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OSSAJ 3周年フォーラム 2007
インターネット時代の
ソフトウェアとコンテンツにおける
社会的・法的問題
ビジネスモデルの視点から:
OSSからディジタルメディアまで
2007年2月9日
進藤美希
1
自己紹介-1/3
*青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科
博士課程DBAプログラム修了。博士(経営管理)
*現在、ソフトウェア会社勤務。
*NPO法人フリーソフトウェアイニシアティブ理事。
*青山学院大学大学院国際マネジメント研究科非常勤講師。
( 2005 ~2007年度、科目名:インターネットマーケティング)
*ビジネスモデルの設計、インターネット放送、
フリー/オープンソースソフトウェア等について研究している。
*論文に' Real-time Streaming Business Architecture:
Utilizing Existing ISPNetworks and its Application to Music Concert '
等。
2
自己紹介-2/3 FLOSSとのかかわり
●井田昌之先生の研究室で学ぶ
●FSIJの活動
2002年 設立メンバー、監事
2004年 理事
2006年 4月 Tokyo PyPy Sprint
5月 Google’s Summer of Code 2006 Mentoring Organization
7月 CodeFest秋葉原2006
11月 The 5th International GPLv3 Conference(秋葉原)
●出版
2006年 井田昌之、進藤美希
「オープンソースがなぜビジネスになるのか」
(毎日コミュニケーションズ)
3
自己紹介-3/3 コンテンツビジネスとのかかわり
1996年 SGIと共同でビデオオンデマンド実証実験を浦安で実施 。
(日本初の、広域ビデオオンデマンド実証実験)
1997年 朝日新聞社と共同で 記者会見映像のインターネット配信実験を実施。
1998年 SKY PerfecTV!と共同で テレビ番組のリアルタイム IP マルチキャスト配信実験。
(日本初の、インターネット上のテレビのリアルタイム同時配信実証実験)
2001年 日本テレビにてコンテンツ流通市場B-BAT立ち上げ。
エイベックス主催の浜崎あゆみのコンサートをインターネットを通じて
ライブ中継する商用サービスを実施 。
(日本初の、商用大規模分散型リアルタイムストリーミング)
デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー/第7回 AMD Award大賞/総務大臣賞受賞。
2002年 映像等配信著作権連絡会事務局長に就任、経団連において著作権を議論。
テレビ朝日と共同でカーグラフィックTVのインターネット配信実施 。
●インターネット放送を10年にわたって推進。
●その経験をベースに博士論文「インターネット上の放送型サービスの
統合設計と実現方式に関する実証研究」をまとめた。
4
目次
0.
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
問題提起
インターネット時代の製品とサービス
著作権とは
コンテンツと著作権
DRM
ソフトウェアと著作権
フリーソフトウェアと著作権、そしてDRM
DRMはビジネスに本当に有効か?
誰のためのDRM?
コンテンツホルダ/メディアと著作者の関係
さまざまな提案
5
提言
0.問題提起
次世代の産業の一角は、
知識、文化、経験価値をもとにしたビジネスが
占める可能性があるのではないか?
そのビジネスを展開するためには、
どのようにビジネスを推進していったらよいのか?
特に、インターネット時代に重要になると思われる
製品である、ディジタル著作物、すなわち、
コンテンツ、ソフトウェアのビジネスの展開において
発生する、法的・社会的課題について考察する。6
1.インターネット時代の製品とサービス
1.1分類
コンテンツ
ディジタル
著作物
情報財
無形財
ソフトウェア
プロフェッショナル知識/
コンサルティング
メッセージ
データベース
非情報財(電気など)
インフラストラクチャ/メディア
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、
内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
7
1.2情報財
●情報自体は売買の対象となるかたちをもたないので、情報は情報財
(=製品化された情報)の形にしてはじめて、経済的な価値に変えることができる。
●製品としての情報財の特徴
1.無形性
・形がなく、さわれない。
2.多義性
・万人に対して等しい使用価値をもつわけではなく、原価からの
価格設定が困難である。
3.所有権未移転:
・有形財は所有権移転の対象となるが、無形財では使用権の移転があるだけ。
4.媒体との関係
・媒体が変更されても、情報自体の持つ価値は変化しない。
・次々と新しい形態の媒体が生み出される。
5.複製
・複製が容易。多数の人による同時消費を妨げない。
・複製・公開・共有された場合、稀少性は減少するが、
内容や使用価値が高まる事がある。
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→こうした特徴が、さまざまな著作権上の課題を生み出している
(出展)福田豊、情報経済論、有斐閣、1997年、情報財の特徴、P.67-73
1.3ディジタル著作物
●ディジタル著作物
*情報財のなかで、著作権が発生し、かつ、作家性のあるもの。
*コンテンツ、ソフトウェアをさす。
*ディジタル化された音楽、映像、テキスト、ソフトウェアなどが含まれる。
●コンテンツとソフトウェア
*ともに人間の知的活動の成果であり、著作権が発生する。
その意味ではなんの変わりもない
●ソフトウェア
*そのものを鑑賞するのが目的で制作されるのではなく、何らかの目的達成のために制作
*ソフトウェアは公開して皆で改良することに意味がある
●コンテンツ
*そのものを鑑賞するのが目的で制作される
*コンテンツのクリエイタは自分の世界観を多くの人に伝えたいと願っている。
ゆえに、多くの人が、たとえばある楽曲について、
「この歌詞はこうしたほうがいいから変えよう」という風に変更することは望ましくない。
*しかし、創作したコンテンツ作品に容易にアクセスさせ、また合法的に対価をとって複製を
見せ、そのコンテンツ作品から影響を受けた/または翻案した/アレンジしたコンテンツや
