高齢者の 身体疾患・精神疾患の 特徴と対応 京都保健会盛林診療所 所長 三宅貴夫(老年科) 1.高齢者について 1)高齢者と老人 高齢者:65才以上の人 老人:老化により心身の機能が低下し、 自立した生活が困難な人 老人 高齢者 2)老化とは 生理的老化 病的老化 3)老化の要因 内因 遺伝 外因 気候 風土 食生活 住居 仕事 嗜好:アルコール、タバコ 精神的環境 その他 4)高齢者の特徴 多機能が混在している。 低下しない機能 老化による機能低下 疾患による機能低下 恒常機能が低下している。 身体・精神・生活の相互影響性が強い。 死を迎えつつある。 身体状態 精神状態 生活状態 身体・精神・生活の相互影響 5)高齢者の疾患の特徴 複数の疾患をもっている 症状が非定型的なことが多い 精神症状が現れやすい 治療に抵抗し、障害を残し、死に至りやすい 2.高齢者の身体疾患 1)症状と疾患① 意識障害 発熱 歩行障害 言語障害 けいれん 振戦 しびれ めまい 頭痛 呼吸困難 咳 痰・血痰 胸痛 動悸 浮腫 腹痛 腹部膨満 食欲不振 嚥下障害 嘔気・嘔吐 1)症状と疾患② 吐血 便秘 下痢 血便 血尿 尿閉 頻尿 失禁(尿・便) 背部痛・腰痛 関節痛 視力低下 聴力低下 耳鳴 かゆみ 記憶障害 憂うつ 幻覚妄想 不眠 その他 1)症状と疾患③ 観察 身体状態 意識 体温 血圧 脈博など 精神状態 認知機能(記憶、見当識など) 感情 性格 幻覚・妄想など その他 2)身体疾患①脳血管系 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 一過性脳虚血発作 慢性硬膜下血腫 2)身体疾患② 神経系 パーキンソン病 脊髄小脳変性症 本態性振戦 筋萎縮性側索硬化症 2)身体疾患③ 循環器系 高血圧 狭心症 心筋梗塞 心不全 不整脈 閉塞性動脈硬化症 血栓性静脈炎 2)身体疾患④ 呼吸器系 肺炎 気管支炎 気管支喘息 慢性閉塞性肺疾 肺がん 肺結核 2)身体疾患⑤ 消化器系 食道炎 食道がん 胃十二指腸潰瘍 胃がん 大腸炎 大腸がん 腸閉塞 腸管癒着症 過敏性腸症 肝炎 肝がん 胆石症 胆嚢炎 膵炎 膵臓がん ヘルニア 2)身体疾患⑥ 泌尿器系 急性腎不全 慢性腎不全 尿路結石症 尿路感染症 (膀胱炎など) 前立腺肥大症 膀胱がん 前立腺がん 神経因性膀胱 2)身体疾患⑦ 骨関節筋肉系 骨粗鬆症 変形性関節症(膝・脊椎・股関節など) 関節リウマチ 後縦靭帯骨化症 2)身体疾患⑧ 血液系 貧血 白血病 悪性リンパ腫 多発性骨髄腫 2)身体疾患⑨ 代謝内分泌系 糖尿病 高脂血症 高尿酸血症・痛風 甲状腺機能低下症 メタボリックシンドローム 2)身体疾患⑩ 水電解質異常 脱水症 電解質異常 2)身体疾患⑪ 感覚器系 白内障 緑内障 難聴 耳鳴 めまい 2)身体疾患⑫ 皮膚 乾燥性皮膚症 帯状疱疹 疥癬 白癬症 皮膚がん 2)身体疾患⑬ その他 口腔疾患 転倒 窒息 溺水 火傷 MRSA保菌者 肝炎ウイルス保有者 3.高齢者の精神疾患 1)認知症① 診断基準 以下のすべてがそろっていること ① 記憶障害がある。 ② 失語・失認・失行・実行機能障害のひとつ がある。 ③ ①と②のために生活に支障がある。 ④ ①と②の原因として脳などの身体疾患があ る。 ⑤ 意識ははっきりしている 1)認知症② 原因 1次要因 アルツハイマー病 脳血管障害 その他(慢性硬膜下血腫、低酸素脳症、 ヤコブ病など) 2次要因 身体状態(脱水、熱発、貧血など) 精神状態(緊張、不安、うつ状態、混乱など) 生活・環境状態(介護者、住環境など) 1)認知症③‐1次要因と2次要因‐ 1次要因 2次要因 1)認知症④ 心理 記憶の障害 判断の障害 総合的判断 抽象的判断 時系列的判断 過去に生きる 感情・思い、期待、プライドが残る 1)認知症⑤ ケアの基本 認知症の人を知る 残存能力に働きかける 「生きている世界」を受け入れる 感情、思い、期待、プライドに配慮する 身体状態を把握する 身の安全を守る 周囲の理解を得る 地域のサービスを利用する 人権に配慮する 介護する人をケアする 1)認知症⑥ 治療 薬物療法 抗認知症薬(アリセプト) 向精神薬(抗不安剤、抗うつ剤など) その他(降圧剤、糖尿病薬など) 非薬物療法 回想法 音楽療法 バリデーション その他 外科的治療 1)認知症⑦ BPSDへの対応 「お金がない」 「食べてない」 「徘徊」 夜間不穏 失禁など BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (認知症の行動と心理症状) 2)その他の精神疾患① せん妄 幻覚妄想状態 妄想症 2)その他の精神疾患② うつ状態 不安神経症 心気症 性格障害 その他 3)その他の状態 心身症 不眠症 性行動 自殺 4.高齢者のその他の状態・課題 1)終末期医療 終末期とは インフォームドコンセント 意思の確認 どこで行うか:病院・介護施設・在宅・ホスピス 認知症の場合 2)在宅医療 在宅医療とは 在宅医療の条件 在宅医療における介護との連携 3)介護施設における医療 介護施設の医療の現状 特別養護老人ホーム 老人保健施設 療養型医療施設 グループホームなど 医療と介護の連携 医師 看護職 介護職など その他 4)予防 身体疾患の予防 脳血管障害 転倒 その他 精神疾患の予防 認知症 その他 付録:高齢者医療・介護関連サイト 三宅貴夫編「認知症なんでもサイト」 www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.htm 「けあとも」 www.caretomo.com おわり 鳥取県介護支援専門員連絡協議会東部支部研修会 2008年3月1日 鳥取県民会館
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