これまでの研究内容と着任後の抱負 • 研究内容 – 学位論文研究 • 加速器に興味を持った理由と 今後の抱負 – 3次元螺旋軌道入射 素粒子原子核研究所 2004年3月 博士研究員 飯沼 裕美 1 学位論文研究:RHIC 絶対ビーム偏極度計 目的1:陽子ビームの偏極度を測定する 核子のスピン構造研究の目玉の一例:Gluon 偏極度測定 1 N N G A LL 2 Pbeam N N 偏極度計が測定 PHENIXやSTARが測定 進行方向と平行・反平行に偏極 (縦偏極) Pbeam Pbeam 5% しかし、従来の偏極度計は高速計測可能だが、測定中心値がゲタを含み、 絶対値補正が必要! 2 どうやって偏極度を測定するか? 偏極陽子陽子弾性散乱が最適 前方散乱陽子 陽子ビーム 水素標的 運動量移行 t pin pout 0 スピン状態に依存した反応の幾何構造 の左右非対称性ANを定義する。 標的 t ビーム t A N t Pビーム P標的 Pビーム 2 反跳陽子 ビーム ビーム P標的 AN 標的 i / i0 (i=beam 又は target) ならば、 P P標的 ビーム 2% 標的の偏極度の精度と同精度でビーム Pビーム P標的 偏極度を測定できる。 高性能偏極水素ガス標的生成に成功 反跳陽子測定可能 、 -t ~0.001(GeV/c)2 運動エネルギー0.6MeV まで計測、 弾性散乱イベント同定精度 < 3%を達成した。 P標的 私が 取り組んだ。 i i P標的 3 学位論文研究:RHIC 絶対ビーム偏極度計 目的2: ANの原理を詳細理解する AN A QED N 電磁気力 A QCD N 核力? 1. スピン依存する電磁気成分ANQED は、陽子の異常磁気モーメント の 寄与により運動量移行 -t 310-3 (GeV/c)2で極大になる。 (電磁気力核力になるエネルギー領域) 2. しかし、QCD摂動計算 不可+実験技術の制 限から良く理解されて いないので、実験的に 解明する。 私の物理的動機 E704, FNAL s=19.7 GeV Phys. Rev. D 48, 3026 (1993) A QED N AQCD ? N 4 RHIC (Relativistic Heavy Ion Collider) in Brookhaven National Laboratory 1周 3.83 km 米国 5 絶対ビーム偏極度計 スネーク磁石 スネーク磁石 スピンローテーター 偏極陽子 ビーム源 スネーク磁石 横偏極 • 偏極陽子ビーム • 加速・周回中は横偏極 (バンチ毎に任意のspinパターン ……)、 • ビーム加速に伴い、減偏極共鳴ポイントを何度も通過、 • 減偏極を防ぐためにスネーク磁石を設置しているが・・・ 偏極度計は偏極ビーム加速器の必須装置! 6 偏極水素 標的 偏極水素ガスジェット 標的システム 左右フランジに取り付けたシリコ •ン検出器で反跳陽子を検出する。 高さ:3.5 m • 重さ:3トン • ガス標的速度 156060 m/sec • ガス標的サイズ ~ 2.9mm (RHICビームサイズ ~1mm) 反跳陽子 RHIC 陽子 ビーム • RHICビームとの位置合わせを するために装置全体を 10 mm 調整可能。 反跳陽子 • 厚さ 約400m • 有効表面積 60mm 64 mm • 7 1チャンネル4mm幅 5mrad 反跳陽子検出器(シリコン検出器);私の担当 衝突点から左右約80cmのところ にシリコン検出器を設置 角度とエネルギーと時間を計測 R 大 TR 大 ToF小 (検出器の時間分解能2.3ナノ秒) T 前方散乱粒子が R & ToF 相関 陽子の場合のTR &3ナノ秒 R 相関線 バンチ長 1.5ナノ秒 R ガス標的なので、 反跳陽子の検出 が可能になった。 Ch#1-16 線源 エネルギー校正 241Am(5.486 MeV) 反跳陽子 突き抜け #16 Ch#1 Ch# R ビームハロー Deposit energy MeV 2相関 (TR & ToF ) 、 (TR & R ) を利用して、反跳陽子、前方散乱陽子を同定。 シリコン検出器の不感層厚さ、感応層の厚さを実験データから見積もり、計測し たエネルギーから運動エネルギーTRを算出する: TR=0.07MeV バックグランド成分を解析し、系統誤差を統計誤差程度まで追いこんだ。 