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2. 関係
五島 正裕
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関係
 関係:
 いくつかのものごとの間に成り立つかどうかを云々
 対象とするものごとの集合の直積の部分集合として定義
二項関係 (binary relation)
 集合 X, Y の要素 x, y について関係 R が成り立つ
 R ⊆ X × Y (関係 R は,直積 X × Y の部分集合)
 x R y ⇔ (x, y) ∈ R
 X = Y の場合, R を「X の上の関係」という
二項関係 (binary relation) の例
例
 X = {0, 1, 2, 3}
1
3
5
 Y = {1, 3, 5, 7}
X × Y = {
(0, 1), (0, 3), (0, 5), (0, 7),
0
1
1
(1, 1), (1, 3), (1, 5), (1, 7),
(2, 1), (2, 3), (2, 5), (2, 7),
(3, 1), (3, 3), (3, 5), (3, 7)}
 x R y = 「x は y より 2 小さい」
 R = {(1, 3), (3, 5)}
2
3
1
7
二項関係 (binary relation) の例
 例:
ネズ
ミ
 X = {イヌ, ネコ, クモ}
 Y = {ネズミ, サカナ, チョウ}
イヌ
1
ネコ
1
サカ
ナ
チョ
ウ
X × Y = {
(イヌ, ネズミ), (イヌ, サカナ), (イヌ, チョウ),
(ネコ, ネズミ), (ネコ, サカナ), (ネコ, チョウ),
1
クモ
(クモ, ネズミ), (クモ, サカナ), (クモ, チョウ)}
 x 捕食 y = 「x は y を捕食する」(補食関係)
 R = {(イヌ, ネズミ), (ネコ, ネズミ), (ネコ, サカナ), (クモ, チョウ)}
1
重要な関係
 同値関係
 順序関係
…
同値関係
同値関係 (equivalence relation)
 定義:
 反射的 (reflexive)
xRx
 対称的 (symmetric)
xRy ⇒ yRx
 推移的 (transitive)
x R y and y R z ⇒ x R z
 例)
x = y
 複素数の実部が同じ, 虚部が同じ, 原点からの距離が同じ, ...
 合同 ≡ ,平行∥
 同じ国の国民 (二重国籍がなければ)
同値関係の写像
 写像 f に対して
f (x) = x mod 3
f (x) = f (y) ⇔ x R y
0, 3, 6, ...
0
 f (x) の例:
1, 4, 7, ...
1
 x mod 3
2, 5, 8, ...
2
と定義すると,R は同値関係
 real(x), im(x), |x|, ...
 nationality(x)
同値類 (equivalence class)
 R[x] = { y | x R y }
 x : 代表元 (representative)
 x R y ⇒ R[x] = R[y]
⇒ 同値類は代表元の選び方によらない
 異なる同値類は共通要素を持たない
 例)
 奇数,偶数
 R[0] = {0, 2, 4, …}, R[1] = {1, 3, 5, …}
 7 で割った余りが同じ
 R[0] = {0, 7, 14, …}
順序関係
順序関係 (order relation)
 定義:
 反射的
xRx
 反対称的 x R y and y R x ⇒ x = y
 推移的
x R y and y R z ⇒ x R z
 例)
 ≦ 数の大小関係
 ⊆ 集合の包含関係
 数の大上関係以外の一般の順序関係も ≦ で表すことがある
全順序
 全順序 (total order),線型順序 (linear order)
 すべての x, y ∈ X について x ≦ y または y ≦ x
 例)
 数の大小関係
半順序
 半順序 (partial order)
{a, b, c}
 全順序ではない一般の順序
 半順序集 合 (partially ordered set,
{a, b}
{c, a}
{b, c}
{a}
{b}
{c}
po-set)
 例)
 集合 A = {a, b, c} の巾集合 2A の
要素の包含関係
{}
