電子政府・電子自治体の方向性と課題

情報通信アウトルック2003 第5回 テーマ:電子政府
電子政府・電子自治体の方向性と課題
-住民にとって身近な地方自治体の
情報化の動向と課題について-
2002年12月
株式会社情報通信総合研究所
社会公共システム研究グループ
シニアリサーチャー 江原 豊
講義内容
• 地域や行政とITはどのように関わってきたか
• 今日の「電子政府・電子自治体」はどのような文脈か
ら出てきて、なにをめざしているか
• めざす方向や実現に向けて課題はないか、あるとす
てばそれはなにか
1
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行政や地域の情報化
• 地方自治体が関与する情報化の取組として「地域情報化」、「行政情報化」
の2つの切り口で行われてきた
内容・定義
地域情報化
行政情報化
対象
主管すること
が多い部署
情報化の成果により、地域
の課題の解決や地域の活
性化を図る、あるいは地域 地 域 の 住 民 企画部門
において情報を有効に使い や企業等
・各部門
こなせるような仕組みをつく
る、地域が主体の取り組み
情報化の成果により、住民
ニーズに対応し、行政事務
の一層の高度化・効率化を 行政内部
電算部門
図ることを目的とする行政
組織内部における取り組み
例
・遠隔医療
・IC カードによる商店街
活性化
・ケーブルテレビの導入
・情報関連産業の振興
・税システム整備
・住民記録システム整
備
・庁内 LAN 整備
2
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行政や地域の情報化の流れ(1)
年
• 地域情報化
– 1980年代 ニューメディア
ブームと国の総合的な地
域情報化構想
– 1990年~ マルチメディア
ブームと国の個別の情報
システム等に対する支援
施策
– 1995年~ インターネット
の導入とハイウェイ構想
1983
1985
1986
1988
1989
1990
1991
1992
1994
1995
1997
1998
1999
2000
2001
各省庁の地域情報化構想
・テレトピア構想(郵政省)
・ニューメディア・コミュニティ構想(旧通商産業省)
・グリーントピア構想(農林水産省)
・情報化未来都市構想(旧通商産業省)
・インテリジェント・シティ構想(旧建設省)
・民活法特定施設整備事業(5省共管)
・ハイビジョン・シティ構想(旧郵政省)
・頭脳立地構想(旧通商産業省)
・テレコムタウン構想(旧郵政省)
・ハイビジョン・コミュニティ構想(旧通商産業省)
・地域ソフトウェア供給力開発事業(旧労働省、旧通商産業省)
・リーディング・プロジェクト「地域情報化対策」(旧自治省)
・地域情報ネットワーク整備構想(旧自治省)
・地方拠点都市構想(6省庁共管)
・自治体ネットワーク施設整備事業(旧郵政省)
・先進的アプリケーション基盤施設整備事業(旧通商産業省)
・先進的情報通信システムモデル都市構築事業(旧郵政省、旧通商産業省)
・マルチメディア・パイロットタウン構想(旧郵政省)
・田園地域マルチメディアモデル整備事業(農林水産省)
・遠隔医療推進モデル事業(旧厚生省)
・情報通信ネットワーク拠点整備事業(旧文部省)
・地域情報通信基盤整備事業(旧自治省)
・地域インターネット導入促進事業(旧郵政省)
・広域的地域情報通信ネットワーク基盤整備事業(旧郵政省)
・高度情報化拠点施設整備事業(農林水産省)
・ICカードの普及等によるIT装備都市研究事業(旧通商産業省)
e!プロジェクト(総務省、経済産業省、国土交通省)
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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3
行政や地域の情報化の流れ(2)
• 行政情報化
–
–
–
–
1960・70年代 単独大量定型業務処理を対象とした電算化
1980年代
各事業分野ごとの電算化
1990年代
OA系システム(PC・LAN導入)の取り組み始まる
1995年~
インターネットとの接続、住民との接点の情報化、行政改革
の一環としての情報化
●パソコン一台当たりの職員数及びLAN整備率の推移
1998
パソコン設 都道府県
置状況(人
/台)
市区町村
LAN整備率 都道府県
(%)
市区町村
1999
2000
2.0
1.5
1.3
1.1
4.6
95.7
3.4
97.9
2.4
100.0
1.7
100.0
38.9
52.8
72.6
88.6
総務省(2002)『情報通信白書』(平成14年度版)
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2001
4
過去の地域情報化の反省点
• 国主導の取り組み
– 地域の当事者として意識の低さ、事業の見通しの甘さ
• ニーズの軽視
– サプライヤー発想・シーズ発想
• メディア・技術の未成熟
– ビデオテックス、パソコン通信
• 関与するセクターの役割が不明確
– 3セクの乱立と破綻
• ランニングコスト負担の軽視
– 情報化事業はランニングコストが大きい
