牛流行熱 (Bovine ephemeral fever: Three Day Sickness) 届出伝染病: 牛、水牛。 動物衛生研究所 「家畜の監視伝染病」 病原体: ラブドウイルス科、エフェメロウイルス属に分類される牛流行熱ウイルス (bovine ephemeral fever virus)。1本鎖RNAウイルスで、形態は弾丸状を呈し、 エンベロープを保有。 大森常吉氏 日獣会誌、1971 1949~51年の大流行でこ の病名が付けられたが、 発育鶏卵などでの分離が できず、イバラキ病等との 区別ができなかった。 1966年の北九州での小 流行において牛での継代 の後、哺乳マウスと哺乳 ハムスターの脳内接種に よってウイルス分離に成 功した(オーストラリアの 発表が若干早かった)。 分布: 日本、韓国、台湾、中国、オーストラリア、 中近東、アフリカ諸国の熱帯、亜熱帯で発生。 疫学: 蚊やヌカカの媒介によって、牛、水牛に伝播 される。本症は、主に8月~11月と、夏の終わり頃か ら晩秋にかけ沖縄・九州地方を中心に西日本地方 に発生し、福島や新潟県以北での発生はなく、本症 の発生に北限がある。 発症率は数%~20%程度で、死亡率は1%以下 と低い。1949年、1950年、1951年に大流行があり、 その後、周期的な流行を繰り返している。 予防法: 流行期の始まる前(6~8月)にワクチン接 種を完了しておくこと。 初回は、生ワクチンを接種し、1ヶ月後に不活化ワ クチンを接種する。 翌年からは1年に1回、不活化ワクチンを接種して 追加免疫を行う。蚊の発生防除。 「家畜防疫対策要綱」 本病の伝播は、気流や吸血昆 虫に深く関係し、その発生状況 は地域的に異なる。しかしなが ら、不顕性感染はほとんどなく、 感染した場合はほとんどが発症 する。 日本獣医師会 「家畜疾病総合情報システム」 処女地での発病率は30~ 40%に及びますが、一般的に は1.8~20.7%と推定されます。 ヌカカの吸血源と発生源 盛岡市内の放牧地と牛舎 蚊の発生防除 大きさは数ミリ程度 臨床症状: 発症牛は、突発的な発熱(40~42℃)の後1~2日で解熱する。呼吸 促拍、元気消失、流涙、泡沫性流涎、鼻鏡乾燥、四肢関節の浮腫および関節痛 による歩行困難や、起立不能などの症状を示す。重症例では呼吸困難にともな う皮下気腫が頸背部、胸前部や肩端部に認められる。その他、反芻停止や泌乳 停止もみられる。栄養状態の良い肉牛や高泌乳牛は重症化する。 起立不能に陥った牛 呼吸促迫を呈する病牛 臨床症状から病名を判断することは困難であるが、該当疾病を推測することは可能。 類症鑑別: ① イバラキ病 ② 牛RSウイルス病 ③ 牛パラインフルエンザ ④ 牛アデノウイ ルス病 ⑤ 牛伝染性鼻気管炎 ⑥ 牛ウイルス性下痢・粘膜病 ⑦ 牛ライノウイルス病 ⑧ 牛 レオウイルス病 ⑨ 牛クラミジア症 ⑩ 悪性カタル熱 1988年9月の種子島における初めての流行 9月末の少数地域での初発から約2ヶ月で本 島の中・南部地区全体に広がった。ワ クチン接種などの防疫対策がとられておらず、しか もベクターの生存に有利な温暖 な気候条件下にある処女地に突然侵入 することで、本病は地域大流行となった。 2001年沖縄県竹富町(西表島、黒島、小浜島)、石垣市(石垣島南部、中部)、多 良聞村において本年9月から12月までに、牛流行熱の発生が591戸、1,333頭で 確認された(全てワクチン未接種牛)。 沖縄県における牛流行熱の発生 第12回全日本ホルスタイン共進会 出品牛の衛生条件 (2005年11月3日~6日) 5年に1回開催 検 査 結核病、ブルセラ病 ヨーネ病 搬入日以前1年以内 搬入日以前3カ月以内に検査をうけること。 ワ ク チ ン IBR、アカバネ病 牛流行熱、イバラキ病 炭疽 本年4月27日から10月6日までの間に接種が完 了していること。 ヨーネ病発生農家(搬入日以前3年以内に発生した農家)からの出品については、6カ月齢 以上の同居牛を含め搬入日以前1年以内にヨーネ病検査を実施し、全頭陰性であることを 確認するものとする。 牛流行熱は、2回接種の必要があり、接種間隔は4週間必要。 対応 1回目:9月8日まで、2回目:10月6日まで。 イバラキと牛流行熱は、接種箇所を変えて同時に接種が可能。 炭疽は、他のワクチン接種後10日間程度間隔をおくこと。 副作用が出る場合があるため、 健康状態に留意必要。 牛流行熱の検査チャート 病性鑑定指針 農水省消費安全局 (2) 臨床検査 (1) 疫学調査 家 畜 保 健 衛 生 所 病 性 鑑 定 施 設 判 定 ( 発 熱 時 血 液 ) (3) 血液検査 ( 血 清 ) (4) 剖検 (6) ウイルス学的検査 (ウイルス分離試験) (5) 病理組織学的検査 (7) 血清学的検査 (中和試験) (+) (ー) (+) (ー) (+) (ー) (+) (ー) 判定は、ウイルス分離、血清学的検査の総合による。 ① ② ③ ④ (1)疫学調査 夏の終わりから秋期に発生する(主に8~11月)。 媒介昆虫(蚊、ヌカカ)により、短期間・広範囲に流行が起こる。 接触感染はない。 致死率は低い(1%以下)。 (2)臨床検査 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 突発的な発熱(1~2日で下降) 呼吸数の異常な増数,呼吸促迫 流涙、泡沫性流涎、鼻鏡乾燥 皮筋・躯幹筋の振戦、皮温不正、皮下気腫 一般症状の悪化 四肢関節の浮腫、関節痛、起立不能 血液中の好中球数が増加する病態 感染症 薬物(副腎皮質ホル モン、G-CSFなど)の 投与 組織破壊 悪性腫瘍 白血病 心筋梗塞 骨髄増殖性疾患 無顆粒球症の回復期 (3)血液検査 ① 一過性の白血球の減少 ② 核の左方移動 (4)剖 検 ① 漿液線維素性の多発性漿膜炎が特徴病変であり、関節滑膜、心外膜、リンパ節、 胸腔および腹腔にみられる。 ② 肺水腫や間質性肺気腫を伴う。 Hematological changes in suspected BEF infected calves before and after treatment as compared to healthy control indivduals. Parameters TRBCs (T/l) Hg (g/l) PCV (%) TWBCs (T/l) Band cell (%) Neutrophil (%) Lymphocytes (%) Eosinophils (%) Basophils (%) Monocytes (%) Healthy control group before treatment after treatment Suspected group Suspected group 7.5 ± 0.8 12.9 ± 1.3 38.0 ± 5.1 7.5± 0.96 0.5± 0.52 30.3 ± 2.21 58.1 ± 3.9 3.4 ± 0.69 0.4 ± 0.52 7.3 ± 2.26 7.1 ± 2.27 9.2 ± 1.29 42.6 ± 4.22* 12.43 ± 2.15** 8.4 ± 2.01** 52.8 ± 3.04** 26.8 ± 1.75** 2.6 ± 1.07* 0.5 ± 0.53 9.0 ± 1.48 8.3 ± 3.8 10.3 ± 1.6 37.7 ± 5.8 8.5 ± 1.25 3.0 ± 0.66 36.2 ± 3.64 49.5 ± 3.62 3.2 ± 0.71 0.3 ± 0.48 7.9 ± 1.59 骨髄中において造血幹細胞は、骨髄系幹細胞、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球 の順に分化成熟する。さらに桿状核球を経て分葉核球へと分化するが、この最後の2つを もって好中球と呼ぶ。 核の左方移動: 血流中の成熟好中球の内、桿状核球(未成熟な好中球で特にI型、II型) である幼若好中球、単球の割合が増加すること。急性炎症、化膿菌感染症で多く見られる。 核の右方移動: 抗凝固剤の内服、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)など薬により分葉核球 (成熟した好中球で特にIII型、IV型、V型)の割合が増加する。 (5)病理組織学的検査 ① 関節滑膜、心外膜、リンパ節、胸腔及び腹腔、肺で充血、出血、水腫、線維素析出、 好中球浸潤等がみられる。血管病変を伴い、血管では内皮の腫大増殖、血管周皮細 胞増殖、小動脈のフィブリノイド変性、血管周囲性線維増生等がみられる。間質性肺 気腫を伴う。 (6)ウイルス学的検査 (a) ウイルス分離試験 培養細胞: BHK21細胞、HmLu-1細胞、Vero細胞 接種材料: 発熱時の血液(ヘパリン加血液を血漿,血球に 分け血球はPBSで3回洗浄し、凍結融解後使用する。) 培養方法: 34℃で回転培養 成 績: CPEの確認 同 定: 蛍光抗体法により特異蛍光の確認、交差中和試験 (参考)動物接種試験 材 料: 発熱時の洗浄血球 方 法: 乳のみマウス,乳のみハムスターの脳内接種 成 績: 7~10日で発症,死亡時の脳を盲継代 上部気道粘膜の 充出血 近年の発生はまれ 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 農畜産業振興事業団指定助成対象事業 (うち家畜衛生関連事業) 4戸、4頭(1月、沖縄) ① 血清学的検査や自主的なとう汰等ヨー ネ病及びオーエスキー病対策を推進する。 0 1戸、4頭(10月、沖縄) まん延防止のため地域での予防接種の 推進が必要な疾病(牛流行熱、豚流行性 0 下痢、ニューカッスル病等)に係る組織的な 0 予防接種に対して助成する。 0 0 主要疾病の予防注射の推進事業(2007年) 1,219百万円の予算 がこの事業に振り向けら れている。 地域ぐるみの取組みと するためには、行政や共 済組合の獣医師による 農家指導が不可欠であ る。 清浄化によるメリットを 説明する。 牛異常産三種混合: 373,006頭 アカバネ病: 175,094頭 イバラキ病: 123,283頭 牛流行熱: 14,491頭 イバラキ・牛流行熱混合: 43,907頭 牛伝染性鼻気管炎: 1,084,187頭 伝染性胃腸炎: 46,289頭 豚流行性下痢: 60,351頭 豚流行性下痢・伝染性胃腸炎: 100,907頭
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