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テレビ時代の記憶
ー現在の高齢者たちー
1.現在の高齢者の世代的特徴
2.調査概要
3.テレビとの出会いと受像機購入の記憶
4.中年期のテレビ視聴における性差の拡大
5.最近のテレビ視聴
6.高齢者にとってのテレビ
1.現在の高齢者の世代的特徴
• 2013年12月31日で71歳以上の人たち
=1942(昭和17年)以前に生まれた人たち
・1945年の終戦、その後の社会の変動期に幼児期・青年
期(人格形成期)を過ごした。
出生コーホート
世代
・出生の時期が同じ
・多感な青少年期を歴史的時点
のどこで迎えたかに基づく年齢層 一群の人々。
の分類。
・共通の態度と行動、共通の集団
河野(2008)の分類
意識により、他の世代から区別さ
れる。
河野(2008)の現代日本人の分類
←NHK放送文化研究所による「日本人の意識調査」(1973
~2008)のデータを分析
世代名
戦争世代
生年
第一戦後世代
~1928年生まれ
性別役割分担肯定
妻が夫の姓に改姓を肯定
1929~1943年生まれ
団塊世代
1944~1953年生まれ
新人類世代
1954~1968年生まれ
団塊ジュニア世代
1969~1983年生まれ
新人類ジュニア世代
1984以降生まれ
年号
イベント
モデルA
戦争世代
モデル
第一戦後世代
1925 大正14年、モデルA誕生
1935 昭和10年、モデルB誕生
1953 テレビ放送開始
1959 皇太子御成婚
1960 所得倍増計画
28歳
18歳
テレビ普及期に社会
34歳
24歳
人として独立、結婚・
35歳子育て期を迎えた
25歳
1964 東京オリンピック
39歳
モーレツ社員
白黒テレビ普及率90%
生活水準の向上
1965
40歳
「もはや戦後ではない」
中流意識
1968 GNP自由世界第二位
43歳
29歳
1973 第一次オイルショック
38歳
48歳
30歳
33歳
1989
プラザ合意
バブル経済始まる
ベルリンの壁崩壊
モデルA
モデル
現役時代は右肩
戦争世代 第一戦後世代
上がりの経済成長
60歳終身雇用制度
50歳
年功序列制度
64歳
54歳
1991
ソ連邦崩壊、冷戦終結
66歳
56歳
1992
バブル崩壊
67歳
57歳
70歳
60歳
76歳
66歳
86歳
76歳
年号
1985
イベント
2001
阪神・淡路大震災
地下鉄サリン事件
米同時多発テロ
2011
東日本大震災
1995
2.調査概要
大坪と国広によるインタビュー調査の概要
実施年
対象者
2008
団塊世代より上の世代
2009
高齢男性12名
2010
2012
高齢女性12名
高齢女性3名
その子供世代
フィールド
山口県大島郡周防大島町
山口県大島郡周防大島町
東京都
3.テレビとの出会いと受像機購入の記憶
• テレビとの出会いの思い出は鮮明。
自宅外で(街頭テレビ、喫茶店、電器店、公民館, etc.)
無料で or 有料で(1円、5円、10円)
プロレスを
・自宅用テレビ受像機の購入の記憶はあいまい。
月賦で、借金をして、とにかく高価なテレビを購入。
いつ購入したかを「皇太子御成婚パレード」と「東京オリ
ンピック」をどこで見たかを手掛かりに推測。
• テレビ受像機購入のきっかけ
周囲で購入、子供が他家に迷惑をかけている, etc.