9
パロディを他のクリエイタに作らせることには重要な意味がある。
2.著作権とは-1
*著作権とは、人間の知的な創作活動などから生産された
著作物に対する権利である。
特許とちがって、届出なくても、自動的に発生する権利。
*著作権に加えて著作隣接権という権利がある。
・著作権(著作者の権利。広義の著作権)
①著作者人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)
②著作権(著作物の使用を許諾したり禁止する権利。
財産権。狭義の著作権)
複製権、上映権、演奏権、上映権、公衆送信権
(放送権・有線放送権・自動公衆送信権・送信可能化権)など
・著作隣接権(著作物等の伝達者の権利):
実演家の権利、レコード製作者の権利、放送事業者の権利など
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2.著作権とは-2
●著作権法の目的:
(1)私権としての著作権者・著作権隣接権者の
権利の保護をはかる
(2)私権をある程度制限することにより、文化的所産の
公正な利用をはかる
(3)上記の2つの目的を調整しつつ、文化の発展に寄与する
したがって、著作権法は私権の保護を図ると共に
私権をある程度制限しなければならないという
本質的な課題をかかえている。
11
3.コンテンツと著作権
3.1コンテンツビジネスとは
●コンテンツビジネスとは、
人間の創作活動の成果である
「著作物(文章、映像、映画、ゲーム、マンガ、ソースコード、
楽曲等)」、すなわち作品を核に、
「コンテンツ(コミックス、ソフトウェア製品、音楽CD等)」、
すなわち製品をつくり、
その製品を著作権法上の権利をもとに、
様々な形態に変容させ、
様々なメディアを経由して、
利用者に提供するビジネスのことをいう。
12
3.2コンテンツビジネスモデル
・収益モデル:利用者課金
コンテンツ
コンテンツ
利用者
流通
事業者
対価
対価
コンテンツ
ホルダ
コンテンツ
対価
著作者
・収益モデル:広告
コンテンツ
コンテンツ
利用者
広告
流通
事業者
広告 対価
コンテンツ
対価
ホルダ
コンテンツ
対価
著作者
広告主
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、
内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
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3.3ドラえもんのケース
DVD
ア出
ニ版
メ、
、海
ア
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メ向
ビ
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館、版
、
劇
場
版
原
著
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作
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制
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ン
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画ク
シ
ョ
ン
上映権、
公衆送信権
に基づくビジネス
CM,
作
品
提
供
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託著
作
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小出
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館・
映
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ロ
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シの
ョ権
ン利
許
諾
窓
口
出版権に基づく
出版ビジネス
(小学館独占)
マンガ掲載
コミック誌掲載(小学館)
(学年誌、コロコロコミック等)
↓
コミックス発売(小学館)
↓
廉価軽装版、文庫版、
海外向版等出版(小学館)
→
→
→
→
地上波放送用作品
地上波放送(TV朝日)+CM
(テレビスポンサー約10社)
↓
セルDVD、ビデオ(小学館)
↓
レンタルビデオ
↓
海外向番組販売(約30カ国)
(TV朝日、ADK)
劇場公開用作品
劇場公開(小学館)
↓
衛星等有料テレビ放送
↓
セルDVD、ビデオ(小学館)
↓
レンタルビデオ
↓
地上波放送
↓
海外向販売(小学館)
→
→
→
→
→
→
→
メ
デ
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ア
、
流
通
チ
ャ
ネ
ル
等
日
本
の
利
用
者
・
海
外
の
利
用
者
→
→
→
→
→
商品化権に基づく
ライセンスビジネス
ライセンスビジネス
契約約60社
食品
玩具
サービス業等
イベント
海外向販売
→
→
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3.3 ドラえもんの売上
●ビジネス展開
*コミックスは短編45巻、長編17巻が出版されている。
*コミックスのほかにも学習関連本など、様々な書籍が発行されている。
*発行部数は2003年12月時点で、短編が約1億部、
長編や学習関連本等が約6000万部。
*最初のアニメは、1973年の4月から9月にかけて、日本テレビで放送。
その後1979年4月からは、テレビ朝日へと局を移して放送され、
現在まで放送を継続している。
*劇場公開用の映画もある
*ライセンス契約している企業は60数社。
●売上
*関連の売上規模の詳細は未発表。
*書籍で数百億円~1000億円程度と推測。
*ライセンス商品などをふくめて、合計で1000~2000億円程度の売上と推定。
(出典)横山泰之、ドラえもん学、PHP新書、2005年5月2日
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3.4コンテンツビジネスはビッグビジネスになり、
著作権を守ることが、
コンテンツホルダにはさらに重要に
●2004年の日本のコンテンツの市場規模は、
約11兆600億円(GDP比2.3%)
(映像系5兆749億円、音声系9,444億円、文字系5兆431億円)
