障害者自立支援法案について

NPO法人 福祉ネットこうえん会
第八回 社会福祉公開講座
「障害者自立支援法について」
「社会福祉事業経営と会計」
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課
課長補佐
松 田
光 広
氏
障害者自立支援法の
現状と今後の見通し
平成 20 年 3 月 1 日
厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部 障害福祉課
目
次
序 福祉・介護のパラダイムの転換 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
Ⅰ 障害者自立支援法の制定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3~11
Ⅱ 障害者保健福祉関係予算等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12~34
Ⅲ 障害者自立支援法の施行状況等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35~41
Ⅳ 就労支援と地域生活支援等についての一層の取り組み ・・・・・・・ 42~51
Ⅴ 今後の課題等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52~59
Ⅲ 今後の福祉経営について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60~81
福祉・介護のパラダイムの転換
○ 普遍化
・低所得者対象 → 普遍化
○ 措置から契約へ
・選択
・自己決定
・利用者本位
○ 費用の分担
・無料又は低額 → 応益負担
・自助と「皆で支え合う部分」の整理
○ 市町村中心
・市町村への一元化
・基盤の計画的整備
○ 地域で普通の暮らし
・在宅重視
・自立支援
・地域福祉
障害者自立支援法の制定
支援費制度の課題
支援費制度の施行(15年4月~)により新たにサービス
の利用者が増え、地域生活支援が前進
しかし
• 新たな利用者の急増に伴い、サービス費用も増大。今後も利用者の増加が見
込まれる中、現状のままでは制度の維持が困難。
• 大きな地域格差(全国共通の利用のルールがない、地域におけるサービス提供
体制が異なる、市町村の財政力格差)
• 障害種別ごとに大きなサービス格差、制度的にも様々な不整合、精神障害者は
支援費制度にすら入っていない
• 働く意欲のある障害者が必ずしも働けていない
障害者が地域で普通に暮らせるための基盤が十分整備されていない
障害者自立支援法
障害のある人が普通に暮らせる地域づくり
(目指す方向)
・できるだけ身近なところにサービス拠点
・NPO、空き教室、小規模作業所、民間住宅など地域の社会資源を活かす
・施設入所者も選べる日中活動
・重度の障害者も地域で暮らせる基盤づくり
地域社会
地域生活
通 所
自宅・アパート
就 労
訪問介護等
一般企業等
グループホーム
通 所
たとえば空き教室等
を利用したNPO等が
通 所 運営する小規模な通
所型の事業所
入所施設(通所機能つき)
「障害者自立支援法」のポイント
障害者施策を3障害一元化
現状
・ 3障害(身体、知的、精神)ばらばらの制度体
系(精神障害者は支援費制度の対象外)
・実施主体は都道府県、市町村に二分化
法律による改革
○3障害の制度格差を解消し、精神障害者を対象に
○市町村に実施主体を一元化し、都道府県はこれをバッ
クアップ
利用者本位のサービス体系に再編
現状
・ 障害種別ごとに複雑な施設・事業体系
・ 入所期間の長期化などにより、本来の施設目
的と利用者の実態とが乖離
○33種類に分かれた施設体系を6つの事業に再編。
あわせて、「地域生活支援」「就労支援」のための事業や
重度の障害者を対象としたサービスを創設
○規制緩和を進め既存の社会資源を活用
就労支援の抜本的強化
現状
・養護学校卒業者の55%は福祉施設に入所
・就労を理由とする施設退所者はわずか1%
○新たな就労支援事業を創設
○雇用施策との連携を強化
支給決定の透明化、明確化
現状
・全国共通の利用ルール(支援の必要度を判定
する客観的基準)がない
・支給決定のプロセスが不透明
○支援の必要度に関する客観的な尺度(障害程度区分)
を導入
○審査会の意見聴取など支給決定プロセスを透明化
安定的な財源の確保
現状
・新規利用者は急増する見込み
・不確実な国の費用負担の仕組み
○国の費用負担の責任を強化(費用の1/2を負担)
○利用者も応分の費用を負担し、皆で支える仕組みに
障
害自
者立
がと
地共
域生
での
暮社
ら会
せを
る実
社現
会
に
総合的な自立支援システムの構築
市
町
村
訓練等給付
・自立訓練(機能訓練・生活訓練)
・就労移行支援
・就労継続支援
第28条第2項
・共同生活援助
介護給付
・居宅介護
第28条第1項
・重度訪問介護
・行動援護
・療養介護
・生活介護
・児童デイサービス
・短期入所
・重度障害者等包括支援
・共同生活介護
・施設入所支援
自立支援給付
第6条
自立支援医療 等
・(旧)更生医療
第5条第18項
・(旧)育成医療
・(旧)精神通院公費
障害者・児
補装具
第5条第19項
地域生活支援事業
・相談支援
・コミュニケーション支援、日常生活用具
【基 本 事 業】
・移動支援
・地域活動支援
第77条第1項
・福祉ホーム
等
支援
・広域支援
・人材育成
都道府県
等
第78条
※自立支援医療のうち
旧育成医療と、旧精神
通院公費の実施主体
は都道府県等
利用者本位のサービス体系へ再編
○ 障害者の状態やニーズに応じた適切な支援が効率的に行われるよう、障害種別ごとに分立した
33種類の既存施設・事業体系を、6つの日中活動に再編。
・ 「地域生活支援」、「就労支援」といった新たな課題に対応するため、新しい事業を制度化。
・ 24時間を通じた施設での生活から、地域と交わる暮らしへ(日中活動の場と生活の場の分離。)。
・ 入所期間の長期化など、本来の施設機能と利用者の実態の乖離を解消。このため、1人1人の利用者に対し、
身
近なところで効果的・効率的にサービスを提供できる仕組みを構築。
< 障害者自立支援法に基づくサービス体系 >
< 従前のサービス体系 >
日中活動
重 症 心 身 障 害 児 施 設
(
年
齢
超
過
児
)
以下から一又は複数の事業を選択
進行性筋萎縮症療養等給付事業
【介護給付】
身 体 障 害 者 療 護 施 設
更 生 施 設 ( 身 体 ・ 知 的 )
授産施設(身体・知的・精神)
小規模通所授産施設(身体・知的・精神)
精 神 障 害 者 生 活 訓 練 施 設
精神障害者地域生活支援センター
( デ イ サ ー ビ ス 部 分 )
障 害 者 デ イ サ ー ビ ス
※ 概ね5年程度の経過措置期間内に移行。
新
体
系
へ
移
行
(
)
※
福祉工場(身体・知的・精神)
居住支援
① 療養介護
( 医療型 )
※ 医療施設で実施。
② 生活介護
( 福祉型 )
施設への入所
又は
【訓練等給付】
③ 自立訓練
( 機能訓練・生活訓練 )
④ 就労移行支援
⑤ 就労継続支援
( 雇用型、非雇用型 )
【地域生活支援事業】
⑥ 地域活動支援センター
居住支援サービス
(ケアホーム、グループホーム、
福祉ホーム)
障害程度区分と給付の関係
区分に応じた利用
介 護 給 付
ホームヘルプサービス
ショートステイ
療養介護
生活介護
施設入所支援
ケアホーム
区分にかかわらず利用可
訓練等給付
自立訓練
就労移行支援
就労継続支援
グループホーム
※ 旧体系施設については、従前の障害程度区分A,B,Cを適用
地域の限られた社会資源の活用
(運営基準の緩和)
• 制度を抜本的に見直し、一つの施設で異なる障害を持つ人にサービス提供できる
よう規制緩和(特定の障害種別を対象にサービス提供することも可能)
(施設基準の緩和)
• 障害福祉サービスの拠点として、空き教室や空き店舗、民家の活用ができるよう施
設基準を緩和
(運営主体の緩和)
• 通所サービスについて、社会福祉法人のみならずNPO法人等も参入可能になるよ
う運営主体の規制を緩和
(既存のサービスの活用)
• 施設、事業体系を再編し、現在、法定外の事業である小規模作業所のうち、良質な
サービスを提供するものについては、新たなサービス体系の下でサービス提供で
きるよう、都道府県の障害福祉計画に基づいて計画的に移行。
身近なところにサービス拠点
小規模な市町村でも障害者福祉に取組可能・地域活性化に貢献
サービス利用者の将来見通し
[ 平成23年 ]
[ 平成17年 ]
訪問系サービスの
利用者数
9万人
(1.8倍)
16万人
小規模作業所 1万人
日中活動系サービスの
利用者数
小規模作業所 8万人
30万人
(1.6倍)
25万人
居住系サービスの
利用者数
24万人
施設入所者等
22万人