消極的理由
自分のためではなく、
子どものため、親のため
手放しで喜べない
月賦、家計のやりくり
4.中年期のテレビ視聴における性差の拡大
<男性の場合>
職業人として多忙な時期
←日本の経済成長を支えた企業戦士
←家庭に豊かな生活をもたらしたという誇り
⇒テレビを見る時間はなかった。
特に思い出に残っているテレビ番組はない。
見ていたのはニュースと野球ぐらい。
大きなニュースは職場のテレビで視聴した。
<女性の場合>
多様な生活スタイル
周防大島の女性たち:家業などの仕事、長男の嫁として
の家事・育児、舅・姑への遠慮。
⇒あまりテレビを見ていなかった。
⇒自分の楽しみとしてゆっくりテレビを見ることはな
かった。
専業主婦の女性たち:主婦業、家事育児
⇒テレビが唯一の楽しみ。
⇒目的別テレビ利用:教養、主婦、子守り、大人の娯楽
子供と楽しんだテレビ視聴
『怪傑ハリマオ』『ジェスチャー』
『大草原の小さな家』「赤いシリーズ」(山口百恵)
5.最近のテレビ視聴ー埋まらない性差
中年期のテレビ視聴の性差
予定調和的な
物語展開
男性
多様な番組
を視聴
女性
放送時間に合わ
せた生活時間
• 『水戸黄門』(TBS, 69~11)
• 『ためしてガッテン』(NHK,
95~)
• 『相棒』(テレ朝, 00~)
男性が見るもの
• 『NHK歌謡コンサート』
• 『宮廷女官チャングムの はワンパターン
(NHK, 93~)
誓い』(NHK-BS2他)
• 朝のテレビ小説(NHK)
• スポーツ番組
男性と女性が番組に求めるもの
男性
• 勧善懲悪の予定調和
的な物語展開
女性
• くつろぎ、リラックス(歌
番組)
• 知識・情報の入手(情報
案組)
• 感情移入、自分の生活
を振り返るきっかけ(ドラ
マ)
女性たちはさまざまなテレビ番組を見て、
様々な効用を引き出している。
6.高齢者にとってのテレビ
―これまでと現在、男性と女性ー
• 中年期にテレビに親しみリテラシーを見につけたのは女性
• 中年期:「専念視聴」の時間は少ない。
家事をしながら、子供と一緒に様々な番組を
「ながら視聴」していた。
・育児や介護で外出できない:テレビは様々な役割を果たし
てくれた。
「テレビ的教養」
“社会の窓” “子供の相手をしてくれるシッター”
(佐藤, 2008)
“娯楽を提供してくれる劇場”
“情報通の友人”
“実用的な知識を与えてくれるアドバイザー”
“知的好奇心を満足させてくれるカルチャーセンター”
『水戸黄門』と『渡る世間は鬼ばかり』の共通点(香取, 2008)
・パターン化されたストーリ
・高齢者にそれなりの役割が与えられている
・高齢者の気持ちがスカッとする解決が提示される
しかし、男女で見方は異なる。
中年期以降の
生活スタイルの違い
女性
男性
『渡る世間は鬼ばかり』
『水戸黄門』
多様で
• 身近な生活に引きつけ
「能動的」な読み
考える
• 日常や反省を振り返る
与えられたものを
• カタルシスを得るため
そのまま受け取る
「受動的」な視聴
テレビ視聴以外の活動
• テレビは高齢者にとって都合のよいメディア
映像と音声で構成されている。
簡単に操作できる。
経済的負担が少ない。
気を紛らわしてくれる。
日々の予定を埋めてくれる。
参考文献
香取淳子 (2008). 高齢者のメディア生活における光と影 NHK
放送文化研究所(編) 現代社会とメディア・家族・世代 新曜
社 pp. 129-155.
河野啓 (2008). 現代日本の世代 NHK放送文化研究所(編)
現代社会とメディア・家族・世代 新曜社 pp. 14-38.
国広陽子・大坪寛子 (2009). テレビとは何だったか―記憶さ
れる娯楽としてのテレビ 武蔵メディアと社会研究会2008年
度研究プロジェクト成果報告書(武蔵大学) 1-22.
国広陽子・大坪寛子 (2010). 過去のテレビ番組と記憶の共有
―超高齢社会におけるテレビ番組利用の可能性 放送文化
基金『研究報告』平成20年度助成・援助分(人文社会・文化)
大坪寛子・国広陽子・有馬明恵 (2011). 高齢者のQOLを豊か
にする過去のテレビ番組利用の可能性ー回想法への応用
の試み 放送文化基金『研究報告』平成21年度助成・援助分
(人文社会・文化)
佐藤卓己 (2008). テレビ的教養―一億総博知化への系譜
NTT出版.