臨床試験 -その理論と実際東京医科歯科大学医学部付属病院 臨床試験管理センター 針谷 正祥 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 今日の講義内容 I. II. III. IV. V. VI. Jan. 20, 2004 EBM 臨床試験とは? 臨床試験と治験の関係 新GCPって何? 臨床試験の科学性を維持するには? 臨床試験の倫理性を守るには? 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター Evidence-based Medicine (EBM) I. 広義のEBM: ある医学・保健上の問題を 解決するための情報を処理 する一手法。 II. 狭義のEBM :ある個人の問題に始まり、 その個人に対して医学・保 健上の意思決定をする一 手法。 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター EBMの5つのステップ I. II. III. IV. V. Jan. 20, 2004 患者の問題の定式化 問題についての情報収集 情報の批判的吟味 情報の患者への適応 I – IVのプロセスの評価 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター Evidenceの種類 I. II. III. IV. V. VI. VII. Jan. 20, 2004 Case report Case series Case control study Cohort study Randomized controlled trial (RCT) Double blind-RCT (DB-RCT) Meta-analysis 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター Evidenceはどこで作られるか? Evidenceは臨床試験 (clinical trial)で作られる Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験 臨床試験とは、評価を目的として、人を用いて、 意図的に開始される、科学的実験 ① 評価を目的:目前の患者の治療が目的で はなく、各種治療法の有効性・安全性評 価が目的である ② 人を用いる ③ 意図的に開始:明確な意図をもって開始 する「前向き」の試験である ④ 科学的実験:科学的な手法を用いる Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験と治験 治験とは、厚生労働省に医薬品の製造(輸入)承認 を申請するための資料を得ることを目的とした 臨床試験 を指す。 臨床試験 治験 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床開発試験における各相の役割 目的 デザイン 実施 解析 報告 試験の種類 治療的使用 検証的試験 探索的試験 臨床薬理試験 I II III IV 開発の相 時間 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床開発試験の各相 非臨床試験=動物での実験 第I相:健康人を対象として、主に安全性を見る 第II相:少数の患者を対象として、有効性・安全性 を見る。用量を決定する。 第III相:より多数の患者を対象として、有効性・安 全性を確認する。可能であれば二重盲検比 較試験を行う 新薬承認申請 Jan. 20, 2004 第IV相:実際の臨床における 情報収集を目的とする 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター GCP (Good Clinical Practice) 1. GCPは治験実施に関する遵守事項を取 り決めた省令である。省令GCP ・改正薬事 法ならびに、これらに関連する局長通知・ 課長通知を併せて新GCPと呼ぶ 2. 新GCPに準拠しない治験成績は医薬品 の承認申請資料として扱われない。 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 新GCPの基本理念 倫理性と科学性の確保が新GCPで最も 重視されている。 倫理性 I. 被験者の人権と安全性を確保する 科学性 II. Jan. 20, 2004 臨床試験方法の科学性 試験データの信頼性 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験の科学性を確保するには 臨床試験のデザイン I. 科学的評価に耐える試験デザインを採用する 客観的評価方法 II. 有効性を客観的に評価する方法を採用する =エンドポイントの設定 III. 試験データの正確性と信頼性の確保 バイアス(系統的エラー)とバリエーション(ラ ンダムなエラー)を減らす Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験のデザインを考える(1) 診断 I III 治療 II 治療開始時 の評価 Jan. 20, 2004 IV 治療中 の評価 I. 試験対象となる病気か どうか、診断する II. 治療開始時の病気の評 価をする III. 治療を開始する IV. 治療中および治療終了 時の病気評価をする V V. 治療の有効性・安全性 を評価する 治療終了時 の評価 前向き試験では、I –Vの 過程を計画した通りに実 行する 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 治療効果の判定に、 治療前後の比較を用いると? I. 病気の自然経過か治療の効果か? II. 治療以外の要素(食事・仕事・ストレスなど) の影響ではないか? III. その前の治療の影響ではないか? IV. その症例には効いたが他の症例ではどうか は分からない だから、 1. 