通年利用型ソーラー給湯・ 空調換気システムの実測及 び年間シミュレーション Field Test and Simulation of Solar Hot-water Supply and Air-conditioning / Ventilation System for Year-round Use 桃井 義江 佐竹 吉野 良尚 龍一郎 晃 博 大阪大学 東京工芸大学 前田建設工業(株) 東北大学 空気調和・衛生工学会大会2008(草津) 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 研究背景・目的 NEDO技術開発機構の研究開発事業(H17~H19年度) 福祉・教育・公共居住系施設を対象とした通年利用型太陽熱利 用システムの開発を目的として、 ・夏期・中間期の余剰熱を利用した「デシカント空調機の研究」 ・全体システムに適した「水集熱式の太陽集熱貯湯装置の研究」 等の要素研究を実施してきた。 ・全体システム実験施設の構築 ・フィールド実験にて、室内環境・太陽熱利用効率・システム性能 等を評価 ・TRNSYSシミュレーションにより年間シミュレーションを実施 全体システムの最適化 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 全体システム概要 単板ガラス平板型、選択吸収膜集熱板 面積:30㎡(2㎡×15枚) シリカゲルロータ式+間接気化冷却機構 処理風量:600㎥/h 温度成層型、容量:2000ℓ (500ℓ×4本、直列) 延床面積:77.6㎡(床暖房45㎡) ヒートポンプ式深夜電気温水器 定格COP:3.8、加熱能力:24.6[kW](平均) 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 低温集熱モード(冬期) 低温タンク下部温度が55℃未満のとき、 集熱温度60℃にて流量をPID制御 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 高温集熱モード(冬期・夏期) 低温タンク下部温度が55℃以上のとき、 集熱温度80℃にて流量をPID制御 *夏期は常時高温集熱モード 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 追焚きモード(冬期・夏期) 高温タンク上部温度が50℃未満(残湯量200L)に なると、タンク1本分(500L)が75℃になるまで、還 水温度80℃で焚き上げる 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 高温集熱・デシカントモード(夏期) 研究室内のデシカント操作盤にて、運転の発停操作を行う 高温槽上部温度が、55℃以上のときポンプが稼動し、50℃ 以下になった場合ポンプが停止 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 低温集熱・低温槽床暖房モード(冬期) 【集熱】 低温タンク下部温度が55℃未満 【床暖房】 低温タンク上部温度が45℃以上のとき、 負荷側還水温度40℃にて流量をPID制御 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 高温集熱・低温槽床暖房モード(冬期) 【集熱】 低温タンク下部温度が55℃以上 【床暖房】 低温タンク上部温度が45℃以上のとき、 負荷側還水温度40℃にて流量をPID制御 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 給湯(直接給湯・間接給湯)モード(夏期・冬期) 【間接給湯】 給湯温度が48℃になるように一次側流量をPID制御 【直接給湯】 ミキシングバルブにて上水と混合させ、60℃で送水 *給湯は、高温タンク上部から取水する 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 冬期実測結果 高温槽床暖房 高温集熱(80℃) または デシカント 低温集熱(60℃) 低温槽床暖房 集熱器 熱生産 (集熱器、補助熱源) 熱消費 (デシカント、床暖房) 1200 40 床表面温度 1000 タンク1 タンク2 高温貯湯タンク タンク3 温度[℃] 800 タンク4 低温貯湯タンク 20 水平面日射量 600 室温 床暖房 400 10 デシカント空調 外気温 日射量[W/㎡] 30 200 補助熱源 0 0 1/24 1/25 1/26 (a) 外気象と研究室内温度 14 追焚き 送水温 集熱 送水温 10 8 6 4 2 0 追焚き流量 1/25 集熱流量 1/26 (b) 集熱器と補助熱源の送水温・還水温・流量 60 50 40 30 20 10 0 1/24 18 16 送水温 14 12 10 還水温 8 6 床暖流量 4 2 0 1/25 1/26 (c) 床暖房の送水温・還水温・流量 流量[L/min] 16 温度[℃] 集熱 還水温 12 60 50 40 30 20 10 0 1/24 90 80 70 18 追焚き 還水温 