●パソコン及び携帯電話等で流通する通信系コンテンツの
占める割合は、3%(2000年)から6%(2004年)へと増加。
パッケージソフトの市場規模は縮小傾向。
●市場全体にマルチユースが占める割合は、
14%(2000年)から20%(2004年)に増加
(出典)総務省H18年情報通信白書
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3.5クールジャパン
●2004年5月 新産業創造戦略
強い競争力を活かし世界で勝ち抜く先端的な新産業、社会に変化に対応した
市場ニーズに答える新産業及び地域再生をになう新産業の3本柱を設定し、
ダイナミックな産業構造転換を図る為の国家戦略。
●コンテンツは燃料電池、情報家電、ロボットとともに、先端的な新産業分野に位
置づけられている。
●その後2005年6月にリバイズざれた新産業創造戦略2005では、今後取り組むべ
き課題として、コンテンツ流通の共通基盤を整備し、ブロードバンドを活用したコン
テンツ流通を拡大するために、課金認証や著作権処理などのサービスを複合的に
提供する共通統合事業基盤を形成することをあげている。
●政府の新産業創造戦略では、2001年に11兆円であったコンテンツ産業の市場
規模を2010年には15兆円に、ディジタルコンテンツ国内市場は1.9兆円から6.3兆
円に、海外輸出・ライセンス規模は0.3兆円から1.54兆円へ拡大することを目標とし
ている。
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3.6なぜ日本のアニメーションが世界から歓迎されるのか
●米国
*米国を代表する制作会社:ディズニーの存在
*非常に高額な制作費
*その回収のために、全世界で配給して多くの年齢層の観客を取り込む必要
*ストーリーや題材も当たり障りがなく、どこからも苦情が来ないように工夫
*単純明快な勧善懲悪が中心
●日本
*ディズニーのような巨人が存在しない。多くの小さなスタジオが競って作品を作ってきた。
*作家性の高い作品がおびただしい数生まれた。
*キリスト教という背景が無いことから来る一種の自由さ
*国家意識の薄さから来る無国籍性
*子供中心の社会から来る子供らしい価値観
(作品が子供向けという意味ではない。むしろ日本のほうが大人も見る)
→これらが作品を面白いものにした。
(参考文献)
中野晴行、マンガ産業論、筑摩書房、2004年7月10日
夏目房之助、マンガ学への挑戦、NTT出版、2004年10月28日
竹熊健太郎、マンガ原稿料はなぜ安いのか?、イーストプレス、2004年2月29日
米沢嘉博監修、マンガと著作権、青林工藝社、2001年8月10日
18
Schodt, Frederik. L., Dreamland Japan: writings on modern manga, Stone Bridge Press, 1996. 樋口あやこ訳、ニッポンマンガ原論、マール社、1998年3月5日
日本マンガはどこへ行く、月刊創2005年6月号、創出版、2005年5月7日
3.7では、ソフトウェアは・・?
●2003年の日本のソフトウェアの市場規模は8兆8051億円
(出典)経済産業省 H15年特定サービス産業実態調査報告書
●しかし、その中身を見てみると、国内の企業顧客の要望に応じて
システム構築やソフトウェア開発を受託するシステムインテグレー
タのビジネスと、海外のプロプライエタリソフトウェア企業のパッ
ケージを日本語化して販売する代理店型のビジネスが多くを占め
ている。現在、日本が輸入するソフトウェアと輸出するソフトウェア
の比率は100:1に達しており、完全な輸入超過となっている。
(出典)http://pcweb.mycom.co.jp/news/2004/09/29/006.html
19
3.8 Winny
「ファイル共有ソフトウェア「Winny」を開発し、ゲームソフトや映画
コンテンツをネット上に無許可で送信させることを助けたとして、
Winnyの開発者が著作権法違反(公衆送信権の侵害)のほう助
罪を問われた、いわゆる「Winny裁判」の一審判決が2006年12月
13日、京都地裁であった。裁判長は元東大大学院助手 金子勇
被告に対して罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決をいい渡
した。金子氏は控訴する方針。 」
(出典)2006/12/13 http://www.atmarkit.co.jp/news/200612/13/winny.html
20
4.DRM:Digital Rights Management
4.1DRMとは
*ディジタル著作物の著作権やライセンス管理に関する考え方
と仕組みのこと。
*ディジタル著作物は,複製しても品質が劣化せず,オリジナルと同じク
オリティを保つので,著作者やコンテンツホルダ(レコード会社,映画会
社など)の利益を損なう不正コピーが出現する可能性がある。
*この課題を解決する為の仕組みがDRM。
*DRMの実現にあたっては,まず,利用者の私的コピーを何回まで許
すのかといったポリシーを定めてシステムを構築し,さらにコンテンツ
の暗号化,鍵配布,電子透かしの付与などを行う。
21
4.2背景として:
米国ディジタルミレニアム著作権法(DMCA)
●1998年10月に成立。
(1)著作物へのアクセスコントロールの保護。
ID,パスワードなどを入れないとアクセスできないようにアクセスコントロール
されている著作物に対して、そのアクセスコントロールを回避して不正に
アクセスする行為や、不正な回避装置(=ハードウエア)を設置することを
禁止している。
(2)著作物に施された、コピーコントロールの保護。
著作物の複製等の不正利用を禁止。コピーコントロールを回避する装置や
DVDなどについている複製禁止機能を無効にした無反応機器等を禁止。
ただし、免責行為として、フェアユースに該当する場合、非営利図書館、
リバースエンジニアリング、暗号化研究、セキュリティ検査、放送局による
一時的固定などがみとめられている。
(3)著作権管理情報の保護(情報の除去・改変の禁止)。
↓
著作権は非常に厳しいコントロール下に
22
4.3実際に採用されているDRM
DVD:CSS(Content Scrambling System)
ディジタル放送:B-CAS
(BS Conditional Access System)
Appleの携帯音楽プレイヤーiPod:FairPlay
など
23
5.ソフトウェアと著作権
ソフトウェアも人間の創作物であるので、著作者には著作権
が発生する。
よく、フリーソフトウェア運動では、この著作権をなくそうとして
いるのではないか?