治療をする群と、それ以外の群を比較 する必要がある 2. Randomizationが必要になる Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター ランダム化比較試験 (RCT) 母集団 無作為 抽出 標本 ランダム 割付 治療A 治療B 一般化の可能性 津谷喜一郎 EBMのための情報戦略より改変 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター ランダム化比較試験では 何と何を比べる? A群 B群 デザイン1 新しい治療 無治療 デザイン2 新しい治療 既存の治療 デザイン3 新しい治療 プラセボ デザイン4 新しい治療(高用量) 新しい治療(低用量) A群 デザイン5 Jan. 20, 2004 新しい治療 B群 C群 既存の治療 プラセボ 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 二重盲検ランダム化比較試験 (double blind-RCT) ランダム化比較試験のとき、医師にも患者にも どちらの治療法に割り付けられたか教えずに 行う試験方法 比較試験 比較試験 Jan. 20, 2004 ランダム化 比較試験 二重盲検 ランダム化 比較試験 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター バイアス (bias) 1. 2. 3. 4. 臨床試験におけるバイアスとは、試験結果に 影響をおよぼす各種の系統的な誤り(系統的 エラー)を示す。 選択バイアス 観察バイアス 解析バイアス 出版バイアス 正しい試験結果を得るためには、バイアスを 可能な限り小さくする必要がある。 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター プラセボ (placebo) 1. プラセボとは日本語で「偽薬」と訳される が、元来の定義は‘more to please than benefit’、すなわち「利益を与えるよりもむ しろ喜ばせるもの」。 2. プラセボにも副作用がある(ノセボ効果)。 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター プラセボが用いられる場合 標準的治療が存在しない場合 標準的治療法が無効あるいは有効であると の証明がなされていない場合 III. プラセボ効果が高い疾患を対象とする場合 IV. 軽度な疾患で、治療が受けられなくとも医学 的に重大な結果を生じない場合 V. プラセボを既存の治療に上乗せする場合 VI. 悪化時に試験薬を中止する試験計画の場合 I. II. Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター Evidenceの強さ I. II. III. IV. V. VI. VII. Jan. 20, 2004 Case report Case series Case control study Cohort study Randomized controlled trial (RCT) Double blind-RCT (DB-RCT) Meta-analysis 弱 強 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験の倫理(1) 集団的倫理 個別的倫理 目の前の 患者 将来の 患者 医師 倫理的ジレンマの発生 目の前の患者 を臨床試験に 組み入れる Jan. 20, 2004 リスクは目の前の患者が 負担。結果の利益は、将 来の患者が享受 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 臨床試験の倫理(2) 臨床試験が与えるbenefitとrisk benefit risk 目の前 の患者 (+)/- +/- 将来の 患者 + +/- 目の前の患者と将来の患者のbenefitとriskの 公平性をとることが重要 Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 被験者のriskを減らすには 臨床試験に関する正確な情報を参加者 に伝える I. 1. 2. 3. II. Jan. 20, 2004 インフォームドコンセント 試験中の継続的情報提供 治験参加意思変更の自由を保障 臨床試験計画の内容を審査する機関を 設置する 治験審査委員会・倫理 委員会での審議 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 被験者のbenefitを増やすには 医学的利益①:経験のある医師に十分な 診療・注意深い検査などが受けられる II. 医学的利益②:実薬の有効性がかなり明 確な場合には、臨床試験終了後に実薬に よる治療を受ける権利を与える III. 経済的利益:臨床試験中の医療費を試験 依頼者などが負担する IV. 治験による健康被害の補償を規定する I. Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 治験参加同意説明文書(1) I. II. III. IV. V. VI. VII. VIII. IX. X. Jan. 20, 2004 当該試験が研究を目的としたものであること 当該治験の目的 治験責任医師の氏名、職名、連絡先 治験の方法 予測される被験者への利益と不利益 他の治療方法 試験参加期間 試験への自由参加の保証 試験不参加・参加取りやめの場合にも不利益を受け ないこと 依頼者、治験審査委員会などによるカルテ・資料の 閲覧 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 治験参加同意説明文書(2) XI. 被験者の秘密厳守 XII. 健康被害発生時の実施医療機関連絡 先 XIII.健康被害発生時には必要な治療を受け られること XIV.健康被害時の補償 XV. 当該治験に関係する必要事項 省令GCP第51条より Jan. 20, 2004 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター 今日のポイント I. II. III. IV. V. VI. Jan. 20, 2004 EBM 臨床試験の定義 臨床試験と治験の関係 新GCP 臨床試験の科学性 臨床試験の倫理性 東京医科歯科大学 臨床試験管理センター
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