高角度分解能化を目指した 多重薄板型X線望遠鏡の設計と その性能評価 宇宙物理実験研究室 大熊 哲 目次 • • • • • 多重薄板型X線望遠鏡について 結像性能の決定要因 新しい反射鏡支持機構の導入 新しい望遠鏡の製作 X線を用いた望遠鏡の性能評価 X線望遠鏡 (XRT) ‥‥宇宙からのX線を集光・結像させる 反射鏡 入射角θ<1° 回転放物面 回転双曲面 X線 検出器 Wolter I型斜入射光学系 見込む面積が小さいので集光できる光子が少ない 「多重薄板型」X線望遠鏡 ‥‥非常に薄い反射鏡を多数同心円状に並べたもの 検出器 多重薄板型X線望遠鏡の構造 Quadrant すざく衛星搭載X線望遠鏡 アラインメントバー 40cm ハウジング 反射鏡175枚 反射鏡 厚さ180μm 円錐面で2次曲面を近似 1点には集光せず 必ず広がりを持つ 鏡面 : 金 セクター 反射鏡を見込む幅 〜0.3分角 原理的な結像性能の限界 すざく衛星搭載X線望遠鏡の性能 半径Rの円内に入る全光量 焦点面でのイメージ 全体を1となるように規格化 4 2 [ 半径R ] 分 0 角 -2 光 量 1.8分角 HPD (Half Power Diameter) :全光量の半分が含まれる 円の直径 -4 -4 -2 0 [分角] 2 4 半径 R [分角] 結像性能を決定する主な要因 ①反射鏡鏡面の形状誤差 ②反射鏡の位置決め誤差 すざく搭載 : 1.8分角 入射X線 非常に薄い反射鏡 鏡面のうねり 形状誤差 : 0.85分角 反射鏡 多数の反射鏡1枚1枚 のばたつき 反射像の結像位置 がばらつく 円錐近似 : 0.3分角 位置決め誤差 : 1.5分角 0.32 0.852 1.52 全体の反射像 〜 1.8分角 位置決め誤差を抑える! 焦点面 各点での反射像 反射鏡 位置決め誤差の原因 50μm 反射鏡個々の傾き が変化する 反射鏡のなす角 が変化する アラインメントバー 反射鏡の支持機構 に問題点!! 新しい反射鏡支持機構 195μm (反射鏡180μm) 上下段 一体型 反射鏡個々の ばたつきを抑える 反射鏡のなす角が 加工でのみ決まる アラインメントプレート 新しい望遠鏡の設計 プレートを 突き当てる 回転 精度良く(数μm程度) 加工された円柱 動径方向の位置 プレートの回転、動径方向の位置を 同時にかつ簡単に抑えることができる!! 反射鏡が歪む 位置決め誤差、形状誤差に影響 高さ [μm] 形状測定(0.1mmピッチ 20cm) 旋盤を用いて円柱を作る 突き当て 4分割する ±2μm 母線方向の位置 [mm] ◯Top側 ○Bottom側 切りかき 回転 内壁 動径方向 15μm以内 プレート番号 内壁 Top側 切りかき 223mm 回転 0.5分角以内 Bottom側 プレート番号 X線測定システム 平行度:15秒角 30 m スリット 4.75 m 望遠鏡 CCD X線 下流 上流 Quadrant X線 CCD X線イメージ 検出器Z [分角] 反射鏡3組でのQuadrantイメージ 半径 R 1.8分角 検出器Y [分角] 0.99±0.06分 黒:すざく搭載望遠鏡 (反射鏡175組) 赤:試作した望遠鏡 (反射鏡3組) 角 半径 R [分角] 約55%!! その原因は? 