という誤解をうけるが、そんなことはない。
24
6.フリーソフトウェアと著作権、そしてDRM
6.1フリーソフトウェアとは
●フリーソフトウェアとは、
米国のリチャード・ストールマン(Richard Matthew Stallman: RMS)
の提唱した,
実行,研究と改変,再配布,改変版の発表などの「自由」を守られた
ソフトウェアとその概念。
●フリーソフトウェアは,
(0) 目的を問わずプログラムを実行する自由
(1)プログラムがどのように動作しているか研究し必要に応じて修正を
加え取り入れる自由
(2)身近な人を助けられるようコピーを再頒布する自由
(3)プログラムを改良しコミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう
改良点を公衆に発表する自由
の、4つの自由を備えたソフトウェア。
25
6.2GNU GPL
●RMSとフリーソフトウェア財団はフリーソフトウェアの思想を示すライセンスと
してGNU GPL(GNU General Public License:GNU一般公衆利用許諾契約書)を
策定
●ふつうライセンスは読まずに同意するものとして認識されているだろうが、
GNU GPLは読むためのライセンス。
●GNU GPLは3つのパートから成る。
前文:フリーソフトウェア運動の精神
2部:フリーソフトウェアへの脅威にどう対抗するかを前提にした記述
3部:ソフトウェアを創作する著作者が、自分が書いたソフトウェアを
どうしたらフリーソフトウェアとして配布できるか
●これまでのGNU GPLが脅威として想定していたもの
プロプライエタリソフトウェア、ソフトウェア特許
●時代の変化に合わせ、
また、従来から指摘されていた課題を修正するために、
GNU GPLv2(1991年) の改訂作業を2006年から開始。
26
6.3GNU GPLv3の改訂プロセス
●改訂プロセス
*改訂プロセスには多くの人の参加が求められている
*フリーソフトウェア活動では実のところ国際協調はあまりなかった
*GNU GPLの更新を契機にもっと協力をすすめていく予定。
*GPLv3はFSFのためではなく、開発者、利用者のためにあるというスタンス
*GPLv3はRMSの委託を受けてSFLC:The Software Freedom Law Center
がドラフト起草
●2006年いっぱいをかけてコミュニティからの意見集約
2006年1月第1回会議ボストン
2006年4月第2回会議ブラジル
2006年6月第3回会議バルセロナ
2006年8月第4回会議バンガロール
2006年11月第5回会議東京・秋葉原
2007年3月ころGPLv3正式版発表予定
●日本では・・
日本ではあまり関心は高くない。
日本では消費者向けのコンテンツを扱う機器を作っているメーカが多々あり、
27
影響は大きいと思われるのだが・・
6.4GPLv3のポイント
●改訂における原則
1)4つの自由の原則をいかに使用許諾書として落としこむか
2)当事者にとっての便利さ、明快さ、読みやすさをめざしている
3)国際性の向上に配慮されている
4)反DRM条項が盛り込まれている(第3条)
↓
DRMは4つの自由に反する
DRM=Digital Rights Management ではなく
Digital Restrictions Management
28
6.5GPLv3 反DRM条項 の背景
(1)DMCA(米国ディジタルミレニアム著作権法)
(2)Trusted Computing
*セキュアな次世代コンピュータの開発を目的とした計画。
*MicrosoftやIBMなどが推進。
*市民権擁護団体はユーザに対する脅威だとして批判。
*第3者による認証なしにコンピュータを使ったりソフトウェアを
インストールしたりデータを使ったりすることはできなくなるため。
(3)TiVolization
*TiVoとはハードディスクに映像を録画する家庭用ビデオレコーダ。
*ユーザーの利便性を追及したサービスで高い支持を得ている。
*TiVoはLinuxベースのソフトウェアで動くので、GPLが適用される。
*しかし、TiVoのソースコードは、変更できても実行できない。
*ユーザの、変更後のソースコードを実行する権利の行使を制限。
「できることをできなくする技術は筋がわるい」ByRMS
29
6.6GPLv3 反DRM条項
3. No Denying Users' Rights through Technical Measures.
(前略) No permission is given for modes of conveying that deny
users that run covered works the full exercise of the legal rights
granted by this License. (後略)
八田真行氏訳
第3条 ユーザの権利を技術的手段によって否定してはならない
(前略)本許諾書によって認められた法的権利を最大限に行使す
ることを拒否するような伝達形態には、一切の許可を与えない。
(後略)
(出典)http://opentechpress.jp/opensource/article.pl?sid=06/09/26/0422219
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6.7反DRM条項は何を言っているのか?
