SBSE-TD-GC/MS法による農薬分析

SBSE-TD-GC/MS法による農薬分析
大阪府環境情報センター
○山内茂弘,服部幸和,上堀美知子,中戸靖子
目的
・薬品の使用削減による環境負荷の低減
(ISO14001取得)
・前処理操作が簡便であること
・微量農薬分析の精度向上
↓
SBSE-TD-GC/MS法による検討
SBSE法とは
・SBSE(Stir Bar Sorptive Extraction)
撹拌子吸着抽出
・PDMS(100%ポリジメチルシロキサン)をコー
ティングしている撹拌子を使用
・液-液抽出の理論を応用
撹拌子(ツイスター)
撹拌子
10μl シリンジ
10μl シリンジ
ガラス管
撹拌子投入
撹拌状態
取り出し
水分除去
TD(加熱脱着)-GC/MS
SBSE-TD-GC/MS法のフロー
試料水(バイアル瓶)
↓
内部標準添加
ツイスター投入
↓
撹拌
↓
加熱脱着装置付GC/MSによる測定
特徴(メリット)
・有機溶媒を使用しない
・SPME法に比べ吸着容量が大きい
・操作が簡便である
・回収率を予測できる
etc
SPME と SBSE
= K PDMS/w ~ K o/w
[ water ]
水-オクタノール間の分配
≒
水-PDMS間の分配
Recovery (%)
[ PDMS ]
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
SBSE
1
10
←水溶性
SPME
102 103
K(o/w)
104
105
脂溶性→
「2003年7月開催 横河アナリティカルシステムズ
食品安全性分析技術セミナー資料より抜粋」
SBSE と SPME の回収率の比較
Recovery (%)
農薬の logKo/w は > 2 が多い !
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Thiobencarb
SBSE
SPME
Thiobencarb
1
10
100
1000
K(o/w)
* 試料水溶液 : 10ml
10000
100000
「2003年7月開催 横河アナリティカルシステムズ
食品安全性分析技術セミナー資料より抜粋」
理論的回収率
農薬名
M etham idophos
Echlom ezol
A cephate
D EP (trichlorfon)
C hloroneb
P encycron
B ethrodine
C AT
propyzam ide
T P N (chlorothalonil)
D iazinon
M B P M C (terbucarb)
T olclofos-m ethyl
M ethalaxyl
D ithiopyr
M EP (fenitrothion)
C hlorpyrifos
P endim ethalin
C aptan
Isofenphos
M etyldym ron
B utam ifos
N apropam ide
Flutolanil
Isoprothiolane
Isoxathion
M epronil
pyributicarb
オ クタノー ル 分配係数
回収率(%)
(logK o/w )
-0.80
0.0
3.37
84.9
-0.85
0.0
0.51
0.8
3.44
87.0
4.82
99.4
3.73
92.8
2.18
26.6
3.43
86.6
3.05
72.9
3.81
93.9
5.28
99.8
4.56
98.9
1.65
9.7
4.75
99.3
3.30
82.7
4.96
99.5
5.18
99.7
2.80
60.2
4.12
96.9
3.02
71.5
4.62
99.0
3.36
84.6
3.70
92.3
2.88
64.5
3.73
92.8
3.66
91.6
5.18
99.7
オ クタノー ル 分配係数
回収率(%)
(logK o/w )
P yridaphenthion
3.20
79.2
Iprodione
3.00
70.6
B ensulide(S A P )
4.20
97.4
Ethofenprox
7.05
100.0
P ropiconazole
3.72
92.6
fosetyl
-3.92
0.0
T hiodicarb
1.70
10.7
A tazine
2.61
49.4
B enthiocarb(thiobencarb)
3.40
85.5
B P M C (fenobucarb)
2.78
59.1
C hloroneb
3.44
87.0
D D V P (dichlorvos)
1.47
6.6
EP N
4.78
99.3
Etylthiom ethone
4.02
96.2
IB P (iprobenfos)
3.34
84.0
M C P P (m ecoprop)
2.94
67.5
M efenacet
3.23
80.3
M ethy T hioacetohydroxam ate
1.12
3.1
M P P (fenthion)
4.09
96.7
N A C (carbaryl)
2.36
35.5
P A P (phenthoate)
3.69
92.2
S im etryne
2.80
60.2
T hiophanate-m ethyl
1.40
5.7
T riadim efon
2.77
58.6
naphthalene-d8
4.35
98.2
anthacene-d10
4.45
98.5
fluoranthene-d10
5.16
99.7
sam ple size 10m l
tw ister 10m m *0.5m m
農薬名
検討した農薬成分
ゴルフ場農薬暫定指針農薬のうち本センター
がGC/MSで測定してきた27成分について検
討した
エクロメゾール
ダイアジノン
ジチオピル
ペンディメタリン
フルトラニル
プロピコナゾール
ペンシクロン
ピリダフェンチオン
クロロネブ
TPN
MEP
