人材マネジメント応用研究(第10講・第11講) 社員区分制度 ー人材ポートフォリオー 2009年1月24日 平野光俊 2008MBA 1 日経連が提唱した雇用ポートフォリオ • 個人の会社との関わり方に対する分類 • 1995年日経連提言(企業・従業員の雇用・勤続に対する関係) 従 業 員 側 の 考 え 方 短 期 勤 続 長 期 勤 続 雇用柔軟型 グループ 高度専門能力活用型 グループ 長期蓄積能力活用型 グループ 定着 移動 企業側の考え方 2008MBA 2 雇用・就業形態の多様化 雇用期間の定めのない ・正社員 事業所と直接雇用契約を 結んでいる 事業所と直接雇用契約を 結んでいないが事業所内 で働いている 雇用期間の定めのある 非正社員 ・パート ・契約社員 ・臨時労働者 ・嘱託社員 典型労働者 非典型労働者 外部人材 ・派遣社員 ・請負社員 2008MBA 3 人事の3つの柔軟性 企業内部の労働市場 機能的柔軟性 数量的柔軟性 財務的柔軟性 外部労働市場との連結 2008MBA 4 人事管理システムの構成 個別の管理分野 雇用管理 採 用 配 置 と 異 動 能 力 開 発 就 業 条 件 管 理 退 職 雇 用 調 整 人 (基本システム) 社員区分制度 事 評 報酬管理 賃 金 福 利 厚 生 昇 進 価 社員格付け制度 出所:今野・佐藤『人事管理入門』(2002)一部加筆 2008MBA 5 パートタイマーの戦力化(コスト視点) 人時コストの削減 付加価値(粗利益)(I) 人時生産性= 総労働時間(H) 労働分配率= 人時コ ス ト= 人件費(Pe) 付加価値(粗利益)(I) Pe I I × H 2008MBA 人件費(Pe) = 総労働時間(H) 6 小売業の事例 店長 食 品 課 長 主 任 担 担 当 当 者 者 主 任 衣 料 課 長 主 任 パ ー ト 化 第 2 段 階 ( 垂 直 的 代 替 化 ) 総 務 課 長 パート化第1段階(水平的代替化) 2008MBA 7 雇用システムの多元化(現状) 出所:厚生労働省「パートタイム労働研究会」 仕 事 の 難 易 度 フルタイム正社員と同じ フルタイム正社員 働きをするパート・非正規 (長期安定雇用を前提に、高い雇用保障、 厳しい残業・配転、年功的で高い賃金) 処遇差 (補助的・一時的な労働であるこ とを前提に低い雇用保障、緩や パート・非正規 かな残業・配転、フラットで低い 賃金) 2008MBA 8 雇用システムの多元化(新しいルールの方向) 出所:厚生労働省「パートタイム労働研究会」 賃 金 の 高 さ 雇 用 保 障 の 高 さ 残 業 ・ 配 転 の 厳 し さ (難易度の高い仕事に対応するべく、 拘束性の高い基幹社員 幅広いキャリアを重ねつつ能力を育 成) 仕 事 の 難 易 度 (ある程度スキルを要する仕事に従 中間形態の社員 事するが、拘束性の低い働き方) 臨時・一時社員 (補助的で代替可能な仕事 に従事) フルタイム パート ①雇用保障、残業・配転等の拘束性、賃金処遇の仕組みを多元化。労働者の選択肢を増し、企業の雇用柔 軟性を増す。 ②中間形態には、低拘束性を指向するフルタイム社員、パートのなかで基幹的業務を担う社員が位置づけら れる。 ③仕事の難易度、残業・配転の厳しさ等を含め、同じ仕事をしている社員の間では、フルタイムとパートとか かわらず、同じ賃金表を適用するなど処遇の仕組みを合わせる。 2008MBA 9 ④タイプの異なる社員の間でも、賃金等の処遇についてバランスをとる。 資源論的視点の戦略論(RBV:ResourceBasedView) コア・ケイパビリティ • フレームワーク ①価値 Valuable Resources 企業資源の異質性 企業資源の移転不可能性 (資源:企業が統制している あらゆる資源、能力、組織特性、 知識などを指す ) 出所: Barney J.B.