ソーシャルメディアが震災後の情報行動 に及ぼした影響 (茨城県筑波大学高大連携事業 高校生のための公開講座) 「つながりを生むメディア」2日目2013/06/01 後藤嘉宏(筑波大学図書館情報メディア系教員「メディア社会学」担当) [email protected] 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 1 本日のお話しのあらまし 1/2 絆、メディア--前置きのお話し 1)はじめに 震災=新しいソーシャルメディアの活躍って本当? 2)発表ジャーナリズム批判と今回の震災での情報伝達 3)従来の災害情報学での知見と今回の震災での情報伝達 4)ソーシャルメディアと相互監視社会 5)ソーシャルメディアやポータルサイトの強み 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 2 本日のお話しのあらまし 1/2 6)ソーシャルメディアやポータルサイトと既存メディアの連携 7)講義のまとめ • 総括的議論 • 補足的議論 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 3 「絆」という語・・・ 一昨年(2011年)、特に社会で注目される • 2011年漢字検定協会、「今年の漢字」第1位 • 2011年現代用語の基礎知識編「新語・流行語大賞」2011年トップ テン 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 4 「絆」を書く、清水寺の森清範貫主 (2011年12月12日) http://blog.goo.ne.jp/mfukuda514/e/f5c882301cd287bd6cb98145de4cc0a2から引用(元は時事通信社) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 5 「今年(2011年)の漢字」選定理由 1/2 • 日本国内では、東日本大震災や台風による大雨被害、海外では、 ニュージーランド地震、タイ洪水などが発生。大規模な災害の経験 から家族や仲間など身近でかけがえのない人との「絆」をあらためて 知る。 人と人との小さなつながりは、地域や社会などのコミュニティだけで なく、国境を越えた地球規模の人間同士の「絆」へ。 ( 「今年(2011年)の漢字」-「「絆」が表す2011年とは?」 http://www.kanken.or.jp/project/edification/years_kanji/2011.htmlより) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 6 「今年(2011年)の漢字」選定理由 2/2 • SNSをはじめとするソーシャルメディアを通じて新たな人との「絆」が 生まれ、旧知の人との「絆」が深まった。 • 国際社会ではいくつもの民主化運動が起こった。 • ワールドカップで優勝した、なでしこジャパンのチームの「絆」には日 本中が感動し勇気づけられた。 (以上http://www.kanken.or.jp/project/edification/years_kanji/2011.htmlより) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 7 「新語・流行語大賞(2011)」選定理由 (http://singo.jiyu.co.jp/より) • 未曾有の大災害である東日本大震災は、人々に「絆」の大切さを再 認識させた。復興に際しての日本全体の支援・協力の意識の高まり だけでなく、地域社会でのつながりを大切にしようとする動きや、結 婚に至るカップルの増加などの現象がみられた。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 8 2011年流行語大賞授賞式(「絆」は特定の受賞者なし) http://tekcat.blog21.fc2.com/blog-entry-1929.htmlより。オリジナルは時事通信 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 9 今日の講義の主たる眼目1/2 • メディア=いつの時代でも、つながり・「絆」を得る道具 • 新しいメディア=ソーシャルメディア・・・特につながりを生むメディア!? • 「災害時のつながりに特に役立った」 • しかしつながりを求めるメディアだからすばらしい、という肯定的な考えだ けを持つ訳にもいかない。 • メリットがあればデメリットもある。 • 双方共に考えていこう。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 10 今日の講義の主たる眼目2/2 • 新しいメディアだから、こういうつながりが出来た、こういう問題が あった、という世間全般の発言 →でも、本当か? • 技術決定論的な思考枠組みの再検討 • 技術決定論・・・要は新しい技術によって人々の行動様式・思考様式 が変わるという考え方 • 「人→技術」ではなく「技術→人」という思考 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 11 (参考)プリクラと個撮→技術決定論と違った事例 • プリクラの発明者、アトラスの佐々木美穂さん • 当初、個人撮影用、スピード写真の可愛いものを想定 技術決定論批判 • 技術・・・具体的には新商品開発・・・社会的文脈に適ったもののみ が受け入れられ、残る • あるいはそれぞれに人の文脈で別様に解釈もされる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 12 ソーシャルメディアの実例 (http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/08/26/8591の説明)他にLINE,wiki,wikipediaも含む 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 13 定義の実例 1)「一般ユーザー同士のつながりやコミュニケーションによってコンテ ンツがどんどん生まれていくメディア」 http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/08/26/8591 2)「インターネット上で展開される情報メディアのあり方で、個人による情報発信 や個人間のコミュニケーション、人の結びつきを利用した情報流通などといった社 会的な要素を含んだメディアのこと。 従来のマスメディアは情報の発信に巨大な設備や組織、あるいは巨額の資金が 必要だったため、情報の送り手の地位は少数の特権的な職業人によって占めら れていたが、ソーシャルメディアではメディアの閲覧者が同時に発信者としての資 格を持ち、他の利用者に自身の責任で自由に情報を発信することができる」(IT用 語辞典 e-Words)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 14 よって、その特徴 • マス・メディア 選ばれた送り手が一方向的に普通の人々(民衆) に情報を流す(一方向性) • ソーシャルメディア 普通の人々(民衆)が自由に相互に情報発信( 双方向性) • オープン・ソースに代表されるネット文化に馴染む(に親しい関係)・・ ・無償で一緒に集合知を作り上げる動き 例 ウィキペディア、Linux、Ruby、オープンコースウェア等々 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 15 1.はじめに 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 16 「大震災→新しい、ソーシャルメディアの活躍」って本当?1/2 大震災とメディアの関わりの一般的な発言(言説) • ・・・先に見た“受賞理由“と同様。ソーシャルメディアという新しいメ ディアの活躍に注目した発言、多い。 →それは紛れもない事実。 • だけど従来の災害情報学や従来のマス・コミュニケーション論でいわ れてきた知見が妥当するケースも多い。 • じつは昔からあったものの繰り返しでは? 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 17 「大震災→新しい、ソーシャルメディアの活躍」って本当?2/2 過去の知見の例(中身は後で述べる) • 発表ジャーナリズム批判→項目2.で • 正常化の偏見仮説→以下、3.で • オルポートの公式 • 災害文化 等々 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 18 2.発表ジャーナリズム批判と今回の震 災での情報伝達 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 19 この人は誰でしょうか?