グループホーム 3万人
一般就労への移行
者数
47万人
△6万人
+6万人
+0.6万人
一般就労移行者 0.2万人
16万人
9万人
0.8万人
※平成15年
福祉施設における
雇用の場
+3.3万人
福祉工場
0.3万人
※ 計数については、端数処理を行っているため、積み上げと合計が一致しない場合がある
就労継続支援(雇用型)
3.6万人
障害保健福祉関係予算等
平成20年度予算(案)の概要
一般会計歳出予算
対前年度
伸
率
< 19年度 >
82兆9,088億円
+ 3兆2,228億円
+ 4.0%
< 20年度 >
83兆 613億円
+ 1,525億円
+ 0.2%
一 般 歳 出
対前年度
伸
率
46兆9,784億円
+ 6,124億円
+ 1.3%
47兆2,845億円
+ 3,061億円
+ 0.2%
21兆4,769億円
+ 5,352億円
+ 2.6%
22兆1,223億円
+ 6,454億円
+ 3.0%
※ 他省庁の対前年度
+ 772億円
▲ 3,393億円
障害保健福祉関係予算
対前年度
伸
率
9,094億円
+ 873億円
+ 10.7%
9,700億円
+ 606億円
+ 6.7%
うち福祉サービス関係費
対前年度
伸
率
4,873億円
+ 498億円
+ 11.4%
5,345億円
+ 472億円
+ 9.7%
厚生労働省予算
対前年度
伸
率
(参考)地方向け補助金・負担金の全体像
地方向け補助金・負担金の整理合理化を進めてきていますが、少子高齢化に伴
い、社会保障関連の負担金は増加しており、平成20年度では、総額のおよそ3分
の2を社会保障が占めるに至っています。
19.2兆円
<平成10年度>
社会保障
児童手当 0.4
障害者自立支援 0.7
児童扶養手当等 0.7
高齢者医療
市町村
国 保
4.0
2.2
生活保護 介護保険
2.0
1.9
公共事業
その他
6.0
(3
1
%)
1.3
(7%)
3.4
(1
8
%)
8.6
(4
5
%)
<平成20年度>
社会保障
12.4
(6
5
%)
文教・科学振興
文教・
科学振興
2.0
(1
1
%)
義務教育
1.7
公共事業
3.9
(2
1
%)
そ
の
他
0.7
(4%)
国庫負担金
下水道、
災害復旧等
2.8
19.1兆円 [ 一般会計 16.7兆円、特別会計 2.4兆円 ]
出典:平成20年度地方向け補助金等について(政府案) (19年12月財務省)
平成20年度 工賃倍増5か年計画支援事業
費
1 事業概要
「工賃倍増5か年計画」は「成長力底上げ戦略」に基づく『「福祉から雇用」へ推進5か年
計画』の一環として、福祉施設において働く障害者の工賃水準を引き上げるための取組
を推進するものである。
具体的には、平成19年度中に全ての都道府県において計画を策定し、関係行政機関
や地域の商工団体等の関係者を挙げた協力の下、5年間で平均工賃の倍増を目指すこ
ととしており、同計画に基づき平成20年度に都道府県が実施する事業、及び工賃等の水
準の向上を図るための設備整備等のための借入に係る債務保証に対して補助を行う。
2 所要額
平成19年度予算額
500,000千円 →
円)
平成20年度予算(案)
1,647,640千円
差引増減額
(+1,147,640千
〔平成20年度事業内容〕
1.工賃倍増支援等事業
① 経営コンサルタント派遣
・ 平成19年度予算においては、各県でモデル的に8事業所に対しコンサルタント派遣を実施。
・ 平成20年度は、1県あたり20事業所にコンサルタント派遣を実施。
② 事業所職員の意識改革(職業指導員説明会、リーフレット作成等)【新規】
③ 県内の事業所等に対する普及啓発活動【新規】
ァ 授産施設等の施設に対する研修会の開催
ィ 障害者の就労支援に理解を示している企業のPR(広報誌、パンフレットの作成等)
2.設備整備費等の借り入れに係る債務保証料に対する補助
(1) 事業内容
成長力底上げ戦略に関係する就労移行支援、就労継続支援B型、及び旧法授産施設を実施
する事業所等に加え、障害者の就労を支援するため、就労継続支援A型及び旧法福祉工場も対
象として、賃金又は工賃水準の向上を図るために設備投資又は事業用資金(運転資金)の借入れ
を行う場合、その融資に係る担保提供の円滑化と融資コストの低減を図り、賃金又・工賃水準の
向上に資するため、(財)社会福祉振興・試験センター等が行う債務保証を利用する場合に要する
経費の補助を行う。
(2) 補助対象事業
・ 就労移行支援、就労継続支援A型及び就労継続支援B型を実施する事業者等
・ 旧法福祉工場及び授産施設
(3) 補助内容
設備投資資金(施設設備整備融資)、就労支援事業用資金(運転資金)の借り入れに係る債務
保証料率の1/2を補助
【 補助対象となる借入の概要 】
① 借入目的
ァ 設備投資資金
補助対象事業において、利用者に支払う賃金又は工賃水準の向上を図るために行う設備投
資(設備(一部施設整備を含む)の整備)に要する資金の新規借入
イ 就労支援事業用資金(運転資金)
上記の設備投資に要する資金の新規借入に伴い、その初期段階における仕入等のために
必要な業務用資金(運転資金)としての新規借入
② 借入限度額及び償還年限(調整中)
(4) 実施主体、補助率
実施主体 : 都道府県
補 助 率 : 1/2 (負担割合 国50%,都道府県50%)
債務保証事業のスキーム
就労支援事業を実施
する社会福祉法人等
独立行政法人福祉医療機構等
① 借入申込み
⑦ 貸
付
(提供できる担保なし)
③ 審 査
④
国庫補助金
(債務保証料の
1/2)
⑥ 債務保証
② 債務保証
の申込み
⑤ 債務保証
料の支払
国は都道府県の
1/2を補助
都道府県
(財)社会福祉振興・
試験センター等
精神障害者地域移行支援特別対策事業(新規)(17億円)
事業の概要
受入条件が整えば退院可能な精神障害者の退院支援や地域生活支援を行う地域移行推進員(自立支援員)を配置するとともに、地域生
活に必要な体制整備を促進する地域体制整備コーディネーターを配置することにより、精神障害者の地域生活への移行を着実に推進する。
精神科病院・
関連施設内
地域生活
地域体制整備コーディネーター
退院促進・地域定着に必要な体制整備の総合調整
働きかけ ・病院・施設への働きかけ
精神障害者の地域生活
に必要な事業(例示)
働きかけ
・必要な事業・資源の点検・開発に関する助言、指導
・複数圏域にまたがる課題の解決に関する助言 等
精神科病院
日中活動の場
・自立訓練(生活訓練)
・就労移行支援・就労継続支援
・地域活動支援センター等
連
病院・施設から退院・
地域移行する個人への支援
住まいの場
・グループホーム・ケアホーム
等
携
福祉施設
連携
福祉ホームB型
地域移行型ホーム
等
地域移行推進員
(自立支援員)
・精神科病院等における利用対象者に対する退
院への啓発活動
・退院に向けた個別の支援計画の作成
・院外活動に係る同行支援 等
※ 必要に応じピアサポートなどを活用
連携
・相談支援事業
・居住サポート事業
・ピアサポート 等
・訪問看護
その他活用可能な社会資源
(
主
と
し
て
市
町
村
が
整
備
す
る
こ
と
を
想
定
)
障害者自立支援法の円滑な運営
のための改善策の実施について
○ 障害者自立支援法は、地域移行の推進や就労支援の強化など、障害者が地
域で普通に暮らせる社会の構築を目指すものであり、この改革を着実に定着さ
せていくことが必要。
○ しかしながら、本改革が抜本的なものであることから、さまざまな意見が存在。
こうした意見に丁寧に対応するため、法の枠組みを守りつつ、3年後の見直し
までの措置として、以下の3つの柱からなるもう一段の改善策を講じる。
【改善策の規模:1,200億円(国費)】
① 利用者負担の更なる軽減
(19年度当初、20年度当初:計240億
円)
② 事業者に対する激変緩和措置
(18年度補正:300億円)
③ 新法への移行等のための緊急的な経過措置
(18年度補正:660億円)
※ ②及び③は18年度補正で都道府県に基金を造成し、20年度まで事業を実施
特別対策の概要
1.利用者負担の更なる軽減
→ 負担感の大きい通所・在宅、障害児世帯を中心とした対策を実施
・通所・在宅 1割負担の上限額の引下げ(1/2 → 1/4)
軽減対象の拡大(収入ベースで概ね600万円まで)
※障害児については通所・在宅のみならず入所にも対象拡大を実施
・入所
工賃控除の徹底(年間28.8万円まで全額控除)
2.事業者に対する激変緩和措置
→ 日割り化に伴い減収している通所事業者を中心とした対策を実施
・旧体系
従前額保障の引上げ(80% → 90%)
※旧体系から新体系へ移行する場合についても90%保障の創設
・通所事業者 送迎サービスに対する助成
3.新法への移行等のための緊急的な経過措置
→
直ちには移行できない事業者の支援と法施行に伴う緊急的な支援
・小規模作業所等に対する助成
・移行への改修等経費、グループホーム借上げのための初度経費の助成