(1991) Firm Resources and Sustained Competitive Advantage, Journal of Management,17-1,pp.99-120. ②希少性 Rare Resources ③不完全な模倣性 imperfectly imitable resources ・歴史的依存性 ・因果的曖昧性 ・社会的複雑性 持続的競争優位 Sustained Competitive Advantage ④代替可能性 substitutability 2008MBA 10 取引費用(Transaction Costs Economics) • 企業の境界 市場(スポット)か、企業(統合)か 統合の便益は取引属性に依存する ・取引の不確実性・複雑性 ・取引の生じる頻度 ・取引に必要な投資の特殊性 2008MBA 11 関係特殊投資 メーカー サプライヤー 契約の不完備性に基づく 機会主義的行動 ホールドアップ問題 取引効率悪化 サプライヤーの関係特殊投資の 過少投資 取引効率悪化 2008MBA 12 人事の基本戦略としてのMake or Buy Make Buy (長期内部育成) (プロジェクトごとの外部調達) 便益 ・企業独自能力の創出 →企業特殊技能の開発 (模倣困難性) →複雑な協働を可能にする (因果的あいまい性) ・機能的柔軟性の向上 費用 管理コストの発生 ・ホールドアップ問題 (採用、モニタリング、インセンティ (企業特殊技能獲得に対する ブ等のコスト、企業負担による教 過少投資) 育投資) ・企業独自能力の蓄積を阻害 ・頻繁な契約変更に関わる費用 2008MBA ・管理コストの節約 ・数量的柔軟性向上 ・財務的柔軟性向上 13 人材ポートフォリオ 個人ワーク チームワーク 正社員(Make) 企業特殊技能 基幹化非正規労働者 正社員の非典型 労働者への転換 汎用的なエキ スパート技能 もしくは ほとんど技能 を必要としない 基幹化非正規労働者 非正規労働者(Buy) 2008MBA 14 人材ポートフォリオ 低 高 労働関係分離不可能性(S) Make Make 基幹化非正社員 人 的 資 源 の 企 業 特 殊 性 (k) 低 高 k1 S0 正社員 K1 S1 Buy Make k0 S0 基幹化していない非正 社員および外部人材 k0 S1 基幹化非正社員 2008MBA 15 企業特殊技能の質問 1.職場での長年の経験に基づき業務を改善していく 技能 2.普段と違う異常が発生したとき、その問題を発見し 解決する能力 3.職場の他の人の仕事内容も理解して細々と調整を する技能 4.自部署のみならず関連する職場の人材、技術組織 を把握する技能 5.会社の文化の土台の上に成り立っている知識や技 術の理解 2008MBA 16 チームワークの質問 1.彼(女)の仕事は、同僚と絶えず相談しなければならない 2.彼(女)の仕事は、同僚と情報のすり合わせをしなければうま く行かないことが沢山ある 3.彼(女)の仕事は、同僚の仕事の進み具合に気を配らなくて はうまく進めていけない 4.彼(女)の仕事は、当初の計画よりも期中の臨機応変な対応 が奨励される 5.彼(女)の仕事は、他部署との細々とした調整を必要とする 6.彼(女)の仕事の範囲は、臨機応変に変化する 2008MBA 17 チームワークと企業特殊技能の人材ポートフォリオ 人材ポートフォリオ 数値は平均値(標準偏差) チームワー ク 正社員 4.4(.664) 3.6(.917) 契約社員 3.6(.980)** 3.3(1.01)** パート 3.1(.914)** 2.9(.976)** 派遣社員 2.9(.924)** 3.0(.904)** 請負社員 2.6(1.113)** 2.6(1.15)** ※正社員に対する平均の差のt検定 p**< .01 p*< .05 5 企業特殊技能 企業特殊技 能 4.5 正社員 契約社員 パート 派遣社員 請負社員 4 3.5 3 2.5 2 2 2.5 低い 2008MBA 