(当人の公式ウェブとFBから) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 20 『災害とソーシャルメディア』という本日の演題通りの本の冒 頭で紹介された2つのエピソード1/3 小林啓倫『災害とソーシャルメディア』(毎日コミュニケーションズ、 2011年)の「プロローグ」 1)気仙沼公民館の自閉症の子供たちの施設 • 園長、イギリス在住の息子にメール「公民館に火が迫ってきた」 • 息子Twitterに→猪瀬直樹東京都副知事(当時・現在フォロワー33 万人)にツイートが伝わる→東京消防庁が直ちに施設に救援に→保 育士と園児が救われる • ・・・Twitterの有効性を示す「美談」として使われる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 21 猪瀬直樹氏のツイログから http://twilog.org/inosenaoki/month-1103/7 猪瀬直樹/inosenaoki@inosenaoki いま都庁防災センターにいる東京消防庁幹部にこれ刷り出し手渡した。 「たいへんだ」と彼は言った。 RT @shuu0420 @inosenaoki 障害児童施 設の園長である私の母が子供たち10数人と一緒に避難先の気仙沼 市中央公民館3階にまだ取り残されています。子供達だけでも助けて。 posted at 00:23:43 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 22 少しだけ、 if を考えてみよう。 • もしもこの情報が嘘だったら? • もしもこの情報源の人が猪瀬氏の知り合いの知り合いでなかったら ? 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 23 『災害とソーシャルメディア』という本日の演題通りの本の冒 頭で紹介された2つのエピソード2/3 2)広島のある中学生・・・NHKのニュース映像を許可得ずにUstreamに 流す→NHKの公式アカウントのTwitterで容認(追認)→テレビがつか ずUstream,Twitterは見ること可能。多くの人に有益 • 現在、ソフトバンク(Ustream Asiaはソフトバンクの子会社)の公式 ウェブにもこの話題は記載 • その後、Ustreamで各放送局の中継を。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 24 ソフトバンク公式ウェブ上のテレビユースと中継の画像記録 http://www.softbank.co.jp/ja/design_set/data/news/sbnews/director/2011/20111118_01/img/index _pic_02.jpg 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 25 『災害とソーシャルメディア』という本日の演題通りの本の冒 頭で紹介された2つのエピソード3/3 二つの事例の異質性と共通性(比較は後藤) • 共通する点・・・ソーシャルメディアの情報伝達者・・・右のものを左に 移す、透明な媒介者(猪瀬副知事を除いて) →情報のリレー、再利用に大きな特徴 • 異なる点・・・前者の例・・・マスメディアとは違う情報が流れる 後者の例・・・同じ情報が流れる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 26 透明な媒介者 情報の透明な媒介者の問題について少し考える • 1)発表ジャーナリズムの問題 • 2)ネットでの発言者の取材力 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 27 発表ジャーナリズム 1/3 発表ジャーナリズム・・・従来のマス・コミュニケーション論でも定番の テーマ • 右のものを左に移すだけのジャーナリズム • 官庁(特に警察)や企業の広報・・・プレスリリース、記者クラブ依存 • 広報・・・広めて欲しい情報・・・リリース。それを、そのまま批判もせ ず、加工もせずに、掲載・・・発表ジャーナリズム 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 28 (参考)プレスリリース(ウィキペディアの説明) • プレスリリース(英: press release)とは行政機関や民間企業などから報 道機関向けに発表された声明や資料のこと。 • 政府機関や大きな組織が重要な発表をするときは記者会見を開く。小さ な案件、あるいは小さな組織の場合、ファクシミリ、電子メールなどで送付 する。PR会社などの配信代行サービスを使い広報資料を送ることも可能 である。マスメディアは、届いたプレスリリースを元に取材を行い、記事にす る。 • 官公庁や公社などの場合、内部に記者クラブ(記者室)がある。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 29 発表ジャーナリズム 2/3 発表ジャーナリズムのメリット • 元に歪みがなければ歪みのない報道 問題点、デメリット • 元の情報が歪んでいる→歪みの拡大再生産 • 元に歪みがなくとも・・・→ 1)批判精神の欠如 2)横並びの報道 3)世論操作の温床 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 30 発表ジャーナリズム 3/3 • 発表ジャーナリズムの対概念←→調査報道 • 調査報道・・・自分の脚で稼ぎ、自前の情報で勝負 →こういった発表ジャーナリズム・・・マスメディア論で昔から批判 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 31 リツイートとは? • ところでTwitterのリツイート機能(Twitter公式ウェブの説明) • 「リツイートとは他の誰かのツイートを再投稿することです。Twitterの リツイート機能を利用すれば、あなたのフォロワー全員でツイートを すばやく共有できます。 • ツイートの始めにRTと入力して、他の誰かのコンテンツを再投稿して いることを示す人もいます。これはTwitterの正式なコマンドや機能で はありませんが、別のユーザーのツイートを引用していることを知ら せます」(非公式リツイート)。https://support.twitter.com/articles/229621-rt 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 32 リツイートと発表ジャーナリズム 1/2 • リツイートの性格・・・基本的に発表ジャーナリズム。もちろんその後、 コメント付けることはあるが。(非公式だと改変もあるが) • 今回の震災時、 • 流言(根も葉もないうわさ話→3.で詳述)が飛び交う・・・基本的にリ ツイートが批判を加えずに垂れ流すため≒チェーンメール • 特に有名人のリツイート。とりあえず流れてきたら流す。有名人であ るからと信頼。結果的に誤り。誤りの拡大再生産に。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 33 リツイートと発表ジャーナリズム 2/2 • →ツイッターで発表ジャーナリズム的な問題が顕在化 • しかし発表ジャーナリズムと関連づけていわれることはゼロ • そもそも最初に見た二つの例の、「透明な媒介者」≒発表ジャーナリ ズム 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 34 2.のまとめ • 従来のマス・メディア論でいわれた「発表ジャーナリズム」の問題→ 今回の震災でも見られた • しかしそのことの指摘はない 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 35 3.従来の災害情報学(主に災害心理 学)での知見と今回の震災での情報伝 達 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 36 従来の災害情報学(災害心理学)と今回の震災 • 従来の災害情報学の知見(学説)-妥当するケース、じつは多 い・・・新聞等でほとんどいわれてこなかった点について 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 37 震災後の流言の例(メールとTwitter) • 流言・・・口づてなどの非制度的チャンネルを通して伝播する裏づけ をもたない自然発生的な情報(世界大百科事典第2版) • 英語だとrumor・・・ 噂、風聞、流言、風説 • 「石油製油工場の爆発で有害物質がまき散らされているので気を付 けろ」 • 「イソジンを飲むと良い」 http://www.garbagenews.net/archives/1742407.html 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 38 (参考)噂、デマ、流言について (ウィキペディア「噂」より) • 噂(うわさ)とは、その内容が事実であるかどうかを問わず、世間で 言い交わされている話のこと。類義語として飛語(蜚語)・ゴシップ・ デマ・流言などがあり、それぞれ下項で紹介する。 • デマとはデマゴギー(独: Demagogie)の略で、本来は政治的な目的を 持って意図的に流す嘘のことであり、転じて単なる嘘や噂、流言など を指すこともある。 • 流言とは、正確な知識や情報を得られず、明確な根拠も無いままに 広まる噂のこと。俗説、風説、流説ともいう。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 39 (参考)飽戸弘東大名誉教授による説明 (『コミュニケーションの社会心理学』筑摩書房、1992より) オルポートの著書のタイトル、本来、『流言の心理学』 • しかし邦題『デマの心理学』 • 中身はデマも流言も扱っているから当然。 • オルポートがデマと流言を区別していないのは問題。 飽戸による両者の違い • デマ・・・政治的意図による悪意に基づくもので、事実無根。意図的 ねつ造。 • 流言・・・悪意はない。内容は虚偽であるとは限らない。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 40 オルポートらの流言の公式 1/2 オルポートとポストマンの流言の有名な公式 • R=i×a • 流言の量(R)は、事柄の重要性(i)と状況の曖昧さ(a)の積 今回特にこの公式、該当・・・当事者たち誰しも状況を充分把握できず • 道路網、通信網・・・寸断 • 史上稀に見る津波災害 • 放射能汚染 • 電力供給問題 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 41 オルポートらの流言の公式 2/2 • 65年前の公式-現在、ぴったり!!適合 • 流言はTwitter、携帯メールだから生まれたわけではないはず。 • しかし、ソーシャル・メディアの発達と関連づける言説・・・技術決定 論的な思考の枠組みに • オルポートに触れた新聞報道。朝日新聞、週刊朝日、アエラで 2011311~2012619ゼロ。 • 日経テレコンで1件。だがオルポートの著書に言及するものの、この 公式には触れず。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 42 ゴードン・オルポート(ハーバード大学元教授)ハーバード大学の 心理学科の公式ウェブから 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 43 (参考)オルポート(1897-1967)について • 「アメリカ心理学会の20世紀の心理学者100傑の11位に位置づけ られる」(ハーバード大学心理学科ウェブ) • 兄のFloyd Henry Allport(1890-1979)を追ってハーバードに入学。の ちに兄は「アメリカの実験的社会心理学の父」とまで呼ばれる。 • 弟はむしろ社会心理学研究における質的調査の意義を強調。 • 1939年、アメリカ心理学会会長に選出。 • 第二次大戦中の流言を消すため活動・・・その際の知見を弟子のポ ストマンと『デマの心理学』(1947)にまとめる。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 44 正常化の偏見仮説 1/2 • 正常化の偏見仮説(Quarantelli, E. L) normative prejudice • 世間の通念 災害発生→パニック発生 • エンリコ・クアランテリの考え 災害→パニックは稀(一定の条件があ れば起こるが) • むしろさほど心配せずに、逃げ遅れる人が多い • 異常事態を正常(平時)のものの一環したものと、勝手に解釈す る・・・「正常化の偏見(正常化バイアス)」 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 45 クアランテリ名誉教授と彼のネタで「世界一受けたい授業」に出まくる 広瀬弘忠・東京女子大心理学科名誉教授(奥さんはNHKの元局アナ広瀬 修子氏) http://www.udel.edu/DRC/aboutus/bios/Quarantelli.html及び http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/special/2011031600012.html?iref=webronza 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 46 (参考)エンリコ・クアランテリについて (主に英語版ウィキペディアより) • 1959年シカゴ大学で博士号を取得 • 1963年から1984年までオハイオ州立大学の社会学教授。 • 1985年、デラウェア大学の災害研究センターに移り、1998年までそ こで研究。 • シカゴ大学の修士の院生時代、パニックの研究をしていたが、パ ニックに至る事例が一つも見つからず困った→パニックが少ないとい う確信に。 http://www.tulip.sannet.ne.jp/ken-abe/rondan-2012-04.html • http://en.wikipedia.org/wiki/Enrico_Quarantelliで「災害社会学のパ イオニア」と。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 47 (参考)パニック発生の4条件 (広瀬著『人はなぜ逃げおくれるのか-災害の心理学』より) • 1.緊迫した条件に置かれているという意識が人々の間に共有され ていて、差し迫った脅威を感じている。 • 2.危険を逃れる方法がある、と信じられること • 3.脱出は可能だという思いがあるが、安全は保証されていない、と いう強い不安感 • 4.人々の相互コミュニケーションがなりたっていないこと 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 48 (参考) 【広井 脩先生執筆「パニック」『世界大百科事典』】 の 説明 • 「パニックに関する代表的研究者クアランテリE.L.Quarantelliは,たし かにパニックは災害時にも発生するが比較的局部的な現象にすぎ ず,懸念されるほど広範に発生するものではないとし,パニックにつ いての一般人の誤ったイメージを,災害に関する最大の〈神話〉と呼 んでいる。」 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 49 正常化の偏見仮説 2/2 「正常化の偏見」の新聞報道 • 朝日新聞、週刊朝日、アエラで2011311~2012619で7件。全国版は2 件のみ。 • もっともテレビはたぶん広瀬教授が発言しているでしょう。本講義冒 頭で盛んに取り上げる小林啓倫氏もブログで盛んに発言はしている が。 • なお朝日山梨版20120329では 「テレビや新聞などではあまり紹介さ れていない「正常化の偏見」」という記述も。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 50 災害文化論 災害文化論 • 災害文化・・・災害常襲地域では災害に対する取り組みが、生活様 式(社会学的には「生活様式」=文化)として定着しているというもの • 日常的な例・・・「地震が起こったら火を消せ!」「地震が起こったら 机の下に潜れ」など • 過去の津波の実態や避難について、親から子へ伝承(片田敏孝群 大教授らの研究)・・・「伝承」によって身についた生活様式が文化 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 51 災害文化論と正常化の偏見 1/2 今回の震災 • 正常化の偏見仮説と災害文化論が合わさるケースが発生 • 津波の常襲地域 ・・・「どこどこまで逃げないとダメ」という記憶 • 頻繁な避難訓練 →過去の経験に基づく、安全と危険のラインが住民に刷り込まれる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 52 災害文化論と正常化の偏見 2/2 しかし • 「例を見ない大津波の来襲」という警報・情報 • 受け取っても災害文化のなかで刷り込まれた基準が規範normとし て機能する。 • 正常normalを越える「想定外」の大きさの津波を想起できない • 災害文化による正常化 normalization〔ここまで逃げたら「想定内」 「いつもの通り」「大丈夫」という気持ち〕の発生(関谷直也・東洋大准 教授の考え)→『ここまで逃げれば安全』と思ってしまう ただしこれは新聞・テレビの中ではなく著書の中での発言 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 53 よくTVに出てた、関谷直也東洋大社会学部准教授 (大学院の後輩) http://www.tbs.co.jp/newsbird/lineup/viewpoint/201105.html及びhttp://www.tbsradio.jp/dig/2011/04/post876.html 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 54 2.、3.をあわせた結論 今回の震災 《情報メディアの新しさ→それによる流言、誤った情報の拡散》 が強調される また《SNSによるつながりの拡大》の話も、強調 →従来のマスコミ論や災害情報学への言及・・・少ない • しかし実際はこれらの枠組みで説明可能な事例も多い。 • →世間全体が、ある種、技術決定論、メディア決定論的な思考か?と。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 55 4.ソーシャルメディアと相互監視社会 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 56 2.,3.と4.,5.との論点の違いと関連性 技術決定論とのからみでいうと • 2.,3.・・・技術決定論批判が有効になるケース・・・昔からあったも のの繰り返し( ソーシャルメディア以外の従来のメディア環境におい ても同じマイナスやプラスの事例が充分に生じうる)。 • 4.,5.