日語誤用分析 (大学院) 3月7日(月・一)~ 担当 神作晋一 第2章 中間言語: 学習者独自の言語体系 1.日本語学習者の中間言語:「に」?「で」? 2.自分の「独自のルール」には、自分でも気 づいていないこともある。 3.学習者独自の文法は、何から作られるの か 4.中間言語の発達 第2章 中間言語: 学習者独自の言語体系 学習者の言語習得のプロセス ⇒独自の中間言語体系⇒修正⇒目標言語 体系に近づく 中間言語の作られ方、修正のされ方 第2章 中間言語: 学習者独自の言語体系 目標言語 体系への 接近 中間言語 体系の形 成・再構築 学習等によ る増加・修正 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 学習者独自のルール(思い込み) 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 例:「に」と「で」の使い分け 図書館で本を読みます。 図書館にいます。 どのように考えますか? 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 山の上( )ご飯を食べました。 スイス人(母語はドイツ語)の学習者の例 教師:「食べました」はアクションaction 学習者: アクション(動作動詞)は「で」 「ある」と「いる」(状態動詞)は「に」 「山の上」は「に」、 ⇒「上」「中」「前」などの後ろは「に」(学習者の ルール) 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 迫田久美子(2001):前に置かれる名詞によ る「に」と「で」の使い分け 中級レベルの学習者(中国、韓国、その他、) 助詞の穴埋めテスト 位置を示す名詞(中、前など)+に 地名や建物を示す(東京・食堂)+で ⇒という傾向 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 「に」と「で」の使い分け 目標言語のルール 学習者独自の文法(ルール) 後ろにくる述語が動作か状態かで使い分ける 位置を示す名詞には「に」 ⇒二つのルールが併存・保持 教室で(教師から)学んだルール どちらも重要 という意識 自分なりに作り出したルール 1.日本語学習者の中間言語: 「に」?「で」? 山の上( )ご飯を食べました。 「食べました」はアクション(で) 場所を表す名詞の後(に) 目標言語のルール 学習者のルール ルールがぶつかる 2.自分の「独自のルール」には、 自分でも気づいていないこともあ る。 無意識のルール 説明できないルール 2.自分の(無意識なor説明できな い)「独自のルール」 学習者の中間文法 ⇒学習者自身が意識できないもの、説明でき ないものがある。 例:ニュース番組の現地レポーターのあいさつ(悲 惨な事件の場合) スタジオ女性:Good morning John. 現地の男性:Good morning Cathy. ⇒筆者は「悲しい場面でGood morning は使えな い」と思っていた。←無意識なルール 2.自分の(無意識なor説明できな い)「独自のルール」 学習者の中間文法 ⇒学習者自身の無意識、無自覚なものが多い ⇒教師や研究者が把握するのは簡単ではない。 (学習者自身に聞いてもわからない) ⇒なぜ(このような)言語使用が出てくるのかを 考えようとする姿勢が大事。 正しい、正しくないの問題ではない 3.学習者独自の文法は、何から 作られるのか 3.学習者独自の文法は、何から 作られるのか 例:「に」と「で」 「かたまり」として認識 例:上に、前に コロケーションcollocation 言い回しの組み合 わせ、慣用的な表現 量 中国語:他還沒來/*他不來 予想と違うものもある。例:甘い~:新聞だと実は 「甘い球」というのが多い。 3.学習者独自の文法は、何から インプットでの使用頻度のかかわり 作られるのか 教科書(みんなの日本語初級など)では「位置の 名詞+で」の例が少ない 筆者の内省(授業で)でも少ない 母語話者同士の会話でも「位置+に」の頻度が高 い傾向(野田2001) インプットの偏り⇒100%の傾向として認識 Swing and miss.「三振」と思っていたが、調べると 「空振り」だった。 使われるケースが多かったため思い込んでいた。 よく聞くと三振以外でもあった。strike(two) 3.学習者独自の文法は、何から 作られるのか 知識を得る(調べた、教わった)と、気づく(聞 こえる)ようになる。 文法学習の効果 イラストや絵カードなどによる誘導 例:「~たまま」はextraordinary(「異常な」「驚くべ き」)? 極端な場面というわけではないが、インパクトのあ る例を使ったので(学習者にそのように)認識され た。 3.学習者独自の文法は、何から 作られるのか 学習者の学ぶ過程 受動的(そのまま受け入れる)なものではない。 例文から感じられる意味、絵、語彙などの意味や 使い方を探って、能動的に学ぶ。 言語情報・ 非言語情報 仮説 + ⇅ (既有の) 中間言語 検証 新中間 言語 3.学習者独自の文法は、何から 作られるのか インプットからパターンを抽出する能力 ⇒言語を習得できる 例文や絵などに偏りがあると、学習者の文法 (中間言語)に影響がある。 ⇒原因を追究する姿勢が必要 4.中間言語の発達 4.中間言語の発達 中間言語は修正されながら徐々に目標言語 体系に近づいていく ⇒上手になる ⇒中間言語の発達 ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 一歩一歩近づくことは理想だが…簡単では ない(自覚があるはず) 後戻りする(例:昨日使えたのに今日は×) ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 「U字型発達」:初めは正しく、だんだん誤り が増え、また誤りが減っていく。 母語習得の場面で報告 始めは正しく、一時的に間違える 例:went⇒goed came→comed 第二言語習得のプロセスでも見られる ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 丁寧体「昨日は雨でした」「暇でした」 普通体「雨だった」「暇だった」 イ形容詞「おいしかったです」「おいしくなかった です」 *「昨日は雨だったです」「暇だったです」 Cf.雨だったんです、暇だったんです、は可 歴史的には出現したこともあり、また方言では あるところもある。 ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 丁寧体「本はありません」「本がありません」 ~じゃありません ↓ *「本じゃありません」(「沒有書」的意思) ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 中間言語の再構築 その過程でできなくなることも出てくる。 出来な くなるも のもあ る 既有のもの+新しいこと⇒再構築 足し算ではない ■学習者の言語発達は一直線 に進むわけではない 教えたら使えるようになるか 「教えたはずなのに」 「昨日教えたばかりなのに…すっかり忘れてる」 ⇒よくあることである(程度の差はあるが… 言語学習(学習者の習得過程)は時間をか けて行きつ戻りつ進んでいくものである。 ■発達が止まってしまう? 母語話者とは全く同じにはならない 化石化:中間言語の発達が止まる 近づくことはできる 誤用のまま残り、インプットやフィードバックが あっても×のように思える 定着化(stabilization) 化石化が解消できないという証拠はない 決めつけたり、あきらめたりはしない ■発達が止まってしまう? 後戻りや定着化への対処 学習者の意識(ニーズ) 通じればよい⇒より正しく、効果的に フォーカス・オン・フォーム(focus on form) ⇒様々な議論、 学習が進み、インプットやアウトプットが進めばと いう意見もあるが…。 学習者の注意を言語形式に向ける 修正のフィードバック リキャスト、プロンプト まとめ 1.新しい言語体系「中間言語」が作られる。 修正し(され)ながら、目標言語体系に近づく。 2.中間言語は新しい知識・学びによって再構 築される 3.中間言語は直線的な発達はしない(U字型 曲線や定着化)。時間のかかるプロセス。
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