白金製剤の抗がん作用における 交流磁界曝露の影響

A-1
白金製剤の抗がん作用における
交流磁界曝露の影響評価
磁気応用研究グループ
電気電子システム工学科
中田 篤志
目次
1.研究背景 研究目的
2.交流磁界曝露影響の評価方法
3.周波数60Hz,磁束密度50mTの交流磁界曝露に
よる影響測定結果
4. 考察
5.まとめと今後の方針
研究背景
化学物質や放射線などの外的要因に磁界曝露を併用
した場合、生体への作用に変化が生じたという報告が
ある
磁界
放射線を照射後,遺伝子が変異する
磁界曝露を併用
遺伝子の変異率が増加
(磁界曝露のみでは遺伝子に影響なし)
放射線
細胞
研究背景
抗がん剤シスプラチンに交流磁界曝露を併用すると
抗がん剤の作用が増加したという報告がある
シスプラチン
非曝露時
シスプラチン
曝露時
がん細胞
がん細胞
投与量が少なくても
正常細胞
同等の効果
正常細胞
副作用軽減
磁界曝露
研究目的
1.抗がん作用への磁界曝露影響はどのような
メカニズムなのか
2.どの抗がん剤に磁界曝露影響があるのか
不明な点が多くほとんどわかっていない
研究目的
抗がん剤
磁界曝露併用
による抗がん
作用の増強率
ブレオマイシン マイトマイシン
1.2倍
2.4倍
作用機構
DNA
切断作用
DNAへの
分子量
1487.47
334.327
架橋結合
+
DNA切断作用
白金製剤
シスプラチン
1.5倍
ネダプラチン
カルボプラチン
?
?
DNAへの
架橋結合
DNAへの
架橋結合
300.05
303.17
371.05
磁界影響を受ける抗がん剤の特徴を調べるために
スクリーニングを行なう
分子量や作用機構が似ている
抗がん剤カルボプラチン及びネダプラチンを選んだ
抗がん剤の作用機構
シスプラチン
H2O加水分解
カルボプラチン
DNAの塩基に架橋結合
H2O加水分解
ネダプラチン
大腸菌
大腸菌はヒト細胞と同様に抗がん剤によりDNA
損傷を受ける
増殖サイクル
ヒト細胞:2倍/日
48
大腸菌: 2 倍/日
実験結果を早
く得られる
コロニーアッセイ法
① 大腸菌(37℃で一晩培養)
+
抗がん剤
② ①をプレート上に撒き
ガラス棒で一様に広げ
る
③ 一晩培養
④ 大腸菌1匹が
動けずコロニー
を形成
磁界曝露
コロニーアッセイによる磁界影響評価法
生菌数=コロニー数
磁界曝露
非磁界曝露
コロニー数を比較
磁界曝露
非磁界曝露のコロニー数>磁界曝露のコロニー数
磁界曝露影響によって抗
がん剤の作用が増加
磁界曝露のコロニー数>非磁界曝露のコロニー数
磁界曝露影響によって抗
がん剤の作用が減少
カルボプラチンの周波数60Hz磁束密度50mTの
交流磁界曝露による抗がん作用への影響測定結果
6
カルボプラチン500μg/m l
N on Exposure
105
カルボプラチン500μg/m l
Exposure
V iable cell(cfu/m l)
10
C ellratio of exposure to control
107
104
103
102
101
100
0
1
2
3
4
5
6
Tim e(h)
図1 カルボプラチンの磁界影響評価
7
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
カルボプラチン500μg/m l
N on Exposure
カルボプラチン500μg/m l
Exposure
0
2
4
6
Tim e(h)
図2 相対比による磁界影響評価
どの時間おいてもT検定値Pの値がP>0.05となり、有意差は得られなかった
交流磁界によるカルボプラチンの抗がん剤作用
への影響はほとんどない
ネダプラチンの周波数60Hz、磁束密度50mTの
交流磁界曝露による抗がん作用への影響測定結果
10
1.2
7
10
1
10
ネダプラチン1.2μg/mlのみ
5
ネダプラチン1.2μg/ml+MF
Survival rate of exposure to control
Viable cell(cfu/ml)
6
0.9
0.8
10
0.7
4
0.6
10
0.5
3
0.4
10
0.3
2
10
0.2
1
0.1
10
0
ネダプラチン1.2μg/mlのみ
ネダプラチン1.2μg/ml+MF
1.1
0
0
1
2
3
4
5
6
7
0
2
4
6
Time(h)
Time(h)
図3 ネダプラチンの磁界影響評価
図4 相対比による磁界影響評価
6hにおいてT検定値Pの値がP=0.047<0.05となり、有意差が得られた
ネダプラチンは6hにおいて磁界曝露併用により抗がん作用
が増強された
考察
研究報告の1つに
細胞膜へ磁界曝露をすると,細胞膜に埋め込まれている
膜タンパク質の立体構造が変化するという報告がある
?
