インセンティブと 企業パフォーマンス 1 中央大学 渡辺ゼミナール やるっちゃチーム 目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. インセンティブとは 研究動機 仮説 分析結果 考察 まとめ 2 1.インセンティブとは やる気を起こさせる ための刺激物! インセン ティブ 3 2.研究動機 《現状》 4 従業員のやる気を高めれば、その企業の パフォーマンスは上がるのでは!? パ フ ォ ー マ ン ス やる気 5 私たちの研究の新しい点 ① インセンティブを5つに類型化 ② 物質的インセンティブ以外のものにも着目 ※関連する既存研究:鈴木(2001) 6 3.仮説 7 5つのインセンティブ 物質的 お金 インセンティ ブ 自己実現的 自分自身 インセンティ の満足感 ブ 評価的 正しい インセンティ 評価 ブ 理念的 正しいことを インセンティ している意識 ブ 人的 魅力的な インセンティ 職場 ブ 8 一つ一つの インセンティブが どれだけパフォー マンスに影響して いるのだろうか!? お金 自分自身 の満足感 正しいことを している意識 パフォー マンス 正しい 魅力的な 評価 職場 9 変数定義(インセンティブ) Ⅰ物質的インセンティブ 平均年収 この指標の程度が高いということは、お金がほし いという欲求が刺激されていると考えることができ る。 30歳の 平均月収 給与にある程度差が開き始めている30歳の給与 に着目した。この指標の程度が高いということは、 お金がほしいという欲求が刺激されていると考える ことができる。 ストックオプ ション制度の 有無 この制度があれば、将来金銭を取得する可能性 がある。したがって、より多くのお金が欲しいという 欲求が刺激されると考えることができる。 10 Ⅱ理念的インセンティブ 社会貢献 活動比率 この指標の程度が高いということは、企業が積極 的に社会貢献活動をしていると判断できる。従業 員はより正しいことをしたいという欲求が刺激され ているので、理念的インセンティブが高まると考え られる。 企業倫理方 針の文書化 の有無 企業倫理方針が文書化されていれば、企業が利 益だけでなく倫理も重視していると判断ができる。 従業員はより正しいことをしたいという欲求が刺激 され、理念的インセンティブが高まると考えられる。 CSR担当 部署の有無 この部署が存在すれば、企業が社会的責任を果 たしているかどうかが分かる。従業員はより正しい ことをしたいという欲求が刺激され、理念的インセ ンティブが高まると考えられる。 11 Ⅲ人的インセンティブ 勤続年数 この指標が高いということは、魅力的な職場であ ると考えられる。つまり、人間関係やそこで働いてい る人々が魅力的であると推察できる。よって、人的 インセンティブが高いと考えられる。 新卒定着率 入社3年で退社してしまう人が多いことに着目した。 この指標が高いということは、魅力的な職場であり、 人間関係やそこで働いている人が魅力的だと考え られるので、人的インセンティブが高いと考えられる。 有給休暇 取得率 この指標が高いということは、従業員の権利を尊 重している職場であると判断できる。よって、人間関 係が魅力的であると考えられる。よって、人的インセ ンティブが高まると考えられる。 この指標が低いといことは、魅力的な職場である と考えられる。つまり、人間関係やそこで働いている ※逆転項目 人々が魅力的であると推察できる。よって、人的イ ンセンティブが高まると考えられる。 離職率 12 Ⅳ評価的インセンティブ 女性管理職 比率 この指標が高いということは、男女区別なく、能力 に応じた人事をしていると判断できる。従業員はよ り正当で適切な評価を受けたいという欲求が刺激さ れるため、評価的インセンティブが高まると考えら れる。 女性社員 比率 この指標が高いということは、男女区別なく人事を 行っていると判断できる。従業員はより正当で適切 な評価を受けたいという欲求が刺激され、評価的イ ンセンティブが高まると考えられる。 役員 平均年齢 この指標が低ければ年齢にとらわれず、能力に 応じた人事をしていると判断できる。よって、適切な 評価を受けたいという欲求が刺激され、評価的イン ※逆転項目 センティブが高まると考えられる。 13 Ⅴ自己実現的インセンティブ 制度の 採用数(注) 例えば、FA制度があると、自分が活躍し、楽しい と思える仕事に出会える可能性が高まると判断で きる。