データベース論 朝日大学大学院 経営学研究科 奥山 徹 [email protected] 2006/04/17 データベース論(1回目) 1 講義日程 • • • • • • • • • • • 4月17日 4月24日 5月01日 5月08日 5月15日 5月22日 5月29日 6月05日 6月12日 6月16日 6月26日 2006/04/17 ガイダンスおよび集合論の基礎 リレーショナルデータベースの基礎 データ操作言語 データベースの論理設計 SQL(データベース操作言語)の基礎 データベース管理システム データベースの内部スキーマ 質問処理とその最適化 トランザクション処理 分散データベース序説 定期試験 データベース論(1回目) 2 ガイダンス資料(1) • 内容 – データベース全般についてのお話 – 今日、特によく利用されているリレーショナル(関係) モデルとそのDBMS(データベース管理システム)つ いて詳述 – トランザクション処理やデータベースの内部構造に ついても解説 – 時間があれば分散データベースシステムについても 解説 • 評価 – 定期試験(50%)、レポートなど(50%)で総合評価 2006/04/17 データベース論(1回目) 3 ガイダンス資料(2) • 教科書 – 増永良文、「リレーショナルデータベース入門[改訂版]」、サイ エンス社 • 参考図書 – 増永良文、「リレーショナルデータベースの基礎」、オーム社 – 鶴保征城 監修、「未来ねっと技術シリーズ9、情報データベー ス技術」、電気通信協会 – 横田一正、宮崎収兄、「新データベース論」、共立出版 – 山本森樹、「体系的に学ぶデータベースの仕組み」、日経BPソ フトプレス – C.J.Date、「データベース実践講義」、オライリージャパン • 「データベース論」WEBページ(現在準備中) – http://www.dsl.gr.jp/~okuyama/lecture/2006/tut/ 2006/04/17 データベース論(1回目) 4 データの収集・蓄積・利用 データ 実世界 アクセプタ 編集 加工 蓄積 要求 処理 ユーザ データ要求 データの収集 2006/04/17 データ(フィードバッ ク) データの蓄積 データの利用 データベース論(1回目) 5 データと情報 「新データベース論」より • データ:人間または自動的手段によって 行われる通信、解釈、処理に適するよう に形式化された事実、概念または指令の 表現 • 情報:データを表現するために用いた約 束に基づいて、人間がデータに割り当て た意味 2006/04/17 データベース論(1回目) 6 集合の基礎 • 定義:集合とは要素の集まりである • 一般に集合の要素間には何の関係もな い • 集合に構造を持たせることで種々の応用 が可能となる – 代数構造 → 四則演算 – 順序構造 → 大小関係 – 位相構造 → 連続性 2006/04/17 データベース論(1回目) 7 代数構造 • 集合の任意の二つの要素間に演算(2項 演算)を導入すること • 2項演算→2つの要素を結合してもう1つ の要素を作る一定の規則 • 有限幾何、ブロックデザイン、直交表等の ようなバランスのとれた部分集合や配列が 出来る→効率の良い符号系やファイルを 作ることが可能 2006/04/17 データベース論(1回目) 8 順序構造 • 包含関係のような半順序が重要 • 束の概念から論理演算に結びつく • 順序の定義づけが可能→比較可能性の 説明ができる→「空間における順序」など の概念の基礎 2006/04/17 データベース論(1回目) 9 集合かどうか? • • • • • • • • 自然数全体の集まり→集合(無限集合) 0≦x≦1である実数全体の集まり→集合(無限集合) 10より小さい(正の)素数の集まり→集合(有限集合) x2+ y2 < 1 の不等式を満たす点(x,y)の全体の集合 →集合(無限集合) 実数の閉区間[0,1]で定義された連続な実数値関数全体 の集まり→集合(無限集合) p,q,rという3つの文字の集まり→集合(有限集合) p,q,rという3つの文字の順列全体の集まり→集合(有限 