国家と国民 ~介護保険制度に見る、その関係の変化~ 総合政策学部4年 宮田 龍(79608848) 国家の役割の変容 情報網・交通網の発達 経済のグローバル化 国家によるヒト・モノ・カネ・情報のコントロールが不可 能に 市場からの撤退 民営化、規制緩和により公的部門に市場原理を導入 税率の低下 雇用者、高額納税者の国外流出を食い止めるため 雇用・就労のインセンティブを維持させるため スウェーデンの場合 91年税制改革前までの例(年収13万クローネの人の ケース) • 税率50.7%!! 国・所得税 地方・所得税 間接税 可処分所得 雇用者は、更に年間所得の39%相当の額を、各種福 祉負担金として用意 • 雇用コスト 計180,661クローネ 企業が180.661クローネ用意しても、従業員の手元に は64,114クローネしか残らない! しかも、moms(モムス、付加価値税)は25%… 企業の国際競争力を低下させ、雇用のインセン ティブを失わさせる結果に 社会保障支出の削減 社会保障部門の構造変革 福祉サービスの民営化を進める 効率性を高めていく 従来の福祉行政の在り方、国家と国民との責任 分担の方法の議論 新たな福祉サービス提供のシステムの模索へ 「介護保険制度」の導入 福祉を取り巻く環境の変化 少子高齢化社会の本格化 65歳以上人口が、2020年には25%を占める 80% 70% 60% 50% 0~14歳 15~64歳 65歳以上 40% 30% 20% 10% 0% 1995年 1999年 2000年 2005年 2010年 2015年 家族形態の変化 核家族世帯の増加 核家族世帯 50,000,000 45,000,000 62%40,000,000 60%35,000,000 58%30,000,000 56%25,000,000 20,000,000 54% 15,000,000 52%10,000,000 50%5,000,000 0 48% 一般世帯 核家族世帯 核家族世帯 1980年 1985年 1990年 1995年 1960年1960年 1970年1970年 1975年1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 社会全体での介護支援が必要に 介護保険制度の創設 目的 介護を社会全体で支援する 利用者が、福祉サービスを自由に選択できる 福祉と医療のサービスを総合的・一体的に提供 多様で効率的なサービスの提供 費用の効率化、社会保障の構造改革 社会保障制度の再構築、国民負担の増大を抑制 医療保険から介護部分を切り離し、効率化させる 民間活力の活用 民間事業者や農協、住民参加の非営利組織など、多 様な事業主体の参加 介護保険制度の創設(2) 概要 市町村が運営主体 国、都道府県は財政面・事務面から市町村を支援 平成12(2000)年4月スタート 要介護認定は平成10(1999)年から申請受付 40歳以上の人が、介護保険の加入者 65歳以上の人(第1号被保険者) 40歳以上65歳未満(第2号被保険者) 寝たきりや痴呆になったらサービスが受けられる 要介護状態…寝たきり、痴呆、etc. 要支援状態…家事や身支度など、日常生活に支援が 必要 創設までの経緯 1994年9月「社会保障制度審議会」 第二次報告書で「介護保険」の創設を提言 • 社会的な責任で介護の態勢を整える • 高齢者あるいは家族が望むサービスを提供する • 介護サービスを受ける権利を保障する 同年12月「高齢者介護・自立システム研究会」 「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」 • 介護保険の理念・方向性を打ち出す – – – – 高齢者自身による(介護)サービスの選択 ケア(介護)サービスの一元化 ケア・マネージメントの確立 社会保障方式の導入 創設までの経緯(2) 1996年 与党三党合意 介護保険制度の創設に積極的に取り組む 市町村の安定した財政運営と円滑な事務運 営の確保等の懸念事項の解決 1997年 衆議院本会議で可決 運営概要 給付対象 第1号被保険者(65歳以上) • 寝たきり・痴呆などで入浴、排泄、食事などの日常 生活動作について、常に介護が必要な人 • 家事や身支度等の日常生活に支援が必要な人 第2号被保険者(40歳以上64歳未満) • 初老期痴呆、脳血管障害など、老化に伴う病気に よって介護等が必要となった人 運営概要(2) 保険料の徴収 第1号被保険者(65歳以上) • 所得段階に応じて、各市町村が設定 – 平成12年度全国平均1人当たり月額2,500円程度 • 年金からの天引き 第2号被保険者(40歳以上65歳未満) • 加入する医療保険の算出方法に基づいて設定 • 医療保険料と一括して支払い 運営概要(3) サービス利用方法 要介護申請 …市町村の窓口まで申請 ↓ 介護認定審査会 • 介護支援専門員の訪問調査の結果、かかりつけ 医の意見書に基づいて程度を判定 ↓ 介護サービス計画の作成 • 被介護者の希望に基づいて介護支援専門員が作 成 ↓ ↓ 在宅介護サービス • 訪問介護、訪問入浴、日帰りリハビリテ-ション、 短期入所生活介護、etc. 