DRMは4つの自由に反する。
DRMにはフリーソフトウェアをつかうな。
DRM機能の実装を禁じはしないが、ユーザーにそれを削除不能な方法
で押し付けることは禁じる。
DRMのメカニズムを組み込んだら、それ以降、GNU GPLv3で配布して
はいけない。
GNU GPLv3で、著作権管理をするソフトウェアをつくり、それを破った
人がいたとしても、逮捕されたりしないですむ。
31
6.8GPLv3への反響
リーナス・トーバルズ
「反DRM条項はCreative Commonsライセンスという文脈の中にある
方が、ソフトウェア・ライセンスの中にあるよりも、ずっと意味があると
私は考えるのです。人々が使いたくなるような価値ある有用なコンテ
ンツを作り、いかなるコンテンツ保護の仕組みも適用してはならない
と宣言することで、そのコンテンツを守るべきだと思います。」
「要するに、わたしたちが作ったのはソフトウェアなのだから、「わたし
たち」が関与できるのはソフトウェアについてだけだということです。
わたしたちのルールをハードウェアベンダーに押しつける道義的権
利はわたしたちにはない。わたしたちは、人々をして我らの絶対神に
跪かせようとする十字軍ではありません。」
「GPLv3に反対しているのではありません。GPLv3は「私にとっては」
不適切だと言っているのです。私がこのライセンスを選ぶことは決し
てありません。」
(出典)http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0602/07/news014.html
32
6.9GPLv3でDRMをあつかうことの是非
DRMへの対策は、ライセンスであつかうべきことではない
のかもしれない。
DRMに対抗するには、キャンペーンを打つというような方法
のほうが良いのかもしれない。
しかし、DRMについて深く考えるきっかけとして
GNU GPLv3は大変意味がある。
33
7.しかし、そもそも、DRMは、
ディジタル著作権ビジネスに本当に有用なのか?-1
●そもそもDRMがビジネス上有用かについての結論は出ていない。
●音楽CDは近年,売上が伸び悩んでいることもあり,パソコンでコピー
することを抑止するコピーコントロールCD(CCCD)が実用化されたが,
パソコン経由で音楽を再生する携帯プレイヤーの普及などもあって,
かえって売上の減少につながったのではないかという疑念が生まれ,
採用は減っている。
●CDの売上がのびなやんでいるのは必ずしもDRMだけのせいでは
なく、
*ネットワークを経由してダウンロードするユーザがふえた
*お金を携帯等の通信費にまわしている
*単に楽曲に問題がある
から、かもしれない。
34
7.しかし、そもそも、DRMは、
ディジタル著作権ビジネスに本当に有用なのか?-2
SONY BMGのケース
●2005年にDRM:XCP,MediaMaxを組込んだCDを1200万枚以上販売
●XCP、MediaMaxにはセキュリティリスクがある(rootkit《クラッカーが
遠隔地のコンピュータに不正に侵入した後に利用するソフトウェアをま
とめたパッケージ》に類似したソフトウェアがインストールされてしまう)
ことが判明
●同社がそのことを消費者に通知していなかったことなどが問題
として指摘され、米国各州で訴訟が行われた
●2006年12月、同社は、DRMを削除しようとしてコンピュータに
ダメージを受けた消費者に最高で175ドル、合計で425万ドルを
支払うことで米国の40州と和解
(出典)http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/12/22/14340.html 35
http://www.atmarkit.co.jp/fwin2k/insiderseye/20051109rootkit/rootkit_01.html
8.1誰のためのDRM?
DRMは基本的に著作者ではなく
コンテンツホルダの権利を守る為のもの。
コンテンツホルダとは?
●著作者が創作した著作物を製品化して、
市場に流通させる事業者。
●レコード会社、映画会社、テレビ局、出版社等。
●著作物の権利を押さえることはするが、
自ら創作はしないことに注意。
●創作は外部の著作者にほとんどの場合頼っている。
(まったくないわけではない。例えばテレビ局が自社で番組を制作することもあるが、
ほとんど協力会社が制作)
36
8.2メディアの特権-1
地上波・衛星放送局に与えられている著作権上の特権
●映像の著作権
*映像においては、一般的に、一つの作品に関して、製作者(コンテンツホルダ)、
脚本家、監督、俳優、市販用レコード製作者の権利者のような多数の権利者が存在するた
め、映像をディジタル化してインターネットで利用しようとしたとき、
権利処理は大変煩雑になる。
●既存の地上波・衛星放送局の特権
*既存の地上波・衛星放送局は、情報を公衆に伝達するという社会的役割を担っているため、
以下の特権を持っている。
・ブランケット契約(包括契約):
JASRAC管理楽曲については、番組のなかで使う場合、権利者の許諾は必要なく、
年間単位で相当の金額をまとめてJASRACに対して支払えばよい。
・一時的固定の制度:
放送の許諾があれば放送番組を著作者や著作隣接権者の許諾を得ることなく、
放送後6ヶ月は保存できる。
放送局は他者の著作物を自由に使う特権を自ら確保しているが
自分の著作物を自由に使われることはなかなか容認しない。 37
8.2メディアの特権-2
放送法が定義する「放送」
とは、公衆によって直接受信
されることを目的とする無線通信
の送信をいう。
(CATVは放送ではない)
*最も特権的
*電波法上の免許を与え
られている
(=参入規制に守られている)
無線
(電波)
著作権法
著作権法上、特権や優遇
措置が与えられている
「一斉放送(情報が常に受信者の
手元まで届いている) 」
「自動公衆送信(受信者がアクセスした
ときだけ情報が受信者の手元に送信される) 」
地上波デジタル放送の
IPマルチキャストによる
同時再送信放送サービス
(電気通信役務利用放送)を
行う場合には特権が与えられ
るようになった(2006年秋)が、
オリジナルコンテンツはあいか
わらずめんどうな処理が必要
既存の
放送事業者
地上波
衛星放送
ネット
ワーク
有線役務放送事業者
(ブロードバンド放送)
有線
(ケーブル、
光ファイバ、
ADSL等)
(copyleft) Miki
Shindo, 2007.