集合) 十分大きな自然数の集まり→集合ではない 2006/04/17 データベース論(1回目) 10 【演習問題1-1】 1) 十分大きな自然数の集まり→集合ではない なぜ集合と言えないか説明せよ 2) 次のものは集合と言えるか 2 2 1) 正の整数の集まり 2) 豊橋技術科学大学における知識情報工学4年生の 集まり 3) 国道259号線を田原方面へ向かう車の集まり 4) LAN上を流れるパケットの集まり 5) 一つの内角が60度以下の正多角形の集まり 6) パソコンに搭載されている全メインメモリの集まり 2006/04/17 データベース論(1回目) 11 集合と元 • 集合はA, B, C, …, X, Y, Z等と表記する • 集合Aに含まれる‘もの’を、Aの元(また は元素、要素)と呼ぶ • aが集合Aの元であるとき、a∈Aあるいは A∋aと表記する(元でない場合はa∈Aある いはA∋aとなる) • 無限に元が存在する集合を無限集合、有 限の元しかもたない集合を有限集合という 2006/04/17 データベース論(1回目) 12 集合の表記 • 外延的表記 {p, q, r} {1, 2, 3, …….} • 内包的表記 {x|xは有理数である} {y|yは0≦y≦1である実数である} {n|nは10より小さい正の素数} 2006/04/17 データベース論(1回目) 13 内包的記述についての考察 • 変数とその条件(性質) yは0≦y≦1の実数である • 変数yについての条件→C(y) • C=C(x)の時、あるaについて、C(a)が正 しいなら、aは条件Cを満たす(性質Cをも つ) • 条件Cを満たす全体→集合を形成 {x|C(x)} 2006/04/17 データベース論(1回目) 14 空集合(φ)とサイズ • C=C(x)の時、あるaについて、C(a)が正 しくなるのもが見つからない • 条件Cを満たす全体→集合を形成 {x|C(x)} 上記関係を満たす(何も元を持たない)集 合を空集合(φ)と呼ぶ • 集合に含まれる元の数→サイズ、|A| 2006/04/17 データベース論(1回目) 15 【演習問題1-2】 1) 集合{1,2,3}を内包的表記を用いて表せ 2) 次の集合を外延的表記で表せ(空集合 はφと書け) 1) {x|x∈Q, x3=2} (Qは有理数の集合) 2) {y|y ∈N, 1<y2<10} (Nは自然数の集合) 3) {z|z ∈Z, 0.1<2z<100} (Zは整数の集合) 2006/04/17 データベース論(1回目) 16 集合の相等 • すべての元が同じ集合 A=B <例> A:{x|xは2<x<10である素数} B:{y|yは1<y<8である奇数} • 外延的表記における注意 A={a,b,c,…}とB={a,b,c,…}基本的に同じ ものを指さなければならない→A=Bという 相等が崩れる 2006/04/17 データベース論(1回目) 17 集合の相等(2) • {x|C(x)}={y|C(y)} • 任意の元xに対して、x∈A⇔x∈Bとなる。 (⇔は(論理的に)同等) • 論理記号の補足 – p⇒q(pならばq):pが正しいときはqもまた正 しい – p⇔q(pはqと同等):p⇒qが正しく、かつq⇒p も正しいとき、またそのときに限り正しい 2006/04/17 データベース論(1回目) 18 部分集合 • 任意の元xにたいして、x∈A⇒x∈Bなる関 係が成り立つ時、AはBの部分集合である という A⊂BまたはB⊃A • A⊂BでA≠Bのとき、AはBの真部分集合で あるという(A⊂B、A ≠Bと記す、A⊆という 記述法もあるが、ここでは前者を採用す る) 2006/04/17 データベース論(1回目) 19 部分集合による相等と推移律 • A=Bであるための必要十分条件 A⊂B かつ A⊃B すなわち、A=B ⇔ A⊂BかつA⊃B • A⊂B 、B⊂C ⇔ A⊂C • φ⊂Aと約束する 2006/04/17 データベース論(1回目) 20 集合間の演算 • 2つの集合間の演算 – – – – – 2006/04/17 和集合 共通集合(積集合) 差集合 普遍集合と補集合 集合系とべき集合 データベース論(1回目) 21 集合演算(和集合) • Aの元とBの元を全部集めた集合 • 和集合 A∪B、∪→結び(join, cup) • A∪B={x|x∈Aまたはx∈B} <例> A={1,2,3,4,5}、B={3,5,7,9} A ∪B={1,2,3,4,5,7,9} Aを正の偶数全体の集合、Bを正の奇数全体の 集合 A ∪B=N 2006/04/17 データベース論(1回目) 22 集合演算(和集合)その2 (a1) A⊂A∪B、B⊂A∪B (a2) A⊂C、B⊂C、⇒A∪B⊂C (a2)の証明: A⊂B, B⊂Cとして、x∈A∪Bとする A ∪Bの定義によって, x∈Aまたはx∈B、x∈AならばA⊂B であるから、x∈C, x∈Bの場合も同様 ゆえにx∈C、すなわちx∈A ∪Bならばx∈C よって、A ∪B⊂C 2006/04/17 データベース論(1回目) 23 集合演算(和集合)その3 (a3) A∪A=A(ベキ等律) (a4) A∪B=B∪A(交換律) (a5) (A∪B)∪C=A∪(B∪C)(結合律) • (a5)の両辺はA∪B∪Cとも書く。一般に、n 個の集合、A1, A2, …, Anがあるとき、A1 ∪A2∪…∪Anあるいは∪ni=1Aiと記す 2006/04/17 データベース論(1回目) 24 集合演算(和集合)その4 (a6) A⊂B⇔A∪B=B (a7) A⊂B⇒A∪C⊂B∪C (a8) φ∪A=A 2006/04/17 データベース論(1回目) 25 集合演算(積集合、共通集合) • Aの元とBの元の共通部分を集めた集合 • 積集合 A∩B、∩→交わり(meet, cap) • A∩B={x|x∈Aかつx∈B} <例> A={1,2,3,4,5}、B={3,5,7,9} A∩B={3,5} Aを正の偶数全体の集合、Bを正の奇数全体の 集合 A∩B=φ 2006/04/17 データベース論(1回目) 26 集合演算(積集合、共通集合)2 (a1)’ A⊃A∩B、B⊃A∩B (a2)’ A⊃C、B⊃C、⇒A∩B⊃C (a3)’ A∩A=A(ベキ等律) (a4)’ A∩B=B∩A(交換律) (a5)’ (A∩B)∩C=A∩(B∩C)(結合律) • (a5)’の両辺はA∩B∩Cとも書く。一般に、n 個の集合、A1, A2, …, Anがあるとき、A1 ∩A2 ∩… ∩Anあるいは∩ni=1Aiと記す 2006/04/17 データベース論(1回目) 27 集合演算(積集合、共通集合)3 (a6)’ A⊂B⇔A∩B=A (a7)’ A⊂B⇒A∩C⊂B∩C (a8)’ φ∩A=φ • 分配律 (a9) (A∪B)∩C=(A∩C)∪(B∩C) (a9)’ (A∩B)∪C=(A∪C)∩(B∪C) • 吸収律 (aa) (A∪B)∩A=A (aa)’ (A∩B)∪A=A 2006/04/17 データベース論(1回目) 28 集合演算(直和) • AとBが互いに素であるとき • A∪Bは直和である <例> A={1,3,5,7,9}、B={2,4,6,8} A ∪B={1,2,3,4,5,6,7,8,9} 2006/04/17 データベース論(1回目) 29 集合演算(差集合) • • • • Aの元であってBの元ではないものの集合 差集合 A-B A∩B={x|x∈Aかつx∈B} A⊃Bである場合、A-BをAに対するBの補集合 という <例> 自然数の集合N、Bを正の奇数の整数全体の集 合 N-B:正の偶数の整数全体の集合 2006/04/17 データベース論(1回目) 30 普遍集合 • 現在の対象集合が、ある定まった集合の 部分集合である時、その集合を普遍集合 あるいは全体集合(universal set)とよぶ • 普遍集合Xが与えらているとき、集合A(X の部分集合)のXに対する補集合X-Aを 単にAの補集合と呼びAcで表す 2006/04/17 データベース論(1回目) 31 普遍集合 その2 X A Ac • x∈Xとすると、Ac={x|x∈A} • x∈A⇔x∈Ac 