政治過程と政策 - 筑波大学 人文社会科学

政治過程と政策
東日本大震災をめぐる「非争点化」の政治
辻中豊
(筑波大学)
震災に学ぶ社会科学
東日本大震災学術調査シンポジウム
2015年3月28~29日
1
東日本大震災学術調査 政治・政策班
2015/9/30
報告の構成



2
Ⅰ 報告書の骨格・概要
Ⅱ 知見:非決定の政治競争
Ⅲ 結論
東日本大震災学術調査 政治・政策班
2015/9/30
報告書の骨格・概要
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東日本大震災学術調査 政治・政策班
2015/9/30
報告書(政治・政策班)の骨格

政治を「公的に意思決定すること」として捉えると、政治学
は多様な公的決定の過程や政策、そのメカニズムに関心
を向ける必要がある。

東日本大震災においても多様な「公的決定」がなされた。
震災直後の危機対応、復旧・復興をめぐる政治だけでなく、
天皇の象徴行為から震災記憶の保存まで、あらゆる公的
決定現象が対象として浮上した。
全てを検討することはできない。そこで、


4
①国家中核の三権能の働き、②原発事故を巡る公的決定、
③公的決定の背後にある社会アクター、④自由民主主義
体制の中心アクターとしての政党と選挙、の4つに焦点を
絞り、調査研究を展開した。
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概要①:国家基本「三権能」の働き
第2章(行政権Ⅰ)
「執政:福島第一原発事故と官邸の対応」
 第3章(行政権Ⅱ)
「中央省庁:東日本大震災に対する府省の対応」
 第4章(立法権)
「国会:震災関連法案と立法過程
ねじれ下の議会はどのように機能したのか?」
 第5章(司法権)
「司法:原子力損害賠償を巡る司法と行政の相克
弁護団調査から見る福島第一原発事故損害の
賠償過程」

5
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概要②:原子力の政策過程
第6章(事前)
「福島原発事故の定量分析:国際比較の視点から」
 第7章(事後)
「原子力安全規制の政治過程:行政体制再構築における
政策学習」
 第8章(事後)
「原発事故調査の政治空間:2つの事故調を中心に」

6
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概要③:社会アクター
(東京電力・企業・団体・地方・民意)
 第9章(事前)
「震災以前における東京電力の政治権力・経済権力」
 第10章(事後)
「震災発生後の東京電力と政治」
 第11章(事前&事後)
「地方自治体と企業・業界団体による災害協定」
 第12章(事後)
「脱原発と民意のゆくえ:原子力発電をめぐる争点関心
のプロセス」
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概要④:政党政治と選挙
(事後に関わる政治過程)
 第13章
「2012年総選挙へ向けた政局と政策論争:
政党政治家は東日本大震災と福島第一原発事故をどう
捉えたのか」
 第14章
「2012年総選挙の得票分析:震災後初の国政選挙に
表れた民意」
 第15章
「原子力災害と福島の地方選挙」
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得られた知見①:総論 輪切りの構造
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
東日本大震災という未曾有の大災害は、日本の政治シス
テムを輪切りにする出来事であった。

輪切りにされた断面から見えてくるのは、現代日本の政治
と社会の相互関係、その構造である。

断面によって見えた構造は、これまでの様々な「公的決定」
が形成したものである。政治の仕組み、システムの理解に
は一つ一つを丹念に追う必要がある。

自由民主主義体制の下では、大量の「公的決定」の背後に、
アクター間の政治競争が存在する。

アクター間の政治競争は、多くの決定とともに決定の回避、
「非決定」ももたらす。「非決定」過程と公的決定過程の両
方を射程に入れなければ、政治システム理解に繋がらない。
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得られた知見②:制度化と非決定
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
事例研究は、阪神・淡路大震災の経験に基づく、事前の備
えとしての制度や組織がおおむね有効に機能したこと(制
度の強靭さ)を示す。

同時に、事前の備えを欠いた事象をめぐる公的決定は、ア
ドホックであるがゆえに混乱したり、十全な機能を果たすこ
とができなかった(想定外への脆弱さ)。

強靭さ・脆弱さの交錯の中で政治は反応したが、特に脆弱
さに関わる「将来への備え」を巡って、アクター間の政治競
争は、その争点化を抑止していった。

争点化の抑止は、国政選挙を通じた民意表出を難しくした。
震災に関するイシューの公的決定をめぐり、有権者と政治
権力の意思疎通の経路が不透明になった。
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知見と結論:
非決定の政治競争
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執政のパフォーマンス
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
首相官邸は被災者支援と原発事故対応を区分し、後者に
集中しようとした。それは「事前の備え」であった原子力災
害スキームが機能しなかったからである。

