糖尿病連携 -糖尿病と歯周炎の関係- 岩手県歯科医師会 口腔保健センター運営委員会 糖尿病の人は増えている わが国における糖尿病患者数の推移 kcal/day 2300 g/day ×106 20 総エネルギー量(kcal/day) 90 2000 10 人口 千人対 16 タンパク量(g/day) 10 車の保有台数(×106) 50 5 脂肪量(g/day) 0 有病率(人口千人対) 5 10 1950 1970 1990 ライオン歯科研究所 編「歯周病と全身の健康を考える」医歯薬出版 2004 を一部改変 糖尿病(Diabetes Mellitus:DM)とは インスリン作用不足 による慢性の高血糖状態 を主徴とする代謝疾患群 ・インスリン供給不足(Ⅰ型糖尿病) ※ 膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)のインスリン分泌不全 ※ 小児や若年層に多く発病し、わが国では全糖尿病患者の5%以下 ・インスリン抵抗性の増大(Ⅱ型糖尿病) ※ インスリンの標的細胞での作用不全の結果生じる糖代謝異常 ※ 全糖尿病患者の90%以上を占め、いわゆる生活習慣病 糖尿病の合併症 1.細小血管障害(三大合併症) 1)糖尿病性網膜症 2)糖尿病性腎症 3)糖尿病性神経障害 2.大血管障害 1)脳血管障害 2)虚血性心疾患 3)糖尿病性壊疽 3.その他 高脂血症,慢性感染症など この中に歯周病も含まれる 糖尿病の検査 1. 血糖検査 1)随時血糖検査:血液中のブドウ糖の濃度を測る. 2)空腹時血糖検査:空腹時における血液中のブドウ糖濃度 を測る. 3)ブドウ糖負荷試験:空腹時に75gのブドウ糖入りジュースを 摂取し,時間を追って血糖値を測る.耐糖能を調べる. 2. 糖化ヘモグロビン(HbA1c) 1)血液中の糖化ヘモグロビンA1cを測定する.血糖のコントロー ル状態がわかる. 3. 尿糖検査 1)尿中に排泄されたブドウ糖を調べる. 日本歯科医師会ホームページより 血糖コントロールの指標と評価 指標 優 良 HbA1c(%) 5.8未満 5.8~6.5未満 FPG 80~110未満 110~130未満 2h-PG 80~140未満 140~180未満 糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン 指標 不十分 不良 不可 HbA1c(%) 6.0~7.0未満 7.0~8.0未満 8.0以上 FPG 130~160未満 160以上 2h-PG 180~220未満 220以上 HbA1c:グリコヘモグロビン(%) 、FGP:早朝空腹時血糖値(mg/dL) 2h-PG:食後2時間血糖値(mg/dL) 化学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版 2007 インスリンの作用(血糖値を下げる) グリコーゲン 血管 糖 肝臓 グリコーゲン 糖 糖 細胞 細胞 血液中のブドウ糖を筋肉や脂 肪などの細胞へ送り込む 筋肉 ブドウ糖が肝臓や筋肉で「グリコー ゲン」 に合成されるのを助ける グリコーゲン 脂肪 肝臓 糖 脂肪細胞 脂肪細胞でブドウ糖が脂肪 に合成され るのを促進する 糖 肝臓のグリコーゲンがブドウ糖に 分解されるのを抑える インスリンの作用不足の状態 ①インスリンの分泌がほとんど無くなってしまう ②分泌されるインスリンの量が少ない ③分泌されるインスリンのタイミングが悪い ④インスリンの働きが悪くなる(インスリン分泌に異常なし) インスリンを受け入れ細胞(インスリン受容体)の問題 ⇓ インスリンが効かなくなる状態を「インスリン抵抗性」という インスリン受容体の働きが悪くなる原因 ・ 肥満により脂肪細胞に多くの中性脂肪がたまることで インスリン受容体の数が減り、インスリンの効きが悪く なる。 ・ 脂肪細胞からインスリンの働きを悪くする「遊離脂肪酸」、 腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor-α : TNF-α)が 分泌される。 ・ インスリン受容体や細胞の中の情報を伝達する経路に 異常がある場合もある。 糖尿病とTNF-α インシュリン 糖 血管 糖 インシュリン TNF-α 血管 糖 P ILR 受容体 基質 P ILR 受容体 基質 P PI3 kinase GLUT4 細胞 糖 PI3 kinase GLUT4 細胞 歯周病と糖尿病の類似点 慢性歯周炎 2型糖尿病 初期症状 ほとんど無兆候 ほとんど無兆候 年齢 35歳以上に多い 40歳以上に多い 生活習慣病とし ての側面 あり あり 自己管理 プラークコントロール 食事療法・運動 糖尿病が歯周病に及ぼす影響のメカニズム 網膜症 神経障害 腎障害 血管壁 血糖値上昇 糖 糖 糖 糖 糖 末梢血管障害 糖 糖 尿 病 性 合 併 症 大血管障害 コラーゲン合成阻害 歯根膜線維芽細胞の機能異常 微小循環障害 AGE の炎症性組織破壊 アディポサイトカインの炎症への関与 歯 周 組 織 の 障 害 ライオン歯科研究所 編「歯周病と全身の健康を考える」医歯薬出版 2004 を一部改変 歯周病が糖尿病に与える影響 慢性疾患(歯周炎)の存在 ↓ 炎症性物質のTNF-αが 多量に分泌 ↓ TNF-αがインスリンの 働きを抑制 ↓ 血糖コントロールが悪化 ↓ 高血糖状態
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