・制度改正に伴うかかり増し経費への対応、広報・普及啓発 等
障害者自立支援法の抜本的な
見直しに向けた緊急措置
○ 障害者自立支援法は、施行後1年半が経過。昨年12月、改革に伴う軋みに
丁寧に対応するため、国費1,200億円の「特別対策」(平成20年度まで)を決
定し、利用者負担の更なる軽減や事業者に対する激変緩和措置などを実施。
○ 今回、「障害者自立支援法の抜本的な見直し」に向けて、当事者や事業者の
置かれている状況を踏まえ、特に必要な事項について緊急措置を講ずる。
【緊急措置】
「特別対策」で造成した基金の活用を含め満年度ベースで総額310億円 *
〔20年度予算案〕 130億円
① 利用者負担の見直し(20年7月実施)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70億円
・ 低所得世帯を中心とした利用者負担の軽減【障害者・障害児】
(満年度ベースで100億円)*
・ 軽減対象となる課税世帯の範囲の拡大 【障害児】
・ 個人単位を基本とした所得段階区分への見直し 【障害者】
② 事業者の経営基盤の強化(20年4月実施)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30億円
(「特別対策」の基金の活用を含め180億円)*
③ グループホーム等の整備促進(20年度実施)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30億円 *
・ グループホーム等の施設整備等に対する助成
利用者負担の見直し① 〔障害者〕
低所得者の負担軽減(20年7月実施)
○ 低所得1及び2(非課税世帯)の障害者の居宅・通所サービスに係る負担上限
月額を更に軽減。
【1月当たりの負担上限額】
・ 低所得1
3,750円 → 1,500円
・ 低所得2
6,150円 → 3,000円
(通所サービスは 3,750円 → 1,500円)
世帯の範囲の見直し(20年7月実施)
○ 成人の障害者について、障害福祉サービスの負担上限額を算定する際の所
得
段階区分を、「個人単位」を基本として見直し、本人と配偶者のみを勘案するこ
ととする。
利用者負担の見直し② 〔障害児〕
障害児を抱える世帯の負担軽減(20年7月実施)
① 「特別対策」による負担軽減措置の対象となる課税世帯の範囲拡大
(現
行):年収600万円程度まで※(市町村民税所得割額16万円未満)
(見直し後):年収890万円程度まで※(市町村民税所得割額28万円未満)
→ 障害児を抱える世帯の8割以上が軽減措置の対象に。
② 1月当たりの負担上限額を次のように軽減
・ 年収890万円程度まで※(市町村民税所得割28万円未満)の世帯が対象
・ 居宅・通所・入所サービス共通
【1月当たりの負担上限額(居宅・通所サービスの場合)】
・ 低所得1 3,750円 → 1,500円
・ 低所得2 6,150円 → 3,000円
(通所サービスは 3,750円 → 1,500円)
・ 課税世帯(年収600万円程度まで※)
9,300円 → 4,600円
・ 課税世帯(年収600~890万円程度まで※) 37,200円 → 4,600円
※ 3人世帯(主たる生計維持者+被扶養配偶者+障害児)の場合
* 「特別対策」による利用者負担対策は、平成21年度以降も実質的に継続。
事業者の経営基盤の強化①
緊急的な改善措置(20年4月実施)
○ 「特別対策」による従前収入の9割保障に加えて、以下の緊急措置を実施。
① 通所サービスに係る単価の引上げ
通所サービスの「利用率」を見直すことにより、単価を約4%引上げ。
② 定員を超えた受入れの更なる弾力化
通所サービスの受入れ可能人数について、
・ 1日当たりで定員の120%まで → 150%まで
・ 過去3か月平均で定員の110%まで → 125%まで
③ 入所サービスにおける入院・外泊時支援の拡充
入所サービスの利用者が入院・外泊した際、一定の支援を実施した場合に障害福
祉サービス費用を支払う措置について、更に拡充。
* 障害福祉サービス費用の額(報酬)については、サービスの質の向上、良質な人材の
確保と事業者の経営基盤の安定のため、21年4月に改定を実施。
事業者の経営基盤の強化②
基金の使途や事業の実施基準の見直し
○ 「特別対策」により各都道府県に造成された基金の使途や事業の実施基準を
見直すことにより、以下の支援を実施。
(1) 就労支援を行う事業者への支援
一般就労への移行等を促進するため、就労継続支援事業者等が、企業等での作
業を通じた支援を行った場合などに助成。
(2) 重度障害者への対応
① ケアホームにおける対応
ケアホームに重度障害者を受け入れた場合に助成。併せて、ケアホームにおいて
特例的にホームヘルプを利用できる者の範囲を拡大。
② 重度訪問介護における対応
現行の基金事業(在宅重度障害者地域生活支援基盤整備事業)において、ホーム
ヘルパーの資質の向上や求人広告に要する費用等も助成対象となることを明確化。
(3) 児童デイサービス事業への支援
就学前児童の受入れが少ない児童デイサービス事業所が、職員を加配した上で個
別支援に取り組む場合に助成。
(4) 相談支援事業の拡充
社会福祉法人等が、障害者等に対する障害福祉サービスについての説明会・相談
会や障害福祉サービスを利用していない障害者等の自宅訪問などの事業を行った場
合に助成。
(5) 地域における施設の拠点機能に着目した事業者への支援
障害者に対する地域住民の理解や支援力を高めるなど、施設の拠点機能を高める
ための活動に助成。
(6) 諸物価の高騰等への対応
諸物価高騰によるコストの増加分や事務処理コストの増加分について、事業者に対
し助成。
(7) 小規模作業所の移行促進
新体系への移行を促進するなど、小規模作業所への支援。(法定事業に移行する際
の基準の見直しを含む。)
(8) 視覚障害者移動支援従事者の資質の向上
視覚障害者移動支援従事者の資質の確保のため実施する研修等に助成。
(9) その他
平成20年度税制改正大綱(抄)
平成19年12月13日
自民党・公明党
第二
4
平成20年度税制改正の基本的考え方
環境問題、安心・安全への配慮
また、国民の暮らしの安心・安全が確保されるよう、(中略)障害者の就労支援の観点から授
産施設等に仕事を発注した企業に対する課税の特例の措置を講ずる。
第三
平成20年度税制改正の具体的内容
四
環境問題、安心・安全への配慮
7
障害者の「働く場」に対する発注促進税制の創設
青色申告書を提出する事業者が、平成20年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始す
る各事業年度において、授産施設等に対して資産の譲渡、役務の提供等の対価として支払った金
額(授産施設等取引金額)がある場合において、その事業年度における授産施設等取引金額の合
計額が前事業年度等における授産施設等取引金額の合計額を超えるときは、その事業年度又は直
近2事業年度において取得等した固定資産について、30%の割増償却ができる制度を創設する。
この場合において、割増償却額の合計額が、その事業年度における授産施設等取引金額の合計額
から前事業年度等における授産施設等取引金額の合計額を控除した残額を超えるときは、当該割
増償却額の合計額は、当該残額を限度とする。
障害者の「働く場」に対する発注促進税制の創設
【概要】
○ 障害者の「働く場」に対する発注を前年度より増加させた企業に
ついて、企業が有する固定資産の割増償却を認める。
・青色申告者である全ての法人又は個人事業主が対象。
・発注には業務を下請けした場合のみならず、自家生産した商品を売買した場合等も含む。
・固定資産は、事業の用に供されているもののうち、当該事業年度又は直近2事業年度に取
得又は製作したもの。
○ 割増しして償却される限度額は前年度からの発注増加額(※)
(※)対象となる固定資産の普通償却限度額の30%を限度。
○ 5年間(平成20年4月1日~平成25年3月31日)の時限措置
(対象となる発注先)
※税制優遇の対象となる障害者の「働く場」
・障害者自立支援法の就労継続支援を行う事業所
・障害者雇用促進法の特例子会社及び重度障害者多数雇用事業所
等(予定)
障害者の「働く場」への発注促進税制(イメージ)
授産施設等
企業
発注額が増加した場合
※障害者の「働く場」
割増償却
就労継続支援事業所
特例子会社
重度障害者多数雇用事業所
固定資産
等
固定資産の例
○ 土地、建物及びその附属設備
(暖冷房設備、照明設備、エレベーターなど)
【具体例】
・固定資産が1,000万円(償却期間10年、定額法)
・発注増加額が20万円の場合
普通償却限度額(①)
100万円(1,000万円×10%)
償却限度額(①+②)
120万円
=
+
発注増加額(②)
20万円(※)
※ 発注増加額が50万円の場合、固定資産の普通償
却限度額(100万円)の30%(30万円)が限度となる。