・・・必ずしも技術決定論批判が有効にならないケース(ソー シャルメディアでしか起こりえないこと、あるいはソーシャルメディア によって従前以上に著しく強化される事態) • 批判の有効にならないケース・・・グーテンベルク革命(あるいは電 話の発明、テレビの発明) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 57 4.のおおざっぱな構成 • ジョン・キム著『逆パノプティコン社会』という本をみたい。 • しかしその前にパノプティコンって何だ? • で、『逆パノプティコン社会』は面白いが批判の論点もある。 • 批判できる視点がメイロウィッツって人の研究 • その前にメイロウィッツに影響を与えたマクルーハンをみよう。 • パノプティコン→逆パノプティコン→マクルーハン→メイロウィッツの 順に進みます。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 58 4.1パノプティコンについて 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 59 パノプティコン 1/4 前提知識 パノプティコン(一望監視システム)について • 18世紀の功利主義哲学者ベンサムが考案した、監獄。囚人の矯正 を図るための監視機能がある。 • これを20世紀の哲学者フーコーが現代社会の比喩として用いた。 • (ベンサム、フーコー共に哲学史上の重要人物) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 60 ジェレミ-・ベンサム(1748-1832)、ミシェル・ フーコー(1926-1984)(すべて出典ウィキペディア) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 61 パノプティコン 2/4 • パノプティコンとは?「円柱状の監獄の真ん中に看守塔があり,塔の 外側に塔を円形に取り囲む独房に住む囚人を看守が中央から監視 する刑務所」 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 62 パノプティコン(左:ベンサムの設計図;真ん中:パノプティコン的監獄 キューバ;双方出典ウィキペディア、右:ジョン・キムの著書でのパノプ ティコン) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 63 パノプティコン 3/4 パノプティコンの特徴 • 囚人からは看守が見えない • 看守からは囚人が見える • ベンサムの意図・・・労働習慣を囚人に身につけさせ、社会復帰させ る 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 64 パノプティコン 4/4 フーコーの意図・・・これを現代社会のメタファー(メタファー=比喩であ ることを明示しない比喩) • 独房に現代社会に生きる人々が住む • 看守が権力の側 • 独房の人々から看守は見えない・・・看守がいなくても、いると思い込 む • 権力の求めるルール(規範・真面目に労働すること、等)を主体的に 身につけていく 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 65 4.2逆パノプティコン社会 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 66 逆パノプティコン社会 1/2 以上の予備知識を踏まえて • ジョン・キム『逆パノプティコン社会の到来』という本 • 要旨《ソーシャルメディアの普及によってフーコーのパノプティコンと 逆の状態(ツイッターで政治家を監視するなど)が生じ始めている》 • 例えばWikiLeaksによって、「市民が看守塔から政府を監視する」事 態に。(「政府」=「権力」とキムは捉えていて、フーコーの権力概念 と多少ずれるが) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 67 (参考)ウィキリークス • ウィキリークス (WikiLeaks) は、匿名により政府、企業、宗教などに関 する機密情報を公開するウェブサイトの一つ。創始者はジュリアン・ アサンジ。投稿者の匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定さ れないようにする努力がなされている(ウィキペディア「ウィキリーク ス」より)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 68 逆パノプティコン社会 2/2 • Twitterにも相互監視機能 • 「権力が市民を監視する時代」→「市民が権力を監視する時代」(政 治家の行動をツイートする。政治家の発言をリツイートし批判する、 等々) →大きな流れとしてはいえる(後藤の評価) • ただ視線は相互的(見つめるから見つめられる) • お互いが監視し合うという方が正確か、と。 →ここでマクルーハンおよびメイロウィッツの考え方を見てみる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 69 4.3マクルーハンとメイロウィッツ 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 70 マーシャル・マクルーハン(1911-1980)1/2 http://en.wikipedia.org/wiki/Marshall_McLuhanより 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 71 マーシャル・マクルーハン(1911-1980)2/2 左http://jackiebreckenridge.wordpress.com/2009/09/03/marshall-mcluhan/より 右http://rpo.library.utoronto.ca/display_rpo/edition/mcluhan.htmlより 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 72 マクルーハンの経歴 1911-1980 • カナダの英文学者、メディア論研究者 代表作 • 『グーテンベルクの銀河系』(1962) • 『メディア論-人間拡張の諸相』(1964) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 73 ジョシュア・メイロウィッツ(当人のツイッターの画像) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 74 メイロウィッツの経歴 • ニューハンプシャー大学コミュニケーション学部教授 • 1950年頃生まれのはず(ドイツ語版ウィキペディアで1972年、大 学卒となっているので) • マクルーハンの影響を強く受けたと自認 • 代表作『場所感の喪失-電子メディアが社会的行動に及ぼす影響』 (邦訳2003) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 75 4.3.1 しばらくみていきます メディア論の第一人者とされるマクルーハンの考え (ただし「参考」のところは時間次第でとばします) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 76 (参考)「メディアはメッセージである」・・・メディア概念 の重層性の議論 • 「メディアはメッセージである」・・・マクルーハンの最も有名な言葉 • メディア・・・外側・乗り物、 • メッセージ・・・内側・乗せられる物、情報 →「外側は内側で(も)ある」?? 「乗り物は乗せられる物で(も)ある」?? 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 77 (参考)「メディアはメッセージである」 1/3 具体的局面で考えると • ラブレターを藁半紙のような再生紙にワープロで印字して渡しても、 効果があるか? • 情報は無色透明、中立であるか否か • 同じ発言でも誰が言うかで、捉えられ方は異なる。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 78 (参考)「メディアはメッセージである」 2/3 【マクルーハン以前の普通の考え方】 • 情報と媒体の二元論・・・情報(メッセージ)と媒体(メディア、乗り物) とは、別個のもの、全く切り離されたものという考え方 【マクルーハンの考え方】 • メッセージ性のない、無色透明な媒体そのものというものはない。媒 体そのものが何であるかということ自体にメッセージ性がある。情報 媒体それ自体が情報を発信している。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 79 (参考)「メディアはメッセージである」 3/3 • 「メディアはメッセージである」・・・メディア概念が無限に広がる • →メディア概念の重層性(吉見俊哉) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 80 (参考)メディア概念の重層性のモデル図 メッセージ1VSメディア1 ↓ 〔メッセージ2VSメディア2〕 ↓ 【〔メッセージ3〕VSメディア3】 ↓ 【メッセージ4】VSメディア4 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 81 (参考)メディア概念の重層性についてのマクルーハン の文章 • 含まれるものと含むものと関係が無限に連鎖する。 • 「どんなメディアでもその『内容』はつねに別のメディアである,という ことだ。書きことばの内容は話しことばであり,印刷されたことばの 内容は書かれたことばであり,印刷は電信の内容である.もし『話し ことばの内容はなにか』と問われたら,『実際の思考のプロセスで, それ自体は非言語的なもの』ということにならざるをえない」 (McLuhan 1964=1987 8) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 82 (参考)メディア概念の重層性のモデル図にマクルー ハンの文章を当てはめる (ひらめき(メッセージ1)VS脳神経(メディア1)) ↓ 〔話し言葉(メッセージ2)VS書かれた言葉(メディア2)〕 ↓ 【書かれた言葉〔メッセージ3〕VS印刷された言葉(メディア3)】 ↓ 印刷された言葉【メッセージ4】VS電気通信(メディア4) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 83 (参考)マクルーハンの議論を少し展開させると・・・ 閃き(メッセージ1)VS脳神経(メディア1) ↓ 〔考え・脳内の文章(メッセージ2)VS言語(メディア2)〕 ↓ 【発言・会話〔メッセージ3〕VS音声(メディア3)】 ↓ 書かれた文章【メッセージ4】VS紙・文字(メディア4) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 84 (参考)この図の意味するところ • メディアとメッセージの組み合わせが、脳から感覚器官まで通じてい る 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 85 「人間の拡張」としてのメディア 1/3 情報を受け取る人間の脳から神経、感覚器官、眼鏡、空気、光、テレ ビ受信機、電波、中継所、電波、発信器、録画テープ、送り手の会話、 送り手の感覚器官、神経、脳 →これらすべて「人間の拡張」としてのメディア 人間の脳と脳とが神経、メディアを通じて繋がっているイメージ 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 86 人間の拡張としてのメディア 2/3 • 「すべてのメディアがわれわれ自身を拡張したものであり、新しくもの を変形する視力と意識とを提供するのに貢献する」(『メディア論』 p.63)。 • 「われわれの中枢神経組織を電気磁気技術として拡張あるいは転 換したら、われわれの意識をコンピューターの世界に転移させるの もあと一段階にすぎない」(p.64) →コンピュータと意識の連結 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 87 人間の拡張としてのメディア 3/3 • 感覚器官・・・情報の受容体 • 神経という伝送路を伝って、脳にそれらの情報が • 脳の中でも神経と神経伝達物質の受け渡し • また我々の感覚器官の極く近くの延長として眼鏡や補聴器 • 眼鏡や補聴器のさらなる出先機関として、テレビカメラとマイクロフォ ン・・・われわれの代わりに外の世界を記録してくれる • つまり脳から神経、感覚器官の延長としてマス・メディア・・・「人間拡 張の原理」(マクルーハンの『メディア論』の原題)といえる。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 88 マクルーハンの考えのまとめ • 脳中枢-神経ネットワーク・・・ここに実体としての脳中枢を想定しな い→すべてがメディアとなりえて、他者とつながる • メディアの重層性の議論→人間拡張としてのメディアに 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 89 4.3.2 マクルーハンからメイロウィッツへ 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 90 メイロウィッツの考え方 1/3 ジョシュア・メイロウィッツ『場所感の喪失』(1985→2003) • 現代社会・・・相互に隔てる壁のなくなっている状態 • マクルーハン「人間拡張の原理」としてのメディアをさらに延長 →《壁の外にも我々の神経ネットワークの延長としてのメディアが張り 巡らされていく状況》をイメージ われわれの神経の延長のコンピュータネットワークが壁を突き破る 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 91 メイロウィッツの考え方 2/3 • 隔てることで権力は、権威を保つ(ウェーバー《官僚は情報の独占に よってその権力を得る》) • 隔てていた壁の除去→権威失墜のきっかけに • 舞台裏を覗かせると、舞台の表に立つことの権威が揺らぐ • 電子化・・・壁の除去に →医師・弁護士・政治家・大学教授の地位(職業上の威信)の低下 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 92 メイロウィッツの考え方 3/3 • メイロウィッツの出す例ではないが、例で説明 • (アイドルだってトイレに行く)(聖人だってお金は欲しい)(夢の国のミ ッキーが着ぐるみを脱いでタバコを吸う姿を目撃、とか)・・・聖なる職 業の脱聖化のようなもの • 難しい専門用語(ジャーゴン)を使うから偉そうに見える。誰でも分か る言葉を使えば、普通の人の延長上に位置づけられる 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 93 閑話休題 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 94 この人気モデルは誰? ( http://shingo6110.blog.shinobi.jp/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%A0/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E7%BE%8E%E4%BF%9D%E2%99%AA ) ( http://yaplog.jp/so59_dri1416/category_23/ )( http://newslounge.net/archives/54994 ) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 95 このJリーガーは? ( http://inamotojunniti.cocolog-nifty.com/ )( http://sendai-d.seesaa.net/category/3856455-1.html ) ( http://99hotnews.com/wp-content/uploads/2012/09/%E7%A8%B2%E6%9C%AC%E6%BD%A4%E4%B8%80.jpg ) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 96 答え • 答え ○○○○(元non-no)と○○○○(元全日本→川崎フロン ターレMF) • お二人は昨年12月、めでたくゴールイン 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 97 「ウェスティンホテル東京」事件 1/2 • ただしそのほぼ二年前、都内の一流とされるホテルでデート中に、アルバイトの 女子大生に逐一、行動を観察され、ツイートされるという事件に • この女子大生は即刻クビになり、ホテルの支配人がすぐに謝罪のコメントを出し、 スポーツ各紙が大きく報道。「掲示板やブログでは「日本のアサンジ」とまで呼ば れ」て。 (つい一月前の2013年4月28日の「行列のできる法律相談所」で田中がこの事件についても語った らしいが未見)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 98 ジュリアン・アサンジ ウィキリークス編集長(ウィキペディアの画像) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 99 日刊スポーツ2011年1月13日号 ( http://girlschannel.net/show_image/16954/6/0/ ) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 100 「ウェスティンホテル東京」事件 2/2 →ツイッターが相互監視のシステムと化していることの証。 しかもそれのみならず • この女子大生とそのツイートの相手の女子大生の顔、出身校、学校 その他の個人情報が2ちゃんねるで晒され続け(「祭り」)、震災を契 機にやむ • Mixi、Twitterその他に不用意に個人情報をこれらの女子大生は晒し たのが利用されたといわれる。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 101 「ウェスティンホテル東京」事件への評価 1/2 この「ウェスティンホテル東京」事件への評価・分析 1)相互監視社会の徹底化 2)反面、個人情報を晒す個人の増加 • ・・・相互に監視されるという被害者意識のみならず、 逆に相互に監視して「貰う」感覚・・・見られる・知られることの安心感 かまちょ、ネット依存、携帯依存 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 102 「ウェスティンホテル東京」事件への評価 2/2 • 「○○なう」というツイート。 • foursquare というSNS、「スマートフォンの位置情報を利用して,自分 がどの町のどの店にいるか,たやすく世界に発信することができる」 (東浩紀) • Twitterでも位置情報が発信できる • →自分のプライバシー、個人情報を世間(世界)に向けて発信する 心性(メンタリティ) ・・・もちろんイメージする「世間」の範囲が人によってマチマチ。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 103 では、この人は? http://up-origin.gc-img.net/post_img_web/2013/02/71b2333935c438db13c1b0dfeca13525_1.jpeg 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 104 答え • ○の○○○ • ○くんの喫煙の証拠を、ホテルのバイト従業員がツイートし、やはり ツイートした当人が、2ちゃんねるで「祭り」に合うという事件も • 2011年8月11日、北海道にて。 〔評価〕 • 「ウェスティンホテル東京」事件と基本、似た事件。 • あとはアイドルが煙草も吸わないという神話とその脱聖化 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 105 4.のまとめ 1/2 良くも悪くも、ネット社会で、つながりを求めたがる「個人」 • マクルーハンのいう、「人間の拡張」(自分の身体の一部)としてのメ ディア-端末を通じて本来的に他者とつながっている感覚 • メイロウィッツのいう、壁を隔てて他人とつながる感覚 • 壁がない・・・政府や権威者、アイドル(偶像)も身近に。脱聖化 →自分の個人情報を容易に晒す、そして他者のも →相互監視的な社会に(パノプティコンと逆パノプティコン、双方) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 106 4.のまとめ 2/2 相互監視的な「つながり」を求める社会 • 自律的な個人によって形成されるという市民社会の理想の姿に反す (←個人それぞれに自分で判断できる力があるので、自治が認められ るという理屈) • ただし災害時など危機の時代には有効性あり(5.で後述) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 107 5.ソーシャルメディアやポータルサイト の強み 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 108 書き込みの自動集計→防災 最初に見た、小林啓倫著『災害とソーシャルメディア』(毎日コミュニ ケーションズ)に戻る。 • Google のインフルトレンド • エスエス製薬がTwitter 上の書き込みで風邪の流行を調べようと →これらと同様、Twitterの書き込み、分析・・・災害の発生や被害状況 を把握の可能性 →書き込み→ロボットでの自動集計→防災のためのデータシートの作 成 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 109 問題点(ここは後藤のいう) • ただしクッキー同様の問題が。 • プライバシーの問題。意図せず個人情報を発信 • アマゾンやHMVの「この商品を選んだ人はこういう商品も・・・」といっ たお奨め同様 • データベース化社会(東浩紀の「一般意志2.0」) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 110 Google のインフルトレンド • Googleの説明「Google では、特定の検索キーワードの検索件数がイ ンフルエンザの流行の指標となることを発見しました」 http://www.google.org/flutrends/intl/ja/about/how.html 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 111 Google インフル トレンドの予測 アメリカ合衆国の実際のデータ http://www.google.org/flutrends/intl/ja/about/how.html 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 112 「カゼミル」 2013/6/01 http://kazemiru.jp/ (エスエス製薬のサイト) 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 113 Googleの震災直後の対応(主に小林(啓)による) • Google は3 月11 日16 時32 分頃パーソンファインダーを立ち上げ。 17 時頃「震災特設サイト」を立ち上げた。 • 「震災特設サイト」・・・検索頻度の急上昇している単語を検索・・・「原 発」「輪番停電」(インフルトレンド同様の試みを実際に)→放射性物 質の拡散予測情報を流す計画 • 実際には人々の不安を煽りかねないと、中止。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 114 http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/chapter_06.html Googleのパーソンファインダーと東日本大震災 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 115 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 116 パーソンファインダーへの評価 • 「パーソンファインダー」・・・当初名簿データが3,000 件ほどのみ • 警察、NHKの協力・・・最終的に67万件の情報 • しかし初動避難に役立つ数ではない。 • 家族や親戚、友人の無事の確認・・・Twitterのツイートやmixiの「マイ ミク(友人)」のログイン情報が有効・・・特に東北ではmixiユーザーが 多いと津田大介(もっともネット情報調べると、そうでもない) • Facebookも友人の安否情報に使われた(次のページのグラフ)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 117 MarkeZineニュース「地震発生後72時間以内の利用内容(複数回答) 【※それぞれ地震前からの利用者】」 http://markezine.jp/article/detail/13591 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 118 安否情報でのSNSの有効性 • 今回の津波ですぐに避難しなかった人にその理由を • 28.0%の人が「家族の安否を確認していたから」と(関谷直也の調 査) • 逃げ遅れた人の中には、正常化の偏見とあわせて、「家族の安否」 を確かめようとして結果的に逃げ遅れた人も相当数いたはず。 →ツイートやログイン情報が安否確認手段になりうることを示唆 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 119 (参考;追補情報)今日の講義のリハーサル時のゼミ生の情報 • もっとも、親友や家族がなかなかSNSにログインしないと、やたら不 安を煽る面もあったはず(ゼミ生の意見)。 • またツイッターで「気仙沼、危ない」という情報で不安がる面も 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 120 平時と非常時の線引きの問題 1/4 ソーシャルメディアの例ではないが、 GPS機能備えた携帯電話・・・人命救助に有効 • ただし平時と非常時の線引きが重要 (Yahoo高木正行氏) • またソーシャルメディアとしてfoursquareなどの位置情報をいうものも あるし、Twitterにもその機能あり。 • SNSの安否情報、googleのインフルトレンド等も、プライバシーの点で は問題あり 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 121 平時と非常時の線引きの問題 2/4 メイロウィッツを振り返ると、 • 人と人とを隔てる壁の撤去→旧来の壁を越えた情報の流通→人々 の行動も監視される機会を増やす • しかし災害時、隣家の「壁」を壊して救出の手を差し伸べることは重 要。 →要は非常時と平時の線引きが重要に。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 122 (参考)「非常事態」 • 非常事態という言葉のニュアンス • 「非常事態宣言」をウィキペディアでみると・・・ • 「非常事態宣言(ひじょうじたいせんげん)とは、国家等の運営の危 機に対し緊急事態のための特別法を発動することである。対象には 武力攻撃、内乱、暴動、テロ、大規模な災害などのほか、鳥インフル エンザやAIDSなど疫病もある。措置には警察・軍隊など国家公務員 の動員、公共財の徴発、最高責任者による政令の発布や検問、令 状によらない逮捕・家宅捜索などを許す事の他、集会の自由やスト ライキなどの行為の制限である。」 • →人権の制限、軍や警察の力が強まるとのニュアンスがある。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 123 (参考)戒厳令 • かいげんれい【戒厳令 martial law】 • 一般に非常時に際して通常の行政権,司法権の停止と軍による一 国の全部または一部の支配の実現を意味する非常法をいう。(世界 大百科事典 第2版) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 124 (参考)「非常時」 • 「非常時」を「コトバンク」で見てみると・・・ • 「 1932年の五・一五事件後に危機意識をあおり,国民を国家総力戦体制に動員 する地ならしをおこなうために用いられた流行語。この言葉は,満州事変勃発 後における日本の国際的孤立化,血盟団事件や五・一五事件などの政治テロ の横行,農業恐慌の深刻化,労農運動の継続など,内外の危機的状況を包括 的にあらわす言葉として用いられ,斎藤実・岡田啓介両内閣をはじめ,軍部・右 翼・ジャーナリズムなどによって高唱された。具体的には内政面では政党政治 の否認,軍部と新官僚の発言権強化の容認,農山漁村経済更生運動による農 民の組織化など,国際面では反中国・反国際連盟を中心とする排外主義の高 唱,ワシントン海軍軍縮条約の期限切れを理由とする〈1935,36年の危機〉説の 宣伝と軍備拡張の主張など・・・。 」 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 125 平時と非常時の線引きの問題 3/4 • アメリカでの災害心理学の研究・・・国防総省の補助金 • 日本でも関東大震災のとき、軍人への人々の評価が一変したと・・・ 大正デモクラシー時の反軍感情を一掃。 • 寺田寅彦「天災と国防」(1934)・・・第二次世界大戦前夜の随筆 • 国際間の非常時というが、そっちは根拠なし • 日本は自然災害についていつでも非常時 →天災についての国防論が必要なのに顧みられない 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 126 寺田寅彦(1878-1935)(東大物理学教授・漱石門下の随筆家) http://www.yushu.co.jp/img/goods/3/120190.jpg http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/34/Terada_Torahiko_in_1935.jpg 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 127 平時と非常時の線引きの問題 4/4 現代日本 寺田のとき以上に、災害についての「非常時」 • 1)原発問題、終息せず(話題は日常化することで、減るが) • 2)近々また大きい地震が国内で起きる確率が高まったという説 非常時が続く ならばソーシャルメディアを中心にネットワーク社会が(隣の家の・政 府の)壁を壊す状況・・・幸運(福音)かも 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 128 5.のまとめ • ソーシャルメディアやポータルサイト ・・・個人情報を集積→防災に • 相互監視装置としても機能 • 平時であるのならば要警戒 • しかし現在は、防災上は「非常時」かも(寺田の「いつでも非常時」と いう意味を遙かに超えて) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 129 6.ソーシャルメディアやポータルサイト と既存メディアとの連携(あるいは棲み分 け) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 130 棲み分けと連携についての総括的議論 1/2 • 若者の新聞離れ、テレビ離れ→ソーシャル・メディアの比重高まる • また今回の震災・・・インターネット回線のみ使える状況 →ツイッターの活躍 しかし 取材力の差の問題・・・新聞、テレビの記事の引用・まとめ、多い 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 131 棲み分けと連携についての総括的議論 2/2 他方、震災の際の信頼できる情報源(従来から) 官公庁の広報、新聞、テレビ、ラジオ・・・今後も替わることない →既存メディアとソーシャルメディア(あるいはポータルサイト)の棲み 分け 今回、これが功を奏す(遠藤薫ほか)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 132 連携の実例(遠藤薫による) • 中学生によるUstream でのNHK 中継以外、ニコニコ生放送や Ustreamでの中継をNHK,TBS,フジテレビが早い時期に配信を認めた • 河北新報が自社のSNSやTwitterで多くの情報を発信 • Google のパーソンファインダー • YouTube の消息情報チャネルにJNN,ANN 系列の取材した安否情報 • 日本経済新聞や毎日新聞は紙面をpdf 化してネットで見られるよう に 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 133 二種類の補完作用(情報の流通経路vs情報そのもの) • いわば情報の流通経路の補完をソーシャルメディアやポータルサイ トが引き受けたのが、遠藤の挙げる例 • 他方、次に見る津田大介は流通する情報そのものの補完を目指す • 震災3 日後から1 週間・・・「記者会見を要約して流すこと」徹する • ニコニコ動画やUstream が内閣官房長官、原子力安全・保安院の記 者会見をノーカットで中継・・・それをTwitter 上で要約 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 134 NHK等のテレビでも大活躍、25.6万人のフォロワーを 誇る、津田大介氏(公式ツイッターとウィキペディアの画像) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 135 (参考)津田大介氏 経歴(ウィキペディアより) • 津田 大介(つだ だいすけ、1973年11月15日 - )は、日本のジャーナ リスト、メディア・アクティビスト。有限会社ネオローグ代表取締役 • 1997年、早稲田大学社会科学部在学中よりIT関連のライターとして 執筆活動を開始。 • 1999年、有限会社ネオローグ設立・代表取締役。 • 2003年、ジャーナリスト活動を開始。 • 審議会や各種のシンポジウムを取材する際にノートPCを使用し Twitterで参加者の発言をリアルタイムに実況する手法を日本におい ていち早く採り入れ、Twitter実況のことを意味する「Tsudaる」というイ ンターネットスラングの語源となっている。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 136 津田大介氏の震災直後の活動と意見 1/2 • ニコ動、ユーストといったソーシャルメディアはマスメディアの情報そのも のの不足を補完。 • それの要約(「Tsudaる」)に、Twitterの王者、津田大介氏は震災後しばらく は徹す • また新聞記事原稿の多くはボツに・・・記者自身がツイートして欲しいと、 津田氏(・・・ただし社の人間としての拘束は受けるはず 後藤補記) 繰り返すが、ソーシャルメディアとマスメディアの関係は、 • マスメディアの流通路の補完と • マスメディアの情報の補完双方あった、といえよう(ここは後藤の意見)。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 137 津田大介氏の震災直後の活動と意見 2/2 基本的な津田の姿勢(戦略) • Twitterに透明な媒介者の役割を求める • しかし既存メディアにない付加価値もTwitterに与えようとする • (ユースト中継の要約やボツになった記事等) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 138 6.のまとめ • 二つの補完路 マスメディアの流通路の補完と マスメディアの情報の補完 • いずれも事象(事態・事件)そのものの透明な媒介者か マスメディアの情報の透明な媒介者か • 前者は連携、後者は棲み分け • (他にTwitterでボランティアのきめ細かな手配をした早稲田大学講 師西條剛央氏の活動等) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 139 7.講義のまとめ 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 140 講義の「まとめ」に入るにあたって(話の組み立ての説明) 論文の「主題」と「副題」の関係、いつも逆転の危機(・・・今回でいえば ソーシャルメディアと震災) • 総括的議論(1)~(5)・・・既存メディアvs新しいメディア ↓ • 総括的議論(6)(7)・・・ソーシャルメディアの台頭と防災(全体のま とめ) ↓ • 補足的議論・・・ソーシャルメディアを巡る補足的かつ重要な問題 (こちらは時間がなければスルーします。