8 2004年AN測定結果 標的 QED QCD AN AN AN P標的 • 主要項:陽子の異常 磁気モーメント起源 PLB 638 (2006), 450-454 PRD 79 094014 (2009) QCD記述不可能 • 複素数パラメータ r5 3.9 M events Pビーム P標的 100GeVビーム AN のピーク形状が明白 標的 24GeVビーム ビーム0.8 M events Pbeam 2008年実験 8.5% (2004) 3週間 まで担当 Pbeam スピン依存する核力の QED A s依存性を示唆。 N 現在も安定稼働し、目標精度5%を達成。 核子スピン構造研究に貢献。 エネルギー校正を頑張った成果: TR=0.07MeVt=1E-4 (GeV/c)2 BG解析を頑張った成果: 系統誤差統計誤差 弾性散乱同定精度<3% 9 偏極度計の成果 と 私が得たもの 1. 加速器の必須構成要素の偏極度計に一貫して取り組んだ • シリコン検出器の読み出しエレクトロニクスの改良、等。 • 実用化に向けてコミッショニング、実験中の保守、加速器オペレータ用 解析ツールのパッケージ化 • 目標精度 < 5% を達成した • ストア毎の精度10%の偏極度測定、加速器へのフィードバック可能 2. 偏極度計の原理となる物理量AN の高精度測定 全断面積、微分断面積と同様の基本物理量の詳細理解 核力のスピン依存性研究に貢献、 物理結果を博士論文、2本の投稿論文にまとめた。 (日米で二つの賞を取った。) 3. ビームを「提供する側」と「使う側」の両方の視点を持てた もっと、ビーム生成・制御にダイレクトに取り組み、 10 世界一の高品質ビームを作りたい。 今後の抱負 加速器物理屋としてのKEK加速器への貢献 1. KEKBのダンピングリングの入出射器の設計・開発・建設、性能 向上に興味がある。 2. 現在取り組んでいる、特殊な入射方法の概念設計作業と類似 性があると思う。 キッカケは新g-2実験の立ち上げ・貯蔵リング磁石の概念設 計だが、物足りず、加速器建設そのものに興味を持った。 機構が推進する現行プロジェクトのビームラインに取り組み、 現実のビームを扱いたい。 次に、加速器物理に取り組みたいと思った理由と、 現在取り組んでいる、ビーム入射を紹介します。 11 ビーム品質とミューオンの歳差運動 (g-2)測定精度の関係 S 2 Ta a B B 14m B qB qB gq s c 1 a 2m m s mc 米国BNL E821実験 ビームパイプ直径9cm(3次ビーム 42mm- mrad) 貯蔵磁場1.45 テスラ 平均磁場精度B=0.17ppm 1. 磁場と垂直方向の スピンは回転する 2. 電荷を持っているの でサイクロトロン運 動をする。 3. スピン歳差運動する。 g2 q a B 2 m サブppmの精度で 標準理論と比較 貯蔵リング内のビーム及びスピンをこれほど精密に制御でき るのかと驚嘆し、これを越えるビームを作りたいと思った。 12 3 GeV陽子ビーム ( 333 uA) ミューオンビーム再加速 2.3 keV/cから300MeV/c (=3) 小型リング に貯蔵 1. ビーム品質を抜本的に改善、超ストレート(極冷)ビームを作る。 • ミューオン源を新規開発、ミューオンビームを加速する、 • 貯蔵用収束電場を必要としないビーム制御を目指す、 2. 一体型磁石による小型貯蔵リングにして磁場精度を更に上げる。 13 直径0.66 m、 B=3 テスラ 精度 < 0.1ppm 66cm どうやってビーム入射するか? コンパクト強磁場リングへの水平入射は技術的に難しい: • 3[T] 磁石のフリンジフィールドをキャンセル • 1ターン以内に水平キック(~ 60 mrad) 3次元スパイラル入射 F + BR 適切な動径方向磁 場で垂直運動量を 水平方向に変える メイン磁場に加え、弱収束磁場 でビーム軌道制御する 2次元軌道 貯蔵リング平面 垂直方向 キック 貯蔵リング平面 B 14 貯蔵リング磁石概念設計 • • • 1.ソレノイド磁石をベースにした。 ビーム周回軌道上の磁場 周回軌道の均一度を出すために大きくなった。 3テスラ 精度<0.1ppm KEKの入射の専門家と超電導磁石企業の専 2.門家と2年がかりで取り組む。 3次元スパイラル軌道に適した フリンジフィールド + ビーム入射 用トンネル 天板ヨーク(鉄) 円筒形リターン ヨーク(鉄) 適切な動径磁場 の解法を開発 1.8m ポールチップ (鉄) 超電導メイン コイル内径 1.6m OPERA 上下対称 4.6m 15 OPERA+GEANT4 シミュレーション ビームのソレノイド軸方向運動の制御 解析的アプローチ+数値シミュレーション 動径静磁場(メインコイル) トンネル出口入射角度 0.43rad 5mrad程度まで偏向する OPERA 垂直キッカー(独立コイル) ヘルムホルツコイルタイプ等 Br(t)=Bpeak sin(t) 半周期150ナノ秒 ニュートリノ +崩壊 Br(t) 入射角度5mrad 5rad未満まで (キック精度0.1%程度を想定) キッカーと 弱収束磁場を 与える。 