超低温の世界

理学部物理学科ガイダンス
宇宙物理、プラズマ物理、生物/非平衡物理
〜私が宇宙物理実験学を志した理由〜
2011.05.18 @駒場
中澤 知洋
1
私がなぜ宇宙物理実験学を志したか?
1 宇宙が好き。
2 「孫」が星々の海を旅できるといいな。時空の謎を解明しよう!
3 人々の世界観を変えるのは、新たな発見。宇宙は驚異に満ち、
人類に挑戦してくる。
4 謎の現象が、物理的に理解できた時の知的興奮
5 人工衛星に最新の検出器を搭載して打ち上げる面白さ
c NAOJ
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
2
物理学の歴史:新発見とその反響
2002年ノーベル賞
(小柴先生と同時受賞)
from wiki
1960年: 地球大気はX線に不透明。太陽以外のX線天体は
知られていない。知らない=存在しない??
→小さなガイガーカウンタをロケットで大気圏外へ
予想されるカウント
月(太陽X線を反射)
リカルド・ジャッコーニ
当時の常識:「太陽=星はX線を出すが、星々
は遠く、今の100万倍の感度が要る。見えるの
はせいぜい、月に反射する太陽X線。」
2010/05/24
学科ガイダンス@駒場
3
物理学の歴史:新発見とその反響
2002年ノーベル賞
(小柴先生と同時受賞)
1960年: 地球大気はX線に不透明。太陽以外のX線天体は
知られていない。知らない=存在しない??
→小さなガイガーカウンタをロケットで大気圏外へ
中性子星連星の想像図
さそり座X-1
c NASA
リカルド・ジャッコーニ
「これまでの常識では説明できない”何か”」
「中性子星」の存在 → 新しい「常識」
2010/05/24
学科ガイダンス@駒場
4
熟慮と努力の先の「強運」
2002年ノーベル賞
(小柴先生と同時受賞)
2011年の全天のX線の空
全天のX線の「数分の一」を担う
特別な天体「さそり座X-1」
氏はこれを一発で引き当てた!
→宇宙物理を一気に進化
リカルド・ジャッコーニ
日本のMAXI検出器
1960年代末に日本も参戦。「白鳥座X-1」などのブ
実は小柴先生もすごい強 ラックホール連星が相次いで発見された。
運の持ち主。当然、熟慮
→宇宙はブラックホールに満ちている!
と努力あってのこと。
2010/05/24
学科ガイダンス@駒場
5
ブラックホールと中性子星
BH (シュワルツシルド解):太陽質量なら地平線は半径 3 km
中性子星:ほぼ太陽質量で半径10-15 kmの天体。中性子の塊。
超流動中性子
超流動陽子+中性子
重力ポテンシャル
= 2京J/kg
“時空の歪み”の検出への飽くなき探求
極高密度物質の状態方程式
BH誕生=星の最期の物理学
巨大BHと銀河進化の明確な関係
c NASA
2010/05/24
学科ガイダンス@駒場
6
人工衛星に最新の検出器を搭載して
打ち上げる面白さ!
2014年打ち上げ予定
宇宙X線衛星「ASTRO-H」
語り尽くせないので
省略!
牧島・中澤研究室
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
c JAXA
7
物理学科の研究活動の他の例
宇宙物理、プラズマ物理、生物/非平衡物理
2010/05/24
学科ガイダンス@駒場
8
アインシュタインに続け
坪野研究室
精緻に検証された量子力学や特殊相対論に比べ、重力の
本質を記述する一般相対論は、まだ検証が不十分。
BH合体などの重力波による空間の歪みを、20桁の精度で
測定する。
地上と宇宙空間から、世界初の検出を目ざす。
c JAXA
神岡に建設中の重力波干渉計LCGT
2011/05/18
小型技術実証衛星に、宇宙での重力波検出
の第一歩となる装置を搭載
学科ガイダンス@駒場
9
宇宙の黒幕を追う
WMAP衛星などで決定された宇
宙のエネルギー密度の配分
暗
黒
エ
ネ
ル
ギ
ー
暗黒物質。質量をもつが正体不明。
相互作用の弱い未知の素粒子か?
通
常
の
物
質
須藤研究室
遠方天体の観測データ、
計算機による重力多体
シミュレーションから、暗
黒エネルギーに迫る。観
測的宇宙論。
駒宮研究室、浅井研究室
加速器LHCで暗黒物質粒子の直接生成目指す
蓑輪研究室
理学部の地下実験室などで直接検出に挑戦
通常物質の大部分は、銀河団の重力場
を満たす1億度の超高温プラズマ。
中澤研究室
銀河団プラズマを用い、暗黒物質
の総量や空間分布を知る。
ケンタウルス銀河団のX線画像
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
10
星の誕生と第2の地球探査
須藤研究室
山本研究室
星間空間の暗黒星雲は、10~30 K の低温の世
界。CO, CH4, C2H5OHなど多様な分子、星の揺
籃ともなる。分子の出すサブミリ波を新開発検
出器で観測。
すでに548個の太陽系外惑星が発
見されている。その探査により地球
型惑星を発見したい。第2の地球
は?
親星の手前を横切る
惑星(想像図)
南米チリに設置されたサ
ブミリ波望遠鏡
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
11
実験室も熱い
高瀬・江尻研究室
(柏キャンパス)
天然の
地上でも、強い磁場に閉じ込められたプラズマは約1億度まで加熱
核融合炉
され、原子核反応を起こす。新しいプラズマ閉じ込め装置を用い熱
(太陽)
核融合に挑戦中。
球形トカマクとそのプラズマからの発光
研究内容: 高温プラズマ中の非線形現象
(プラズマの不安定性、自己組織化)
プラズマ物理の解明により核融合実現を目指す
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
12
熱力学第2法則を超えて?
熱力学の第2法則:系は熱平衡に向って進み、一様で等温になる。
しかし平衡から大きく外れた開放系では、しばしば自己組織化に
より自発的に構造が発現し、熱平衡からさらに離れてゆく。どんな
新しい基本法則が?
Maxwell’s demon (Yuki Akimoto)
Brown運動を用いたMaxwell
の悪魔の実験。熱ゆらぎを選
択して、トルクに逆らって回転
する。
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
13
生き物を物理しよう
「宇宙人は存在する?」
地球生命は必然か?奇跡?「物理」で明らかにしよう!
能瀬研究室(柏)
樋口研究室
モータータンパク
質の1分子力測定
タンパク質分子機能を1分子レベルで定
量的に測定し,細胞の機能を統合的に
理解する
2011/05/18
ショウジョウバエをモデル生物とした実
験を通じて、脳内神経回路の機能解明
をめざす。
学科ガイダンス@駒場
14
私が物理学をやる理由
c NASA
知的好奇心「好き」「面白い」から突き詰められる。
やるからには徹底してやるべし。
知識のフロンティア「人類の地平を広げる」実感。
意義は人それぞれ考えるべし。
2011/05/18
学科ガイダンス@駒場
15