従業員の自己達成感を得たいという欲求が 刺激され、自己実現的インセンティブが高まると考 えられる。 (注)制度の個数とは、資格技能検定取得制度・社内公募制度・FA制 度・企業内ベンチャー制度・国内留学制度・海外留学制度・特別な成 果に対する報酬制度・キャリアアップ支援制度、の中での採用個数の ことである。 14 変数定義(企業パフォーマンス) 売上高 利益率 企業 パフォー マンス 社債の 格付け 15 分析方法 対象企業:『CSR企業総覧』2009年度版 東洋経済に記 載されている製造業(機械・電機)で東証一部に上場し ている171社 データ 入力 2変量の 相関分析 考察 16 4.分析結果 ピンク:正の有意な相関 濃:1%水準で有意な相関 水色:負の有意な相関 淡:5%水準で有意な相関 相関行列(上段:スピアマンのロー、下段:ピアソンの相関係数)抜粋 物質的 理念的 人的 自己 実現的 評価的 女性管理 役員平均 制度の 三十歳の 社会貢献 平均年収 勤続年数 離職率 職比率 年齢 平均月収 活動比率 個数 物質的 理念的 三十歳の 平均月収 .439** 平均年収 .354** 社会貢献 活動比率 .238** .178* 勤続年数 .068 .248** パフォーマンス 売上高 営業 利益率 経常 利益率 .207* .153 -.184* .253** .052 .329** .410** .030 .013 .332** .282** -.391** .277** .214** .443** .651** .183* .157* -.137 .100 .132 .475** .417** .120 .093 -.282** .024 .243** .245** .376** -.175* -.203** .005 -.066 -.087 -.373** -.131 -.147 -.056 .167* .305** -.073 -.109 .218** .220** -.045 -.064 .620** .002 -.032 -.007 -.040 .109 -.002 人的 離職率 -.131 -.253** -.052 -.502** 女性管理 職比率 .023 .075 役員平均 年齢 .032 .184* .077 .318** -.237** -.017 制度の 個数 .301** .420** .144 .224** -.083 -.040 .183* 売上高 .324** .372** .075 .210** -.085 .124 .267** .487** パフォー 営業 マンス 利益率 .023 .216** .207** -.168* -.228** -.026 -.151 -.048 -.079 経常 利益率 .012 .210** .198** -.151* -.288** -.044 -.133 -.061 -.080 評価的 自己 実現的 .016 -.264** .276** .958** .976** 17 ※仮説Ⅰ物質的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる ※仮説Ⅱ理念的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる Ⅰ.物質的インセンティブ 30歳の 平均月収 売上高 平均年収 ストックオ プションの 有無 売上高 Ⅱ.理念的インセンティブ 社会貢献 活動比率 企業倫理方 針の文書化 の有無 CSR担当部 署の有無 利益率 利益率 社債の 格付け ほぼ仮説は支持された 部分的に仮説は支持された 18 ※仮説Ⅲ人的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる ※仮説Ⅳ 評価的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる Ⅲ.人的インセンティブ 勤続年数 売上高 新卒定着 率 利益率 有給休暇 取得率 売上高 Ⅳ.評価的インセンティブ 離職率 利益率 女性社員 比率 社債の格 付け 女性管理 職比率 役員平均 年齢 売上高 利益率 ほぼ仮説は支持された 仮説は支持されなかった 19 ※仮説Ⅴ 自己実現的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる Ⅴ自己実現的インセンティブ 制度の 採用数 売上高 部分的に仮説は支持された 20 5.