フェノタイプを考える

リウマチ性疾患における
遺伝因子解析の視点
~フェノタイプを考える~
第4回基礎と臨床を結ぶ分子病態研究会
2011/10/29
学士会館
京都大学大学院医学研究科 山田 亮
リウマチ性疾患の遺伝因子解析
•
•
•
•
多彩な病像
時間経過のこと
治療という介入が起こしていること
関与しそうな分子のネットワーク
関節リウマチ関連遺伝子解析
• 遺伝子多型(DNA配列の個人差・染色体差)と
関節リウマチとの間の関係を探す
• 遺伝子多型 SNP
関節リウマチ
の
GWAS
GARNET (東京女子医科大学・理化学研究所・京都大学)
RA 関連遺伝子解析のフェノタイプ
• ケース(診断された)
• コントロール(診断されていない・一般集団)
• 気になるそれ以外のこと(共変量)
– 性別
– 年齢
– 生活習慣
– 疾患の亜分類(自己抗体の保有状態)
今日のテーマ
解析に
どんなことを持ち込みたいか
どんなことを持ち込めるか
• ケース(診断された)
• コントロール(診断されていない・一般集団)
発症・非発症
未発病・既発病
時間
発症・非発症
未発病・既発病
死亡というフェノタイプ
• 生命表から
生存:0
死亡:1
•
•
•
•
•
初めは全員が 0
若いうちは稀に 0→1
だんだん 0→1 の確率が高くなる
0→1 の確率はある年齢でピークを迎え
最終的には全員が 1
なぜ、こういう形になるのだろうか?
簡単にモデル化してみる
簡単にモデル化してみる
• 一定の確率で「イベント」が起きる
• 「イベント」がある一定の回数に達すると
– 0→1 とフェノタイプが転じる
• 例
– 平均して1年に1回のイベント
– イベントが86回、蓄積して 0→1
どうしてモデル化する?
• モデル化しないと、わからないから
– 「何が」
– 「どのようにして」
– 「そうするのか」
どうしてモデル化する?
• モデル化しないと、わからないから
• 「ふつうのGWAS」ではどういうモデル?
– あるSNP (A / G)
• AA, AG, GG
– Aを持つ本数
• 2, 1, 0
– モデル
• Aの本数とRAになる確率に相関がある/ない
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
生起確率
この後、何度か登場する
確率分布・度数分布と
累積分布
累積確率
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
• 何が分布の形を決めるか
– 「イベント」の起きる頻度・起きやすさ・確率
– 0→1 となるために必要な「蓄積回数」
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
• イベントの発生頻度
が高い
• 四六時中、イベント
が起きている
– 代謝性酵素の欠損
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
• 成人以降・中年以降で増加
–癌
– DNAダメージ vs. 修復機構
– 「ダメージが残る」というイベント
• そこそこ、稀
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
• 「イベント」の発生頻度が下がることで、発病
時期の分布が
– 後ろ倒しになる
– ばらつきが大きくなる
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の必要累積回数
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の必要累積回数
• 「イベント」の発生頻度は高いままで、必要累
積回数が増えることで、発病時期の分布が
– 後ろ倒しになる
– ばらつきは変わらない
発病時期とジェノタイプ
• ジェノタイプが影響しているのは何か?
– イベントの発生頻度
• たとえば・・・
– 刺激に対する防御能に大小があれば、防御能を越えるイベ
ントの発生頻度に影響する
– イベントの必要累積回数
• たとえば・・・
発病時期とジェノタイプ
• ジェノタイプが影響しているのは何か?
– イベントの発生頻度
• たとえば・・・
– 刺激に対する防御能に大小があれば、防御能を越えるイベ
ントの発生頻度に影響する
– イベントの必要累積回数
• たとえば・・・
– 多数のユニットがあり、その数が減っていくとき。一定数まで
減ると、代償機構が破たんするとする。スタート時点のユニッ
ト数に多寡があれば、必要累積回数に影響する
発病時期とジェノタイプ
イベントの発生頻度に影響しているとき
発病時期とジェノタイプ
• ジェノタイプが影響しているのは何か?
– イベントの発生頻度
• たとえば・・・
– 刺激に対する防御能に大小があれば、防御能を越えるイベ
ントの発生頻度に影響する
– イベントの必要累積回数
• たとえば・・・
– 多数のユニットがあり、その数が減っていくとき。一定数まで
減ると、代償機構が破たんするとする。スタート時点のユニッ
ト数に多寡があれば、必要累積回数に影響する
発病時期とジェノタイプ
イベントの必要累積回数に影響しているとき
発生頻度
必要累積回数
発生頻度
必要累積回数
• 因子の「関わり方」が発病時期に影響を与え
るのならば、発病時期をフェノタイプにして解
析すればよいのでは…
いつかは発病するけれど、
まだ発病していない・・・
浸透率
• 「死亡」というイベント
– 浸透率 1
死なないとしたら、誰しも、いつかは・・・
死ぬより先に発病すること
死亡を考慮
死亡を考慮
浸透率
• 死亡を考慮
• 考慮するのは「死亡」だけか?