流量[L/min] 温度[℃] 90 80 70 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 冬期実測結果 高温集熱(80℃) または デシカント 低温集熱(60℃) 低温槽床暖房 集熱器 タンク1 タンク2 高温貯湯タンク タンク3 熱生産 (集熱器、補助熱源) 熱消費 (デシカント、床暖房) タンク4 低温貯湯タンク 床暖房 デシカント空調 補助熱源 120 熱量[MJ/hr], 集熱効率[%] 高温槽床暖房 集熱面日射量 100 80 追焚き熱量 集熱量 集熱効率 60 40 20 0 -20 床暖熱量 -40 1/24 1/25 排湯熱量 1/26 (d) 熱量収支 冬期実測における熱量収支の月積算値 入射 日射量 集熱量 H P 熱量 デシカント 床暖熱量 給排湯量 熱損失量 投入熱量 全取得 熱量 集熱効率 [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] [G J/m onth] 11月 12月 1月 9.64 9.70 7.60 3.20 2.92 2.14 2.58 4.91 5.17 0 0 0 -1.79 -4.19 -5.11 -3.45 -2.40 -0.67 -0.53 -1.23 -1.52 5.77 7.83 7.30 [%] 33.17 30.09 28.08 太陽 依存率 [%] 55.37 37.31 29.25 ・集熱効率=集熱量(GJ/month)/集熱面に入射する日射量(GJ/month)×100 (%) ・太陽熱依存率=集熱量(GJ/month)/全取得熱量(GJ/month)×100 (%) ・システムCOP=全取得熱量(GJ/month)/全消費電力(GJ/month) システム COP [-] 4.70 3.76 3.23 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 開発システムの年間シミュレーション概要 使用計算ソフト:動的熱負荷計算ソフト TRNSYS16 気象データ:拡張アメダス標準年(東京) 助走計算期間:1ヶ月 計算時間間隔:1時間 ④床暖房 ①集熱器 ③エコキュート ②貯湯槽 ⑤デシカント空調 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 計算条件 表3 設定条件 ①集熱器 面積:30㎡、集熱効率η=0.61-4.18(Δθ/I)、Δθ:(送水と還水温度 の平均)-(周辺外気温度) [℃]、I:集熱面日射量[W/㎡]、夏期・中間 期集熱温度80[℃]、冬期集熱温度60[℃]または80[℃]、最大流量 8.3[ℓ/min] ②電気温水器 連携貯湯装置 容量:2000ℓ(低温側タンク500ℓ×2本と高温側タンク500ℓ×2本を直列接 続)、熱貫流率0.59W/㎡℃(タンク保温)、補助熱源の加熱能 力:24.6[kW](平均)、焚上げ温度:80[℃]、最大流量8.0ℓ/min ③床暖房設備 床暖房面積45㎡、稼働時間9:00~17:00(冬期のみ)、床表面設定温 28[℃]、戻水設定温35[℃]、最大流量50[ℓ/min] ④デシカント空調機 稼働時間9:00~17:00(夏期・中間期のみ)、温水コイル熱変換効率 0.8、流量2.5ℓ/min、処理風量600㎥/h(外気:100㎥/h+還気500㎥ /h)、再生風量500㎥/h ⑤その他 室内エアコン:稼働時間9:00~17:00(夏期のみ)、夏期室温設定 28[℃]、総発熱量34.5[W/㎡]、換気量2.0回/h(夏期はデシカントの 換気量を含む) 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション シミュレーションでの深夜焚上げ湯量 外気温θenv 深夜焚上げ湯量の計算方法 上水温度(℃) 日射量IT θin = 17.8 + sin((年通算日-130) / 365×2π) ×10.8 環水温θin qSoler 流量m 集熱湯量 (L/hr) ・ m m= 集熱効率η ASolar a I T b (θsolar θenv ) 3600 C w θout θin 送水温θin 2000 1800 1600 ここで、 IT θenv は面日射量(W/m2)、 Cw は外気温度(℃)、 は水の比熱(=4183 J/kg・K)、 θout は集熱器還水温度(= 60 ℃)、 θin は上水温度(℃)、a =0.61、b =-4.81 θsolar は上水温度と集熱器還水温度の平均値 予想集熱湯量(ℓ) ASolar は集熱面積(=30 m2)、 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 0 10000 20000 翌日積算面日射(kJ/㎡) 深夜焚上げ湯量(L) = タンク総容量(L)-(残湯量(L)+翌日予想集熱湯量(L) ) 30000 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 年間シミュレーション結果 夏期運転挙動 100 HP熱量 