擬順序 (pseudo-order)
 反射的, 推移的だが反対称的でないもの
y
 x R y かつ y R x かつ x ≠ y なる x, y が存在
Q
 例)
 平面上の点の原点からの距離
P
 P ≦ Q かつ Q ≦ P かつ P ≠ Q
O
x
ハッセ(線) 図 (Hasse’s diagram)
b
a
 DAG (Directed Acyclic
c
Graph)
e
d
f
g
X
k
 推移律からわかる余分な
arc の除去
h
j
i
 平面グラフとは限らない
m
l
n
o
p
 例: 3次元立方体
 極大元,極小元
 上 界,下 界
 最大元,最小元
 上 限,下 限
極大元/極小元
 極大元 (maximal element)/極小元 (minimal element)
 x ∈ X に対し,x ≦ y かつ x ≠ y という y ∈ X が存在しないとき,つまり,
x ∈ X に対し,x < y という y ∈ X が存在しないとき,
x を X の極大元という
 「X の要素で,X の中にそれより大きい要素がないもの」
上界/下界
 上界 (upper bound)/下界 (lower bound)
 半順序 ≦ が定義されている集合 S の部分集合 X で、
任意の x ∈ X に対し x ≦ a であるような a ∈ S があるとき
 X は上に有界
 a を X の上界という
 「X のどの要素『以上』のもの.X の要素であってもなくてもよい」
 例)
 { 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6 } の部分集合 {1, 2, 4} の上界は 4, 5, 6
 (π, ∞) は下に有界, 上に有界でない
最大元/最小元
 最大元 (maximum)/最小元 (minimum)
 上界/下界 a が X に属するとき,a を最大限/最小限という
 max(X)/min(X)
 「他のどの要素『以上』の X の要素」
 例)
 [0, π] の最大元は π
 (0, π) には,π は属さないので,最大元はない
 集合全体の最大元/最小元 (あれば)
 T: トップ / ⊥: ボトム
上限/下限
 上限(supremum, minimum upper bound :最小上界)/
下限(infimum, maximum lower bound :最大下界)
 部分集合 X の上界(の集合)の最小元を,上限という/
部分集合 X の下界(の集合)の最大元を,下限という
 sup(X), inf(X)
 例)
 (0, π) の上限は π
 開区間でも存在する(ことがある)
極大元,上界,最大元,上限
 極大元
 「X の中にそれより大きい要素がないもの.X の要素」
 上界
 「X のどの要素『以上』であるもの.X の要素であってもなくてもよ
い」
 最大元
 「X のどの要素『以上』であるもの.X の要素」
 上限
 上界(の集合)の最小元
最大元と極大元
 全順序集合
b
a
c
f
g
X
h
 最大限 = 極大元
e
d
k
 半順序集合
j
i
 最大元がないことがある
m
l
n
o
p
 右図
上限/下限の意味
極小元
極大元
最小元
最大元
下限
上限
[0, 1]
下界
上界
 開区間
下限
上限
 最大限/最小限 はない
 極大元/極小元 もない
(0, 1)
下界
上界
 上限/下限はある
例
上界
最大元
極大元
上界
上限
上限
極大元
最大元なし
例題
b
a
 部分集合 X の
c
e
d
f
 極大元、極小元
 上 界、下 界
g
X
k
 最大元、最小元
h
j
i
 上 限、下 限
m
l
n
o
p
をすべて挙げよ
答え
 極大元:d, g;極小元:i, j
 上界:b;下界: m, o, p
b
a
 X のどの要素 x についても
c
e
d
x≦b
 X のどの要素 x についても
f
g
X
h
k
 最大元 :なし;最小元:なし
j
i
 上界,下界はいずれも X の元ではな
い
m
l
m ≦ x, o ≦ x, p ≦ x
n
 上限:b;下限:m
o
p
 上界の集合 {b} の最小限は b
 下界の集合 {m, o, p} の最大元は m
例題 2
b
a
 部分集合 X の
c
e
d
f
 極大元、極小元
 上 界、下 界
g
X
k
 最大元、最小元
h
j
i
 上 限、下 限
m
l
n
o
p
をすべて挙げよ