2006/04/17 データベース論(1回目) 32 普遍集合 その3 (ab) A ∪Ac=X, A ∩ Ac=φ (ac) Acc=A (ad) φc=X, Xc=φ (ae) A⊂B⇔Ac⊃Bc • de Morganの法則 (af) (A ∪ B)c=Ac ∩ Bc (af)’ (A ∩ B)c=Ac ∪ Bc 2006/04/17 データベース論(1回目) 33 集合系とベキ集合 • 集合を要素とする集合→集合系 • 集合Aのすべての部分集合を含むものをベキ集 合という • 部分集合の集合は情報処理の中では重要な役 割を演じることがある <例題>7人が麻雀を7回戦行う場合を考える。こ のさい、どの二人も2回ずつ顔を合わせるような 組み合わせを作れるか →BIBD(balanced incomplete block design) 2006/04/17 データベース論(1回目) 34 ベキ集合 • ベキ集合→2n個の元を持つ <例> X={0,1,2,3}→24=16個の元 Δ(X)={φ,{1},{2},{3},{0,1},{0,2}, {0,3},{1,2},{1,3},{2,3},{0,1,2}, {0,1,2},{0,1,3},{0,2,3},{1,2,3}, {0,1,2,3}} • ベキ集合の構成方法(次のスライド) 2006/04/17 データベース論(1回目) 35 ベキ集合構成の方法 0 01 012 12 1 23 φ 2 123 0123 30 230 02 3 13 2006/04/17 301 データベース論(1回目) 36 集合の直積 • 定義:A, Bを集合とするとき、Aの元aとB の元bの順序付けられた組(a,b)全体の作 る集合をAとBの直積と呼ぶ • 表記: A×B • 例: A={1,2}、B={p,q,r}とする A×B={(1,p), (1,q), (1,r), (2,p), (2,q), (2,r)} A×A={(1,1), (1,2), (2,1), (2,2)} 2006/04/17 データベース論(1回目) 37 順序付けられたの意味 • 順序付けられた組(a,b)→aとbをこの 順番に‘組み合わせた’ものである • aとbの順序が重要である • (a,b)と(b,a)はa=bのときに限り、同じ ‘順序付けられた組’となる 2006/04/17 データベース論(1回目) 38 直積の元の相等 • A×Bの元(a,b)と(a’,b’)があるとする • もちろん、a∈A、a’∈A、b∈B、b’∈Bで ある • (a,b)と(a’,b’)はa=a’、b=b’のとき、か つそのときに限って等しいものとする 2006/04/17 データベース論(1回目) 39 直積の幾何学的な表現 • A×Bの元(a,b)に対して、aを第一成分(第一座 標)、bを第二成分(第二座標)と呼ぶ • Aがm個の元、Bがn個の元からなる有限集合の 2 2 場合、A×Bはmn個の元を持つ有限集合となる • A×Bを表すのに図のような幾何学的な平面を 考えることが多い (a,b) a • R×Rの元(x,y)は A 平面上の点の集合 b 2006/04/17 データベース論(1回目) B 40 【演習問題1-3】 (1) 次の2つの集合の直積を示せ ・ A={a,b,c}, B={x,y,z} ・ A={1,2,3}, B=φ 2006/04/17 データベース論(1回目) 41 対応の定義 • A,Bを2つの集合とする • ある規則Γによって、Aの元aに対して、そ れぞれ1つずつのBの部分集合Γ(a)が定 められる – 注:a≠a’のときΓ(a)=Γ(a’)であってもよい – また、Γ(a)=φでもよい • 規則Γ:AからBへの対応 2006/04/17 データベース論(1回目) 42 対応の表記と相等 • A,Bは集合とし、Aの元aにたいするBの部分集 合Γ(a)をΓによるaの像と呼ぶ、A,Bを対応Γの 始集合、終集合と呼ぶ • 対応の表記 Γ:A→B • 対応の相等 – Γ、Γ’がいずれもAがらBへの対応とする – Aのいかなる元aにたいしても、Γ(a)=Γ’(a) – ΓとΓ’は等しい(相等)である 2006/04/17 データベース論(1回目) 43 写像 • AからBへの対応Γは、次の性質を持つとき、特 にAからBへの写像と呼ばれる Aの任意の元aに対して、Γ(a)はBのた だ1つの元から成る集合である • D(Γ)=A • f をAからBへの写像、Aの元aとすると f (a)={b} → f (a)=b bをf によるaの像と呼ぶ 2006/04/17 データベース論(1回目) 44 写像(2) • 写像 f :A→Bによるaの像がbである – aにおけるf の値はbである – f はaにbを対応させる – f はaはbを写す • <例> 実数xにx2+1に対応させれば、RからRへ の1つの写像が得られる f (x)=x2+1 2006/04/17 データベース論(1回目) 45 全射、単射、全単射 • • • 全射: f (A)=B 単射:f (a)=f (a’)⇒a=a’ 全単射:写像 f :A→Bが全射であると同 時に単射のとき 2006/04/17 データベース論(1回目) 46 全射 f :A→Bのとき、 定義域 D( f )=Aであるが、値域V( f )= f (A)がBであるとはいえない • f (A)=Bであるとき、写像 f は全射である • あるいは、f はAからBの上への写像 • 全射であるとき、Bのどの元bに対しても、 f –1(b)≠φである。すなわち、f (a)=bとなる Aの元aが存在する 2006/04/17 データベース論(1回目) 47 単射 f :A→Bのとき、 Aの任意の元a, a’に対して • a ≠a’⇒ f (a) ≠ f (a’) • f (a)=f (a’)⇒a=a’ が成り立つとき、AからBへの単射、または AからBへの1対1の写像である • f の値域V( f )の任意の元bに対して、 f –1(b)がいつもAのただ1つの元からなる 2006/04/17 データベース論(1回目) 48 全単射 f :A→Bが同時に 全射かつ単射であるとき、 f はAからBへの全単射である 2006/04/17 データベース論(1回目) 49 恒等写像 • • • • • Aを任意の集合、PをAの部分集合とする Pの各元aにAのa自身を対応させる PからAへの1つの写像 i が定まる 写像 i は明らかにPからAへの単射であ る →PからAへの標準的単射 特にP=Aの場合 →標準的単射は、Aの上の恒等写像IA 2006/04/17 データベース論(1回目) 50 逆写像 • • • 写像 f :A→Bを全単射 定理3-1により逆対応 f –1 :B→Aも写像 f –1 を f の逆写像という 2006/04/17 データベース論(1回目) 51 写像の合成 • • • A,B,Cを3つの集合とする AからBへの写像 f , BからCへの写像 g Aの任意の元aに対して – – • • aの f による像 f (a)が定まる f (a)の g による像 g ( f (a))が定まる Aの各元aに対して、1つずつCの元 g ( f (a))が定まる →aを g ( f (a))に対応させる写像ψ ψ:A→Cを f と g の合成写像または積と呼ぶ 2006/04/17 データベース論(1回目) 52 写像の合成(2) • • • ψ:A→Cを f と g の合成写像または積 表記法: g。f または gf すべてのa∈Aに対して (g 。 f )(a)=g ( f (a)) 2006/04/17 データベース論(1回目) 53 関係の概念 • 2個以上の変数を含む条件を考える – – – • x,yは有理数でx<yである; x,y,zは実数でx2+y2=2zである; p,lは平面π上の点および直線で、pはlの上 にある; これらは一般に変数間の関係と呼ばれ る • 関係に含まれる変数には変域、すなわち、 その変数に代入できるものの集合が定 2006/04/17まっている 54 データベース論(1回目) 関係の表記 • 関係をRで表す • Rがn変数、x1,x2,…,xnの関係で、各 