2015年4月13日 「金融論A」 第1回 金融とは何か 麗澤大学 経済学部 教授 中島 真志 ©2015 Masashi Nakajima 1 自己紹介 中島真志(なかじま まさし) 日本銀行出身 – 日本の中央銀行 国際決済銀行(BIS)の経験も – 国際機関(中央銀行の中央銀行) ©2015 Masashi Nakajima 2 日本銀行とは ・日本の中央銀行 ・お札(日銀券)の発行元 ・金融政策を行う ・20年以上にわたって、 日銀マンとして勤務した -調査統計局、金融研究所、国際局、金融機構局など ©2015 Masashi Nakajima 3 国際決済銀行(BIS)とは ・「中央銀行の中央銀行」 ・世界最古の国際金融機関 -IMFや世界銀行より歴史あり ・スイスのバーゼルにある ・世界55ヵ国の中央銀行が加盟 ・中央銀行間の協力を促進 ©2015 Masashi Nakajima 4 ・BIS時代 ・個室 ©2015 Masashi Nakajima 5 何故、バーゼルに? (1) ©2015 Masashi Nakajima 6 何故、バーゼルに? (2) ©2015 Masashi Nakajima 7 鉄道交通の要所であった ・BISができたのは、1930年 → 当時は、鉄道交通が中心 ・バーゼルには3つの駅 あり -スイス国鉄、ドイツ国鉄、 フランス国鉄 ・バーゼルは、国境の街 -ドイツに:安いもの -フランスに:おいしいもの ・通貨とパスポートは必携 ©2015 Masashi Nakajima 8 主な著書 『金融読本』 ・ 金融論のスタンダード・テキスト ・ 日本で最も多くの大学で採用 『すべてシリーズ』 3部作 ・決済関係者の必読書とされる ©2015 Masashi Nakajima 9 中島のウェブサイト http://nakajipark.com ©2015 Masashi Nakajima 10 レジュメ 毎回、レジュメを配布する – 授業の流れを知るため 板書は、ノートに書くこと – レジュメへの書き込みは不可 (途中で破たんする:書ききれない) ファイリング:「クリアファイル」がお薦め – 100円ショップにあり:「情報の整理法」は大事 レジュメ:ウェブサイトにアップしておく – もし、休んでしまった場合(でも、項目しか分からない) ©2015 Masashi Nakajima 11 注意事項 1.遅刻をしないこと! – バラバラと入ってくると、他の人の迷惑になる 2.私語は厳禁! – 周囲の迷惑、よく見える!、気が散る 座席指定を行う。 – 授業の静粛維持のため – あとで、出席票を配る ©2015 Masashi Nakajima 12 教科書 『金融読本(第29版)』(島村高嘉・中島真志著) -旧版は不可 ・最も多くの大学で、金融論のテキスト として採用。 -累計42万部のロングセラー ・教科書売り場で早めに購入のこと! -テストでも持ち込み可。 ©2015 Masashi Nakajima 13 講義内容 ・金融について、分かりやすく講義する ①理論面+実践的な観点 ②中央銀行の見方・考え方 ③最新の動向 ・人気授業の1つ – 「みんなのキャンパス」 » 500以上の授業の中で、ベスト5に入る ・基礎専門のA群科目 ©2015 Masashi Nakajima 14 日経の記事 ・金融の関連記事を持っ てきて、適宜、解説する ・日経新聞を読むことを 勧める ー継続は力なり ©2015 Masashi Nakajima 15 金融教育の重要性 金融教育の重要性 – 生きていくために必要 – 規制金利から自由金利へ – さまざまな金融商品 金融リテラシー *リテラシー=基本的な能力 – お金との付き合い方 – 「読み、書き、金融」と言われる ©2015 Masashi Nakajima 16 72の法則 何%で運用すると、何年で、元本が2倍に なるかを求める式。 8% 6% 3% 1% × × × × ?年 ?年 ?年 ?年 = 72 = 72 = 72 = 72 麗澤大学 経済学部 17 72の法則(2) 現在の金利で、2倍にするには何年かかるか? – 今の定期預金金利は? **% × ?年 = 72 今2倍になっている人は、いつ預金をした人か? – 何時代の人? 定期預金では、生きているうちには2倍にはなら ない。 – 自分の身は自分で守るしかない。 – 自分で資産運用を考えないといけない。 麗澤大学 経済学部 18 金融とは何か? (1)金融とは「お金を融通すること」である 金融 余っている人 (資金余剰主体) 足りない人人 (資金不足主体) 個人(家計部門) 企業、政府 資金運用者 金融 ©2015 Masashi Nakajima 資金調達者 19 金融とは何か? (2)金融とは「仕組み」である ・「お金を融通する」のにいろいろな方法あり ・銀行から借入を行う ・債券や株式を発行する ・預金、株式、投資信託で運用する ・こうしたお金を集める仕組み、集めたお金 を運用する仕組みについて、学ぶ。 ©2015 Masashi Nakajima 20 金融とは何か? (3)金融とは「約束」である [例] 今、借りて、5年かけて、3%の金利を払って 返しますという「約束」をする – 「契約」ともいう したがって、金融では「信用が大事」 – 信用がない人には、お金は貸せない – 信用が低い人からは、高い金利をとる ©2015 Masashi Nakajima 21 金融とは何か? (4)金融では「用語」が大事 まず、「用語」が分からない – 分かるようになると、面白くなってくる。 準通貨、マネーストック、ハイパーインフレ、手形、 小切手、ディーリング、ブローキング、オペレー ション、シニョレッジ、メインバンク、ワラント債、CP、 CD、T-Bill、REIT、ETF、MMF、TOPIX、ABS ©2015 Masashi Nakajima 22 お金の話から お金のない世界であったとすると、 どうやって、取引を行うのか? ©2015 Masashi Nakajima 23 物々交換の世界 自分の持っているものを、人の持っているものと交換する → 物々交換(バーター取引)しかない。 お互いの欲求が一致しないと、取引が成立しない Aさん Bさん 肉がほしい お米がほしい お米 肉 肉 お米 ©2015 Masashi Nakajima 24 欲求の二重の一致 Double Coincidence of wants – Coincidenceとは、偶然の一致のこと 物々交換ができるのは、2つの偶然が重な った、かなり特殊なケース? では、Bさんが、木材と交換したい場合に は、どうする? ©2015 Masashi Nakajima 25 二人の欲求が一致しないケース Bさん Aさん 木材がほしい 肉がほしい 木材 ② 肉 木材 お米 ① Cさん ©2015 Masashi Nakajima 26 物々交換の取引コスト こうしたプロセスは、かなり面倒くさい ↓ 「取引コスト」が高いという。 物々交換は、あまりにも取引コストが高い ↓ 支払手段として、誰もが受け取ってくれる商品を 用いるようになった → 貨幣の登場 ©2015 Masashi Nakajima 27 貨幣の変遷 ①自然貨幣(natural money) -貝、石、骨など -自然のものを素材としたもの ヤップ島のフェイ ©2015 Masashi Nakajima 28 ①自然貨幣 ・お金に関係のある漢字には「貝」がつくものが多い。 貨、買、貸、貯、資、費、 貿、賃、質、財、貧、賞、 贈、賄賂 ・古代中国では、宝貝が貨幣と して使われていたことによるもの →貝貨(ばいか)という ©2015 Masashi Nakajima 29 ②商品貨幣(commodity money) 布、家畜(牛、羊)、穀物(米、小麦)など – そのものに価値があるものが使われるように なった ・しかし、持ち運びに不便 -しかも、家畜は分けられない ©2015 Masashi Nakajima 30 ③金属貨幣(metal money) 金、銀、銅などの金属を重さで量って、貨 幣として使用 – 「秤量貨幣」(ひょうりょうかへい) 「切り使い」もあった でも、イチイチ量るのは、めんどう! ©2015 Masashi Nakajima 31 ④鋳造貨幣(coined money) 金属を溶かして、型に入れて作ったもの 一定の品質(金の含有量など)と重さを刻印で保 証した ©2015 Masashi Nakajima 32 ⑤兌換(だかん)紙幣(convertible money) 一定量の金との交換(=兌換)を保証した紙幣 – 金貨の代わりに流通させるという位置づけ – いざというときには、金に戻せる ©2015 Masashi Nakajima 33 ⑤兌換(だかん)紙幣 日本 – 1931年(昭和6年)まで、「日本銀行兌換券」が 発行されていた – 「一定量の金貨と交換する」との文言が記載 米国 – ニクソン・ショック(1971年8月)まで、ドルと金 との兌換が可能であった – それを「兌換の停止」を電撃的に発表 ©2015 Masashi Nakajima 34 ⑥不換紙幣(fiat money) 兌換義務のない紙幣のこと 「フィアット・マネー」と呼ばれる – フィアット:命令や宣言のこと – 「政府の宣言」によって貨幣として認められて いる 「信用貨幣」ともいう – 貨幣の価値は、人々の信用に基づいている – 皆が1万円だと思うから、1万円として通用する (お札そのものに価値があるわけではない) ©2015 Masashi Nakajima 35 自然貨幣 商品貨幣 金属貨幣 貨幣そのものに価値あり (商品、金・銀・銅など) 鋳造貨幣 兌換紙幣 金に引換え可能。 (金属の裏付けあり) 不換紙幣 貴金属とのリンクなし (ただの紙切れ) 人々の信頼に依存 ©2015 Masashi Nakajima 36 貨幣の機能 「貨幣の3大機能」とは (1)一般的交換手段 (2)価値の尺度 (3)価値の保蔵手段 ©2015 Masashi Nakajima 37 (1)一般的交換手段 それを相手に渡すことによって、自分の欲しいも のを手に入れることができる機能 – 「交換手段」または「支払手段」としての機能 物々交換では、取引コストが高い 貨幣を使えば、「いつでも、どこでも」欲しいものと 交換ができる – 取引コストを大幅に節約している ©2015 Masashi Nakajima 38 (1)一般的交換手段 この背景にあるのが 「一般的受領性」 – 「誰にでも受取ってもらえる」という性質 これを法律的に定めたのが「強制通用力」 – 「日本銀行券は、法貨として無制限に通用す る」(「日本銀行法」第46条) →「無制限の強制通用力」あり ・では、コインの強制通用力は? – 何枚まで受け取ってもらえるか? ©2015 Masashi Nakajima 39 コインの強制通用力 法律上は、20枚まで 「額面価格の20倍までに限り、法貨として 通用する」(「通貨の単位および貨幣の発行に 関する法律」第7条) 20枚以上は使ってはいけないということではない – 「強制通用力がない」ということ ©2015 Masashi Nakajima 40 (2)価値の尺度 モノやサービスの価値を測るときの尺度に なるという機能 「計算単位」としての貨幣の機能 シャツが1万円、タクシーが3,000円、アイスクリーム が200円などと表示されている ・共通の尺度があることによって、モノの価値が 一目瞭然で分かる → 便利! ©2015 Masashi Nakajima 41 (3)価値の保蔵手段 個人や企業は、将来のため準備が必要 – その準備を商品(モノ)で持っていると、質が変 わったり、腐ったりする 貨幣で持っていれば、必要なときに支払い に使えるし、変質しない。 価値を安全に保っておく資産としての機能 ©2015 Masashi Nakajima 42 貨幣の3つの機能 (1)一般的交換手段 (2)価値の尺度 (3)価値の保蔵手段 次の事例は、どれに関係するか? ©2015 Masashi Nakajima 43 設例 ①原油価格は、1バレル=35ドルである。 ②銀行の経営が不安なので、預金を引き出 して、現金をタンスの中にしまっておいた。 ③コンビニで、弁当とお茶を買って、600円を 支払った。 ©2015 Masashi Nakajima 44 本日の対象範囲 教科書『金融読本(第29版)』 p1~4まで 毎回、授業のあとで、必ず、対象範囲を読 んでおくこと! – 理解が深まり、力がつく – 試験前になって、全部読もうとしても大変。 – 継続は力なり ©2015 Masashi Nakajima 45 出席票の記入 ①右上に学科・学年を書くこと ②左上に「前」と書く(前の席の希望者) 前の座席の希望者 K・2 学科・学年 B・3 外・4 前 出席票 ©2015 Masashi Nakajima 46
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