者
③労働者(安全に関する経験を有する者)
①総括安全衛生管理者又は事業の実施を
統括管理する者1名
②衛生管理者
③労働者(安全に関する経験を有する者)
調査審議事項
①安全に関する規定の作成に関すること
②危険性又は有害性等の調査及びその結
果に基づき講ずる措置のうち、安全に関す
るものに関すること
③安全に関する計画の作成、実施、評価及
び改善に関すること
④安全教育の実施計画の作成に関すること
⑤その他
①衛生に関する規定の作成に関すること
②衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改
善に関すること
③衛生教育の実施計画の作成に関すること
④定期健康診断等の結果に対する対策の樹立に
関すること
⑤長時間にわたる労働による労働者の健康障害
の防止を図るための対策の樹立に関すること
⑥労働者の精神的健康の保持増進を図るための
対策の樹立に関すること
(主な事項を抜粋。詳細に
ついては、労働安全衛生
規則第21条及び22条参
照)
その他共通事項
①毎月1回開催すること
②委員会における議事の概要を労働者に周知すること
③委員会における議事で重要なものに関わる記録を作成し、これを3年間保存すること
委員会を設けるべき事業者以外の事業者が講ずべき措置
労働者数が50人未満の事業者など、委員会を設けるべき事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、
関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければなりません(安衛規則第23条の2)
労働安全衛生教育・・労働安全衛生法に基づく教育
①雇い入れ時の安全衛生教育(同法第59条第1項)
②作業変更時の安全衛生教育(同法第59条第2項)
③職務教育(同法第60条)
④免許、技能講習(同法第60条1項、施行令第20条)
⑤特別教育(同法第59条3項、労働安全衛生規則第36条)
⑥安全衛生教育及び指針(同法第60条の2)
⑦能力向上教育(同法第19条の2)
⑧健康教育等(同法第69条)
⑨労働災害防止業務従事者講習(同法第99条の2)
《参考》
平成8年12月4日 安全衛生教育指針公示第4号
平成6年7月6日 能力向上教育指針公示第4号
労働安全衛生教育・・自主的な教育
事業所内で実施するもの
①安全衛生講習会
②OJTの実施
③消火訓練、避難訓練(法令のものは除く)等の実施
④安全衛生講習会の開催 ⑤安全朝礼等の実施
⑥管理監督者の指導
⑦TBM、KY活動等の実施
⑧安全衛生パトロール時等の指導
⑨災害発生時例及び再発防止対策の周知
⑩ヒヤリ・ハット時例及び安全衛生対策の周知
事業所外で実施するもの
①労働基準監督署等が開催する講習会への参加
②各安全衛生関係団体が開催する講習会への参加
③発注者、元請等が開催する講習会への参加
OJTとは,仕事中,仕事
遂行を通して訓練をするこ
と
TBM・KY(ツールボックス
ミーティング・危険予知)
安全衛生教育等の留意点
①年間安全衛生推進計画に基づき計画的に実施すること
②実施担当者(部署)等を定めて、管理。その記録を確実に整備・保存
③雇い入れ時の安全衛生教育は、直ちに実施。パート、アルバイトも同様
④作業内容変更時教育は、作業に就く前に確実に実施すること
⑤職長教育は、発令される前に実施すること
⑥法令に基づく特別教育、免許、技能講習の必要な有資格者は、必要な
業務に就く労働者全員を対象に受講・資格取得させること
⑦安全衛生関係団体等が開催する研修・講習に積極的に参加する
平成14年~24年の労働災害発生状況の推移
厚生労働省「厚生労働白書」(平成25年)より作成
景気・公共事業の増減によっても変化
過労死及び精神障害等の労災補償状況
厚生労働省「厚生労働白書」(平成25年)より作成
業種別労働災害死亡者の割合
問われる責任 ケース-1
地上10mの場所で左官工事に従事していた作業員が足を滑らせて、墜落し、死亡
した。現場所長は、作業場所に作業員の墜落を防止するための手すり等を設ける
ことが容易であったにも関わらず、手すりを設けなかった。
問われる責任
法
律
元請け会社所長
①安衛法21.119.122.条 6ケ月以上または
50万円以下の罰金
②刑法211条業務上過失致死罪5年以下の
懲役または50万円以下の罰金
下請け事業主
両罰規定により、法人、人に対し、上記①と
同罪
元請け会社
同上
問われる責任 ケース-2
現場所長は作業では安全帯を使用することを指示していた。被災者は安全帯を装
備していたものの使用していなかった。
