ベトナム国タイニン省600ヘクタールに おける世界初のケナフ栽培と環境にやさしい パルプ製造工場の設置について 特定非営利活動法人 特定非営利活動法人 日本ケナフ開発機構 日本アセアン交流協議会 釜野 徳明 河内 進一 (2004年12月10日) 1 事業の目的 地球環境の保全は、私達が日常色々な角度から心掛け、次の世代へ引き継いで 行かねばなりません。 昨今の地球の温暖化をどのように防いだらいいのでしょうか。 環境植物のケナフを有効に使い、その力を最大限に引き出す事によって、地球の温 暖化を少しでも軽減できないものでしょうか。 (1)ベトナムにおけるケナフの栽培事業は、その一つの布石でありモデルにしたい。 (2)不毛なデルタ地帯を植物によって回復させる(不毛な土地の利用) (3)植林により森林を再生させる(生態系の回復) (4)有機農業と畜産の併用(生活の回復) (5)ベトナムの人々、農民や技術者の雇用を図る(産業の構築) (6)環境に優しい方法で、紙を提供する(生活の改善) 2 ケナフの栽培地 栽培地 Tay Ninh 3 ベトナム国タイニン省600ヘクタール のケナフ栽培地 4 ケナフ・ユートピア構想 ~環境に配慮した街づくり~ 5 事業の実施内容 【住 所】Ap Phuoc Xa Long Phuoc, Ben Cau,Tay Ninh(ベトナム国タイニン省) 【名 称】SANKYO Farm (800ヘクタール)(カンボジアに近いデルタ地帯) 【事業主】大成通商株式会社 代表取締役社長 富田信一氏 【運営の主体】SANKYO Co.Ltd, President ITO TAIKEN(伊藤氏) 【機械・設備のコーディネーター】 ㈱ユニック 代表取締役社長 長谷川賢一氏 【主要機器】 ニュータイゼン㈱大善より 代表取締役社長 井出哲夫氏 その他の機器・・・・大型産業用遠心脱水機、破砕機、刈取機など 【コーディネーター及びアドバイザー】NPO法人 日本アセアン交流協議会 専務理事 河内進一氏 【全体のアドバイスと栽培指導など】NPO法人 日本ケナフ開発機構 理事長 釜野徳明 【事業経費】 現在までで約2億円。 (機械関係が1億円強) 【パルプ生産量】 年間5000t予定 (再生紙だと1回に50t生産の能力あり) 6 事業の流れ ■調査(土地・気候) → 予備栽培 → 本栽培 <雨期4月から10月> <2~3年> <本年春より> ベトナム国タイニン省のカンボジアに近いデルタ地帯の土地600ヘクタール 環境植物ケナフ(Hibisucus cannubinus L )と近縁種のローゼル(H,sabdariffa L) を栽培。 ■ケナフパルプ他機器の設定と工場プラン。 ■栽培と平行してパルプ製造工場の設置を開始。建物は完成し主要な機器の設置。 ■デルタ地帯の環境整備を始め、畑の潅漑整備・道路と橋の設置。 ■農民・工場で働く人々のための宿舎や食堂や運動施設などの建設。 ■植林による森林の回復、及び有機農業のための肥料作り。 水の確保:現在3本の井戸を掘り、1日1600立米の水を確保。 従業員 :現在約60名、事業の進展に伴い増強させる予定。 用地(畑):800ヘクタールの用地の内、道路・水路を取った後、600ヘク タールを畑とした。畑は39区に分け、栽培は区分に従って行った。 道はおよそ幅10~15メートル、水路は深さ1~2メートル。 7 ケナフの栽培 ■ ケナフの種は、アメリカ産EG41 20kgとローゼル10kgを、日本ケ ナフ開発機構より提供。他、約500kgをベトナム政府関係より供 与を受けた。 ■ 今年は例年と異なり雨期の初めに雨が降らず、最初の芽出しは悪 く 生育もよくなかったので、そのまま畑に鋤き込んだ。 ■ 生育が良くなっても草丈にばらつきがあり、土壌の栄養と水の供給 に問題があるものと思われる。今後の課題である。 10月まで雨期なので、今種取りを行い収穫を考えている。 8 ケナフの栽培風景(1) 9 ケナフの栽培風景(2) 10 パルプ工場の建設風景(1) 工場の一部 宿 舎 11 パルプ工場の建設風景(2) 工 場 工場(外 観) 12 ケナフのパルプ化 ■ パルプ製造機は、従来の木材パルプ製造に見られる地球釜や、シリンダー の化学薬品使用型のものを避け、環境を配慮したほとんど薬品を使わな い、特に低コストの機械を採用。 ■ 採用した機械は、ニュータイゼン(Gimmick)であり、ケナフで3回、その能 力を確かめている。最終的にベトナムで栽培したケナフ(全茎)を使ってパル プ化と紙製造を試験的にテストし、3%の水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の 使用だけで満足すべき結果を得た。 ■ パルプの乾燥機の使用を止め、大型産業遠心脱水機による脱水を行い、 水分50%以下にまで落とす事に成功。 ■ 工程の中で水を循環的に使用し、無駄を省き、廃液は三段式水槽へ入れ、 段階的に処理。 13 ケナフのパルプ化機械 E. Gimmick 14 ケナフのE.Gimmickシステムによる パルプ化テスト(1) ・テスト日:平成16年4月7日 ・テストフロー 清水 原料 清水 NaOH原液 粗砕機 マッシャー Gimmick パルパー 離解 洗浄濃縮 バーレー ビーター フラット スクリーン (3段) E.Gimmickシステムフロー 10cut 15 ケナフのE.Gimmickシステムによる パルプ化テスト(2) ■テスト結果 (1)原料処理量 風乾30kg 水分 14.6% (2)マッシャー処理 稀釈洗浄水(清水)2.4L/min、 処理時間1時間30分 マッシャー出口濃度 54.0% マッシャー出口圧力、負荷、出口温度 ステージ 出口圧力 負荷 出口温度 NO1ステージ 0.5~1.5kg/cm2 60~80A 88~98℃ 16 ケナフのE.Gimmickシステムによる パルプ化テスト(3) (3)Gimmick処理 処理前に濃度調整を行う(稀釈は清水を使用) Gimmick入口濃度30.0% Gimmickフィード量3.5kg(Wet)/min 1.04kgBD/min NaOH(原液)添加率3.0%、添加量72cc/min 2stage で添加する。 Gimmick出口濃度26.3% Gimmick出口圧力、負荷、出口温度 各ステージ 出口圧力 負荷 出口温度 NO1ステージ 1.5~2.0kg/cm2 26~30A 64~76℃ NO2ステージ 1.5~2.0kg/cm2 26~30A 74~88℃ NO3ステージ 1.0~2.0kg/cm2 24~26A 92~98℃ 17 ケナフのE.Gimmickシステムによる パルプ化テスト(4) (4)パルパー処理(離解洗浄) ・稀釈水30Lに4.0kg(Wet)を投入し溶解する。溶解パルプ濃度3.5% (5)フラットスクリーン処理 ・10cutのフラットスクリーンを使用する。 (6)叩解処理 ・叩解機はバーレービーターを使用する。 バーレービーター処理濃度3.1%、未叩解Fr=610cc、叩解Fr=390cc 18 ケナフのE.Gimmickシステムによる パルプ化テスト(5) (7)各工程廃液測定 1、PH、SS、 COD、BOD等 の測定値 測定項目 単位 マッシャー廃液 Gimmik処理後、パル プ PH ー 6.1(21℃) 10.5(21℃) SS Mg/L 523 ー COD Mg/L 3440 520 BOD Mg/L 1740 768 備考 2、パルプの排水負荷量 試料名 パルプのCOD 負荷量(g/kg) ケナフGmmick出口 パルプのBOD 負荷量(g/kg) 52.0 パルプ濃度(%) 26.3 (8)パルプの物性・紙質試験 測定項目 単位 テスト(4/7) 備考 未叩解 叩解 Brigtness by hunter % 32.3 33.4 *段ボール古紙 Freeness ml 610 390 比破裂強度 Tear Index mN・m2/g 5.3 5.8 Kpa ・m2/g Burst Index KPa・m2/g 1.3 2.4 1.5~2.5 Km 1.7 3.2 Breaking Length 19 ベトナム・ケナフパルプの 顕微鏡写真 パルプ化状態を光学顕微鏡で観察すると、一部に結束繊維が見られるが、 NaOH 3.0%添加で充分に単繊維化が進んでいることがわかった (顕微鏡写真参照)。 Gimmick等の操業条件を検討することにより、さらに良い改善が得られると思われる。 パルプ物性の比破裂強さ(Kpa・m2/g)は段ボール古紙(1.5~2.5)と同等の 強度であった。 ケナフ紙 ×50 ケナフパルプ叩解 20 スタッフ Mr. Kawauchi(left) Mr. Ito(right) Mr. Tomita 21 今後の課題 ■主要機器以外の装置の搬入・設置が遅れているので、工事完了は12月中旬 と考えている。試運転はそれ以後となる。ケナフ栽培が、広大な土地とその 年その年の天候に左右されるので、水の確保と土壌の改良を考える必要が ある。 ■雇用した従業員の生活改善、並びに設置した大型機械の、無駄の無い利用 も考えておく必要がある。 ■多様・多角な事業の実現(“地域のユートピア構想”の実現)を目指しての取 り組みの構築。 ニュース ■産業廃棄物としてのサトウキビ残渣(バガス)の入手が可能になったとのこと (バガスパルプの製造)。 22 ケナフ・ユートピア構想 ~環境に配慮した街づくり~ 23
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