ドイツ・メルヘンの系譜 太田 達也 「メルヘン」のイメージ 日本人の持つ「メルヘン」のイメージ 日本における「メルヘン」ということばの使用 「メルヘン」のルーツ 物語形式の一ジャンル Märchen = Märe 「作り話」+ chen「小さ な」 「童話」? 「おとぎばなし」? 「むかしばなし」? 「民話」? 2種類の「メルヘン」 民間メルヘン(Volksmärchen) 創作メルヘン(Kunstmärchen) 18世紀:啓蒙の世紀 理性の時代 啓蒙主義・合理主義精神 文学は「楽しませつつ教化する」ための手段 若い世代によるシェイクスピアの再発見 クリストフ・マルティン・ヴィーラント (1733-1813) 長編小説『ドン・ジルヴィオの冒険』(1764) この中の 『ビリビンカー王子の物語』 → ドイツで最初の創作メルヘン 「真なるもの」と「不可思議なもの」への性向 ほかにもメルヘン詩多数(『オベロン』など) 18世紀から19世紀初頭まで 啓蒙主義 1720-1785 疾風怒涛 (Sturm und Drang) 1767-1785 古典主義 1786-1832 ロマン主義 1798-1835 ロマン主義(1798-1830) 感情と空想の解放 あらゆる制約を嫌う、新時代の文学 中世讃美 自己批判精神(イロニー) 無限への憧れ 「メルヘンはいわば文学の規範である - すべての詩的なものはメルヘン的でなければ ならない」(ノヴァーリス) ロマン主義のメルヘン ノヴァーリス『青い花』(1802) - 憧れの象徴 ティーク『長靴をはいた牡猫』(1797) - ロマン的イロニー シャミッソー『ペーター・シュレミールの不思議 な物語』(『影をなくした男』)(1814) - 都会が舞台 E.T.A.ホフマン『黄金の壷』(1814) - 日常と幻想の隣り合わせ 民話収集とグリム兄弟 ドイツ民族の遺産を守ろうという機運 民間メルヘンの収集 ヤーコプ・グリム(1785-1863) ヴィルヘルム・グリム(1786-1859) 『子供と家庭のためのメルヘン集』(初版 1812) (Kinder- und Hausmärchen) 度重なる改訂 ペローとの比較 グリム自身による改訂 日本の絵本に見られる「改訂」 19世紀から20世紀まで ビーダーマ イアー 1820-1850 若いドイツ 1830-1850 写実主義 1850-1890 自然主義 1880-1900 反自然主義 新ロマン主義 印象主義 象徴主義 1890-1920 表現主義 1910-1925 新即物主義 1925-1933 亡命文学 1933-1945 メルヘンの多様化 ハイネ『冬のメルヘン』(1844) - 現実社会に対する風刺 ホーフマンスタール『第672夜のメルヘン』 (1895) - 救いのないメルヘン ヴァルザー『いばら姫』(1920) - 心理的再解釈 現代のメルヘン ヤーノシュ ミヒャエル・エンデ ラフィク・シャミ ドイツとメルヘン ドイツ文学の特質とメルヘンの隆盛 社会の変化と文学ジャンルの発展 参考文献 宮下啓三「メルヘンの履歴書」慶應義塾大学出版会 1997年 野口芳子「グリムのメルヒェン その夢と現実」勁草書 房1994年 ジャック・ザイプス著/鈴木・木村訳「おとぎ話の社会 史 文明化の芸術から転覆の芸術へ」新曜社 2001 年 岡田朝雄・リンケ珠子「ドイツ文学案内 増補改訂版」 朝日出版社 2000年 手塚富雄「ドイツ文学案内」岩波文庫 1963年
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