○ 機械及び装置
(工作機械、印刷機械、食料製造機械など)
○ 車両及び運搬具
(自動車、フォークリフトなど)
○ 工具、器具及び備品
(事務机、応接セット、パソコン、コピー機、など)
普通償却限度額
+
償却限度額=
前年度からの発注増加額(※)
※
対象となる固定資産の普通償却限度額の30%
を限度とする。
障害者支援施設等との随意契約の範囲の拡大
1.現行制度
普通地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、障害者支援施設
等(※)においてその活動の成果として製作された物品を買い入れる契約を規定。
(※)障害者支援施設、地域活動支援センター、障害福祉サービス事業(生活介護、就労移行支援又は就労継続支援を行う事
業に限る。)を行う施設、小規模作業所。(経過措置により、更生施設(身体、知的)、授産施設(身体、知的、精神)、
福祉工場(身体、知的、精神)を含む。)
2.経緯
構造改革特区第10次提案募集(平成18年10月)において、現行で随意契約が可能とされてい
る物品の購入以外にも「地方公共団体が障害者支援施設等と役務提供に係る随意契約を行うこ
とを可能とすること」について特区提案が行われ、政府として「平成19年度中に結論」として
いる。
3.改正内容(案)
普通地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、普通地方公共団
体が障害者支援施設等から役務の提供を受ける契約を追加する(地方自治法施行令の改正)。
(現在、総務省において別添のとおりパブリックコメントを実施中。)
物品の具体例(現行)
石鹸、軍手、縫製品、のし袋セット、買物袋、竹炭
製品、手作りロウソク、オリジナルタオル、麺類、
椅子、花苗 等
役務の具体例(今般の改正で追加)
クリーニング、公園・建物の清掃、縫製作業、包
装・組立、袋詰め、発送業務 等
別添
32
原油価格の高騰に伴う中小企業、各業種、国民生活等への
緊急対策の具体化について(取りまとめ)(案)
平成19年12月25日
原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議
最近における原油価格の急激な高騰は、国民の生活を直撃するとともに、
十分な価格転嫁を行うことが難しい下請事業者をはじめとする中小企業や、
漁業・農林業・運送業をはじめとする各業種に深刻な影響を与えている。
そこで、中小企業・下請事業者や各業種への対応、省エネなどの構造転
換対策、国際原油市場への働きかけ等を一層強化するとともに、寒冷地・
離島などの厳しい状況に置かれた国民の生活に対し、きめ細かく配慮の行
き届いた対策を打ち出すことが緊急の課題となっている。
1.中小企業など業種横断対策
(1)資金繰り支援・金融円滑化
(2)窓口・相談体制の整備
(3)原油等の価格上昇分の転嫁に関する
周知徹底
(4)下請代金法・独占禁止法の厳格な運用等
2.建設業、漁業、農林業、運送業、
石油販売業など業種別対策
-対策を通じた国民生活の安定
-
(1)建設業の受注価格の適正化等
(公共工事・民間工事)
(2)漁業
(3)農林業
(4)運送業
(5)生活衛生関係営業
(クリーニング業、公衆浴場等)
(6)石油販売業
こうした状況を踏まえ、12月11日に、総理主宰の下、主要閣僚・与党幹
部による「原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議」を開
催し、6項目の柱からなる対策の「基本方針」を策定した。
この取りまとめは、当該「基本方針」に基づいて各項目の対策を具体化
するものであり、今後、政府一体となって積極的に対策の実施に取り組ん
でいくこととする。
3.離島、寒冷地など
地方の生活関連対策
(1)離島対策
(航路、航空路線等)
(2)地方バス路線の維持対策
(3)寒冷地における
生活困窮者対策など
地方公共団体の
自主的な取組への支援等
4.省エネ、新エネなど
構造転換対策
(1)省エネルギー技術・設備の
開発・導入促進
(2)バイオ燃料・バイオマス
エネルギーの開発・導入促進
(3)石油以外の化石燃料・再生可能
エネルギーの開発・導入促進
対策の大き
な柱(6項
目)
5.国際原油市場の
安定化への働きかけ
(1)エネルギー外交の強化
6.石油製品等の
価格監視等の強化
(1)原油価格等の高騰が
生活関連物資の価格等に
与える影響に関する調査
(2)石油製品の価格監視の強化、
安定供給の確保
3.離島、寒冷地など地方の生活関連対策
(1)離島対策(航路、航空路線等)(国土交通省)
【離島航路】
①離島航路の維持・改善
(平成19年度補正:17.5億円)
(平成20年度
:41.0億円)
・離島航路は、住民の通勤、通学、通院その他日常生活を支える重要な交通手段で
あり、また郵便物、生活必需品及び主要物資を輸送する生活航路でもあるため
「離島航路整備法」に基づき、離島航路の維持・改善を図る。
離島航路補助事業者に対し、当該航路を維持
するために必要な補助金を交付するとともに、
離島航路就航船舶のバリアフリー化に要する
費用を補助。
また、地方運輸局支援のもと、官民の関係者
により、離島観光を核とした交流人口の拡大に
よる離島航路の活性化調査。さらに燃費の向上、
燃料消費量の抑制、経費削減に資する設備費や
操船等の様々な取組みについて運航を行い検証。
【航空路線】
②航空機購入費補助金(運航費等)
(平成20年度:4.3億円)
・離島航空路線は、離島住民の日常生活及び経済活動に重要な役割を果たしており、
地域的な航空ネットワークの維持及び活性化を図る観点から、離島航空路線に就航
する航空会社に対し、離島航空路線の運航に係る費用等を補助。
③固定資産税の軽減
(平成20年度減税規模:約1億円)
・離島航空路線の維持を図るため、主として離島路線に就航する航空機について、
課税標準を軽減。
④地方航空路線の活性化策の検討
・離島・コミューター路線を含めた地方航空路線の活性化策を検討。
(2)地方バス路線の維持対策(国土交通省)
①地方バス路線維持対策事業
(平成19年度補正: 5.5億円)
(平成20年度
:73.5億円)
・地域住民の通学・通院等の生活に必要なバス路線の
維持が困難となっている現状にかんがみ、生活交通
路線として必要な広域的・幹線的なバス路線を維持・
確保するため、当該路線の運行により生じた欠損や
当該路線の運行に必要な車両購入等に対して補助。
・原油価格高騰対策として、燃費の良い新型車両への
更新を図るため、補正予算により対応。
平成19年度補正予算案: 23億円
平成20年度予算案
:119億円
(3)寒冷地における生活困窮者対策など
地方公共団体の自主的な取組への支援等
①地方公共団体の自主的な取組に対する特別交付税措置(平成19年度)
(総務省)
・12月11日の「基本方針」策定を受け、即日、都道府県・市町村に対し、原油価格
高騰に対する取組を促す通知を行うとともに、取組内容に関する照会を実施。
地方公共団体から提出された住民等に対する支援策は、例えば以下のとおり。
(※今後異動があり得る。金額は一般財源)
(ⅰ)生活困窮者に対する灯油購入費等の助成
(現時点での実施(検討中含む)団体:4道県及び278市町村 29億円程度)
(例)市町村が高齢者世帯・障害者世帯・母子家庭である住民税非課税
世帯に対し、1世帯当たり5,000円~10,000円程度を助成
上記の措置を講じる市町村に対し、県が1/2を助成
(ⅱ)その他
(現時点での実施(検討中含む)団体:22府県及び63市町村 6億円程度)
(例)社会福祉施設(養護老人ホーム等)に対する暖房費高騰分の助成
農林漁業者に対する利子補給・保証料補助
省エネ型園芸施設、漁業施設等の整備補助 等
※今後、地方公共団体に再度照会を行い、精査の上で所要一般財源の1/2に
ついて特別交付税措置を講じることとする。
②生活保護(冬季加算)(厚生労働省)
(平成20年度:19,669億円の内数)
・国が生活に困窮するすべての国民に対してその困窮の度合に応じた必要な保護を
行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とする。
生活保護基準額の中に、暖房等の費用として冬季加算を設け、11月から3月まで
これを支給。
【参考】冬期加算額(札幌市で4人世帯の場合):月額40,750円
③生活福祉資金(福祉資金)(厚生労働省)
(都道府県社会福祉協議会の貸付原資(1,150億円)を活用)
・低所得者、障害者又は高齢者に対し、資金の貸付けと必要な援助指導を行うこと
により、その経済的自立等を図る。なお、本制度が特に寒冷地等における灯油等
の一括購入費用についても対象となることについて、都道府県に対し周知
(平成19年12月11日)。
④歳末たすけあい運動(厚生労働省)
・平成19年の「歳末たすけあい運動」の実施に際し、灯油価格の高騰により支援を