イソフェンホス
イソプロチオラン
ピリブチカルブ
CAT
ベスロジン
プロピザミド
MBPMC
トルクロホスメチル
クロルピリホス イプロジオン
ナプロパミド
ブタミホス
イソキサチオン メプロニル
エトフェンプロックス
メタラキシル
キャプタン
検討内容
・撹拌時間の検討
・ジクロロメタン抽出法との比較(定量下限値)
・添加回収試験
・実試料水の測定
SBSE-TD-GC/MSによる撹拌時間の検討
レスポンス
A
B
C
D
E
F
G
H
im
m
15
n
mi
0
3
A:pyributicarb
E:pendimethalin
n
mi
0
6
n
mi
0
12
n
n
mi
mi
0
0
18
24
時間(m in)
n
mi
0
30
B:MBPMC
C:tolchlofos-metyl
F:napropamide G:dithiopyl
n
mi
0
36
D:propiconazol
H:chloroneb
撹拌時間
2時間
SBSE法とジクロロメタン抽出法のフロー
ジクロロメタン抽出-GC/MS法
試料水(500ml)採取
↓
ジクロロメタンによる抽出(2回)
↓
エマルジョン破壊(凍結)一昼夜
↓
脱水
↓
濃縮(最終1ml)
↓
内部標準添加後
GC/MSによる測定(40min)
SBSE-TD-GC/MS法
バイアル瓶に試料水
↓
(10ml)
内部標準添加
ツイスター投入
↓
撹拌(2h)
↓
加熱脱着装置付GC/
MSによる測定(1h)
TD-GC/MS測定条件
加熱脱着 280℃(5min) Splitless,50ml/min
カラム
HP-5MS 30m×0.25mmD, 0.25μm
昇温条件 50℃-2min-15℃/min-150℃-7℃/min-280℃-8min
使用機器
TD Gerstel社製 TDS2
GC Agilent社製 6890N
MS Agilent社製 5973MSD
定量下限値(MDL)の比較結果
n=6
試料水濃度0.2μg/l
ジクロロメタン抽出-
GC/MS法
エクロメゾール
0.39
クロロネブ
0.23
ベスロジン
0.12
プロピザミド
0.39
ダイアジノン
0.30
TPN
0.050
MBPMC
0.21
トルクロホスメチル
0.25
ジチオピル
0.13
MEP
0.31
クロルピリホス
0.30
イプロジオン
0.28
SBSE-TD
-GC/MS法
0.083
0.064
0.061
0.12
0.081
0.050
0.081
0.061
0.022
0.19
0.031
0.034
SBSE-TD
GC/MS法
-GC/MS法
ペンディメタリン
0.10
0.12
イソフェンホス
0.31
0.043
ナプロパミド
0.22
0.067
ブタミホス
0.15
0.11
フルトラニル
0.38
0.093
イソプロチオラン
0.27
0.091
イソキサチオン
0.17
0.029
メプロニル
0.24
0.10
プロピコナゾール
0.20
0.067
ピリブチカルブ
0.19
0.062
エトフェンプロックス
0.32
0.063
ジクロロメタン抽出-
(単位:μg/l)
SBSE-TD-GC/MS法によるTIC
試料水濃度0.2μg/l
ジクロロメタン抽出-GC/MS法によるTIC 試料水濃度0.2μg/l
添加回収試験
n=6
試料水濃度1.0μg/l
回収率(%) 変動係数
(%)
エクロメゾール
クロロネブ
ベスロジン
プロピザミド
ダイアジノン
TPN
MBPMC
トルクロホスメチル
ジチオピル
MEP
クロルピリホス
イプロジオン
回収率(%)
変動係数
(%)
104
94
101
115
104
82
110
102
112
124
107
106
0.48
4.2
4.3
4.8
3.4
2.6
2.4
1.8
3.4
5.3
2.3
2.8
ペンディメタリン
イソフェンホス
ナプロパミド
ブタミホス
フルトラニル
イソプロチオラン
イソキサチオン
メプロニル
プロピコナゾール
ピリブチカルブ
エトフェンプロックス
111
116
111
117
113
111
108
111
97
96
113
2.8
4.0
3.5
4.9
5.5
6.9
6.2
6.2
4.5
2.2
4.3
(単位:μg/l)
回収率 82~12
4%
変動係数 6.9%以下
検討結果
エクロメゾール クロロネブ
ダイアジノン
MBPMC
MEP
クロルピリホス
ナプロパミド
フルトラニル
メプロニル
プロピコナゾール
TPN
ペンディメタリン
ペンシクロン
CAT
ピリダフェンチオン
ベスロジン
トルクロホスメチル
イプロジオン
イソプロチオラン
ピリブチカルブ
ブタミホス
メタラキシル
青字:SBSE-TD-GC/MS法のほうが良い
緑字:ジクロロメタン抽出GC/MS法と同等
赤字:SBSE-TD-GC/MS法で検出されなかった
プロピザミド
ジチオピル
イソフェンホス
イソキサチオン
エトフェンプロックス
キャプタン
SBSE-TD-GC/MS法によるTIC
実試料水
ダイアジノン
ジクロロメタン抽出-GC/MS法によるTIC
ダイアジノン
実試料水
SBSE-TD-GC/MS法とジクロロメタン抽出-GC/MS法との相関
1.0E-02
y=0.8304x+2E-06
2
R =0.8024
ジクロロメタン抽出法
1.0E-03
1.0E-04
1.0E-05
1.0E-06
1.0E-07
1.0E-07
1.0E-06
1.0E-05
1.0E-04
SBSE法
1.0E-03
1.0E-02
単位:mg/l
まとめ
・クロマトの分離が良くなった
・有機溶媒を使用せず微量環境中農薬を高
感度で測定することができた
・有害物質を使用しないので環境負荷の低
減及び作業環境の向上につながった
・操作が簡便であり,作業効率が良くなった
今後の検討
・他の前処理法(固相抽出等)との比較
・回収率の低い農薬成分の抽出方法
・その他の様々な農薬成分