• 縦割り行政
– 同種のシステムが乱立
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電子政府・電子自治体とは
• 「電子政府」は、 「行政情報化推進基本計画」で打ち出され、
e-Japan戦略により国家戦略として明確に位置付けられた。
• 「行政情報化推進基本計画」(旧総務庁、1997年12月改訂)
– 「『紙』による情報の管理からネットワークを駆使した電子化された情報
の管理へ移行し、21世紀初頭に高度に情報化された行政、すなわち
『電子政府』の実現を目指す」
• e-Japan戦略(2002年1月)
– 「行政内部や行政と国民・事業者との間で書類ベース、対面ベースで
行われている業務をオンライン化し、情報ネットワークを通じて省庁横
断的、国・地方一体的に情報を瞬時に共有・活用する新たな行政を実
現するもの」
6
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e-Japan戦略における目標設定
(行政情報化・公的分野)
• 国民の目に見える成果をあげるべく、官民接点の情報化に力
点が置かれている。
e-Japan 戦略 文書の電子化、ペーパーレス化及び情報ネットワークを通じた情報共有・活用に向けた業務改革
(2001.1)
を重点的に推進することにより、2003 年度には、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、
ひいては幅広い国民・事業者の IT 化を促す。
e-Japan 重点 行政の情報化については、行政情報の電子的提供、申請・届出等手続の電子化、文書の電子化、
計画
ペーパーレス化及び情報ネットワークを通じた情報共有・活用に向けた業務改革を重点的に推進
(2001.3)
し、2003 年度までに、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現する。
e-Japan2002 平成 15 年度までに電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現するため、平成 14 年度中に全府
プログラム
省において、申請・届出等手続の電子化に関わる共通的基盤システムを整備するほか、行政情報
(2001.6)
の電子的提供、政府調達の電子化等を推進する。
e-Japan 重点 行政の情報化については、行政情報の電子的提供、申請・届出等手続の電子化、文書の電子化、
計画-2002
ペーパーレス化及び情報ネットワークを通じた情報共有・活用に向けた業務改革を重点的に推進
(2002.6)
し、2003 年度までに、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現する。
IT の活用による公共分野におけるサービスの多様化及び質の向上を図ること等により、広く国
民が IT の恩恵を享受できる社会を実現する。
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国が描く電子政府・電子自治体のイメージ
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電子政府・電子自治体の背景
• 強まる顧客志向
– 住民は支払った税金に相応したサービスを受けるべき顧客である
– 求められる業務のスピード
• 行政運営のオープン化への意識の高まり
– 1999年の情報公開法施行
– 住民、NPOボランティアの行政運営への参画
• 急務となっている行財政改革
– 地方財政の借入金残高は平成14年度末には195兆円
• インターネットを中心とした技術の普及・成熟
– 住民・企業側の情報インフラの普及
– 地域情報化・行政情報化の取組の一体的実施を可能に
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電子政府・電子自治体への期待
• 住民、企業とも、電子自治体の取り組みに対して、業務の迅
速化、利便性の向上、コストの削減を期待している。
(%)
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
71.3
69.0
手続事務対応の迅速化
64.1
63.4
行政サービスの利便性向上
46.5
行政サービスコストの削減
24.3
23.4
庁内の情報共有の推進
22.6
23.4
ペーパーレス化
住民
企業
13.8
12.4
出所:総務省(2002)「電子自治体の動向に関する調査」
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53.4
33.7
31.4
行政における透明性の向上
庁内の意思決定の迅速化
80.0
10
電子政府・電子自治体のスケジュール(1)
• e-Japan構想では2003年度に電子政府の実現をめざしている。
• 2003年度は、国および国による環境整備の年限を意味しており、自治体による
成果が見えるのは2003年度以降が中心となる。
