ゲル内タンパクの染色 ~銀染色~ 原理 銀イオンはアンモニア性溶液中で銀ジアミン錯体を形成す る。銀イオンや銀ジアミン錯体イオンはタンパク質と結合(SH基に最も結合しやすい)し、これをクエン酸、ホルマリンの 作用により還元して金属銀を析出し、ゲル内タンパク質の黒 化像を得る。 [Ag2(NH3)2]+ 銀ジアミンイオン 銀染色を用いる利点・欠点 ○ 好感度である 特殊な装置は不要である ゲルを乾燥保存できる × 定量性がない 非特異的である 廃液中の銀イオンを処理する必要がある 他染色との比較 銀染色 蛍光染色 CBB染色 感度:<1ng 定量性:× 検出方法:可視 感度:<0.5ng 定量性:◎ 検出方法:蛍光イメージャーが必要 感度:50~100ng 定量性:○ 検出方法:可視 染色結果の比較 銀染色 CBB染色 蛍光染色 http://www.atto.co.jp/pdf/ez-silver-tech.pdf 試薬(2D-銀染色試薬Ⅱ-第一) ①固定化剤 チオ尿素 ②前処理剤 ジチオスライトール、グルタルアルデヒド、チオ尿 素 ③染色液A 硝酸銀 ④染色液B 水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム ⑤現像原液 クエン酸、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム ⑥停止液 クエン酸 手順 ①固定液Ⅰ(10分):メタノールと酢酸 ②固定液Ⅱ(15分) ③前処理液(10分):グルタールアルデヒドなどによる増感 ④洗浄(5分) ⑤銀染色液(15分):銀ジアミン錯体などがタンパクと結合 ⑥洗浄(2分×3回):余分な銀ジアミン錯体などを洗浄 ⑦現像液(5~10分):ホルマリンの作用で銀を析出 ⑧停止液:酸性にする ※全ての工程は振蕩しながら行う。 ※ケラチンの混入を防ぐため手袋をして操作する。 染色結果(2D-PAGE) タンパクがスポットとし て染色されている 質量分析機 前処理剤(増感剤)に含まれるグルタールアルデヒドのアミノ基 を架橋する特性により質量分析前のゲル内消化の効率が悪く、 質量分析には向かない。 グルタールアルデヒドを用いていない試薬、キットを用いて染 色すると、質量分析が可能になる。 銀染色液の処理 使い終わった銀染色液は、操作完了後直ちに塩酸や塩化ナト リウムを加えて塩化銀の沈殿物にして処理します。 そのまま放置すると爆発性の銀アミドを生成する危険がありま す。
© Copyright 2024 ExpyDoc