逆に余ればここで討論します) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 141 総括的議論(1) -既存メディアとソーシャルメディアの情報の流れ • 既存メディアの情報の流れ(小林啓倫による)・・・ピラミッド型 • ソーシャル・メディアの情報の流れ・・・コラボレーション型 要は水平的・・・人の役割が固定されていない • 情報の提供・選択・加工・伝播・消費すべての機能 ・・・全参加者が等しく持つ→役割交換可能性が高い(「小林による と」・・・後藤は少しここは後で突っ込みたい) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 142 総括的議論(2) -ソーシャルメディア=「色々な方向の監視」に整合的 水平性、役割の固定性の欠如(コラボレーション型の特徴) • キムのいう、看守塔にいる政府を独房の市民が監視する場合も • 逆に、政府が市民を監視する場合も、 • 市民相互が監視する場合も、 3つともある という立場に整合的 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 143 総括的議論(3) -マスメディア→ソーシャルメディアへの流れのなかで 1/2 マスメディア→ソーシャルメディアへの流れ • 一方、取材力は依然、圧倒的にマスメディアの方 • しかし人材のソーシャルメディアへの流出(←新聞離れ・テレビ離れ 等・広告収入の激減) • また記者自身のツイート等 • 取材のノウハウもソーシャルメディアへと(津田の見通し) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 144 総括的議論(4) -マスメディア→ソーシャルメディアへの流れのなかで 2/2 • 情報の対等性(コミュニケーションの双方向性)の流れに • しかし相互監視の危険も孕む • (メディアに限らない)すべてのものの歴史は水平性、平等性の流れ の方向に・・・この一環 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 145 総括的議論(5) -ピラミッド型のメリット~棲み分けへ • ピラミッド型組織・・・メリットも 情報を精査する何段階ものプロセス の存在(1・2時限目にも出ていた、お金と時間かけている) • コラボレーション型組織・・・デメリットも チェックが利かない。裏も 取らずプラヴァシーへの配慮少ない。相互監視機能も過剰に。 • 一長一短あるなかでの棲み分け 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 146 総括的議論(6)-災害という局面で 特に災害という局面で考えて、纏める • 相互監視的な、壁の欠如・・・望ましい部分も • 他方、ソーシャルメディアの情報の精度の粗さ・・・信頼性ある情報こ そが必要とされ求められる災害という場面で、問題 • よって情報経路の補完という機能、重要(よって「透明な媒介」機能) • そうはいっても、マスメディアの情報の単なる補完で良いのか、さら に近未来のソーシャルメディアは単にそれだけでは終わらない部分 も(西條氏の活動等) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 147 総括的議論(7)-災害という局面で~その2スケッチ • 「マスメディアや政府自治体広報の方が信じ得る」という見方は依然 ある・・・よってソーシャルメディアは広い意味で補完機能 • 一方、マス・コミの二段の流れ仮説 • 一般に身近な人の推薦ほど信じてくれる(購買行動などで) • 正常化の偏見・・・マスメディアや広報、全面的には信じていない部 分もあるからこそ • ここと「身近な人、信じれる」を組み合わせて考える →ソーシャルメディアの単なるマスメディアの補完を超えた役割かも 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 148 補足的議論 1/5 • ソーシャルメディアに代表されるweb2.0についての議論 『今までプロの書き手集団1万人(人口の1万分の1)・・・運の良かっ た人々 • しかし面白いこと書ける人、人口の1/10はいる →この人たちも参画できるのがソーシャルメディア • ただしゴミと1/10を分ける技術は必要』と。 (梅田望夫『ウェブ進化論』ちくま新書の議論等を要約) 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 149 補足的議論 2/5 • 他方、Google等の検索エンジンの仕組み・・・有力なサイトとの相互 リンクのあるサイト(単に相互リンクというのみならず)・・・検索の上 位に • 一見、極めて民主的・・・ただし「人気取り」民主主義。しかも「強い者 の傘の下」にいく者が有利(リアルな世界でのコネ社会のネット版) • フェースブック、Twitter等ソーシャルメディアの影響力指数、Klout(ク ラウトスコア)も有力な「友人」の数で測定(松宮義仁 2012) • 最初に挙げた、猪瀬直樹の「美談」も、猪瀬という有力者へのネット 上のパイプがあって初めて可能に 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 150 補足的議論 3/5 • Twitterで名前を売った人は・・・よくいわれることであるが、それをバ ネに既存メディアで(も)活躍。 • 他方、猪瀬、津田共に現実世界で一応、名前が出てからTwitterをし てる・・・芸能人同様、リアルな世界の知名度の増幅機能も • 《ソーシャルメディア・・・水平的な情報の流れ、双方向性、マスメディ アにない新たな可能性》はある程度、事実 →しかし、有力者との「つながり」の多さ、重要・・・ 「水平性」の建前の 裏に「垂直性」(格差・発言の重みの不平等)が 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 151 補足的議論 4/5 • 「補足的議論」の最初に述べた、1/10の面白い人が、本当に活躍 できるのかやや疑問(恐竜の首VSロング・テールの問題はあるが) • それとそもそも9/10と1/10を分けることが妥当なのかという問 題も • それぞれの人の得意領域はあり、そこからみた眺めの発信はありう るはず • 面白い発言をする能力には育つ環境による差異も • コミュ力、欠く人・・・チャンスがいっさい巡ってこない社会 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 152 補足的議論 5/5 • 今までの議論・・・無償性が前提・・・その典型、ウィキペディア • オープンソース、ウィキペディアのように無償で集合知を作り上げる 流れ • しかしそういう場であるだけに、それを金儲けの道具にしようとする 人々もいる • FBは純粋に友人の輪を広げるのに使いつつ、それとリンクさせた自 分のブログで商売をという戦術を、松宮氏などは奨めてさえいる。 • →この意味でもマス・メディアの商業主義の二の舞になる可能性も。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 153 ただし・・・(最後に) • 否定的なことばかりいってもはじまらない。 • ソーシャルメディアの発展で情報の流れは水平的になり、情報共有 が可能となり、みんながそれぞれ好きな領域のトップランナーに迫る チャンスのある社会であることは確か(梅田のいう「高速道路」)。 • そして情報を公開することでコメントで成長できる時代であることも確 か。 • こういった環境を活かして学んで欲しいです。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 154 ネタ本について • ネタ本(ネタ論文)・・・一年前の自分の論文 • 後藤嘉宏「災害と情報 - 情報技術の向上と災害時の情報伝達の変 化」『情報の科学と技術』62巻9号(2012年9月) http://www.infosta.or.jp/journal/201209j.htmlに要約あり。 • 全文、近々、機関リポジトリーに挙げる予定。 →ただし結論部分は全く違っていて、他も含めて今回の講義でバージ ョンアップしています。 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 155 主要参考(言及)文献 1/2 • 梅田望夫『ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる』ちくま新 書、2006年 • 遠藤薫『大震災後の社会学』講談社、2011年 • ジョン・キム『逆パノプティコン社会の到来』 ディスカヴァー・トゥエンテ ィワン、2011年 • 小林啓倫『災害とソーシャル・メディア』毎日コミュニケーションズ、 2011年 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 156 主要参考(言及)文献 2/2 • コンピュータテクノロジー編集部『IT 時代の震災と核被害』インプレ スジャパン、2011年 • マクルーハン『メディア論-人間拡張の諸相』邦訳、みすず書房、 1964年 • 松宮義仁『世界一受けたいソーシャルメディアの授業』フォレスト出 版、2012年 • メイロウィッツ『場所感の喪失〈上〉-電子メディアが社会的行動に及 ぼす影響』邦訳、新曜社、2003年 2013/6/01 茨城県_筑波大_高大連携事業_公開講座 157
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