変位雑音フリー重力波検出器の開発

変位雑音フリー重力波検出器の開発
苔山 圭以子
お茶の水女子大学大学院
2007年11月17日, 高エネルギー天体現象と重力波研究会
概要
DFI (Displacement- and frequency-noise free interferometer)
は、複数の干渉計を組み合わせることによって、光学要素の変位
による雑音にまったく感度がない新しい光学設計の重力波検出器
である。本講演では、国立天文台で行われているDFIテーブルトッ
プ実験について解説する。
もくじ
イントロダクション
DFIの原理
DFIの光学設計
3つの原理検証実験
まとめと今後の計画
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
イントロダクション
S.Kawamura & Y.Chen, 2004 Phys. Rev. Lett. 93, 211103
Y.Chen & S.Kawamura, 2006 Phys. Rev. Lett. 96, 231102
の論文によって提案された、新しいタイプのレーザー干渉計型重力波
検出器
光学要素の変位をまったく感じない重力波検出器
地面振動・熱雑音・輻射圧雑音を感じないために
原理的にはショットノイズだけで感度をリミットされる
地上、宇宙重力波検出器どちらにも適用できる
Y. Chen, et al., 2006 Phys. Rev. Lett. 97 151103で
提案された、4台のマッハツェンダー干渉計を組み合わせた光学設計
DFIの一部をとりだし、原理検証実験を行った
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
変位雑音と重力波の違い
レーザー干渉計は、ミラーの変位
と重力波に対して違う応答をする
DFIの原理
複数の干渉計の出力を、光学要素
の変位成分がキャンセルするように信
号を引き算する
ditectors
DFI信号
例
Magnitude
マイケルソン干渉計の マイケルソン干渉計の
ミラー変位への応答
重力波への応答
lasers
重力波信号は残したまま、
変位雑音だけをキャンセルできる
f
f
重力波は積分効果として
レーザーに位相変化を与えるので、
重力波の波長とレーザー光路が
同等な長さのとき、位相変化が
キャンセルされる
2007/11/17
低周波では変位雑音による位相変化と
重力波による影響が区別できないため、
重力波信号もキャンセルされてしまう。
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
本実験におけるDFIの光学設計
DFIは、
4つのマッハツェンダー干渉計(MZI)
からなる
正八面体
A
MZI3
MZI1
C1
D2 z
Bidirectional MZI
C2
y
x
D1
MZI4
MZI2
4つの信号を、
変位雑音がキャンセルするように
演算する
2007/11/17
B
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
本実験におけるDFIの光学設計
Bidirectional MZI :
ミラー変位がキャンセルされる光学設計
レーザー
ミラー
フォトディテクター
(PD)
ビームスプリッター
(BS)
ミラー変位があるとき
MZI1=δL
MZI2=δL
MZI1-MZI2=0
MZI1とMZI2は
たがいに90度回転し
ているので、引き算後
も重力波は消えない
ビームスプリッターの
変位は消えないので、
もう一組Bidirectional
MZIを組み合わせる
→3D光学設計
Y. Chen, et al., 2006 Phys. Rev. Lett. 97 151103
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
原理検証実験
1. Bidirectional MZIの実験
光学要素変位は、
EOMでシミュレート
ミラー変位信号のキャンセルを確認した
重力波シミュレート信号が残ることを確認した
2. BSを共有した2台のMZIの実験
BS変位信号のキャンセルを確認した
重力波シミュレート信号はなし
3. 実際にBSを振って変位を与える実験
BS変位信号のキャンセルを確認した
重力波シミュレート信号はなし
D1
C2
B
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
C1
D2
1. Bidirectional MZI実験
現実
実験
重力波
光路の
中点
ミラー変位
EOM1 EOM2
引き算信号
引き算信号
引き算信号では、
ミラー変位信号キャンセル
重力波信号が生き残っている
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
1.実験セットアップ
dump
RF PD
+Out1
中点
HWP PBS
EOM1
EOM2
3.6m
FI
mid fringe
コントロール
MZI2
-Out
DC PD
3.6m
PZT
FI
引き算器
HWP PBS
RF PD
-
Out2
引き算信号
MZI1
dump
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
1. 実験結果 ミラー変位信号キャンセル
Out2
Magnitude
EOM1
Out1
EOM1からOut1への伝達関数
EOM1からOut2への伝達関数
EOM1から引き算信号への伝達関数
Phase
引き算信号
最大で約40dBの
キャンセルが達成された
S. Sato, et al, 2007 Phys. Rev. Lett. 98 141101
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
1. 実験結果 重力波信号
Out2
Magnitude
EOM2
Out1
EOM2からOut1への伝達関数
EOM2からOut2への伝達関数
EOM2から引き算信号への伝達関数
Phase
引き算信号
引き算後も重力波信号が
残ることが確認された
S. Sato, et al, 2007 Phys. Rev. Lett. 98 141101
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
2. BS変位キャンセル実験
2台のMZIにおいて、BSの変位キャンセルを確認する実験
現実
実験
MZI2
MZI1
control
DC PD
out1
C1
D2
EOM
MZI2
Laser
D1
C2
MZI1
~
DC PD
B
2007/11/17
control
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
out2
2. BS変位キャンセル実験 結果
Magnitude
最大50dBのキャンセル
が達成された
Phase
EOMからOut1への伝達関数
EOMからOut2への伝達関数
EOMから引き算信号への伝達関数
EOMから引き算信号への伝達関数
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
3. BS変位キャンセル実験
Magnitude
実際にPZTでBSを動かし、
その信号がキャンセルされることを確かめた
BSからOut1
BSからOut2
BSから引き算
PZT
Out1
Phase
control
Out2
±
BSからOut1
BSからOut2
BSから引き算
アクチュエート信号
Frequency [Hz]
引き算信号
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会
まとめ
DFIのための原理検証実験を行った
Bidirectional MZIで、ミラー変位キャンセル
MZI2台で、BS変位キャンセル(EOM)
MZI2台で、BS変位キャンセル(アクチュエーター)
今後の計画
4台のMZIを組み合わせた3D光学設計のDFIをつくる
DFI信号ではミラー、BS変位のキャンセルし、
重力波信号がいきのこっていることを確かめる
ミラー、BS変位はEOMで再現
重力波信号も複数のEOMを組み合わせ再現
2007/11/17
Keiko Kokeyama @ 「高エネルギー天体現象と重力波」研究会