考察 Ⅰ.物質的インセンティブ Ⅱ.人的インセンティブ Ⅲ.理念的インセンティブ Ⅳ.評価的インセンティブ Ⅴ.自己実現的インセンティブ 21 5.考察 仮説Ⅰ物質的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる ほぼ仮説は支持された ≪一部正の有意な相関がなかった原因について≫ ‣ 30歳の平均月収と社債の格付けには正の有意な相 関はみられていないが、分析結果の数値が有意な相 関が出ている数値に近いため、ほぼ仮説を支持してい ると考えられる。 ‣他の指標について有意な相関が出ていない点に関し ては不明である。 22 5.考察 仮説Ⅱ理念的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる 部分的に仮説は支持された ≪一部正の有意な相関がなかった原因について≫ ‣現段階では正しいことをしているという意識と企業パフ ォーマンスには、短期的にみると関係性があまりないと 考えられる。長期的にみた場合、関係性がでる可能性 もあると考えられる。 23 5.考察 仮説Ⅲ人的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる ほぼ仮説は支持された ≪一部負の有意な相関があった原因について≫ ‣勤続年数が高いほど給料や諸手当が増加していると 考えられる。 ≪一部正の有意な相関がなかった原因について≫ ‣この指標が適していなかった可能性が考えられる。 24 5.考察 仮説Ⅳ 評価的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる 仮説は支持されなかった ≪一部負の有意な相関があった原因について≫ ‣女性社員が多いと、将来結婚、出産などによる退社が 大量に発生すると考えられ、企業の長期安定性(社債 の格付け)を損なう要素もあるのかもしれない。 ‣役員平均年齢が高いということは、経営者の経験が豊 富であると考えられるので、その効果により売上高との 正の相関関係が生じたものと考えられる。 ≪一部正の有意な相関がなかった原因について≫ ‣この指標が適していなかった可能性が考えられる。 25 5.考察 仮説Ⅴ 自己実現的インセンティブの程度が高まれば企業のパフォーマンスは高まる 部分的に仮説は支持された ≪一部正の有意な相関がなかった原因について≫ ‣制度をたくさん導入すると、仮説通り売上高は増加した。 しかし、導入に伴う経費増加により、利益とは相関がない と考えられる。 ‣社債の格付けとは正の有意な相関はみられていないが 分析結果の数値が有意な相関が出ている数値に近いた め、部分的に仮説を支持していると考えられる。 26 6.まとめ ≪成果・貢献≫ ‣インセンティブを効果的に供給することによって パフォーマンスが上がることがわかった。 ‣この研究結果が企業パフォーマンスをあげることに 役立つことを訴えたい。 ‣ほぼ仮説が支持されたものもあれば、部分的にしか 支持されなかったものもあるので、企業によってより 効果的なインセンティブの種類が異なる可能性を 指摘することができる。 27 ≪課題≫ ‣同じインセンティブの中に正と負の相関関係の指標が 混在しているため、因子分析を行い、いかなる5つの インセンティブの組み合わせがいかなる企業群に おいて効果的であるかを追究したい。 ‣各インセンティブごとにより妥当な変数を追究したい。 28 参考文献 ‣伊丹 敬之・加護野 忠男(2003)『ゼミナール 経営学入門』 日本経済 新聞社. ‣ (2008) 『2009年度版CSR企業総覧』 東洋経済新報社. ‣山口 裕幸・芳賀 繁・高橋 潔・竹村 和久(2006),『経営とワークライフ に生かそう!産業・組織心理学』 有斐閣アルマ. ‣伊丹 敬之(1986),『マネジメントコントロールの理論』 岩波書店. ‣鈴木 誠(2001),「経営パフォーマンスとインセンティブに関する分析」 『フィナンシャル・レビュー』 第60号 財務省財務総合政策研究所. ‣小野寺 孝義・山本 喜一郎 (2004),『SPSS事典 BASE編』 ナカニシ ヤ出版. 29 30
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