変更を加えず、
この表示を残す
限り、
内容のコピー及
び全ての媒体に
おける再配布を
許可します。
著作権法上、特権や優遇措置
が与えられていない
有線放送事業者
CATV
有線で
有線で
CATV方式 IPマルチキャスト
により配信 方式
(オプキャス、
により配信
eoTV)
許認可→
誰がNWを
用意するか→
放送上の許可が必要
(BBTV,
4thMedia,
ピカパー)
登録が必要
インターネット
上の映像配信
サービス
ビデオオンデマンド
リアルタイムストリーミング
(Gyao,Youtube)
官庁への手続きは必要なし
38
局が自前で用意する
電気通信事業者が提供するNWを使う
インターネットを使う
9.1コンテンツホルダ/メディアと著作者の関係
●文化産業全体の視点から見れば、著作者は、コンテンツホルダにとって、
無報酬ないしそれに近い形での研究開発(R&D)部門となっている。
●深刻な対立や緊張関係:
(例)著作者のアイディアや技術をコンテンツホルダ/メディアが無断で借用
●生産的な関係:
(例)コンテンツホルダ/メディアが芸術家やその予備軍に対して安定した
収入の途や雇用の機会を提供
●文化産業におけるビジネスの難しさ:
‘Kill not the goose that lays the golden eggs.’
・企業に長期的な視点があれば、著作者、コンテンツホルダ/メディアの
それぞれにとって良い結果になることが多い。
・文化産業において、コアの部分を成す創造的なプロセスには、クラフト的な
性格や非経済的な側面が必然的に含まれており、これを軽視して性急に
産業化やビジネス化を図ることは、ビジネスにとっても致命的。
●著作者はお金のためだけに創造しているのではない。
39
(出展)佐藤郁哉、ゲートキーパーとしての出版社と編集者、一橋ビジネスレビュー 2005年WIN.(53巻3号)pp.36-51、東洋経済新報社、2005年12月22日
9.2コミックマーケット
●コミックマーケットとは
*同人誌を販売するイベント。1975年以来、夏と冬に年2回開催(会期は2-3日)
*会場に用意されるブース数(参加サークル・作家数)は3万4000、来場者数は約40万人、
売上は約40億円。
*1冊1000円前後で1万部以上販売されている同人誌もある。
(出展)日本マンガはどこへ行く、月刊創2005年6月号、創出版、2005年5月7日
●ビジネス上の意味
*コミケはマンガ家が成長してゆく場でもある。
*高橋留美子、柴門ふみ、いしいひさいち、坂田靖子、高河ゆん、CLAMPらを輩出。
*出版社にとってコミケは新人マンガ家を発掘するための場。
●著作者にとっての同人誌の魅力
(1)自由に作品を刊行できる。新人のマンガ家が商業誌に作品を掲載できるようになるま
でには年月がかかるが、同人誌は(マンガ家個人でビジネスリスクを負担しなければならな
いものの)自由に刊行できる。
(2)表現への制約が少ない。マスコミのタブーに触れる内容でも描ける。商業誌で人気作
の連載が続いているマンガ家は、描きたいテーマがあっても描けなくなってしまうが同人誌
では描きたいものを描けるので、同人誌マンガ家と商業誌マンガ家を兼ねる者も多い。
(3)著作者自ら、川上(創作)から川下(製本、販売など)まで一貫してかかわれる。読者や
他のマンガ家との直接対話が可能になる。
↓
40
マンガ産業全体のクリエイティビティを保つために、同人誌とコミケは必要
9.3マンガの著作物創造のビジネスモデル
商品化権に基づく
ライセンスビジネス
(2次利用)
アニメ、ゲーム、玩具等
新たな創作を促す
読者からの
フィードバック
出版社
商業誌
4500社
新たな創作を促す 人材発掘、 作品、
他の著作者
育成支援 人材の供給
の作品からの
フィードバック
作品、
原稿料
人材の供給
流通
書店
16,000店
反応、
対価
創作活動
読者
商業誌マンガ家
約3,000人
新たな創作を促す
他の著作者
の作品からの
フィードバック
新たな創作を促す
読者からの
フィードバック
兼ねる
オープンな交流
移行
同人誌マンガ家のコミュニティ
約34,000人
コミケ
40万人参加
同人誌
反応、
対価
兼ねる
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
41
9.4比較してみる:オープンソースのビジネスモデル
新たな創作を促す
利用者からの
フィードバック
プロプライエタリ
ソフトウェア
企業
新たな創作を促す
他の著作者
の作品からの
フィードバック
SourceForge.jp
へ登録している
人数:約1万
5000人。この中
には利用するだ
けで開発はしな
いという人も含
まれているので、
実質的に開発
活動に従事して
いるハッカーは
5000人程度で
はないかと推定
オープンソース
ソフトウェア
企業
プロプライエタリ
ソフトウェア
流通
ライセンス代金
プロプライエタリ
ソフトウェア
企業社員である開発者
オープンソース
兼ねる 移行
オープンソース
ソフトウェア
企業社員である開発者
ソフトウェア
流通
配布・SI・サポート代金
利用者
人材発掘、 作品、 兼ねる 移行
育成支援 人材供給
創作活動
オープンな交流
フリーソフトウェアの
ハッカー 約5000人
コミュニティ
フリー
ソフトウェア
コミュニティ
のサイト等
改良、進化のための
アドバイスや議論
新たな創作を促す
利用者からの
フィードバック
新たな創作を促す
他の著作者
の作品からの
フィードバック
兼ねる
42
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、