「備え」の機能不全は、統合対策本部のような首相のリー
ダーシップという正の側面と、過剰介入と呼ばれたマイク
ロ・マネジメントのような負の側面を残した。

政府全体の危機対応からは、混乱と摩擦を生み出した点も
否定しえない。

ただし、原発がハード面の「備え」を、事業者や規制官庁が
ソフト面の「備え」をそれぞれ「想定外」として欠いたことが、
官邸が未熟な危機対応をせざるを得なかった最大の原因
と形容できる。
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行政のパフォーマンス
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
行政は、行政改革と省庁再編、官邸機能向上の経験を経
た「事前の備え」が機能したと評価しうる。

執政によって委託された原発を除く災害対応は、分権的・
水平的調整メカニズムの作用を通じて、中央府省の組織資
源は総体として効率的に動員された。

調整メカニズムと行政活動を基礎づけるのはジェネラリスト
型官僚の行動である。これらは評価されてよいものの、復
興庁行政のように過去の行政原理と異質のものが設定さ
れた時に、いかに機能連結を有効にするかという課題が発
生している。

行政機構を国民にとっての「保険」と考えると、災害列島に
あって現在の掛け金が十分な量を担保できているのか、改
めて顧みる必要がある。
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執政・行政の動きを振り返ると・・・
1. 「事前の備え」があったものは作動することができて
いる。
2. 備えきれなかったものが危機対応、復旧・復興のな
かで問題として浮上。公的決定のテーマへ。
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では、目を転じると・・・
1. そもそも「事前の備え」はされていたのか?
2. 備えきれなかったために生じた問題は、「将来への
備え」へと反映されようとしているのか?
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司法をめぐって
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
震災とは関わりなく、司法制度改革を通じて制度的拡充は
試みられてきた。また、原賠法改正を受けて裁判外紛争手
続きを拡張した体制整備がなされた。

ただし、司法制度改革は裁判官増員と結びついておらず、
争訟需要を柔軟に受け止めるうえで問題を残した。特に裁
判外手続きから裁判へと移行するにあたってのインター
フェースに掛かるコストが問題視された。

原発賠償の経験は、事後的監視を担う司法においても、行
政のように、機動的な体制構築を可能とする「事前の備え」
の発想が必要とされることを示唆している。
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原子力政策をめぐって
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
原子力安全規制の再編は、アクターの理解不足のために、
問題のフレーミングが政治的意図によって左右されてし
まった。すなわち、先行事例や他国事例を踏まえた政策学
習の失敗が、現状の規制体制を規定する帰結を生じさせ
た。

事故調査組織は原因究明を標榜し、原子力安全規制の実
効性向上へのインパクトが期待されたが、原因企業や規制
行政に改革を迫る「備え」を持たないまま活動が展開され
たため、膠着状態を打開しえなかった。

いずれにせよ、福島第一原発のオンサイト・オフサイトの状
況は継続するし、誰も建屋に踏み込めていないのだから、
究極の意味での原因究明を求める声は将来的に継続する
こと必至。
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平均遡上高および発電所・防潮堤の最大高度
(m)の差 20カ国89発電所比較
Source: Phillip Y. Lipscy, Kenji E. Kushida, and Trevor Incerti 2013: 6086
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東電をめぐって
20

国際比較からも、初期の原発は津波に抗する備えを欠い
ており、東電(福島第一)に限らず電力他社も同様の問題を
抱えていたが、問題視する発想に欠けた。

それを可能としたのは、東電が民間企業であるにもかかわ
らず、そのリソースを政治的理由の達成に動員することが
できた権力構造の存在による。いくら警告があろうと、企業
目的と本質的に整合しなければ、権力的に排除することが
できた。

震災後、東電は自らの特権的地位を逆用して、自らの消滅
時不利益をアクターに観念させ、自らを保全する方向へと
働きかけた。こうした東電の権力的性格については震災
前・震災後に共通する。ただその方向性が異なる。
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企業・団体をめぐって
21

防災を目的とした自治体、業界団体とのネットワーク化は
より一層盛んになっており、企業体として自治体とネット
ワークを形成するものも増加している。

防災協定は、国内需要や地域社会の需要を土台として成
立する企業であれば、一定の名声を得ることにも繋がるた
めメリットも大きく「将来への備え」に繋がりやすい。

反面、グローバル企業であるほど、生産移転のメリットが高
まるためネットワーク化が困難になりがち(特に製造業)であ
る。企業体の組織資源を防災機能へと組み込むうえで、政
策的な後押しが必要とされる可能性が高まる。
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“備え通り”にしかできない
逆に言えば「備えたことはできた(る)」
その組織的能力を日本政府(主に行政府)は持っており、資
源を動員することもできる。ただし、それは将来にわたって保
証されてはいない。政府の能力を維持(能率化・拡大)する努
力も要考慮。