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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電子政府・電子自治体のスケジュール(2)
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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各国の電子政府・電子自治体の取組
• 各国で目標設定内容が違うため一概に比較できないが、わが国の目標設
定はおおむね平均的といえる。
国
電子化の目標・対象
インターネットにより電子的に提供可能なすべての連邦政府
オーストラリア
によるサービス
カナダ
主要な行政サービスすべての電子化
中国
地方政府機関サービスの 80%のインターネットによる提供
フィンランド
重要な申請様式と申請の電子化
すべての行政機関が提供する行政サービスと文書へのアクセ
フランス
ス
ドイツ
電子化可能なすべての行政機関のサービス
香港
電子化すべきサービスの 90%
アイルランド
もっとも統合的で複雑なサービス以外のすべてのサービス
企業ポータルの主要なサービス
イタリア
市民ポータルの主要なサービス
日本
電子政府の実現
オランダ
中央および地方の公的サービスの少なくとも 25%
スペイン
高い目標の設定なし
スウエーデン
高い目標の設定なし
イギリス
100%すべての行政サービス
行政サービスと文書へのアクセス
アメリカ
申請様式の電子的な提出を選択可能
目標時期
2001 年
2004 年
2005 年
2001 年
2000 年
2005 年
2003 年
2001 年
2001 年
2002 年
2003 年度
2002 年
-
-
2005 年
2003 年
出所:英国内閣府 e-Envoy 局 "e-Government Benchmarking Electronic Service Delivery" (2001 年 7 月)
をもとに作成
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子申請(1)
• 国や地方自治体が扱う申請・届出等手続をインターネット等で
受付けるもの。
• 地方自治体では、公共施設予約や図書予約等自らの条例改
正のみで対応可能な手続はオンライン化を既に実施。
• 現在取り組まれているものは国の法令で所管する手続も対
●申請・届出等手続のオンライン化のスケジュール
象。
~2001 年度
2002 年度
2003 年度
オンライン化件数
国の行政機 (比率)
関が 扱う 手
続
手続の例
地方公共団 オンライン化件数
体が扱手続 (比率)
(オンライン
化を可能と
するための 手続の例
国 にお け る
制度面の条
件整備の計
画)
601 件(4%)
特許・商標等の出願
道路の占有許可申請
47 件(1%)
介護給付費の請求
道路使用許可の申請
海洋生物資源の採補報告
出所:総務省(2002)資料をもとに作成
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7,335 件(54%)
13,299 件(98%)
気象予報士の登録
国税申告・納税
国立公園特別地域内での行為の
社会保険の資格取得届
許可申請
3,281 件(56%)
住民票の写しの交付請求国民年
金の資格取得届
保育の申請
妊娠の届出
建築確認の申請
飲食店営業許可の申請
5,636 件(96%)
戸籍謄抄本の交付請求
婚姻届
旅券発給の申請
自動車保管場所証明の申請
道路占有許可の申請
地方税申告等
消防用設備等の点検報告
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子申請(2)
• 手続のオンライン化の際の課題に対応した基盤整備が進めら
れている。
電子申請実現に
向けての課題
対応策
内容
複数の申請・届出等手続を一括して横断的に受け付けるシステム。総務省が 2002
万単位である手続ご
汎 用 受 付 シ 年3月にその基本仕様を示した。2002 年度に、認証基盤や決済基盤等との連携
とにシステムを整備
ス テ ム の 整 の実験を行ったのち、2003 年度に最終仕様が提示される予定。
することは不可能で
備
本システムは、各県等の単位で、複数の自治体で共同利用を行う構想が国から示
あり共通基盤が必要
されている。
申請者や発行者が実
認証基盤には、政府機関を認証する政府認証基盤(GPKI)、地方公共団体を認証
在 す る 本 人 で あ る こ 認 証 基 盤 の する組織認証基盤(LGPKI)、民間機関を認証する商業登記認証局や電子署名法
と を 電 子 的 に 保 証 す 整備
に基づく民間認証局、個人を認証する公的個人認証基盤がある。このうち公的個
る必要がある(認証)
人認証基盤の整備がもっとも遅く、2003 年度の予定である。
手数料や使用料の納付を電子的に行うための基盤。現在、金融機関が主体になっ
電 子 的 に 決 済 を 行 う 決 済 基 盤 の て構築・運用する「マルチペイメントネットワーク」の構築を進めており、国は
必要がある
整備