施設サービス • 介護老人福祉施設(特別擁護老人ホーム)、介護 老人保険施設(老人保険施設)、etc. 保険料と別に、利用者はサービス利用時 に経費の1割を負担 地方自治体の取り組み 神奈川県鎌倉市の場合 人口17万人中、約3万人が65歳以上の 人々 他の都市よりも「高齢化」 0~14歳 15~64歳 65歳以上 鎌倉市 藤沢市 横浜市磯子区 川崎市高津区 人口総数 170,329人 368,651人 168,568人 172,196人 65歳以上人口 29,777人 40,653人 20,300人 14,899人 65歳以上人口が占める割合 17.50% 11.00% 12.00% 8.70% 平成12年度要支援・要介護者高齢者数の 推計 65歳以上人口…約36,000人 要支援・要介護者数…約5,200人 施設整備と入所入院者数の見込み 平成12年度 平成13年度 特別養護老人ホーム 市内3ヵ所(定員210床) 市内 増床(定員20床) 市外を含めて合計約250人 新設(定員70床) 市外を含めて約330人 老人保険施設 市内なし 市内 新設2 ヵ 所( 定員178 床) 市外に約80人 市外を含めて合計約210人 療養型病床群 市内8ヵ所(定員約410床) 市内8ヵ所(定員約410人) 市外を含めて約370人 市外を含めて約370人 在宅サービスの実績と供給見込み量 訪 問 介 護 ( 滞 在 訪問入浴 通所介護 型) 平成10年度実績 82,594時間/年 11,882人/年 16,832人/年 平 成 12 年 度 見 込 204,464時間/年 43,430人/年 34,840人/年 み 短期入所・ 生活介 護 2,623回/年 2,080回/年 鎌倉市の取り組みの経緯 1998年6月「介護保険事業計画等策定委員 会」発足 • 目的:鎌倉市の介護保険事業計画の策定 • 関係機関、高齢者介護に関わる諸団体からの委 員、公募による5名の市民委員により構成 • 定期的に委員会の決議内容、議題などを載せた ニュースリリースを発行 • 「地域介護支援システム」の組織設立を提言。準 備を進めている 「地域介護支援システム」の概案 三部会から構成 • 事業者連絡部会 – 事業者等の連携を図り、お互いの情報交換の場を提供 し、サービスの質的向上のための研修を行い、その他必 要な事業を行う – 在宅介護支援事業者、在宅サービス支援事業者、施設 サービス指定事業者などと、鎌倉市により構成 • 情報提供部会 – 利用者の便宜のための情報提供を行うため、介護サー ビスに関する情報収集、パンフレット編集、インターネット による情報提供の検討し、その他必要な事業を行う – 事業者、鎌倉市、公募による市民から構成 • サービス評価部会 – 介護サービスの質を評価する仕組みを確立するため評 価指数の検討、評価結果の公表についての検討し、そ の他必要な事業を行う – 事業者、鎌倉市、公募による市民から構成 介護保険制度の課題 保険料の徴収の問題 財源の問題 一律徴収の問題 「社会的損失」との認識を広めていくこと が必要 税収だけでは高齢化の進展に…… 介護保険制度の課題(2) 保険料算定の問題 厚生省試算との開き • 厚生省試算額 2,500円(介護保険法案審議時) • 全国平均額 3,000円(1999年3月28日付け朝日 新聞のアンケートより) 試算方法にも問題 • 「対象者の2割が利用することを想定して」(鎌倉 市) 補助金を出す案もあるが、本末転倒の恐 れも 国家と国民の関係 国家 不安・恐怖・心配から守る「家」としての役割は 続く • 防衛、外交、治安維持、etc. 国民 「自己責任」の概念 • 401Kプランの導入検討 • 自分の老後には、自分で責任を持つ 終わり 参考文献 • 「介護保険とは何か」 宮本 剛著 • 「福祉で町がよみがえる」 岡本祐三、鈴木祐司 NHK取材班著 • 「国家対市場」 ダニエル・ヤーギン、 ジョセフ・スタニスロー著 • 「スウェーデンの挑戦」 岡本 憲芙著 • 朝日新聞 Digital News Archives • 平成7年度国勢調査 • 平成7年度厚生統計要覧 Special thanks to • 相澤 千香子さん(鎌倉市保険福祉部介護保険福祉課)
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