弱収束静磁場 B0 y r By B0 y 1 n , BR n y ±10cm R R By 0.1ppm を満足、n=3E-5 B0 y サイクロトロン周期 7ナノ秒 回転軌道直径66cm 垂直キッカーコイル ソレノイド軸方向の軌道の振動 < 2cm 16 着任後の抱負 ビーム入射方法、貯蔵リング内での制御方法を考えるうちに、 概念設計だけでは物足りず、自分で装置を作りたくなった。 機構が推進する現行プロジェクトのビームラインに取り組み、 現実のビームを扱いたいと思った。 • SuperKEKBのダンピングリングの入出射に興味あり。 • キッカー装置の設計・製作・試験・運用・・・・ 未知の問題事項に取り掛かる切り口を自ら切り開き、目的達 成に必要な技術を、己の経験・経歴に関係なく新たに学び取 る柔軟性がある。 • • • 3次元螺旋軌道の設計、OPERA習得 電磁場中のスピン運動解析用にGEANT4を改良し、標準関数化 シリコン検出器の運用、偏極度計解析プログラム をゼロから構築 • GPS電波瞬断対策、 どんな難しいテーマでも必ず研究成果を出す底力がある 17 Backup 18 Field inside beam tunnel Tunnel fro inside Inside tunnel Outsid e OPERA 3D 2015/9/30 Straight tunnel does work! Hiromi Iinuma 19 Kicker circuit and eddy current study R=60cm cryostat wall Start DAQ 2015/9/30 Hiromi Iinuma 20 Ver.1 type Kick field @r=33.3cm Peak field reduction by cryo. wall 0.967 0.878 0.649 Minimum distance? Eddy currents on cryostat wall Br(t)=Bpeak sin(t) round_d-12_tr round_d-12_wall2015/9/30 1,2,3_tr Hiromi Iinuma mgaus s 21 今取り組んでいる事 “ビーム“入射条件見積もり + ビーム入射の実 証試験をどう やって行うか? Start y>0 ySolenoid axis y<0 y<0 y>0 どうやってソレノイド軸方向の ビーム運動を制御するか? 振動や製作 誤差による誤 差磁場は? どうやって磁場測定をする? どうやって磁場を制御する? 22 電気双極子(EDM)って何? ミューオンが水分子 みたいに分極? +++ ++++ Electric Dipole Moment 光速で走るミューオンは磁場 を電場と感じる(特殊相対論) 2c EDM EDM B 基本粒子のはずのミューオン に内部構造がある!? 標準模型ではありえないこと。 ノーベル賞級の 世紀の大発見! 電場をかけれ ば分かるはず。 電場! もしもEDMがあるならば、歳差運動は、g-2から の寄与と、EDMからの寄与の2成分になる。 2c e a EDM aB EDM B m 両方同時に精密 最新実験の上限値 ~ 1e-19 e.cm(2006年論文) 測定に挑戦! 新実験目標 <1e-20 e.cm 23 どうやってaとEDMを分離するか? example EDM B 動径方向電場に対 する陽電子の放出 角度の時間変動に 現れる。 EDM測定のキモは、 ミューオンビーム軌道 制御!! 24 どうやって物理結果を得るか? シリコン検 出器で測る NMRで測る e a a B m g-2物理結果が出る シリコン検出器 で測る NMRで測る 2c EDM EDM B EDM物理結果が出る 1. 高精度な磁場制御/測定とビームの品質が全てを決める実験です。 2. 高品質ビームを得る為に、J-PARCで新たなミューオンビーム源を開発中です。 3. 高品質磁場の為に、貯蔵リングサイズを従来実験の直径14mから、直径 0.7mにコンパクト化し、MRI技術を利用し、一桁上の精度を目指します。 4. 高品質ビームを、コンパクトな貯蔵リングへ入射するために、フリンジ磁場を 制御し、積極的に利用しようと試みています。 