これを活用する方針であり、地方自治体でも同様な方針になることが見込まれ
る。
行政手続のオンライン化のために、「行政手続における電子情報処理組織の使用
手続を電子的に行う
等に関する法律」、「行政手続における電子情報処理組織の使用等に関する法律
制度整備の
ことを制度的に担保
の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」を制定。
整備
する必要がある
国の法令に基づく手続について各所管官庁からオンライン化実施方策等を、各所
管官庁が提示する。
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子申請(3)
• 効果・メリット
現状
・窓口への来庁
・受付時間制限
・書類の記入
・待ち時間
・再来庁の必要
・改善されないサービス
住民・企業
書類
行政/行政職員
・窓口対応
・入力作業の発生
・人的チェック
・書類の増大
窓口への来庁
導入後
住民・企業
・来庁不要(含バリアフリー化)
・待ち時間なし
・受付時間拡大(原則24時間)
・ネットワークによる回答
・ワンストップサービスによる
利便性向上
• 課題
–
行政/行政職員
インターネット
・窓口対応の削減
・入力事務作業の削減
・形式審査の省力化
・事務の正確性の向上
・ペーパーレス化
住民の声の反映
出所:情報通信総合研究所
コスト対効果が不明
•
•
•
–
電子データ
年間申請件数が数件やゼロという手続も多い → 対象手続の吟味
業務処理が電子化を前提となっていない → 業務改革・改善(BPR)の実施の必要性
自治体単独で導入するとコスト・運用負担が大きい → 共同導入・民間アウトソーシング
デジタルデバイド対策
•
•
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機器を使えない層 →住民のリテラシー向上
障害者 → システムのユニバーサルデザイン化
16
電子政府・電子自治体の取り組み例
電子入札(1)
•
•
国土交通省が公共事業の電子入札を推進、国の標準システムの導入を推進。
地方自治体では独自方式の電子入札を先行的に導入して効果を挙げている例もある。
●国土交通省の電子入札の取組方針
年度
入札案件数
基本方針
100 ・全国で実施
2001 年度 10 月か
ら
・企業の IT 化の現状を踏まえ、大規模な直轄事業(工事+建設コンサ
ルタント業務)から選定
2,000 ・工事は公募型(2 億円)以上の全案件を対象
2002 年度
・建設コンサルタント業務は簡易公募型(5 千万円)以上の全案件を対
象
10,000
2003 年度
44,000 ・直轄事業(工事+建設コンサルタント業務)の全案件を対象
2004 年度
出所:国土交通省資料をもとに情報通信総合研究所作成
●電子入札導入代表事例
年 度
国・自治体
2001 年 9 月
神奈川県
横須賀市
2002 年 4 月
2002 年 4 月
2003 年
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概 要
現場説明会の廃止や条件付一般競争入札など入札制度改革を推進し、加え
て業務の効率化を図ることを目的に、独自の電子入札、認証・公証システム
を導入した。競争原理によるコスト削減効果も生み出されている。
岡山県
都道府県では初めてとなる電子入札を実施した。認証のために IC カードを
活用している。
山口県
横須賀市の認証・公証システムを、インターネットを用いて共同利用すること
下関市
でシステム開発運用費の削減を図っている。
東京都・三重県・北海道など多くの自治体が電子入札導入を予定している
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子入札(2)
●電子入札のイメージ
第三者的機関
行政
事業者
パソコン
⑥電子証明書
①電子署名の登録
⑦入札実施
の認証・取引
認証・公証システム
内容の保持
②証明書の発行
⑤認証の確認 電子入札システム
インターネット
③入札情報
④入札申請
・入札データ
・電子署名
・電子証明書
⑧入札結果公開
住民
出所:各種資料をもとに情報通信総合研究所作成
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18
電子政府・電子自治体の取り組み例
電子入札(3)
• 効果・メリット
– 透明・公正な調達の実施(談合防止)
– 競争の活性化(入札参加者の拡大)
– 横須賀市の場合、導入前後で入札参加者数倍増(1997年平均9.2社/件→2000年
17.9社/件)
– 調達価格の削減
– 横須賀市の場合、平均落札率10%下落(1997年度95.7%→2000年87.3%)
– 行政側の業務の効率化(現場説明会等の不要化)
– 企業側の業務効率化(訪問回数の削減、関連資料作成の効率化)
• 課題
– インターネット等の活用スキルのない零細事業者への対応 → 普及啓発等の実施
– 中小企業や地元企業育成 → 政策的に多様な調達手法の導入
– 業務の効率化(当面紙ベースの入札との並行処理を余儀なくされる)
19
InfoCom Research,Inc.