変数の変域がX1,X2,…,Xnとするな らば、 R(x1,x2,…,xn) (xiの変域はXi) • R(x,y) (x,yは共に変域A)という2変 数の関係がよく考えられる 2006/04/17 データベース論(1回目) 55 2変数の関係 • • • • R(x,y) (x,yは共に変域A) これをAにおける単なる関係と呼び、xRy と表記する Rを集合Aにおける1つの関係とするとき、 aRbが成り立つようなAの元a,bの組(a,b) の全体は、A×Aの1つの部分集合を形 作る これを、関係Rのグラフと呼び、G(R)で表 す→G(R)={(a,b)|a∈A,b∈B, aRb} 2006/04/17 データベース論(1回目) 56 2変数の関係(2) • A×Aの任意の部分集合Gが与えら れたとき、G=G(R)となるような関係 Rを1つだけ定義することができる • すなわち、Aの元a,bに対して、 (a,b)∈Gのときまたそのときに限って aRbが成り立つRを定めればよい 2006/04/17 データベース論(1回目) 57 同値関係 • 集合Aにおける関係Rが次の(1)、(2)、(3) を満たすとき、RはAにおける同値関係で あるという (1) Aのすべての元aに対してaRa (2) Aの元a,bに対してaRb⇒bRa (3) Aの元a,b,cに対してaRb,bRc⇒aRc (1)は反射律、(2)は対称律、(3)は推 移律といい、これら3つを同値律と呼ぶ 2006/04/17 データベース論(1回目) 58 同値関係の例(1) • Aを任意の集合として、RをAの元の 間の相等関係=とするば、これはA における1つの同値関係である • a=bは明らかに同値律を満たしてい る • 最も原始的な同値関係 2006/04/17 データベース論(1回目) 59 同値関係の例(2) • 整数の集合Zと1つの定まった正の 整数nを考える • Zの元a,bは、a-bがnで割り切れると きに、nに関して合同であると言われ、 a≡b(mod n)またはa ≡b(n)と表記さ れる • この関係≡(mod n)はZにおける1つ の同値関係である 2006/04/17 データベース論(1回目) 60 同値関係の例(2)-2 • 任意のa∈Zに対し、a-a=0であるから、 0はnで割り切れるので、a≡a(mod n) である(反射律) • a,b∈Zに対して、a-bがnで割り切れ るなら、b-a=-(a-b)ももちろんnで割り 切れる。すなわち、a≡b(mod n)なら ばb≡a(mod n)である(対称律) 2006/04/17 データベース論(1回目) 61 【演習問題1-4】 • 同値関係の例(2)において、推移律 が成り立つことを示せ 2006/04/17 データベース論(1回目) 62 同値関係の例(3) • • • • f を集合Aから集合Bへの1つの写像とす る Aの元x,yに対して、それらの f による像 が一致する、すなわち f (x) = f (y) そのときに限り、xRyとして関係Rを定義 すれば、それは明らかにAにおける同値 関係となる これを写像 f に付随する同値関係と呼ぶ 2006/04/17 データベース論(1回目) 63 対等の概念 • • • • 集合AからBへの全単射が存在するとき、 BはAに対等(equipotent)である A~B(対等の表記) 定理4-1 (d1) A~A (d2) A~B⇒B~A (d3) A~B, B~C⇒A~C 空集合φは、ただそれ自身のみに対等 2006/04/17 データベース論(1回目) 64 有限集合と無限集合 • • • 有限集合 ある自然数nについて、{1,2,3,…,n}と対等 な集合及び空集合を有限集合と呼ぶ 無限集合 有限集合以外の集合を無限集合と呼ぶ 2つの有限集合が対等となるのは、同じ個 数の要素をもつときである 2006/04/17 データベース論(1回目) 65 対等の例 • N={1,2,3,…}, E={2,4,6,…}とする。