原告のための法律構成文書 事例 問題3k(5_8)において

原告のための法律構成文書
事例問題3k(5_8)において
慶應義塾大学法学部
2009/01/06
吉野一
事例3k(5_8)における係争問題
原告の依頼人としての法律構成文書作成
事例5_8の出来事に関連して、次のような出来事が起きている。
1. 4月15日にバーナード社(B)は農業法人コンバイン社(C)にアンザイ
社(A)のトラクター一台の1万2千ドルでの販売を電話で申し入れ、C
は承諾し、BC間にトラクター販売契約が成立した。
2. BはC社との関係上、A社にA社のトラクターを引き渡すことを要求し
た。
3. A社はトラクターを引き渡すことを拒んだ。
4. それで、B社はA社を相手取って訴訟を提起しA社のトラクターの引
き渡しを実現したいと思っている。
2. 2008年6月15日にバーナード(B)社の代理人してサイバー模擬法廷
に訴えを提起する場合を想定して、訴状の元となる法律構成文書を作
成せよ。
3. その際、ルールの論理構造に従って理由の論理構築を行う。
4. また、主張立証責任の分配を考慮して行う。
1.
2
論争の構造
<原告>
• 原告の目標文(請求の趣旨)
• 目標文を基礎づける主たる法
的根拠に関する主張・立証
(請求原因)
<被告>
• 被告の目標文(請求の趣旨に対す
る答弁)
•
被告の(原告の主張を否定する)
目標文を基礎づける主たる法的根
拠に関する主張・立証(認否;抗弁)
• 理由
– ルール
• 理由
– ルール
• ・・・
– 事実
• ・・・
– ルール事実への当てはめ
• ・・・
• ・・・
– 事実
• ・・・
– ルール事実への当てはめ
• ・・・
3
Case3k(5_8)における証明過程(証明体系)1
•
•
•
•
•
•
目標(請求趣旨):
s1: AはBにトラクターを引き渡さなければならないならない。
原因(請求原因)
AB間のトラクターの売買契約が成立した。
理由
ルール
– ・・・・・
• 事実
– ・・・・・
• ルール事実への当てはめ
– ・・・
4
論争
• 原告が請求趣旨、請求原因を提出する。
• 原告がその理由を提出する。
• 被告が答弁を提出する。
• そしてその理由を提出する。その理由では原
告の主張を反駁する主張を展開する。
• 原告は被告の主張を反駁する。以下同様。
• 主張立証は主張立証責任の分配の原理に滋
賀って行う。
5
ルールの構造と主張立証責任
分配の基本原則
• 結論を主張・立証しようとするものは、それを証明するた
めのルールの要件部が成り立つことを主張・立証しなけ
ればならない。
• 要件部が否定文の構造を有する場合は、結論を主張・
立証しようとするものは、否定文が成り立つことを主張・
立証する必要はない。
• その主張を反駁する相手方が、否定される文が示す事
態が成り立つことを主張・立証しなければならない。例
外規定の場合にもこれが当てはまる。
• 理由:ある事態が成り立たないことを証明することが難
しいからである。
• 法律効果←要件事実1 &
not(要件事実2)
– ○
– ×
○
○
6
ルールの構造と主張立証責任2
原則と例外
(1)効力発生要件
• 効力発生(X) ← □□(X).
(2)効力障害要件
• ¬効力発生(X) ← ▼▼(X).
(3) (1)と(2)を統合
• 効力発生(X) ←□□(X) & not(¬効力発生(X)).
• ¬効力発生(X) ← ▼▼(X)
(3) の短縮表現
• 効力発生(X) ←□□(X) & not(▼▼(X)).
7
ルールの構造と主張立証責任2
原則と例外⇒責任の分配
(1)効力発生要件
• 効力発生(X) ← □□(X).
(2)効力障害要件
• ¬効力発生(X) ← ▼▼(X).
(3) (1)と(2)を統合
• 効力発生(X) ←→□□(X) & not(¬効力発生(X)).
• ¬効力発生(X) ← ▼▼(X)
(3) の短縮表現
• 効力発生(X) ←→□□(X) & not(▼▼(X)).
8
事例3k(5-8)の事実
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
(手紙による)申込発信(t080401)
(手紙による)申込到達(t080408)
(手紙による)承諾発信(t080410)
(FAXによる)申込拒絶発信(t080411)
(FAXによる)申込拒絶到達(t080411)
(FAXによる)申込拒絶受領確認発信(t080412)
(FAXによる)申込拒絶受領確認到達t080412)
(FAXによる)承諾発信(t080416).
(FAXによる)承諾到達(t080416).
(手紙による)承諾到達(t080417i)
(FAXによる)価格変更提案発信(t080418)
(FAXによる)価格変更提案到達(t080418)
%資料1
%資料2
%資料2
%資料3
%資料3
%資料4
%資料4
%資料5
%資料5
%資料6
.%資料6
.%資料6
CASE3k(5_8)において
契約の成立を主張する原告の立証構造(理由)
1.
2.
3.
ルール
1. 契約成立(X) :- 申込効力発生(X1),承諾効力発生(X).
2. 申込効力発生(X):-申込到達(X),not(申込取りやめ効力発生(Y)).
3. 承諾効力発生(X) :- 承諾到達(X),not(承諾取りやめ効力発生(Y)),申
込効力消滅(Y).
事実
1. (手紙による)申込到達(t080408)
%資料2
2. (手紙による)承諾発信(t080410)
%資料2
3. 申込拒絶到達(t080411)
%資料3
4. (FAXによる)承諾発信(t080416).
%資料5
5. (FAXによる)承諾到達(t080416).
%資料5
ルールの事実への当てはめ(推論)
1. (1.2)&(2.1) ∴ 申込効力発生(t080408)
2. (1.3)&(2.5) ∴ 承諾効力発生(t080416)
3. (3.1)&(3.2) ∴ 契約成立(t080416)
法律構成文書の構造
• 目標(請求趣旨):
– AはBにトラクターを引き渡さなければならないならない。
• 原因(請求原因)
– AB間のトラクターの売買契約が4月16日に成立した。
• 理由
1. ルール
1. 契約成立(X) :- 申込効力発生(X1),承諾効力発生(X).
2. 申込効力発生(X):-申込到達(X),not(申込取りやめ効力発生(Y)).
3. 承諾効力発生(X) :- 承諾到達(X),not(承諾取りやめ効力発生(Y)),申
込効力消滅(Y).
2. 事実
1. (手紙による)申込到達(t080408)
%資料2
2. (FAXによる)承諾到達(t080416).
%資料5
3. ルールの事実への当てはめ(推論)
1. (1.2)&(2.1) ∴ 申込効力発生(t080408)
2. (1.3)&(2.2) ∴ 承諾効力発生(t080416)
3. (3.1)&(3.2) ∴ 契約成立(t080416)