「備え」の欠落は偶発的、意図的それぞれある
「想定外」だったために制度的前提を欠いた対処を生み出し
た(執政が象徴)が、名声を獲得するために自らの権力を行
使し、結果的に災害に抗しきれない欠落を生んでしまったも
のも(東電が象徴)ある。「将来への備え」はどのように導かれ
ることになるのか。
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では・・・
1. 誰が「将来への備え」へ向けた公的決定の役割を担
うのか、担ったのか?
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将来への備え:その前提

民意の存在
自由民主主義体制の下では、有権者の民意を受け止めなけ
れば政治権力を維持できない。2012年にかけて脱原発デモ
は高揚し、現在はピークアウト。しかし、脱原発という考え方
自体が社会に定着しており、民意反映を求める声も強い。そ
のため、民意との先鋭的に対立してまで、原発を推進しよう
とするかはいささか疑問。

政党政治のメカニズム
民意を土台とする政党政治は、政権への支持調達と政策推
進にあたって民意を考慮せざるを得ない。では彼らは震災復
興、原発問題をどう受け止め、取り扱ったのか?
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脱原発運動への高まる評価
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争点と選挙
震災と原発問題
の争点化は、
6名の福島県で
の現職市長を
敗北に追い込
んだ。
これに学んだ与
党(自民・公明)
は、
原子力政策の
非争点化を進
めた。
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震災後の政党政治
2012年総選挙前までに「4つの政党ブロック」が発生。
①民主、国民新(連立与党ブロック)
②自民、公明(自公ブロック)
③維新、みんな、改革(第三極ブロック)
④未来、共産、社民、大地(左派ブロック)
*2012年総選挙告示前の党首討論会における各政党党首
の親近度に基づく。
震災復興、原発問題がイシューとなっていた2011~2012年
までの時期において、これら政党ブロックの①ブロック間関
係、②ブロック内関係を検討することで、「将来への備え」の
決定回避の論理を見出すことができる。
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政党間競争①
各政党の選挙公約をみると・・・
①連立与党ブロック、②自公ブロック
いずれも震災復興を重点項目として取扱い、二大ブロック間
では震災復興が合意争点化している。
③第三極ブロック
経済再生を重視する。
④左派ブロック
消費増税反対、脱原発を重視する。

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震災復興に関しては6党が防災対策を打ち出したが、東北
地域以外の防災対策に言及したのは主に自公ブロックで
あった。
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政党間競争②


原発に関しては、原発を前提として電源構成を考慮する立
場(自・国)、即時ゼロの立場(左派ブロック)、ゼロ達成時
期を明示し再稼働容認(民・み)というように、各政党の立
場が分裂。公明は自民との関係に配慮して、また維新も太
陽の党合併に配慮し、脱原発には消極姿勢。
電力市場改革をめぐっても、言及・不言及と色が分かれた。
連立与党ブロック、自公ブロック、第三極ブロックそれぞれに
脱原発・電力改革には立場の相違があった。協力政党間で
意見が食い違うため、争点化には慎重になる可能性があ
る・・・党首間の討論では?
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政党間競争③

総選挙直前の討論会での党首間討論では・・・
冒頭発言のなかで対立争点を示唆するのが
①「雇用(民、左派ブロック)」vs「金融(自、み、改)」
②「税財政」への不言及(連立与党ブロック、自公ブロック)vs
言及(第三極ブロック、左派ブロック)
③「原発」への不言及(自公ブロック)vs言及(その他)
の3つである。
②は三党合意に与するかそうでないか、③に関しては、自
民・公明間の意見不統一の影響が考えられる。
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政党間競争④
デフレ脱却,経済政策,
震災対応,消費税軽減税率
野田(民主)
自見(国民)
安倍(自民)
山口(公明)
TPP,外交(尖閣問題)
会計制度
尖閣問題
原発事故の責任
憲法,雇用
TPP
道州制
デフレ脱却
消費増税
市場原理主義
への評価
嘉田(未来)
福島(社民)
志位(共産)
鈴木(大地)
経済政策,金融政策
石原(維新)
渡辺(みんな)
エネルギー外交 舛添(改革)
細線は質問者1人,太線は質問者2人
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政党間競争⑤

クロス討論では・・・
特に、脱原発に関する質問は、未来から自民に対するもの
に限られた。他の政党は公約とは異なり、自民に対して脱原
発の争点提示を避けることとなった。
つまり、政党間競争の文脈では、①震災復興が合意争点化
したこと、そして、②脱原発に公約上消極的だったのは自民
だったが、未来を除いて争点化を避ける傾向があったことの
2つが指摘できる。
特に民・公・維の3党は注目に値する。彼らの属するブロック
内、もしくは政党内で何らかの不一致があった可能性がある
から。
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政党内競争①