25 Muon Anomalous Magnetic Moment a S 2 Spin ½ Dirac B particle e S magnetic dipole moment g 2m gyromagnetic ratio g=2 Muon magnetic dipole moment e ...S 2 2m g 2 a ..... 1 g 2 2 2015/9/30 l l “anomalous” part Precisely calculated by 0.001 the SM theory 26 K. Hagiwara et al., PLB 649 (2007) 173-179 QED Theoretical calculation aSM = 11659180.4 5.1 -10 10 11658471.8 0.0 Dominant uncertainty T.Kinoshita, M.Nio Weak QCD 693.2 K.Hagiwara D. Nomura 5.1 2015/9/30 Dominant component~99% (ee ~73%) Recent ee experimental data made big contributions (BaBar, KLOE….) 15.4 0.2 27 AN, ANNとヘリシティー振幅 pp弾性散乱は、反応前後のスピン状態、時間と空間の対称性および同一粒子で あることを考慮すると、5通りのヘリシティー振幅で記述できる。 1 ノンフリップ | M | | M | 実験結果豊富・Regge理 論でよく説明される。 2 2 s, t | M | -t 0 でゼロになる全断面積(-t =0) ダブルフリップ 8 4 s, t | M | tot Im s, t 5 s, t | M | Pomeron? s s 4m 2p シングルフリップ had d 4 2 | |2 微分断面積 N dt s 電磁気力+核力 モデルいろいろ。 em* had had* em A QED N A d 4 AN 2 Im 5 5 dt s A NN d 4 2 2 5had dt s 2 Re * had 2 0 ? Odderon?28 H = p+ + e- |1> |2> |3> |4> 超微細構造 偏極水素ガスジェット標的システム 解離器 六極磁石 |1> P+ OR |1> |4> |2> P- |2> |3> 偏極水素原 子標的製造 装置 高周電磁波 遷移装置 (WFT, SFT) 標的偏極度 保持磁石 散乱槽 標的偏極度 測定装置 |1> |2> 2010/3/21 イオンゲージ 六極磁石 Hiromi Iinuma イオンゲージ 校正用 2nd 高周電磁波 遷移装置 29 標的のサイズ、厚み • 衝突点での標的サイズ FWHM = 6.9 mm 標的サイズ測定 RHIC-beam と 反跳 陽子検出器を使用 • 反跳陽子の角度分解能 5 mrad を保証。 • 2.0 mm diameter compression tubeを用いた 測定結果とも一致。 • ビームから見た標的の厚み (1.3 0.2 )1012 atoms/cm2 • ガス標的速度 156060 m/sec • ガス標的強度 (12.40.2)1016atoms/sec 設計値を達成。 RHIC ビーム位置を固定 (直径 ~1mm). システム全体を1.5 mm ステップで動かす。 弾性散乱事象数の位置分布より、標的形 30 状を算出する。 シリコン検出器の 有効厚を算出 Gd Am 陽子、α粒子のシリコン中 の阻止能 (dE/dx) を用い て、シリコン検出器の“有 効感応厚“を算出する。 ビーム起源 2010/3/21 有効感応厚: 400 5 m 不感応厚 : 2 0.06 m Hiromi Iinuma 31 エネルギー校正 (Deposit energy 運動エネルギーTR)が大変だった。 • シリコン表面の不感応層の厚さ、感応層の厚さをDeposit energy 32 スペクトルから見積もった。 バックグランド見積もり s=6.8 GeV pp弾性散乱イベントの他に・・・ • 非弾性散乱イベント • pp (p+) p 等、 寄与は無視しうる • 校正用α線源のテイル • ビーム起源 s=13.7 GeV バックグランド補正 2~3 %程度 2010/3/21 Hiromi Iinuma 33
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