所長は被災者が安全帯を使用していなかったのを知りながら黙認した。また、下請
けの会社社長も黙認した。
問われる責任
法
律
元請け会社所長
安衛法21-2.119.112(両罰)、安則519-2
6ケ月以下の懲役または50万円以下の罰金
元請会社
両罰規定により同上
6ケ月以下の懲役または50万円以下の罰金
元請会社職長
安衛法21-2.119.112(両罰)、安則519-2
6ケ月以下の懲役または50万円以下の罰金
下請け会社
両罰規定により同上
6ケ月以下の懲役または50万円以下の罰金
労災事故を起こしやすい会社の風土
3つの勘違い
一つ目の勘違い・・・自分はケガをしない
私は、要領がいい
自分は強運の持ち主
私は、若いから
これを「自己過信」といいます。
二つ目の勘違い・・・今までうまくやれたから
自分流のやり方が一番安全
安全手順なんか現場を知らない奴の机上の空論
この方法で何年も何の問題もなくやってきた
一度も失敗がない
危険な筈がない
三つ目の勘違い・・・自分には関係がない
あいつの、不注意・無器用でケガをした
ケガをした本人に 一番責任がある
通勤途上災害の認定基準
労働
災害
労災事故の四重責任
①刑事上の責任・・・相手は国
②行政上の責任・・・相手は国・地方公共団体など
③民事上の責任・・・相手は従業員・遺族
④社会的責任・・・・相手は地域社会
ハラスメント被害者が辿る典型的事例
第1段階 身体の反応
心臓ドキドキ・体の震え
発汗・胃の不快感など
ハラス
メント
第2段階 心身症状
不眠・胃痛・生理不順
体重減少(増加)・頭痛
第1段階 メンタル疾患
うつ病・パニック発作
適応障害・神経症など
休職
退職
自殺
うつ病になりやすい性格・うつ病になる主なきっかけ
・真面目で仕事熱心
・責任感が強く、完璧主義者
・社交的で明るく活発な面と、さみしがり屋な面の両方を持つ
男性
▼仕事の疲労
▼職場異動
▼精神的打撃
▼経済問題
▼近親者の病気・死など
女性
▼妊娠・出産・月経
▼家庭内葛藤
▼近親者の病気・死
▼精神的打撃
▼身体疾患など
女性ホルモンのバ
ランスの乱れが原
因でうつ病になる
ことも
「うつ」の主な特徴
・無力感
・絶望感
・焦燥感
・みじめさ
・苛立ち
・社交スキル
の低下
・社会的問題
解決の困難
・対人関係
の失敗
・社会関係
の回避
・認知の偏り
・自尊心の低下
・考え込み
・興味の喪失
・無関心
・希死念慮
・意欲の低下
・活動性の低下
・思考障害
・睡眠の障害
・食欲の障害
・疲れやすい
うつ病の身体的状態
①睡眠障害
入眠障害
熟眠障害
早朝覚醒
②食欲減退
味覚障害
③性欲減退
ED(勃起不全)
うつ病の精神的状態
①気分・感情の異常
気分の抑うつ
②思考の異常
考えがまとまらない
集中できない
判断力・決断力が鈍る
絶望感・劣等感
③意欲・行動の異常
不感症
行動量の低下
月経障害
表情・身振りの減少
④その他
疲労感
脱力感
無力感
疼痛(とうつう)
便秘
生気に乏しい
④その他
不安・焦燥感
メンタルヘルス予防
①面談
②産業医の意見書
健康問題の他、メンタルヘ
ルスや人間関係などについ
ての相談やカウンセリング
就業上の措置に関する
助言など
産業医・看護職
心理職・衛生管理者
③就業上の措置
業務調整や配置転換など。
管理監督者と連携して実施
き
生活習慣の発症・重症化
不健康な生活習慣
①不適切な食生活
(エネルギーの過剰)
②飲酒・喫煙
③運動不足
④ストレス過剰 など
予備軍
①肥満・高血糖
②高血圧・脂質異常等
内蔵脂肪症候
としての生活習慣
①肥満症・糖尿病
②高血圧・高脂血症など
生活機能の低下・要介護状態
①半身麻痺
②日常生活における支障
③認知症
④死亡
重症化・合併症
①虚血性心疾患(心疾患・狭心症)
②脳卒中(脳出血・脳梗塞)
③糖尿病の合併症
(網膜症、人口透析)
保健指導・医療
(重症化予防の取り組み)
①受療促進
②適切な治療と生活習慣
(食事・運動
禁煙等の改善指導)
PDCA
CYCLE
lan
計画
トップの安全衛生
方針発表
ct
o
改善
実施
結果を次年度
に活かす
heck
計画
内部監査
安全衛生マネジメント システム
人材育成
効率化
安全衛生
マネジメン
トシステム
独創性
適正な評価
継続的な安全衛生水準の向上
企業の健全
性・信頼性
のアップ
企業の
発展
安全はすべてに優先する
整理
責任
整頓
清掃
作業標
準
安全のキーワード
清潔
接点作業
躾
指差呼称
先取り
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