3 労働関係の分離不可能性 チームワーク 3.5 4 高い 18 製品アーキテクチャの分類 モジュール間の相互依存度 クローズド (囲込み) オープン (業界標準) クローズド・モジュラー型 例:汎用コンピュータ 工作機械 レゴ(おもちゃ) クローズド・インテグラル型 例:自動車 オートバイ 軽薄短小型家電 企 業 を 超 え た 連 結 オープン・モジュラー型 例:パソコン パッケージソフト 自転車 インテグラル (擦合わせ) モジュラー (組合わせ) 2008MBA 出所:藤本(2004,2005)を参照に作成。 19 2008MBA 20 Lepak、D.P.and Snell,S.A.(1999) The Human Resourace Arachitecture:Toward a Theory of Human Capital Allocation and Development, Academi of Management Review,Vol24,No.1.31-48. 人材アーキテクチャー 高 人 的 資 源 の 企 業 特 殊 性 低 Quadrant4 顧客と間接的な業務に従事する人材 たとえば基礎研究分野の科学者 雇用様式 提携 alliance 雇用関係 パートナーシップ 人事施策 協働 企業特殊技能の学習を動機付けるインセンティブ Quadrant3 定常定型業務の人材 アウトソーシング 雇用様式 契約(請負)contracting 雇用関係 取引的契約 人事施策 コンプライアンス 低 Quadrant1 内部育成のコア人材 雇用様式 内部育成 internal development 雇用関係 組織志向の関係的契約 人事施策 コミットメントベース Quadrant2 戦略的に重要であるが市場調達が 容易な功利的人材 雇用様式 獲得 acquisition 雇用関係 共生 symbiotic 人事施策 市場主義ベース キャリアの市場競争力を高める機会の 提供によるインセンティブ 人的資源の価値(コアコンピタンスに対する価値) 2008MBA 高 21 人材ポートフォリオの動態的・個別的管理 相互依存性・補完性の高いマルチタスク L H 戦 略 的 に 重 要 な タ ス ク 企 業 特 殊 技 能 L 関係特殊技能 コア技術の専門人材 ・長期雇用保障(正社員) インセンティブ ・組織内相場の職能給+個別成果給 訓練投資 ・幅狭いOJT(functional career) ガバナンス ・ 長期の企業成長を目標とした 互恵的(組織-個人)コミットメント 定常定型業務人材、 汎用技術の専門人材 H プロジェクトマネジャー、経営人材 ・長期雇用保障(正社員) インセンティブ ・組織内相場の職能給+チーム成果給 訓練投資 ・幅広いOJT(cross functional career) ガバナンス ・ 長期の企業成長を目標とした 互恵的(組織-個人)コミットメント 汎用技術のコーディネータ人材 雇用様式 ・長期にわたる契約更改 雇用様式 (年俸制正社員、契約社員) ・スポット契約(派遣・請負、契約社員) インセンティブ インセンティブ ・市場相場の職務給+チーム成果給 新人 ・市場相場の職務給 訓練投資 正社員・非正社員 訓練投資 ・市場価値を高める仕事機会(キャリア) ガバナンス ・不要 ・ 短期の企業成長を目標とした ガバナンス 2008MBA 22 互恵的(組織-個人)コミットメント ・標準化(マニュアル)とモニタリング グループディスカッション(第11講) ①所属企業(組織)で非正規労働者を活用して いる職場の事例を紹介。 ②それが企業(職場)の業績向上や働く人々の モチベーションに対してうまく機能しているか, 2)もし機能していないのであればそれはなぜ か,3)そしてどのように修正すべきかを報告。 2008MBA 23
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