70 集熱器送水温 60 集熱面日射量 40 集熱量 20 40 30 0 20 デシカント熱量 -40 7/17 100 熱量[MJ/hr] 80 7/18 HP熱量 80 70 60 集熱量 集熱面日射量 50 40 20 30 0 20 -20 -40 7/17 0 90 集熱器還水温 集熱器送水温 10 7/19 60 40 50 温度[℃] 60 -20 深夜焚上げ 80 デシカント熱量 7/18 7/19 10 0 温度[℃] 熱量[MJ/hr] 80 日中追炊き 90 集熱器還水温 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 年間シミュレーション結果 冬期運転挙動 HP熱量 集熱器還水温 80 40 20 集熱器送水温 集熱面日射量 40 30 0 20 10 床暖熱量 -40 1/25 100 1/26 集熱器還水温 60 40 0 1/27 HP熱量 集熱面日射量90 80 80 熱量[MJ/hr] 60 50 集熱量 -20 深夜焚上げ 70 70 集熱器送水温 60 集熱量 50 40 20 30 0 20 -20 10 床暖熱量 -40 1/25 1/26 1/27 0 温度[℃] 熱量[MJ/hr] 日中追炊き 80 60 90 温度[℃] 100 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 年間シミュレーション結果 太陽熱依存率 82.9 81.0 89.5 タンク熱損失 3月 4月 太陽熱依存率 82.3 97.0 集熱量 71.1 79.5 床暖熱量 タンク熱損失 1月 2月 100 75.9 90 80 65.2 70 60 51.5 53.2 43.4 50 40 42.9 39.6 30 20 デシカント 熱量 熱消費 10 0 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 3月 H P 熱量 100 90 78.7 66.3 80 70 61.5 51.5 60 42.1 50 46.7 40 39.0 30 35.6 20 デシカント 熱量 熱消費 10 0 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 熱生産 熱量[G J] 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 100 太陽熱依存率[%] 床暖熱量 2月 H P 熱量 熱生産 集熱量 1月 深夜焚上げ 100 4月 太陽熱依存率[%] 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 =集熱量(GJ/month)/全取得熱量(GJ/month)×100 (%) 熱量[G J] 日中追炊き 太陽熱依存率 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 年間シミュレーション結果 システム成績係数(COP) システムCOP[-] =全取得熱量(GJ/month)/全消費電力(GJ/month) (*消費電力は実測データを基に推算) 8 日中追焚き 6 4 2 深夜焚上げ 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月 12月 平均 深夜焚上げ湯量(L) = タンク総容量(L)-(残湯量(L)+翌日予想集熱湯量(L)) *翌日予想集熱湯量の補正 翌日予想集熱湯量(L) = 予想集熱湯量(L) × 補正係数(-) 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション 年間シミュレーション結果 ランニングコスト 昼間(8~22時) ランニングコスト[千円] 夜間(22~8時) 8 7 6 5 4 3 2 1 0 7月~9月 10月~6月 14.2円/kWh 12.8円/kWh 7.5円/kWh 日中追焚き 47,000円 深夜焚上げ 43,000円 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月 12月 年間,約9%のランニングコスト削減 通年利用型ソーラー給湯・空調換気システムの実測及び年間シミュレーション まとめと今後の予定 太陽熱の高付加価値での利用を目指した新構造のシステム を開発し、フィールド実験施設を構築し、その概要と冬期連 続実測結果について述べた。また、フィールド実験施設をモ デル化し、年間シミュレーションを行い、計算結果から太陽熱 依存率や集熱効率、全体システムの成績係数、ランニングコ ストを計算し性能評価を行った。 年間のシステムCOPは4以上と高く、エネルギー的に有効な システムである。 深夜焚上げ制御により、約9%ランニングコストが削減できる。 今後は、深夜焚上げ量調整及びデシカント空調機との連携 制御を検討し、システムのさらなる最適化を図っていく予定 である。
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