内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
9.5ビジネスエコシステムという考え方
●ビジネスエコシステムとは、あるビジネスに関係するさまざまな主体
群集(業界、企業)とそれを取り巻く環境(技術、市場、制度)からなる
穏やかな体系のことをいう。
●コミケを核としたマンガのビジネスモデル、オープンソースのビジネ
スモデルはビジネスエコシステムと呼ぶことができる体系になっている。
●ビジネスを分析する視点は、普通、1つの業界や産業を分析単位と
して考えるが、ビジネスエコシステムでは、複数の業界を束ねて、穏や
かだがひとつの体系を構成するシステムとしてとらえようとする。
●ビジネスエコシステムという概念は、Moore(1993), Iansiti and
Levin(2004)らが提唱。
●著作者のクリエイティビティを最大限に発揮できるビジネスエコシス
テムを模索することが必要ではないか。
(出展)
武石彰、李京柱、日本と韓国のモバイル音楽ビジネス、一橋ビジネスレビュー 2005年WIN.(53巻3号)pp.70-87、
東洋経済新報社、2005年12月22日
43
James Moore (Senior Fellow, Harvard Low School), Predators and Prey, HBR 71(3) (1993)
Marco Iansiti (HBR) and Roy Levin, Strategy and Ecology, HBR 82(3) (2004)
9.6ロングテール
●コンテンツやソフトウェアのビジネスでは、
ひとつの商品だけに人気が集中するとは限らず,
多様な商品が、少しづつ売れる場合が少なくない.
●大規模なコンテンツホルダ、メディアが制作するコンテンツだけでは
顧客の満足は得られなくなっている。
多くの著作者が様々な創作活動を自由に展開することが望まれる。
●アマゾンのケース
*アマゾンが販売する230万品目のうち、販売数上位13万品目以下の
書籍の販売額を合計すると、売上全体の57%に達すると推計。
*ニッチな本は大きな値引きをしなくても販売できるので利幅が大きい。
(出展)http://www.fri.fujitsu.com/cyber/hotkey/longtail/longtail.html
44
では、著作者の自由な創作を促し、ビジネスと
しても成功させるにはどうしたらよいのか?
10. さまざまな提案
10.1ローレンス・レッシグ 「コモンズ」
●レッシグは『コモンズ』で、知的財産権を私的な財産権として把握する現在の
法の一般的な考え方と、その考え方から恩恵を受けている現在の市場の状態
が組み合わさり、社会の規範とアーキテクチャの両方が、さらには、財産権に守
られた企業からの作用により法自体が、ある特定の方向に向かって変更されて
いく危険について指摘している。
●ある特定の方向とは、イノベーション(生産要素の新結合)が何者かによってコ
ントロールされる状態だとしている。著作権と特許権の不適切な適用により、創
造性とイノベーションのプラットフォーム、つまりコモンズとしてのインターネット
の価値が破壊されようとしているという認識である。
●しかしレッシグも、すべてをフリーにする必要はなく、フリーと/コントロールの
バランスが必要であるといっている。
(出典)ローレンス・レッシグ、山形浩生訳「コモンズ」翔泳社、2002年11月
45
10.2クリエイティブコモンズ
●クリエイティブコモンズ とは、2001年、レッシグらが立ち上げたプロジェクト。
●日本においても2003年にクリエイティブ コモンズ ジャパンが設立。
●クリエイティブコモンズライセンスというライセンスを定義している。
著作権を全て留保する“All Rights Reserved”と、
パブリックドメインである“No Rights Reserved”の中間の
"Some Rights Reserved"が、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが規定する領域。
ライセンスは文書、動画、音楽、写真など多様な作品を前提としている。但しソフト
ウェアについては既にGPLなどが存在することから特に対象としていない。
●Creative Commons が提唱しているライセンスの4要素
1. 帰属表示(Attribution)
著作者は、他の人に対して著作物の複製・頒布・表示・上演を認めるが、著作者であることを明記することを求める。
2. 非商用利用(Non-commercial)
著作者は、他の人に対して著作物の複製・頒布・表示・上演を認めるが、非商用目的に限定。
3. 改変の禁止(No Derivative Works)
著作者は、他の人に対して著作物の複製・頒布・表示・上演を認めるが、そのままの形でなければならず、
派生作品は認めない。
4. 共有条件の継承(Share Alike)
著作者は、自分が選んだライセンスと同じライセンスの下でのみ、派生作品を頒布することを許可する。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://japan.internet.com/webtech/20040318/7.html
46
10.3超流通
●クリエイティブコモンズより以前に、日本から超流通の提案があった。
(残念ながら実用へはむすびつかなかったが)
●森亮一, 河原正治, 大瀧保広「超流通:知的財産権処理のための電子技術 」
情報処理学会誌、 1996年2月号.