必要とする方への配分について配慮するよう、共同募金会に協力を要請
(平成19年11月30日)。
障害者自立支援法の
施行状況等
障害福祉サービスの状況について(1)
利用者数の状況
※ 6国民健康保険団体連合会のデータ
○ サービス利用者数(全体)は対前年度比8.8%と着実に増加
【利用者数の伸び(対前年度比(18年4~9月)】
居宅サービス
通所(授産施設等)
+14.7%
+8.0%
新体系サービスの指定状況
入 所
+0.1%
計
+8.8%
※ 42都道府県の状況
○ 法施行後、新体系サービスへの移行が始まっている
5,745施設(18年9月末現在)のうち
18年10月1日(施行時)
→ 220施設(3.8%)
→
19年4月1日
794施設(13.8%)
※ 新体系サービス:就労移行支援事業、就労継続支援事業、生活介護など、障害者自立支援法によって創設されたサービス
障害福祉サービスの状況について(2)
就労支援サービスの動向
○ 19年4月1日現在、全国で633事業所が就労移行支援事業を実施、8,705人が利用
(国の指針では、平成23年度には8,000人が福祉サイドから一般就労へ移行することを目標としている。)
○ 19年4月1日現在、全国で140事業所が就労継続支援A型を実施。18年9月末現在の福祉工場
は119か所であり、既にこれを上回っている状況。
(参考)障害者自立支援法によって創設された就労支援サービス
・就労移行支援事業:一般企業への就労を目指し、一定期間、知識・能力向上のための訓練を行う。
・就労継続支援事業:一般就労が困難な者に働く場を提供しつつ必要な訓練を行う(A型=雇用契約型、B型=非雇用型)。
福祉工場はA型に対応する旧体系サービス
(参考)成長力底上げ戦略(基本構想)(平成19年2月15日)
公的扶助(福祉)を受けている人などについて、セーフティネットを確保しつつ、可能な限り就労
による自立・生活の向上を図ることとし、そのため『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』を新たに
策定・実施。
○ 障害者自立支援法に基づく「就労移行支援事業」の全国展開
○ 「工賃倍増5か年計画」(全都道府県において策定)による福祉的就労の底上げ 等
相談支援体制の構築
○ 相談支援体制は、すべての市町村で整備されており、3障害の窓口を一元化しているものが約6割
○ 都道府県自立支援協議会は、本年4月1日時点で22道県が設置済、本年度中にすべての都道府
県で設置予定。市町村の地域自立支援協議会は、4月1日時点で約4割が設置済
(参考)地域自立支援協議会:障害福祉に関する関係者が集まり、地域における支援体制や連携のあり方を協議する場として市町
村が設置。
地域における有効な取組事例(1)
(一般就労への移行、地域生活への移行に関する好事例)
【一般就労への移行への取組例】
○ 東京都大田区
区が中心となり、養護学校、福祉施設、ハローワークの就労支援ネットワークを構築。
障害者の適性と企業ニーズを的確にマッチングさせ、毎年施設利用者の6~7%が企業等に
就職。 (参考)全国平均では毎年施設利用者の1%程度が企業に就職
○ 東京都世田谷区の知的障害者通所授産施設
利用期間を原則2年間と定め、施設利用者一人ひとりに対し就職に向けた支援計画を策定
するとともに、就職のあっせん、職場定着支援を実施し、施設を利用した方の9割以上が一般
企業へ就職。職場定着率も9割弱と高い割合となっている。
【地域生活への移行への取組例】
○ 長野県の知的障害者入所施設
施設を縮小し、地域移行を進め、3年間で約4割の利用者がグループホームなどに移行。施
設を出て地域生活を始めた障害者の家族に実施したアンケート調査によると、7割以上の方
が表情が明るくなったなど「肯定的な評価をしている。」と答えている。
地域における有効な取組事例(2)
(工賃水準の向上に関する好事例)
【工賃水準が向上した例】
○ 三重県の精神障害者通所授産施設
パンや洋菓子の製造・販売、手工芸、農耕、小売業などを実施していたが、工賃水準の向上
が見込まれるパンの製造・販売に事業内容を絞るとともに、移動販売や量販店での販売を開
始。さらに、パンをセット販売にすることや、製造工程の見直しも行った結果、17年度平均月額
約1万2千円の工賃が、18年度平均約2万3千円に向上。
(参考)授産施設における平均工賃は約1万5千円
「成長力底上げ戦略」から
○ 工賃水準の確保につながる企業からの発注に対する措置
・ 障害者雇用促進法による、障害者に対する企業からの仕事の発注を奨励する仕組みについ
て、対象となる福祉施設の範囲を、工賃水準アップなどの取組を行う福祉施設にも拡大。
※ 企業からの発注額(年間105万円以上)の概ね5%相当を企業に還元。
(例) 420万円の発注 → 年間25.2万円を企業に支給
入所施設から地域生活支援への転換 【長野県西駒郷の例】
○ 平成14年10月に策定された西駒郷基本構想に基づき、入所施設中心の支援から、グループ
ホーム、日中活動、相談支援等の地域を総合的に支援する施設へ転換
○ 利用者の退所後、4人部屋の解消など居住環境を改善するとともに、ショートステイに活用
○ 既存の訓練棟・作業棟についても日中活動系サービスに活用
1 西駒郷退所者の状況
年 度
1 4 年度
1 5 年度
1 6 年度
1 7 年度
地域生活移行者数
17
29
71
56
累 計
うち
人 数
グループ
ホーム移行 か所数
施設利用者数
(年度末現在)
17
46
117
173
2 地域生活移行者の日中活動の場
区 分 人 数
1 8 年度
就 職
31
共同作業所
52
243
通所授産施設
62
5 0 (計画)
通所更生施設
25
1 9 ・1 ・3 1 現在1 9 ・4 ・1 予定
20
193
50
(計画)
11
24
66
52
20
2 か所
7 か所
2 7 か所
2 4か所
1 2 か所
2 5 か所
その他
23
441
406
326
261
242
211
計
193
※今後、さらに就労移行支援、生活介護などの新体系サービスも整備し、10年後に
は施設の定員を60~100人とする予定。
3 県内の入所施設からの地域生活移行の状況
1 8年度
区 分 1 6 年度 1 7 年度
(予定)
西 駒 郷
71
56
50
他 施 設
67
71
50
計
138
127
100
計
177
188
365
西駒郷(県立施設)の
取組が県内の他の民間
施設にも波及。
地域で生活するために
は、グループホーム等の
居住の場に加えて、日中
活動の場や相談支援体制
等を整備することが重要。
※相談支援の拠点として平成
16年に県内10の圏域ごとに
障害者総合支援センターを設
立
地域生活移行した方の家族へのアンケート
(長野県西駒郷の地域生活移行の取組から)
実施期間
対象者数
回答数
方
法
平成18年2月20日~3月10日
地域生活移行した方の家族142人
95人
郵送による無記名回答方式
移行後
移 行 前(基本構想策定時)
よくなかった6%
回答なし
反対29%
その他
8%
1%
大いに賛成
賛成31%
あまりよくなかった
13%
絶対反対7%
わ
か
ら
な 回答なし
よくなかった い
2%
3%
よかった74%
3%
4%
大変よかった
どちらかと
いうと賛成
18%
22%
どちらかと
言うと反対
どちらとも言えなかった
31%
14%
意識
の
変化
どちらとも
言えない
39%
35%
まあよかった
長野県西駒郷の地域生活移行
○大規模コロニー(500人定員の知的障害者入所施設)の入所者の地域生活移行を推進(西駒郷基本構想に基づき全県的な取組)
○平成19年1月の入所者数は242人に減少(H14~H19.1の地域生活移行者は193人)
○今後も全県的に地域の基盤整備を進め、地域生活移行を推進する。
(県障害福祉計画目標値:入所者の17%の移行を進め、新たな入所者も含めて全体で14%以上削減)
就労支援と地域生活支援等
についての一層の取り組み
就労支援と地域生活支援等についての一層の取り組み
相談支援
・相談支援体制整備(地域自立支援協議会)
・特別アドバイザー派遣事業
その人らしい
地域での暮らし
地域での
住まいと暮らしの支援
・ケアホームにおける重度障害者への対応
・グループホーム、ケアホームの整備推進
・居住支援(居住サポート事業(厚労省)と
あんしん賃貸支援事業(国交省)の連携)
就労支援
・工賃倍増計画による利用者の所得確保
の
推進
・職場実習先の確保
・現行の融資制度、助成金の活用促進
・就労支援ネットワークの構築促進
「成長力底上げ戦略」3本の矢
『機会の最大化』= ”好循環”を創出し、成長力を底上げ
①人材能力戦略
②就労支援戦略
③中小企業底上げ戦略
“能力発揮社会”の実現
『福祉から雇用へ』
産業政策と雇用政策の一体運用
職業能力形成の機会
が付与される
・安定した職
場で働ける
・キャリアップ
できる
能力・知識が
向上する
公的扶助等(福