総選挙立候補者の意見分布からは・・・
①連立与党ブロックでは、雇用や就職、年金・医療を重視す
る割合が高いが全体でも半分。統一的な訴えが困難。
②自公ブロックでは、自民は財政・金融、外交・安保、公明は
復興・防災を重視し、態度に相違。
③第三極ブロックでは、維新は分権に、みんなは財政・金融
を重視。
④左派ブロックでは、殆どが原発・エネルギーを重視。
なお、復興・防災は被災地域の候補者で高まるが、原発・エ
ネルギー問題は政党間の差が激しい。
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政党内競争②
候補者の原発に関する意見をみてみると・・・
①左派ブロック(未・共・社)は原発ゼロ・再稼働反対が多数
派。割合は下がるがみんなも同様の傾向。

②民主、公明、維新は、原発ゼロ・再稼働反対と、原発ゼロ・
再稼働容認が一定割合(民、維は全国立候補なので、より原
発・エネルギー政策重視の傾向)
③自民は原発・再稼働容認が多く、被災三県では原発エネ
ルギーを重視する候補者も少なめ。
結局、党内意見の不一致が大きく、民主、公明、維新は脱原
発を争点化する党内環境がなかった可能性が高い。しかし、
党内不一致はなぜ生じ続けたか?
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政党内競争③
党首選出過程に見るイシュー
①民主党代表選(2011年, 2012年)
2011年では、主に政権運営・党運営が選挙のテーマとなった。
ねじれ国会下の与野党間協調を重視する野田が当選し、震
災復興、消費増税、再稼働へ。2012年では既に小沢グルー
プが離党したこともあって、政権運営・党運営はテーマになら
ず。
②自民党総裁選(2012年)
谷垣が不出馬に追い込まれたが、5人の候補は三党合意を
尊重。安倍と石破に支持は集まったが、2人とも外交・安保を
重視した。そうした指示の下で安倍が総裁へ。震災復興は前
提に。

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政治競争のなかの災害

まとめ
「4つの政党ブロック」は、さらに「4つの亀裂」を内部に抱え
ていたと評価することができる。
①民主党の内部分裂
②民・自・公の三党合意路線への一定の評価
③第三極の相互関係(維新と太陽合併など)
④原発への不一致(ブロック間、ブロック・政党内)
公的決定を担う政党が、危機時にあってもなお、政党間競争
と協調にどう折り合いをつけるかという、政党政治に置いて
普遍的な課題に直面していたということ。2012年総選挙の争
点提示は、政党政治の帰結であった。
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その後の政治競争
自公ブロックの政権復帰
参院選勝利(2013年)によるねじれ解消によって、与野党間
協調の必要性が低下。与党優位の政治状況へ。

しかし、地方選挙をみると、自民の組織構造の弱体化傾向
は継続。特にいくつかの県知事選を見ると、党中央と地方組
織の調整がままならず、結果的に相乗りを選択したり、保守
分裂を招くなど、有権者への選択肢提示が十分にできてい
ない(東京、沖縄、福島、佐賀など)。
 第三極ブロックが地方に根を貼れず(大阪除く)、2014年総
選挙でも支持拡大に結び付けられなかった。

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「陳情」ではなく企画立案と「提案」により予算を獲得するタ
イプの政治家の必要性?
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結論

大量の「公的決定」
「事前の備え」により有効に機能したもの、備えなく機能しな
かったもの、「将来への備え」に向け大量の決定が日々積み
上げられている。しかし、それは必ずしも政治的争点として
有効に取り扱われるものばかりでない。
 総体としての「非争点化」
自由民主主義体制にあっては、選挙を通じた民意反映と正
当性獲得のプロセスが大前提。そうした前提の下で政党は
行動し、権力を獲得するために、政党に有利な争点に光をあ
て不利を招く争点を退けるという政党政治の論理を、危機の
下であっても貫徹した。それは政治システム総体として、震
災の「非争点化」を招いた。
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報告書の到達点と課題
到達点
 国家の基本三権能について言及しえた。
 震災下の重要アクター「東京電力」に言及することができた。
司法、社会運動についても調査範囲を拡張し、研究の立体性向上に貢献
した。
 政治の制度的中核である「選挙」と「政党」へと議論を連結しえた。
 総体としての「非決定」状況という日本政治の見立てを提示した。
主な課題




39
取り扱った公的決定の対象に限りがある(対象としない多くの公的決定事
例が残った)。
秩序維持と社会統合に関わる「公的決定」について視点に限りがある。
財政をめぐる政治・政策過程について配慮する必要があった(地方自治・
行政班が担った)。
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ご清聴ありがとうございました。
筑波大学 人文社会系
辻中豊
[email protected]
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