結像性能決定要因の分離方法 位置決め誤差=Quadrantの結像位置の周りの 反射鏡1組ごとの像のばらつき 形状誤差=反射鏡1組ごとの像の広がり 反射鏡1組ごと の結像位置 セクターごとの 結像位置 × × ×× ×× × × Quadrantの結像位置 セクターの結像位置 セクターごとの結像位置のばらつき 反射鏡1組ごとの結像位置のばらつき 反射鏡1組ごとのイメージのばらつき 度数 検出器Z [分角] セクターイメージのばらつき 0.36分角 0.47分角 結像位置 [分角] 検出器Y [分角] セクターイメージのばらつき 反射鏡1組ごとのイメージのばらつき 2乗和 位置決め誤差 (0.362+0.472)1/2 = 0.59±0.06分角 (すざく搭載 : 1.5分角) セクターイメージの ばらつき 反射鏡1組ごとの イメージのばらつき 約40%に! 反射鏡1組ごとのイメージの広がり 反射鏡 円錐近似による像の広がり (0.3分角) 形状誤差 焦点面 形状誤差 (0.742−0.32)1/2 = 反射鏡1組の 円錐近似による 像の広がり(HPD) 像の広がり 検出器Z [分角] X線 0.74分角 HPD 2乗和 検出器Y [分角] 反射鏡1組ごとの イメージの広がり(HPD) 0.68±0.06分角 約80%に! (すざく搭載 : 0.85分角) 反射鏡の遊びを抑える工夫 15μm 101.6mm 最大で アルミナイズド 1分角傾きが マイラ−(厚さ15μm) 変化する 15μmの遊び 焦点面 1分角 半径 R 光量 検出器Z [分角] 反射鏡3組のQuadrantイメージ 0.99±0.06分 角 検出器Y [分角] 1.05±0.06分 角 Quadrantの結像性能は ほぼ変わらず 半径R [分角] 目的であった 位置決め誤差は? セクターイメージのばらつき 度数 検出器Z [分角] 反射鏡1組ごとのイメージのばらつき 0.41分角 0.16分角 結像位置 [分角] 約30%に!! 反射鏡個々の ばたつきを 抑えた効果 位置決め誤差 (0.412+0.162)1/2 = 0.44±0.06分角 0.36分角 セクターイメージの ばらつき 検出器Y [分角] 度数 検出器Z [分角] 検出器Y [分角] 反射鏡1組ごとの イメージのばらつき 0.47分角 結像位置 [分角] 検出器Z [分角] 反射鏡1組ごとのイメージの広がり 1.1分角 HPD 形状誤差 (1.12-0.32)1/2 = 0.91±0.06分角 反射鏡1組の 円錐近似による 像の広がり(HPD) 像の広がり 検出器Y [分角] 検出器Z [分角] 位置決め工夫前 0.68±0.06分角 約125%に 0.74分角 HPD 検出器Y [分角] 位置決めの工夫により 反射鏡にストレスがかかり 形状が歪んでしまった まとめ ●新しい反射鏡支持機構 「アラインメントプレート」 ●プレートの調整が容易に 行なえる望遠鏡の設計 ●反射鏡個々のばたつきを 抑える工夫 結像性能0.99分角を達成!! 個々のばたつきは抑えられたが、 形状に悪影響を与えてしまった 0.99分角 0.68分角 1.8分角 マイラ−なし 0.59分角 形状誤差 : 0.85分角 1.05分角 位置決め誤差 : 1.5分角 0.91分角 マイラ−あり 0.44分角 今後の展望 さらに良い結像性能を目指すためには ●形状誤差の改善 0.5分角を切る結像性能の 反射鏡の製作 ●位置決め誤差の改善 形状を歪めずに反射鏡 個々のばたつきを抑える 物理的に形状の変化しにくい 反射鏡の製作 アルミより硬い金属 (ステンレス、Mg合金、etc) 現在より厚い反射鏡 アラインメントプレート 遊びを自由に変更できる 反射鏡 スライド 複数枚の反射鏡のばたつきを 一度に抑える 角度分解能 Chandra 1kgあたりの有効面積 0.5秒角 0.5cm2/kg 15秒角 4.3cm2/kg 1.8分角 22.7cm2/kg (直接研磨) XMM-Newton (電鋳法) すざく (レプリカ法)
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