●超流通とはディジタル情報の円滑な流通の実現によりこれまで困難とされてきた
「ソフトウェア」の量産を可能にするための基盤技術である。ディジタル情報を「所有
する」ことに対価を支払うのではなく「利用する」たびに使用記録が管理され、それを
回収することによって料金を徴収し、収入を再配分するシステムである。
●超流通は以下の性質を満たすものである。
低コストで大量かつ安全に供給できる。
情報提供者の利益は保証される。
情報利用者の犠牲は伴わない。
●超流通では、情報利用者はディジタル情報をほとんどまたは全く無料 (媒体、手
数料程度)で入手することができ、情報提供者が 指定した条件の下でいつでも利用
できる。 また、情報提供者はその情報の利用を許可する条件 (通常は料金の支払
い)を指定できる。 情報提供者が指定する以外の改変は防止される。
(出典)http://nenya.cis.ibaraki.ac.jp/sotsuron/H07/st92092/sotuken/ronbun/2_1.html
47
10.4 B-BAT
日本テレビ、NTT、コンテンツホルダ各社等によって設立された
ブロードバンド時代のコンテンツ流通マーケット
著作権者・
著作
隣接権者
著作権等
管理団体 権利
(その他の 処理
権利者)
コンテンツ
ホルダ
(1)
*本編
*サンプル
*予告編
*EPK
コンテンツ
配信事業者
B-BAT
(2)
ディジタル化
アーカイブ化
コンテンツ情報の
登録・管理
電子透かし挿入
暗号化、鍵管理 (3)暗号化した
コンテンツを転送
(6)
鍵空け要求
(タイトル・ロゴ
スチール・解説等)
*許諾条件
等をご提供
(7)鍵払い出し
(4)
暗号化
済の
コンテンツ
お客様
(エンドユーザ)
(5)
購入
申込み
(8)
コンテンツ配信
(10)鍵の利用数のカウント
(12)収入
(11)
利用数データ
利用数データ
(データは変更出来ません)
48
10.5 経団連における議論
テレビ番組などの複数の権利者がいる映像コンテンツが
流通するように、あらかじめ、料率を合意しておこう
という方向で議論
利用者の支払い金(場合によってはプラス広告料)=100%
コンテンツホルダ(たとえば全体の60%) 配信事業者(たとえば全体の40%)
著作者=8.95%~
文芸 音楽 レコード 実演
2.8% 1.35% 1.8% 3.0%
49
10.6新しい動き
YouTubeの共同創設者チャド・ハーレイ氏は、同社サイトにビデオを投稿した
ユーザーと広告収入を分け合うことを検討
(出典)http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0701/29/news011.html
CBSは2006年10月にYouTube上で「CBS Brand Channel」を開設。ニュース、
スポーツ、エンターテイメント番組の動画をYouTube上で合法的に無料配信。
(出典)http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0701/12/news041.html
50
11.提言
11.1提言-1
●ディジタル著作物の創作と流通を促進するには、過去の作品の
再利用と文化への貢献が可能な自由なアクセスを確保し、
適切な複製を行うことが大切になる。
●ソフトウェアの場合には、コンテンツのように、作品そのものを
楽しむというよりも、機能を提供するものであるので、
多くの人の参加を得れば、よりよい作品が作れるということもある。
●しかし、なにもルールがないと、現実問題として、著作者に公開を
ためらわせることになる。制作にお金のかかった作品は一切インター
ネットなどに提供されなくなり、かえって文化の停滞を招く。
●著作者が自分の作品へ多くのアクセスと広い流通を望むのであれ
ば、複製について実質議論すべきは、著作権の問題と利益確保の問
題である。
51
11.提言
11.1提言-2
●著作者の創作活動を促進し,ソフトウェアやコンテンツの著作者や
コンテンツホルダが適正な利益を得ることができ,かつ利用者の権利
も守れるようなDRMについて,ビジネス,技術両面からの検討を進め
る必要がある。
●著作者が、正当な報酬を得られ、また、再流通や違法複製が防
げれば複製することに問題はなくなるだろう。著作権処理について
のルールの明確化、著作権保護技術の整備が、現在精力的に進め
られているが、こうした課題が解決することで、作品は流通するよう
になる。
52
11.2ビジネスモデル設計のステップ
インターネットの特質=分散型、オープン
産業モデル
産業モデル
システムモデルと
個
別 ビジネスモデル
ビ
ジ
ネ
ス モデルの実現形:
の アーキテクチャ
領
域
モデルの
実現法
システム
モデル
システム
アーキテクチャ
やりとりを
行いつつ設計
ビジネス
モデル
やりとりを
行いつつ設計
ビジネス
アーキテクチャ
モデルを実装する
実装後のモデルの運用ルールを作って運用を行う
53
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
11.3 21世紀型社会への展望
企業
自律協調可能な
分散型ビジネスモデルの台頭
社会的な
変化
個人
個人と組織との関わりかたの多様化
個人/専門化した組織(企業など)/コミュニティをベース
としたオープン型の価値創造
知識、文化の
重要性拡大
21
世
紀
型
社
会
の
誕
生
分散型のメディア・
ネットワーク・技術の発展
54
(copyleft) Miki Shindo, 2007. 変更を加えず、この表示を残す限り、内容のコピー及び全ての媒体における再配布を許可します。
目次
「インターネット時代のソフトウェアとコンテンツにおける
社会的・法的問題
ビジネスモデルの視点から:OSSからディジタルメディアまで」
0.問題提起
1.インターネット時代の製品とサービス
2.著作権とは
3.コンテンツと著作権
4.DRM
5.ソフトウェアと著作権
6.フリーソフトウェアと著作権、そしてDRM
7.DRMはビジネスに本当に有効か?
8.誰のためのDRM?
9.コンテンツホルダ/メディアと著作者の関係
10.さまざまな提案
11.提言
ありがとうございました。こうした領域にご興味のある
かたは、ぜひご一緒に研究、活動しましょう。
55