スライド 1

インターネットに寄せる
社会の期待
後藤 滋樹
早稲田大学 理工学術院
インターネットに押し寄せる
社会変革の波
• インターネットに代表される情報通信技術(ICT)
がグローバリゼーションをもたらした
• グローバリゼーションが世界の経済構造を変え、
政治・経済・社会のすべてを変える
• この変化が情報通信に戻ってくる(来ている)
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UUCP時代の逸話
• 日米間のIP通信は1987年~
• 1986年に筆者はNTT武蔵野研究所勤務
当時の国際電話、テレックスの合計は研究所
全体で毎月20万円程度
UUCPによる日米間の通信が増大、20万円超
• 事情を聞かれる
答) 海外出張が一人減れば20万円は安い
• 数ヶ月後に再び呼び出される
現実) 通信費も海外出張も増えている
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1 情報通信とグローバル経済
• 水野和夫「人々はなぜグローバル経済の本質
を見誤るのか」日本経済新聞出版社, 2007.
1517 マルティン・ルター 95カ条の意見書
1498 ヴァスコ・ダ・ガマの喜望峰経由のインド
航路の発見
中世を終わらせ、近世・近代の幕を開けた
• IT革命は、これに匹敵する
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汎用技術としてのインターネット
• 著書 “Economic Transformations”
副題 General Purpose Technologies and
Long-Term Economic Growth
• 著者 Richard G. Lipsey,
Kenneth I. Carlaw, and Clifford T. Bekar
http://www.sfu.ca/~rlipsey/res.html
• 本書では人類の歴史の中で24の汎用技術を掲
げている。コンピュータが20番目、インターネッ
トは22番目に位置する
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24 Technologies (8/24)
Chapter 5: A Survey of GPTs in Western History:
Part I
10,000 BC to 1450 AD
1.植物の栽培
9000—8000 BC
Process
2.動物の家畜化 8500—7500 BC
Process
3.鉱石の精錬
Process
8000—7000 BC
4.車輪
4000—3000 BC
Product
5.筆記
3400—3200 BC
Process
6.青銅
2800 BC
Product
7.鉄
1200 BC
Product
8.水車
中世初期
中世とは西ローマ帝国の滅亡(476)からルネサンスまで
Product
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24 Technologies (16/24)
Chapter 6: A Survey Of GPTs in Western History:
Part II 1450 to 2000
9.3本マストの帆船
10.印刷
15th 世紀
16th 世紀
Product
Process
11.蒸気機関 18th 世紀末~19th 世紀初頭 Product
12.工場
18th 世紀末~19th 世紀初頭 Oganizational
13.鉄道
19th 世紀中頃
Product
14.鋼製汽船
19th 世紀中頃
Product
15.内燃機関
19th 世紀終り頃
Product
19th 世紀末頃
Product
16.電気
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24 Technologies (24/24)
Chapter 6: A Survey Of GPTs in Western History:
Part II 1450 to 2010
17.自動車
20世紀
Product
18.飛行機
20世紀
Product
19.大量生産
20世紀
Organizational
20.コンピュータ
20世紀
Product
21.Lean production
20世紀
Organizational
22.インターネット
20世紀
Product
23.バイオテクノロジー 20世紀
Process
24.ナノテクノロジー 21世紀(予想) Process
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汎用技術が社会を変革する
• 労働力の分布、人々の居住地
• 工場の物理的な形態、労働の慣習
• 工場の経営や財務の仕組
• 製造業の地理的な配置
• 産業の集中の度合
• インフラストラクチャの整備
• 私企業の金融分野の活動と方法
• 教育の制度や内容
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水車を動力として実現できた
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•
ビールの製造 (987);
麻の加工 (1040);
織物の縮絨 (1086);
皮なめし (1138);
材木の加工 (1204);
製紙 (1238);
カラシの製造 (1251);
針金の製造 (1351);
顔料の製造(粉末) (1348);
金属の切断加工 (1443);
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グローバル経済、社会の変化
• 2007年度上半期ビジネス書 第2位
• 水野和夫 著
三菱UFJ証券参与・チーフエコノミスト
• 「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」
• 日本経済新聞社, 2007年3月.