• 他疾患の影響
– 単一疾患だけで解析するのがよいのか
– 多疾患で解析するのがよいのか
死亡というフェノタイプ
• 生命表から
可逆と非可逆
• 必ず死亡する
• 非可逆という仮定
• 可逆か非可逆か
可逆と非可逆
• 非可逆病変を数えるか、可逆病変を数えるか
– 関節リウマチの進行とステージ
– 関節リウマチの「活動性関節」の数
非可逆な階段状のフェノタイプ
ステージ
• ジェノタイプはステージの何に影響するか
– 「イベント」の発生頻度
– 「ステージ」を上るための「必要累積回数」
発病時期とジェノタイプ
• ジェノタイプが影響しているのは何か?
– イベントの発生頻度
• たとえば・・・
– 刺激に対する防御能に大小があれば、防御能を越えるイベ
ントの発生頻度に影響する
– イベントの必要累積回数
• たとえば・・・
– 多数のユニットがあり、その数が減っていくとき。一定数まで
減ると、代償機構が破たんするとする。スタート時点のユニッ
ト数に多寡があれば、必要累積回数に影響する
非可逆な階段状のフェノタイプ
ステージ
• ジェノタイプはステージの何に影響するか
– 「イベント」の発生頻度
– 「ステージ」を上るための「必要累積回数」
ThresNums<-c(10,15,17,21)
ThresNums<-c(10,15,25,30)
活動性病変数というフェノタイプ
• 0/1ではない
• 量でとらえる
– 情報量が多い
• 増減する
– 病勢
– 病気のパターン
• 遷延型
• 寛解・増悪繰返し型
活動性病変数
• どのようにモデル化するか
– 複数病変
• 病変になりうる場所が複数ある(関節数)
• それぞれの場所で「イベント」が蓄積する
• 「必要累積回数」を越えると「活動性」になる
– 可逆性
• 「イベント」が起きる
• 「起きたイベントを修復する・後戻りさせるイベント」も
起きる
複数病変
• 関節リウマチ
– 「多」関節炎
– どうして「多」なのか
• 複数の関節で「一斉に」 0→1 がおきる
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の発生頻度
• 「イベント」の発生頻度が下がることで、発病
時期の分布が
– 後ろ倒しになる
– ばらつきが大きくなる
「イベントの蓄積」というフェノタイプ
「イベント」の必要累積回数
• 「イベント」の発生頻度は高いままで、必要累
積回数が増えることで、発病時期の分布が
– 後ろ倒しになる
– ばらつきは変わらない
複数病変
• 関節リウマチ
– 「多」関節炎
– どうして「多」なのか
• 複数の関節で「一斉に」 0→1 がおきる
• そこそこに「頻度の高いイベント」が起きていて、機が
熟して、一斉に 0→1 が起きている???
複数病変
• 関節リウマチ
– 「多」関節炎
• そこそこに「頻度の高い
イベント」が起きていて、
機が熟して、一斉に 0→
1 が起きている???
• 簡単なモデルで「多」関
節炎にすることはできる
2
1
3
複数病変モデル
• 簡単なモデルで「多」関節炎にする
ことはできる
– ジェノタイプはそのモデルの何に影響
している可能性がある?
•
•
•
•
「イベント」の頻度
「イベント」の必要累積回数
「修復イベント」の頻度
「修復イベント」の修復力
2
1
3
複数病変モデル
• ジェノタイプはそのモデルの何に影響している
可能性がある?
–
–
–
–
「イベント」の頻度
「イベント」の必要累積回数
「修復イベント」の頻度
「修復イベント」の修復力
• 「イベント」の
– 危険因子
– 防御因子
• 「修復イベント」の
– 危険因子
– 防御因子
1
2
3
一過性か慢性か
一過性か慢性か
• 「イベント」が累積は
する
• すぐ「修復イベント」
が効く
– 「修復イベント」を起こ
すための感度が良い
「修復イベント」が
「がっちりと」修復する
一過性か慢性か
• いったん、累積する
と
• 「修復イベント」がな
かなか起きない
– 「修復イベント」を起こ
すための感度が悪い
• 「修復イベント」の力
が弱い
ここまでのモデル
• 良いか、悪いか
• 右か左か
進む先は2方向か、3方向か、4・・・
• 強弱が2方向を
決める
• 強中弱が3方向
を決める
• 2項(0/1)の解
析は簡単
• 3項以上は難し
い
多数の因子が
相互に作用しあっているとき
ネットワークを捕まえる
http://www.sysbio.org/sysbio/multicellular/index.stm
定常状態をイメージ図にする
• ある安定な点がある
• 「攪乱」されて、そこ
から離れても、安定
な点に戻る
• 小さな攪乱
• 大きな攪乱
ジェノタイプの影響
• 何が違うか
– 「定常状態」の位置
– 「攪乱」の後の経路
2値を量的に?
• 何を量化するのがよいのか
• 診断・分類基準で考えてみる
診断・分類基準
• 診断基準・分類基準
– 患者によって、満足する項目が異なる
• そのパターンに遺伝因子はどう影響する?
• 「診断」を「最終フェノタイプ」とすれば、診断・
分類基準は、「中間フェノタイプ」
中間フェノタイプ
• 分類・診断基準
• バイオマーカー
– オミックス解析により、さまざまなバイオマーカー
が得られる
• どれを、使う?
• どれも、使う?
• 使いこなすには、どうする?
まとめ
•
•
•
•
発病時期(とその分布)をフェノタイプに?
複数の疾患を併せて解析?
病気の変化の様子を?
中間フェノタイプ(診断基準の項目・バイオ
マーカー)を?