祉)と就労促進プ
ログラムが連携
経済的自立
ができる
就労への移
行が図られ
る
生産性が向上する
人材が確保
できる
賃金の底上
げができる
『「福祉から雇用へ」 推進5か年計画』の考え方
~誰でもどこでも自立に向けた支援が受けられる体制整備~
○ 福祉を受ける方に対して、可能な限り就労による自立・生活の向上を図る。(※)
- 国民が社会的、経済的、精神的な自立を図る観点から、自ら、働いて生活を支え、健康を維持する、といった
「自助」を基本に、それを「共助」、「公助」が支える福祉社会を構築
※ 自立の支援や生活の向上が目的-自助努力のみでは生活に困窮する方に対しては福祉により適確に対応
○ 緒についたばかりの福祉事務所等とハローワークの連携による「福祉と雇用の連携」施策、
地方自治体における自立支援策を加速
例 福祉事務所において、自立・就労意欲のある生活保護や児童扶養手当の受給者を選定し、ハローワークにおいて、就労支援を実施
○ 「福祉から雇用へ」の実効性を高めるため、関係機関の連携を促進するとともに、産業界等の
理解・協力を得ながら(※)、『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』として実施
※ 産業界・企業の理解、協力
・ 職業紹介、職業訓練等を受けた後における雇用の機会の確保
・ 母子世帯等の実情を踏まえた多様な働き方や、障害者雇用率達成の必要性への理解などの意識改革
・ 企業の生産性の向上などにより、安定した雇用機会の創出や、賃金の引上げを図ること
福祉施設関係者、特別支援学校関係者等の意識改革も必要
ハローワーク
福 祉
福
祉
受
給
者
等
○ 生活保護受給者等就労支援事業
(就職支援ナビゲーターによる支援、トライアル雇用、公共職業訓練等)
○ 障害者雇用率達成指導、職業相談・職業紹介
就
労
連
支
援
○就労支援チームによる支援
生活保護世帯
害
者
等
産 業 界
企
○障害者就業・生活支援センターによる支援
母 子 世 帯
障
雇 用
生
活
支
援
等
携
業
福祉事務所、母子家庭等就業自立支援センター、
障害福祉サービス事業所 等
○ 生活相談・助言
○ 関係機関等との連絡調整
○ 福祉給付による生活支援 ○ 就労に結びつくサービスの提供
地 方 自 治 体
福祉 ・ 労政 ・ 商工
等
等
就
労
に
よ
る
自
立
・
生
活
の
向
上
「工賃倍増5か年計画」による福祉的就労の底上げ
○ 障害者の経済的自立に向けて、一般就労への取組に加え、非雇用の形態で働く障害者の工賃
を引き上げる取組が重要。このため、「工賃倍増5か年計画」に基づき、官民一体となった取組を推進。
○ 具体的には、各事業所において、民間企業等の技術、ノウハウ等を活用した以下のような取組を
実施。
・ 経営コンサルタントや企業OBの受け入れによる経営改善、企業経営感覚(視点)の醸成
・ 一般企業と協力して行う魅力的な商品開発、市場開拓
等
行
政
都道府県
市町村
産業界
福祉施設
民間企業のノウハウを活用
コンサルタント派遣
企業OBの送り出し
○ 経営改善、
商品開発等
企業との交流の促進
発注・購入促進
○ 市場開拓等
連
携
ハローワーク
工賃水準
の向上
経済団体
企 業
企業と福祉
の
交流の場
企 業
利用者
一般就労移行促進
障害者の地域生活移行支援
入所施設
社会的入院
地域で暮らす
24時間完結型
夜間(居住)
日中活動
相談支援
移行
=24時間を地域の社会資源で支える
夜間(居住)
日中活動
その他
居 宅
グループホーム
ケアホーム
アパート・公営住宅
等
通所施設
地域活動支援センター
一般就労
等
居宅支援サービス
余暇支援
等
相談支援事業がコーディネート
※ 障害者ケアマネジメントの役割
障害者の地域生活を支援するために、個々の障害者の幅広いニーズと様々な地域の社
会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけて調整を図るとともに、総合的か
つ継続的なサービス供給を確保し、さらには社会資源の改善及び開発を推進すること。
そして、それを具体的に行うのが、相談支援事業であり、その中核的役割をなすのが地
域自立支援協議会の使命である。
相談支援事業はなぜ重要か
市町村の必須事業として
サービス(自立支援給付)の利用プロセスに位置付けられ、総合的相談支援を行う
障害者等の権利擁護のために必要な援助を行う
自己完結しないでニーズに対する総合的な協働支援を行う
システムづくりに関し中核的役割を果たす協議の場として
自立支援協議会の活用
対応困難事例の検討・必要な社会資源の検討
障害福祉計画の作成関与等
「障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県
の地域生活支援事業の提供体制の整備並びに円滑な実施を
確保するための基本的な指針」告示(抄)
第1 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確
保に関する基本的事項
三 相談支援の提供体制の確保に関する基本的考え方
– 障害者等、とりわけ重度の障害者等が地域において自立し
た日常生活又は社会生活を営むためには、障害福祉サービ
スの提供体制の確保とともに、これらのサービスの適切な利
用を支える相談支援体制の構築が不可欠である。
– このため、地域の実情に応じ、中立・公平な立場で適切な相
談支援が実施できる体制の整備を図るとともに、相談支援事
業を効果的に実施するため、事業者、雇用、教育、医療等の
関連する分野の関係者からなる地域自立支援協議会を設け
るなどのネットワークの構築を図る。
障害者相談支援事業のイメージ
地域生活支援事業
利用者
障害者相談
支援事業
(交付税)
福祉サービス利用援助
社会生活力を高めるための支援
サービス担当者会議
社会資源の活用支援
ピアカウンセリング
異分野多職種協働
市町村相談
支援機能強
化事業
成年後見制
度利用支援
事業
住宅入居等
支援事業
(居住サポート
事業)
総合的な相談支援
権利擁護のための必要な事業
障害程度区分にかかる認定調査
の委託の場合
・認定調査の実施
・サービス利用意向の聴取
専門機関の紹介
相談支援専門員
サービス利用計画作成・フォロー
の場合
・サービス利用計画作成・フォロー支援
・利用者負担額の上限管理
・委託相談支援事業の運営評価
・中立公平性の確保
・困難事例への対応協議調整
・ネットワーク構築
・地域資源の開発改善
・人材活用(専門的職員・アドバイザー)
地域自立支援協議会の運営
サービス事業者
行政機関
当事者
サブ協議会
権利擁護
就労支援
地域移行 等
保健・医療
企業・就労支援
地域自立支援協議会
子育て支援・学校
高齢者介護
民生委員
相談支援事業者
障害者相談員
自立支援協議会を市町村が
設置し、中立・公正な事業運
営の評価を行う他、権利擁
護等の分野別サブ協議会等
を設置運営する。
(市町村単位・圏域単位)
居住サポート事業とあんしん賃貸支援事業の連携
地域の支援体制でサポート
あんしん賃貸
支 援 事 業
親族等
就労先企業
あんしん賃貸住宅提供者
賃貸借契約の締結
家 主 等
物
件
の
登
録
依
頼
物
件
の
仲
介
居住サポートの提供
入
居
に
係
る
調
整
等
緊
急
時
等
対
応
利
用
者
市 町 村
福祉サービス事業者
相談 ・ 助言
医療機関等
委
支援体制の調整
居住サポート事業者
あんしん賃貸支援
事業協力店
( 仲介業者 )
物件の登録
物件の斡旋
連 携
物件斡旋の依頼
( 相談支援事業者等 )
【 事業内容 】
○ 24時間支援(緊急時等の対応)
○ 地域の支援体制に係る調整(関係機関等との連絡・調整)
○ 入居支援(あんしん賃貸支援事業協力店へ依頼、調整等)
登録情報の閲覧(インターネット)
情報データベース(インターネットで情報提供)
託
今後の課題等
人材確保のための措置
○ 労働力人口の減少も見込まれる中で、福
祉・介護ニーズの増大や多様化・高度化に対
応していくため、福祉・介護サービス分野を、人
材の確保に最も真剣に取り組んでいかなけれ
ばならない分野の一つと位置付け。
○ 指針の本来の対象である社会福祉事業の
ほかに、介護保険における居宅介護支援や特
定施設入居者生活介護など、これと密接に関
連するサービスも合わせて「福祉・介護サービ
ス」と総称し、人材確保のための取組を共通
の枠組みで整理
○ ホームヘルパーの
多数を占める中高年層
や就職期の若年層など、
それぞれのライフスタイ
ルに応じた働きやすい
労働環境の整備
○ 従事者のキャリアア
ップの仕組みの構築と
その社会的評価に見合
う処遇の確保等のため
の取組が必要。
福祉人材確保指針のポイント(1)
施設長・法人管理職等
キャリアアップ
サービスリーダー
正規雇用職員
他分野
非正規雇用職員 高齢者等
支援
人
材
確
保
の
安
定
化
・
定
着
化
福祉人材確保指針のポイント(2)
