環境経済学

2012年度 九州大学 経済学部 専門科目
環境経済学
2012年11月12日
九州大学大学院 経済学研究院
藤田敏之
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4 負の公共財
4.1 負の公共財の定義(1)
一般的に財は消費者に効用を与えるが,消費者に不効用をもた
らす財も存在する
これを負の財(bads)という
負の財で非排除性または非競合性をもつものを負の公共財
(public bads)という
非排除性・・・特定の(支払いをする)人に消費を回避させること
が困難
非競合性・・・複数の人が同時に消費して被害にあう
(例)汚染は非排除性,非競合性をもつ負の公共財であり,ゴミ
はそれらの性質をもたない負の私的財
Kyushu University UI project Kyudai Taro,2007
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4.1 負の公共財の定義(2)
強
非
競
合
性
地球環境劣化
ローカルな汚染,小
さな湖の水質汚濁
越境汚染
騒音
中世のゴミ
ゴミ
弱
弱
非排除性
強
負の財の公共財的性質による分類
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4.2 汚染の最適水準(1)
公共財と同じく,負の公共財(以下,汚染とよぶ)についても
MWTPと限界費用を考慮することによってパレート最適な水準が
決定される
汚染のMWTPの絶対値=汚染の限界被害
汚染の限界費用の絶対値=汚染の限界利益
(汚染を1単位増加させることは汚染を減らす対策をしなくてよい
ことを意味するので汚染の増加は利益をもたらす)
汚染についてのサムエルソン条件は
社会的限界被害=限界利益
となる
通常汚染の限界被害は増加関数,限界利益は減少関数
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4.2 汚染の最適水準(2)
金
額
再びA,Bの2人からなる
社会を考えると
MDA
a
量
サムエルソン条件は
MDA+MDB=MB
MDB
b
最適供給量はx*
量
MDA+MDB
a+b
MB
x*
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量
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4.3 汚染排出のゲーム(1)
(例)ある湖の周辺で操業する企業A,B
各企業の汚水排出はそれぞれ自分に利益をもたらすが,同時に
双方に被害を与える
xA, xB: 汚水排出量
利得(利益マイナス被害)を以下のように定式化する
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4.3 汚染排出のゲーム(2)
Aの利得最大化
Bの利得最大化
連立方程式を解くと (xA, xB) = (5, 5)・・・ナッシュ均衡
均衡でのA,Bの利得はuA = uB = 12.5
協力解
uA + uBを最大化する(xA, xB)を計算すると
より (xA, xB) = (3, 3)・・・協力解
協力解でのA,Bの利得はuA = uB = 22.5 → 均衡をパレート支配する
この場合も均衡が非効率になる
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4.3 汚染排出のゲーム(3)
(参考)A,Bが3,5という2通りの排出量(戦略)を選択するゲーム
を考えると利得行列は以下のようになる
B
A
xB = 3
xB = 5
xA= 3
(22.5, 22.5) (8.5, 30.5)
xA= 5
(30.5, 8.5) (12.5, 12.5)
これは典型的な囚人のジレンマゲームになり,均衡は非効率な
(5, 5)である
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参考図書
柴田弘文『環境経済学』東洋経済新報社,第4章,pp. 8190.
コルスタッド『環境経済学入門』第2版,有斐閣,第5章, pp.
75-82.
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