電子政府・電子自治体の取り組み例
電子投票(1)
•
•
•
今回試行導入されたものは投票所に
投票機を設置する形態(第1段階)
2002年6月に岡山県新見市の地方選
で初導入
いわゆるインターネット投票(第3段
階)も検討されているが、ネットからの
アタックや投票の自由意志の保証等
の課題が残り、実現は不透明。
●第2段階 指定された投票所以外の投票所においても投票できる段階
開票所
●第1段階 選挙人が指定された投票所において電子投票機を用いて投票
する段階
開票所
FD等の送致
投票所 A
投票所 B
投票所 C
指定された投票所での投票
(電子投票機利用)
選挙人 a
選挙人 b
選挙人 c
●第3段階 投票所での投票を義務づけず、個人の所有するコンピュータ
端末を用いて投票する段階
→電子機器による集計
開票所
回線による投票情報の伝達
投票所 A
→電子機器による集計
投票所 B
→電子機器による集計
回線による投票情報の伝達
投票所 A
投票所 C
投票所 B
投票所 C
任意の投票端末による投票
任意の投票所での投票
(電子投票機利用)
選挙人 a
選挙人 b
選挙人名簿情報・
候補者情報の共有
選挙人 a
選挙人 b
選挙人 c
出所:総務省(旧自治省)(2000)「電子機器を利用した選挙システム研究会中間報告書」をもとに作成
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選挙人 c
選挙人名簿情報・
候補者情報の共有
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子投票(2)
出所:総務省資料
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電子政府・電子自治体の取り組み例
電子投票(3)
• 効果・メリット
第 1 段階
第2段階
選 挙 人 サ イ ・自書の不要化
・自書の不要化
ドに対するメ ・民意の正確な反映(疑 ・民意の正確な反映(疑
リット
問票・無効票の減少)
問票・無効票の減少)
・バリアフリー対策
・バリアフリー対策
・全国のどこの投票所か
らも投票が可能
選 挙 事 務 サ ・開票の迅速化
イドに対する
メリット
・疑問票・無効票の減少
第3段階
・自書の不要化
・民意の正確な反映(疑
問票・無効票の減少)
・バリアフリー対策
・自宅などの任意のイン
ターネットなどの接続環
境から投票が可能
・第1段階以上の開票の ・第2段階以上の開票の
迅速化(投票所・開票所 迅速化
間がネットワーク化され
た場合)
・疑問票・無効票の減少
・疑問票・無効票の減少
・投票所設置の不要化
(大きな経済的効果が
期待される)
その他のメリ ・投票用紙の減による環 ・投票用紙の減による環 ・投票用紙の減による環
ット
境保護
境保護
境保護
• 課題
出所:情報通信総合研究所
– コスト対効果の確保 → 電子投票の普及、第2・第3段階への展開
– 信頼性、安全性確保 → システムの認証制度の確立
– 機器操作に対するバリアの除去 → 機器仕様の一定の統一・普及啓発
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電子政府・電子自治体の取り組み例
e-デモクラシー/住民インタラクション
•
•
•
広報・広聴、モニター制度、各種委員会・審議会等の従来の行政への住民の意
見の反映手法には、限界がある。
ITを積極的に行政参加の手段として活用。
1.Web等を活用しパブリックコメントを実施
– 多くの行政機関で一般化
•
2.Web等を活用し、地域や行政に関する議論の場の提供
– 全国に100程度は事例がある
•
三重e-デモ会議室 等
• 3.Web等で住民が政策決定プロセスに参加
• 藤沢市「市民電子会議室」が著名
– 市政に関連する各分野ごとに電子会議室を
設置
– 電子会議室での議論は市長あての提案書と
してまとめられ、市が提案書に回答し、実際に
市政に反映する
– 歴史も古く、仕組みが確立されている。
出所:藤沢市資料
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市場としての電子自治体
• 地方自治体の情報化投資(行政情報化経費)は、しばらく微増であったが、
2001年度に一旦急増も2002年には元の10年前の水準に下降。
• 電子自治体の掛け声に比べ、予算確保は厳しいのが現状。
• 電子政府・電子自治体の市場規模は、民間側投資を入れると3兆とも5兆
ともいわれるがやや疑問。
●行政情報化経費の推移
(億円)
9,813
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,487
5,030
5,507
6,266 6,396 6,482
5,914 5,957 6,074 6,117
7,059
5,814
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1990.4 1991.4 1992.4 1993.4 1994.4 1995.4 1996.4 1997.4 1998.4 1999.4 2000.4 2001.4 2002.4
出所:総務省(2002)『地方自治情報管理概要』
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24
電子自治体取り組みの課題(1)
導入の目的化を排した住民本位の姿の追求
• 住民のメリット・利益の重視
– 利便性の向上
– 顧客の声の反映(自治体にとって住民は顧客であり株主である)
• 行政CRMの取り組み
• コスト削減とスピードアップ
– システム構築だけでなく、業務や組織の見直しが重要
– 必要な権限を伴った情報化体制整備が不可欠(CIOの配置)
• 主体的な判断
– 国の方針も鵜呑み
にしない。
●電子自治体の構築に合わせた業務プロセスの見直し等への取り組みと自己評価
(%)
50.0
取組状況(左軸)
40.0
39.8
40.0
(%)
「十分満足な内容」と「ある程度満足な内容」の占める割合(右軸)
28.3
33.6 29.5
27.1
24.2
30.0
32.1
31.0
30.7
30.3
29.2
30.0
23.4
17.8 20.0
18.6
20.0
13.9
11.3
10.0
9.1
8.6
8.5
8.1
5.8
4.8
政
策
評
価
の
実
施
等住
の民
政
・
活策企
用立業
案の
へ意
の見
業
務
プ
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出所:総務省(2002)「電子自治体の動向に関する調査」
InfoCom Research,Inc.