労働環境の
整備の推進
○ キャリアと能力に見合う給与体系の構築、適切な給与水準の確保、給
与水準・事業収入の分配状況等の実態を踏まえた適切な水準の介護報酬
等の設定、介護報酬等における専門性の高い人材の評価の在り方検討
○ 労働時間の短縮の推進、労働関係法規の遵守、健康管理対策等の労
働環境の改善
○ 新たな経営モデルの構築、介護技術等に関する研究・普及 等
キャリアアップの
仕組みの構築
○ 施設長や生活相談員等の資格要件の見直し等を通じた従業者のキャリ
アパスの構築や研修 体系
○ 従事者のキャリアパスに対応した研修体系の構築
○ 経営者間のネットワークを活かした人事交流による人材育成 等
福祉・介護サービス
の周知・理解
○ 教育機関等によるボランティア体験の機会の提供
○ 職場体験、マスメディアを通じた広報活動等による理解の促進 等
潜在的有資格者等
の参入の促進
○ 潜在的有資格者等の実態把握/福祉人材センター等による相談
体制の充実/無料職業紹介等による就業支援・定着の支援 等
多様な人材の
参入・参画の促進
○ 高齢者への研修、障害者への就労支援等を通じた高齢者などの参入・
参画の促進 等
障害程度区分勉強会
【趣旨】
身体障害者、知的障害者、精神障害者の障害特性をより踏まえた障害程度区
分のあり方について、厚生労働省の私的勉強会において、各障害種別団体と
意見交換を行うとともに、施設の視察等を行う。
【メンバー】
障害保健福祉部長
障害福祉課長
精神・障害保健課長
全国身体障害者施設協議会
日本知的障害者福祉協会
日本精神科病院協会
全国精神障害者社会復帰施設協会
全国社会就労センター協議会
国立身体障害者リハビリテーションセンターの専門家
国立精神・神経センターの専門家
国立秩父学園の専門家
障害者自立支援法の3年後の見直し
○ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)(抄)
附 則
(検討)
第三条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律及び障害者等の福
祉に関する他の法律の規定の施行の状況、障害児の児童福祉施設への入所に係
る実施主体の在り方等を勘案し、この法律の規定について、障害者等の範囲を含
め検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、第二章第二節第五款、
第三節及び第四節の規定の施行の状況について検討を加え、その結果に基づい
て必要な措置を講ずるものとする。
3 政府は、障害者等の福祉に関する施策の実施の状況、障害者等の経済的な状
況等を踏まえ、就労の支援を含めた障害者等の所得の確保に係る施策の在り方
について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
我が国の障害児福祉を巡る状況
① 少子化社会の進展
・ 子育て不安の増加
② 障害者自立支援法の施行
・ ノーマライゼーションの理念(自立と共生社会の実現)
③ 特別支援教育の実施
・ 特殊学校での対応から一般学校での対応へ
④ 発達障害者支援法の施行
・ 「新たな」障害への対応
検討すべき主な課題
① 障害児に対するサービス
・
・
・
・
障害児の「自立」を支援するための発達支援
障害児の家族を含めたトータルな支援(家族支援)
子どものライフステージに応じた一貫した支援(乳幼児期から青年期まで)
できるだけ身近な地域における支援
② 障害者の範囲
・ 発達障害者など
③ 所得の確保の在り方
④ その他
今後の福祉経営について
(「社会福祉法人の現状と課題」を基にして)
社会福祉法人の数
○社会福祉法人数は、平成2年度に比べて、施設経営法人
の数が約1.5倍に増加している。
(各年度末現在 単位:法人)
平成
2年度
7年度
13,356
15,090
16,596
17,002
17,560
18,150
18,613
3,074
3,376
3,404
3,403
3,401
3,381
共同募金会
47
47
47
47
47
社会福祉
事業団
105
138
152
152
施設経営
法人
10,071
11,455
12,908
85
総
数
社会福祉
協議会
その他
59
74
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
平成16年度の
対平成2年度増減
増減数
増減率
(%)
18,630
5,274
39
3,308
2,824
△250
△8
47
47
47
0
0
149
151
152
153
48
46
13,303
13,864
14,449
14,978
15,468
5397
54
97
99
122
128
138
79
134
出典:「社会福祉行政業務報告」(厚生労働省大臣官房統計情報部)
従来型の経営モデルの問題点
(「一法人一施設モデル」、「施設管理モデル」)
1 施設管理中心 = 法人経営不在
2 零細規模の法人が多数
3 ・再生産・拡大生産費用は補助金と寄付が前提
・資金使途の限定、剰余金は原則不可
借入金の返済や再生産費用の捻出が
経営上の最大の課題
4 画一的サービスを産みやすい構造
5 同族的経営 → 恣意的、硬直的経営の恐れ
近年の経営環境の変化
○ 90年代以降の大きな変化
○ 制度の普遍化、措置から契約へ
○ 民間企業等の参入
○ 規制改革の動き
○ 公的財政の悪化
○ 補助金改革、政策金融の見直し
○ 新たなニーズの発生
今後の福祉経営の基本的方向性
○ 法人単位の経営へ(「施設管理」から「法人経営」へ)
○ 「規制」と「助成」から「自立・自律」と「責任」へ
1 規模の拡大
2 新たな参入と退出ルール
3 経営能力の向上とガバナンスの確立
4 資金管理、資金調達方法の確立
5 人材の確保と育成 → サービスの質の向上
◆「規模の拡大」と「新たな参入と退出ルー
ル」
○ 法人の認可等のあり方
・ 「一法人一施設」の法人認可の見直し
・ 透明なプロセス
・ ケアの質やそれを支える経営能力に着目
・ 一定の新陳代謝 → 事業継続の100%保障はな
い
・ 質の低い法人、経営者の排除 → 退出への誘
導
○ 既存法人の規模拡大 → 合併、営業譲渡
○ 法人間の連携、協業化、ネットワーク化
◆「ガバナンスの確立」と「経営能力の向上」
○ 理事・理事会の機能強化 → 名目的人事の排除
理事会へ情報提供の徹底
○ コンプライアンスの確立(法令・秩序遵守)
○ 中間管理職の育成
→ 事業規模等の拡大、新たな事業展開を可能に
○ 外部監査、外部監事の活用
○ 適切かつ分かりやすい情報開示、広報
→ 社会的評価・批判に対する耐力の醸成・確立
◆ 再生産コスト、資金管理、資金調達
○ 経営分析が可能な会計処理の確立
○ マクロ的アプローチとミクロ的分析
○ 再生産のための蓄積期間と期間リスクの認識
再生産コスト回収の早期化
公的助成 + 政策融資
民間金融機関融資の拡大
直接金融の可能性の検討 → 私募債発行の検討
○ リスクマネージメントの検討、導入
○ 制度リスクと金利コストの考慮
剰余金等の適切な管理・運用
経営分析可能な会計処理の必要性
会計 = 法人の経営の状況と財務状態を表すもの
<会計の役割・目的>
1.社会の人々のための会計
公的資金の交付や税の課税・免除、適正な料金の計算や妥当な賃金の決定など、
あらゆる場合に必要とされる情報を提供するため、法人の社会的役割に応じて、
会計の果たす役割は大きくなる。
2.経営管理のための会計
会計によって得た情報により、その法人の「お金の回る仕組み・回らない仕組み」
を知り、会計から情報を得て経営の状況を把握することで、様々な事業のやり方
や仕組みを作ることで、継続的、安定的にあるべき方向に経営を導く。
[ 財務状態・経営成績の把握に必要な基礎的知識 ]
どのような会計基準によって経理しているかに関わらず、
① 費用について直接経費、間接経費、共通経費の分類を理解
② どの収益でどの費用を賄うかを認識(費用収益対応の原則)
= どれだけの費用で、どれだけの収入を得るかを知ること
③ それぞれの事業等ごとに収入・経費を把握
信用力のある決算とは
信用力=他者に認められる力
正しい記帳と適切な会計処理に基
づいて作成されたもの
=
真実な財政状態と経営成績を示す
< 正しい記帳の要件 > ・・・次のすべてを満たすもの
① 複式簿記の流れに従って、秩序整然と分かりやすく行う。
② すべての取引事実を、証拠書類に基づき、正確かつ網羅的に行う。
③ 取引後、できる限り速やかに行う。
原価の考え方 (構成)
※ 市場価格との関係で、
製品販売価格を決定する
必要がある。
各経費をコントロールする必要
営業利益
格製
販 売 費
一般管理費
価総
間接材料費
間接経費
直接材料費
直接労務費
直接経費
製造直接費
品
販
間接労務費
原
製造原価
格市
売
価
場
価
リスクマネジメントの必要性
リスクマネジメントとは?