細胞膜外
細胞膜
細胞内
たんぱく質チャネル
抗がん剤
抗がん剤の膜透過率が大きくなるのではないか
考察
磁界影響
抗がん剤
分子量
無し
有り
カルボプラチン
ネダプラチン / シスプラチン
371.25
303.17 / 300.05
化学式
原子結合距離が小さく,分子量も小さいため
透過量が増加したのではないか
まとめと今後の課題
抗がん剤カルボプラチン及びネダプラチンの
交流磁界曝露の影響評価を行なった
カルボプラチンは交流磁界曝露影響はなく
ネダプラチンは6hにおいて交流磁界曝露併用で
抗がん作用が増強された
今後は
・多くの抗がん剤の中からスクリーニングを行う
影響有の抗がん剤や影響無の抗がん剤を分類し傾向を探す
・細胞膜の通りやすさを判定できる実験を行う
ご清聴ありがとうございました
考察
カルボプラチンとネダプラチンの
磁界曝露影響の違いは?
2
1
1
2
① 細胞膜外で
加水分解
② 細胞膜を通る
② 細胞膜を通る
③ 細胞内で
加水分解
④DNAへの架橋結合
⑤DNA修復
G
C
G
C
C
G
C
G
T
A
T
A
G
C
G
C
⑥細胞死
細胞膜の通りやすさor加水分解の反応速度
に磁界曝露影響があるのではないか
細胞
作用増強率
減少率
10μg/ml+MF
減少率=
6hの生菌数
0hの生菌数
10 15 20
30
濃度(μg/ml+MF)
この例の場合
磁界曝露併用によって10μg/mlの濃度が15μg/mlの濃度に
増強された
増強率は1.5倍
マイトマイシンCの作用機構
5段階の反応過程がある。4つの
酵素が作用機構に関係しており、
フリーラジカルも発生している
非常に複雑である
フリーラジカル
・フリーラジカルは不対電子を持っている分子である
他の原子や分子と反応して、相手から電子を奪い取る
つまり、相手の物質を酸化する力が強い分子である
実際の投与量(カルボプラチン)
1.300~400mg/m2 (体表面積)
2.投与量(mg/body)=目標ACU値×(GFR+25)
ACU値:未治療例に単剤で使用の場合7
既知量例や他剤との併用の場合5
GFR=194 × 血清クレアチニン-1.094 × 年齢-0.287
血清クレアチニン(成人男性基準)0.66-1.13 mg/dl
実際の投与量(ネダプラチン)
1日一回80~100mg/m2(体表面
積)年齢、疾患、症状に応じて適宜増減する
結合距離
1.23×1010m
1.1×10-10m
1.1×10-10m
1.54×10-10m
T検定
T分布
0
2つの分布の重なっているところが全体
の何%あるか?
例;5%重なっているとき、T検定値P=0.05