• 同主旨の水野氏の講演(南山大学)
http://www.sc.mufg.jp/inv_info/ii_report/m_report/pdf/mr20070713.pdf
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グローバリゼーションによる
大きな構造変化(3)
1. 帝国の台頭、国民国家の退場=帝国化
2. 金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位
=金融化
3. 均質性の消滅、拡大する格差=二極化
IT(情報技術)革命と、それを駆使するグローバリゼーション
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1.帝国化
• 資本が容易に国境を越える
• 16世紀には資本が主権国家と結婚した
21世紀には資本は帝国をパートナーとする
• 経済的な国境が低くなり、国境内に権力を及
ぼす国民国家の力が衰退する
• 米国は金融帝国
旧帝国の台頭:中国、インド、ロシア
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2.金融化
• 先進国において「資本の反革命」により賃金
が抑制される、ないし低下する
=中流階級の没落
• その結果、先進国ではディスインフレないしデ
フレが定着する
• 金融政策が緩和基調となるから、実物経済に
比べてマネーが膨張する
• 資産価格が上昇しやすい
• 先進国経済は資産価格依存症候群に陥る
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3.二極化
• 近代において国民は均質であった
国家単位の均質性は消滅する
 一億総中流意識の崩壊
• 格差は構造的問題であり、景気回復によって
解決するものではない
• 成長を目指す政策は人々の将来への不安を
高める。刹那主義が蔓延して少子化が進む
• インフレ=成長を基本とする政策はBRICsで
は妥当。先進国では弊害がある
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英語圏と非英語圏の差
• 水野氏
非英語圏が成熟してポストモダンに移行
英語圏では近代化が続いている
• 中世の帝国から国民国家へ
ラテン語の権威が失墜して母国語へ
• インターネット革命の下で
英語が世界の共通言語に
英語圏の国ではサービスを中心に特需
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諸問題が日本で顕著に現れる
• 柄谷行人, 2002.
日本の事例を考察すれば、西洋で起こったこ
との本質がより鮮明に示される
• 近代化を欧米よりも短い期間で達成した日本
では、矛盾が大きな形で顕在化する
• 現在の日本の諸課題は
10年後の欧米の姿
BRICsの数十年後の状況
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モジュール化
A社のパソコン
B社のパソコン
部品
パソコンはモジュール化されている
青木昌彦(著)谷口・滝沢訳「比較制度分析に向けて」(MIT Press), NTT出版, 2003年9月.
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モジュール化されている例
• 自転車はモジュール化されている
自動車はモジュール化されていない
→インテグレート
• ただし将来の自動車はモジュール化の方向
電気自動車はパソコンに近づく
• オートバイは無理矢理モジュール化されている
藤本隆宏「ものづくり経営学」光文社新書293, 2007年3月.
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インターネットはモジュール化の
典型例
マルチベンダ
オープン
⇔ メインフレーム時代のコンピュータ・ネットワークは摺り合わせ型
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モジュール化を歓迎すべきか
• 参入障壁が低い
標準化が重要
中小企業に機会がある
大企業が有利になる訳ではない
(他力本願)
• 激しい競争社会になる
ニッチ (隙間)での戦い
モジュール化は避けられない
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モジュール化を勝ち抜くために
• 低価格路線 vs.
他には出来ないことを実現する
• 研究開発が不可欠
後発でキャッチアップするのは儲からない
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研究開発とリスク管理
• 研究開発は成功率が低い
95%は瞬時に失敗
• リスク管理は社会の知恵
一人の社会では保険という制度が無意味
• チャレンジする人を応援する仕組み
これは一種の分業である
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シリコンバレー モデル
• 日本では、うまく作用しない
米国でも、ほとんどの地域では失敗
• ベンチャーキャピタリストと起業家が
相互に助け合う
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シリコンバレーでの逸話
• 筆者のNTT研究所時代の部下(米国人)の
2人が、たまたま同じ会社(start-up)で働く
• その会社の応援演説を頼まれた
私は製品の詳細を知らないが、能力のある
技術者が2人いるのは事実と述べた
• これは教科書に載っている応援の方法
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日本モデル
• メインバンク
• 市場型ファイナンス
• 護送船団
• 契約型官僚
上は古い米国モデル
新しい21世紀モデル?
諸問題がICTで顕著に現れる
これを解決して強いICTに
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