営業活動等に伴う様々な不測の危険を最小限のコスト(損失)で食い
止めるための経営管理 単なる金銭的な支出だけではなく、労力等も含め
法人として負担する必要がある全てのコスト(損失)
《営業活動等に伴う様々な危険》
法人の行うあらゆる活動には、様々な危険(リスク)が内在している。
(例)
・交通事故(通所、配達、出張等)
・飛行機、列車事故(出張等)
・風評(虐待、対外部対応等)
・経済危機、景気変動
・製品の瑕疵
・火災(出火、延焼 → ガス爆発)
・自然災害(地震、風水害、天候不良等)
・余資運用の失敗(金利の急変等)
・取引先の倒産
・事務ミス
※ リスクマネジメントの根本的な問題
法人や事業にリスクが現実化することで損失が発生した
場合には、その法人自体が消滅する恐れがある。
リスクマネジメントは、ガバナンス(内部統制)並んで、
近代においては極めて重要な経営管理手法
1.リスクの発見・分析・評価
リスクマネジメント
2.財務面での準備、対応
1. その法人又は事業の活動等を阻害し、むしろ損失に変えてしまう恐れのある
不
測の事態(リスク=不確実性)を発見、分析、評価して、管理・制御する。
リスクコントロール
2. リスクは、不測の事態であり不確実性そのものであるため、未然に防止できず、
リスクコントロールの意義
○ 不測の事態(不確実性)によりもたらされる損失の発生を未然に防ぐ
○ 仮に損失が発生した場合でも、その損失の拡大・増殖をできるだけ押さえる
リスクの存在を組織
として認識した行動
=
法人の成長
の 実 現
≠
リスクの存在自体を
無視した行動
リスクコントロールの実現方法
実施者 : 法人を構成する職員全員
組織の体質改善
責任者 : 現場は中間管理職、最終は経営者
監査と見直し
※ 「リスクの洗い出し」が基本 ・・・・・・ リスクの発見、確認、分析、評価
・財務経理部門において、損失をもたらす事故の発生とは何か。
・PCなどのシステムの事故が、損失を発生することになるのか。
・製造部門での製造安全性等への対応状況はどうか。
・営業、販売部門では、事故の発生で取引先や得意先との関係がどうなるのか。
リスクコントロールの (例)
○ 製品の納品配達途中で、交通事故にあった場合
事故の状況の確認、配達員との連絡、安全確認等、法人としてどのような対
応をどのようにするか。
納入品の状態の確認、納品先への連絡、代替品等の対応をどうするか。
事故に伴う保障(配達員を含む)、製品の処分等をどうするか。
配達に、利用者が携わっていた場合には、どのような対応をするべきか。
○ 製品の代金が未納となっている場合
どの位の期間未納になっているのか。(過去の例との比較)
契約相手方の状況はどうか。(今後の取引、本件の解決方策をどうする
か。)
資金繰りとして、対応できるのか。(資金収支等を確認)
財務上の最終的な対応方法(方針)の決定。
財務面での対応について
1.立替分も含めて、一時的に必要となる資金需要への対応
2.代替品等の懸かり増し経費についての対応
3.最終的な損失に対する対応
最も成功したリスクマネジメントとは?
○ リスクマネジメントの成功 = 様々な危機に対して逃げずに立ち向かい、法人
の全力を挙げて対応し、影響を最小限に抑える
◎ 最も成功したリスクマネジメント = そもそも危機にならないこと
リスクマネジメントの効率的・効果的実施
洗い出したリスクについて、「発生頻度」と「損害の程度(影響度)」という2つの要
素
によって、リスクの優先順位付けを行い、対応方策を検討しておくことが必要。
・人的被害
損害の程度(影響度)
《 優先順位 》
分類
・財物損害
・賠償責任
・利益損失
・信用失墜
1 : 損害の程度が大きく、発生頻度が高いもの ・・・・ 何を置いても解消すべきもの
2 : 損害の程度が大きく、発生頻度が低いもの
3 : 損害の程度が小さく、発生頻度が高いもの ・・・・ 発生頻度によっては上位へ
4 : 損害の程度が小さく、発生頻度が低いもの
会計基準の一元化について
1.社会福祉法人の会計処理の基準にかかる問題点
社会福祉法人の会計処理については、
○社会福祉事業・・・・・・・「社会福祉法人会計基準」
○介護保険事業・・・・・・・「指定介護老人福祉施設等会計処理等取扱指導指針」
「介護老人保健施設会計・経理準則」
○肢体不自由児施設等・「病院会計準則」
○授産施設・・・・・・・・・・・「授産施設会計基準」
(就労支援事業(授産事業)収支については、「就労支援事業会計処理基準」)
など、多数の会計処理ルールが併存。
2.社会福祉法人の会計の運用実態
社会福祉法人会計基準は、原則として全ての社会福祉法人に適用されているが、実施
する事業によって、以下の運用を行っている。
事
業
保護施設
社
会
福
祉
事
業
会
計
児童福祉施設(保育所含む)
障害者関係施設
軽費老人ホーム(ケアハウス除く)
養護老人ホーム
介護保険施設
指定老人訪問看護
介護老人保健施設
授産施設
肢体不自由施設、重度心身障害児施設等
経理規定準則が適用されていない法人
原
則
運用実態
全
て
の
法
人
に
会
計
基
準
を
適
用
す
る
措置費支弁対象施設のみ運用している法人は、当分の間「経
理規定準則」によることができる
〃
〃
指定特定施設の場合は指導指針が望ましい
指導指針が望ましい
〃
訪問介護会計・経理準則
介護老人保健施設会計・経理準則
授産施設会計基準
(障害者自立支援法の就労支援事業は、就労支援事業会計基準)
病院会計準則
当分の間、従前の会計処理
公益事業会計
会計基準に準じて行うことが可
収益事業会計
一般に公正妥当と認められる企業会計の基準を適用
3.第165回臨時国会における問題点の指摘
○ 平成18年12月5日の臨時国会において、中村博彦議員(参・自)から、「特別養護老
人ホームにおける会計処理について、会計基準と指導指針が適用されていることから
現場は混乱している。今後、特別養護老人ホームの会計ルールを確立する必要があ
る」旨の質問を受け、厚生労働大臣より、「できる限り単一、一元化された基準に基づく
方向で努める」旨答弁。
○これを受け、19年1月より、老人健康増進等事業を活用し、調査・研究を開始。
18年度においてはアンケート調査を行い、その集計結果(※)を受け、19年度において
一元化に向けて取り組んでいるところである。
※ 運用実態及び意見調査の結果
○特養における施設の会計ルール
・会計基準・・・・・・・・・・・・・・47.7%
・指導指針・・・・・・・・・・・・・・38.1%
・双方を採用・・・・・・・・・・・・14.0%
・無回答・・・・・・・・・・・・・・・・・0.3%
○会計ルールの一元化についての意見
・一元化について意見があった事業者・・・・65.0%
(上記のうち)
・会計基準に統一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.5%
・指導指針に統一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.4%
・基準・指針のいずれかに統一・・・・・・・・・・43.3%
・企業会計に移行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.0%
・その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35.8%
4.会計基準の一元化に向けた基本的スタンス
(1)会計の適用範囲
○ 社会福祉法人会計基準は、原則すべての社会福祉法人に適用されるが、実施する
事業により複数の会計基準が存在しており、計算結果が異なるなど、様々な不合理が
あるため、統一した基準の策定が必要。
○ ただし、医療法人会計基準との調整が必要な病院会計準則については、一元化が
可能かどうかについて、慎重に検討
(2)会計単位・経理区分・事業区分等
○ 社会福祉法上、公益事業又は収益事業に関する会計は、社会福祉事業に関する会
計から区分し、特別の会計として経理することを要請しており、税制等との関係からもこ
の会計単位は維持。
○ ただし、法人全体の財務状況を明らかにするための総括表の作成について検討。
○ 一方、指定基準等において、経理区分・事業区分等として会計単位を更に細分化し、
それぞれを独立した会計として経理することを要請しているが、資金融通等の各場面に
おいて不合理を生じていることから、企業会計上のセグメント(事項内訳等)の作成を前
提に、簡素化。
○ なお、措置費など厳格な使途制限が必要なものについては、使途制限を担保できる
仕組みを維持しつつ、簡素な会計処理を行える仕組みを構築。
(3)予算
○ 社会福祉法人の予算は、事業計画を資金的に裏付けるために作成し、理事会の承認
を得ることとしている(予算準拠主義)が、決算書と同様の科目での作成となっており、
事業年度の開始前に策定するため、ほとんど補正予算を計上している実態にある。
○ このため、予算書作成(勘定科目を大事項のみの記載とするなど)の簡素化を図り、
法人の事務負担の軽減を図る。
(4)計算書類等
○ 社会福祉法上収支計算を要請しており、計算書類として資金収支計算書、事業活動
収支計算書、貸借対照表、財産目録を作成している。
○ 法人が、今後規模の拡大を目指す一つの方策として、合併・事業譲渡や法人間連携、
私募債の検討も進めており、情報開示や経営分析など対外的な説明や情報開示にも
耐えられる計算書類等とする必要がある。
○ その際、本来「前受金」である国庫補助金等特別積立金を負債として整理し直すなど、
「純資産」の再整理を行うことも必要。
5.会計基準の一元化に向けた対応
対応方針
○ 関連団体との意見調整等
○ 日本公認会計士協会の全面的な協力で厚生労働省が基準(案)を作成
基準(案)の作成から施行までの流れ
○ 新たな会計基準(案)の作成
○ 新たな会計基準(案)の各省協議
○ 事務取扱通知、留意事項(又はQ&A)等の作成
○ 自治体、関係団体等への説明会の開催
等 ・・・・・・十分な時間の確保
○ 新たな会計基準の施行