第2章 「青春」の

第2章 「青春」の名文方程式
3021-6021
塚本可奈子
「青春」という言葉を表現する技法を、名文を読
み解いて見つけ出す。
 沢木耕太郎 『深夜特急』
 銀色夏生 『あの空は夏の中』
 庄司薫 『赤頭巾ちゃん気をつけて』
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①二面性
「青春」の特徴
・世の中の大人ができなかったことを実現する
・大人が否定することを、敢えてやってみせる
・声高らかに豪語し、挑発する
「ほんのちょっぴり本音を吐けば、…」
「本音を吐く」→「言う」や「語る」より、不作法で攻撃的
「ほんのちょっぴり」→大言壮語を吐く自分への照れ隠し
↓
大人たちができないことを敢えてやりながら
その裏返しとしての照れも見せることで、
青春の持つ二面性を表している。
②否定後の連発
「ならず」、「でもなく」、「こともなく」などの、否定語が続く。
→「人のため」「学問の進歩」といった、大人たちが
若者に抱く期待に対し、ことごとくノーという
↓
大人への挑発・反抗
若者の挑戦的なエネルギー
③七ヵ条包含
一,世の中の規範からはずれる。
二,利害をこえた行動をとる。
三,大人が眉をひそめるような行為をする。
四,生産的でないことに熱中する。
五,内に秘めた熱い思いを語る。
六,自分が孤独であることに酔う。
七,一抹の不安を漂わせる。
『深夜特急』の著者・沢木耕太郎の文章には、このす
べてが上手に盛りこまれている。
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①揺らぎ
夏の宿題→夏休み=高校生にとって、巨大な未知の時間
数え切れないほどの体験
本に書いてあること・・「ウソじゃないけど、…本当じゃない」
何を見ても本物とは感じられない。
といって、自分の判断に自信があるわけではない。
↓
若者の持つ気持ちの揺らぎ
②本当じゃない世界
「つかれた気持ち」 ウソじゃないけど、…自信のない揺らぎ
自分の今いる世界→「本当じゃない」
「夕立ちの窓を開ける」
夕立ち→大雨のあと、さっと上がる
見通しの全くきかない「本当じゃない」世界から、
「本当の」世界が開けるイメージ
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①軽妙さ
文章の特徴→・ほとんどが話し言葉
・ひらがなが多い
独特の軽快感
主人公の高校生の感覚に近づける
「恥ずかしいというか」、「じゃないかっていう気が」
考えをあれこれ後戻りさせる思考パターン
何に対しても迷う高校生の、
観念的でしかもナイーブな気持ちを表す
②過剰自意識
「ぼくは」ではじまる文章が多い
「ぼく」を何度も使うことで、読み手を「ぼく」だけの
きわめて個人的な一つの世界に引きずり込んでゆく。
↓
読み手自身の高校生時代を追体験させ、
イメージをふくらませる。
これらがうまく機能したときに、名文ができる。