f : N→Eをf(x)=2xとすると、f は全単射と なるので、NとEは対等である • f : (-1,1)→Rを f(x)=x/(1-|x|)と定義す ると, R上への1対1の関数を定義でき る。ゆえに、開区間(-1,1)は実数全体 Rと対等である。 2006/04/17 データベース論(1回目) 66 可付番集合と可算集合 • • • 自然数全体Nと対等な集合X:可付番集 合という Xは濃度(cardinality)として、X0(アフロゼ ロ)を持つ 可算集合:有限または可付番集合 2006/04/17 データベース論(1回目) 67 【演習問題1-5】 (1) 次のものは可付番集合かどうか示せ ・異なる項からなる無限数列 a1,a2,a3,… ・M={0,1,2,3,…}=N∪{0}とするとき、 M×M ・単位区間[0,1](ここで、[ ]なる表記は閉 区間であることを示す) 2006/04/17 データベース論(1回目) 68 連続体 • • • • 有限でも可付番でもない集合を非可付 番または非可算と呼ぶ 演習問題4-1の3番目の例は非可算であ る 区間[0,1]と対等な集合を、連続体濃度を 持つあるいは濃度 c を持つという すべての区間は濃度 c を持つ、すなわち Rと対等となる 2006/04/17 データベース論(1回目) 69 シュレーダー-ベルンシュタインの定理 • • • AがBのある部分集合と対等なとき、 A B と書く すなわち、A B⇔∃B*⊂B(A~B*) またA BであってA~B(すなわち、Aが Bと対等でない)とき、A Bと書く 2006/04/17 データベース論(1回目) 70 NとRの関係 • • • NはRの部分集合であるからN る Rは非可算 ゆえにN Rである 2006/04/17 データベース論(1回目) Rであ 71 S-Bの定理 A BかつB AならばA~B あるいは X⊃Y⊃X1かつX~X1ならばX~Y ↓ 任意のA,BについてA B, A~B, B のいずれかが成立する 2006/04/17 データベース論(1回目) A 72 濃度 • • • • • • A~Bのとき、AとBの基数あるいは濃度が同じ であるという card(A)で濃度を表す card(A)=card(B)⇔A~B card(A)<card(B)⇔A B card(B)<card(A)⇔B A S-Bの定理 card(A)≦card(B)かつcard(B)≦card(A)ならば A~B 2006/04/17 データベース論(1回目) 73 濃度(2) • • 集合φ、{φ}、{φ、{φ}}、{φ、{φ}、{φ、 {φ}}}…の濃度を,0,1,2,3,…であらわし、 有限濃度と呼ぶ 0<1<2<3<…<X0<c 2006/04/17 データベース論(1回目) 74 半順序集合 • A上の関係 が次の性質を持つとき、A 上の半順序あるいは順序と呼ぶ – – – • a a a Aと 2006/04/17 a bかつb bかつb aならばa=b cならばa c の組(A, )を半順序集合と呼ぶ データベース論(1回目) 75 【演習問題1-6】 (1) 集合の包含関係は集合族上の順序であ る。これを示せ。 (2) Aを実数の任意の集合とすると、A上の x≦yは順序である。これを示せ。(自然順 序) (3) X={a,b,c,d,e}とするとき、それらを頂点と する有向グラフは順序となる。これを示 せ。 2006/04/17 データベース論(1回目) 76 全順序集合 • 半順序集合が、さらに次の性質を持つと き、全順序集合あるいは線形順序集合と 呼ぶ – 2006/04/17 ∀x,y∈A(x yまたはy データベース論(1回目) x) 77 まとめ • • • • データベース論の導入として、集合の基 礎を駆け足で学習した データベースとは、まさに現実世界から 条件に合った部分集合を切り出したもの である 集合の概念は、データベースの基礎をな す 関係は集合の概念から導き出されたも のである 2006/04/17 データベース論(1回目) 78
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