プレストレス(Prestress) のロス(Loss) コンクリート工学研究室 岩城 一郎 プレストレスのロス プレストレス(PC鋼材の引張力)は緊張作業中および直後, あるいは経時的に失われる.→このことを考慮し,PC構造物 の設計しなければいけない. Pi x P(x)=Pi-〔ΔPi(x)+ΔPt(x)〕 P(x) ここで, P(x):断面xにおけるプレストレスト力 Pi:緊張材端部に与えた引張力:Initial Prestress ΔPi(x):緊張作業中及び直後に生じるプレストレス力の減少 量 ΔPt(x):プレストレス力の経時的減少量 プレテンション方式とポストテンション方式によりロスを考慮 すべき項目および減少量が変わる. プレテンション方式と ポストテンション方式 主として現場施工 主として工場製作 プレテンション方式:PC鋼材をあらかじめ緊 張しておき,その後,コンクリートを打込み, 硬化後,鋼材を切断する方法(コンクリートと 鋼材の付着により定着) 例 JIS桁,枕木等 ポストテンション方式:コンクリート硬化後PC 鋼材を緊張する方法(定着具により定着,ダ クト,グラウトが必要) 例 一般のPC桁 緊張作業中及び直後に生じるプレ ストレスのロス-1 コンクリートの弾性変形(プレテン,ポステン両方) プレストレス力により,コンクリートが圧縮力を受けて縮むこ とにより,プレストレスがロスする現象 緊張材とダクトとの摩擦(ポステンのみ) 緊張材とダクト(シース)との間の摩擦により,引張端からの 距離,曲がりに応じてプレストレスがロスする現象 緊張作業中及び直後に生じるプレ ストレスのロス-2 緊張材を定着する際のセット(ポステンのみ) 緊張材を定着具に定着する時に緊張材が定着具 に引き込まれる現象 ネジ式<<クサビ式 その他 プレキャストブロックの継ぎ目の変形 プレストレスの経時的ロス-1 以下,プレテン,ポステンともに考慮 PC鋼材のリラクセーション(Relaxation) 一定のひずみのもとで時間の経過と共に応力が減少し ていく現象→時間の経過と共にPC鋼材のプレストレス が減少していく現象 時間経過 初期張力 リラクセーション による張力減少 プレストレスの経時的ロス-2 コンクリートのクリープ(Creep) 応力によって生じたひずみが時間とともに増加する現象→プレス トレスにより持続的に作用する圧縮応力によりコンクリートが 徐々に縮む現象(鋼材には見られない,コンクリート特有の現 象) 時間経過 コンクリートの収縮(Shrinkage)(主として乾燥収縮) コンクリート中の水分が主として乾燥により失われ(蒸発し),コン クリートが縮む(収縮する)現象 プレストレスのロスの評価方法 プレストレス導入直後のPC鋼材の引張応力σpt 有効プレストレスσpe=σpt-Δσpr-Δσpcs ここで,Δσpr:リラクセーションによる鋼材の引張 応力の減少 Δσpcs:クリープ及び収縮による鋼材の引張応 力の減少 プレストレスの有効率η=σpe/σpt(一般に,η =0.8程度) プレストレスの導入直後(σpt),使用荷重作用時 (十分に時間が経過した後: σpe )に分けて設計 を行う.
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