10.0
25
電子政府・電子自治体取り組みの課題(2)
情報バリアフリー/ユニバーサルデザイン
•
•
•
障害者や高齢者こそがITによるメリットを享受すべき。
ユニバーサルデザインとは「できるだけ多くの人が利用可能であるように製
品、建物、空間やサービスをデザインすること」、「すべての人が人生のあ
る時点で何らかの障害をもつ」という発想。
行政のサービスが先導すべき取り組み。
●情報のバリアフリー化に関する主な法律・指針・提言等
実施時期
1990 年
1993 年
1995 年
1996 年
1997 年
1998 年
1999 年
2000 年
2000 年
2000 年
2001 年
2001 年
法律・指針等の名称
「情報処理機器アクセシビリティ指針」公表(通産省)
「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」交
付
「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」改定版告示(通産省)
「保健医療福祉分野における情報化実施指針」
(厚生省・郵政省・通産省・文部省・自治省)
放送法及び有線テレビジョン放送法の一部改正
「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針」策定、告示(郵政省)
「インターネットにおけるアクセシブルなウェブコンテンツの作成方法に関する指針」の検討(郵
政省・厚生省)
「高齢者・障害者による情報通信の利用に対する人的支援及びウェブアクセシビリティの確保に向
けた課題と方策」
(郵政省)
「障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン第1版」(内閣府)
「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針」改定版告示(通産省)
「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT 基本法)
」施行
「ホームページのバリアフリーの確保について」
(総務省)
出所:(財)地方自治情報センター「インターネットの有効活用方策に関する調査研究」
(2002.3)
InfoCom Research,Inc.
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電子政府・電子自治体取り組みの課題(3)
官民の役割分担と協働
• 行政の役割の明確化
– 行政関与の原則(行政改革委員会「行政関与のあり方に関する基準」)
• (1) 基本原則A 「民間でできるものは民間に委ねる」という考え方に基づき、行政の
活動を必要最小限にとどめる。
• (2) 基本原則B 「国民本位の効率的な行政」を実現するため、行政サービスの需要者
たる国民が必要とする行政を最小の費用で行う。
• (3) 基本原則C 行政の関与が必要な場合、行政活動を行っている各機関は国民に対
する「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たさなければならない
• 民間アウトソーシングの活用
– 行政のコア業務に注力
– 地域IT企業の活性化
– なにをアウトソースするかの戦略性、アウトソーサーを操るスキルが重要
• 官民のパートナーシップ
– 住民参加の行政運営
– PPP(Public Private Partnerships)
InfoCom Research,Inc.
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電子政府・電子自治体取り組みの課題(4)
システムのトータルデザイン
• 今後システム間の連携がますます重要になる。
• 行政内部、行政機関間の連携、市町村合併への対応
• 行政内外の連携
• 全体システムアーキテクチャー、インターフェース仕様の明確化が重要。
●自治体システム連携イメージ
電子メール
情報共有
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出所:情報通信総合研究所
InfoCom Research,Inc.
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文書管理システム(フロー制御
・決裁/文書登録・保管)
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組織認証基盤
ナレッジマネージメント
システム
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「電子政府・電子自治体の方向性と課題」
-住民にとって身近な地方自治体の情報化の動向と課題について-
2002年12月
©株式会社情報通信総合研究所 社会公共システム研究グループ
シニアリサーチャー 江原 豊
e-mail:[email protected]
URL:www.icr.co.jp
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InfoCom Research,Inc.