マルチジャンプテスター の使い方 開発の経緯 これまでは下肢のパワー測定として,垂直跳,立幅跳が用い られてきた. 実際のスポーツ動作では,0.1~0.2秒で動作が行われてお り,垂直跳や立幅跳の運動時間は0.5~1.0秒であることか ら,運動時間が異なるため,下肢のパワーを適切に評価でき ていない可能性がある. そこで,ジャンプ中の跳躍高(m)と接地時間(sec)を用いて, 誰でも,いつでも,どこでも簡単に測定できる,下肢のパワー 評価方法として,マルチジャンプテスターは開発された. 測定の仕組み マットスイッチによって,ON・OFF信号をパソコン上に取り 込むことにより,接地時間と滞空時間を測定して,跳躍高 およびRDJ-indexを算出するシステム マルチジャンプテスターで測定できるジャンプとは 運動時間が長い(0.5~0.1秒) A:垂直跳 ①カウンタームーブメントジャンプ(反動ありの垂直跳び) ②スクワットジャンプ(反動なしの垂直跳) B:ドロップジャンプ(カウンタームーブメント型) できるだけ高く跳ぶ(膝,股関節の屈曲が大きい) C:リバウンドドロップジャンプ(バウンス型),リバウンドジャンプ 接地時間を短く,できるだけ高く跳ぶ(膝,股関節の屈曲が小さい) 運動時間が短い(0.1~0.2秒) 地面反力の最大力が大きい ※①腕振りあり・なし,②両足・片足,③台高を高くする(30cm→60cm),④身体 に負荷をつける(バーベルを担ぐ),④下肢・上肢(プッシュアップ)に変更すること で,目的にあわせた条件で計測できる. トレーニングのために使用する プライオメトリックス,ウエイト,スプリント,アジリティトレーニング によって,下肢のパワーが改善されたか評価できる 下肢のパワー測定と評価 (垂直跳,ドロップジャンプ,リバウンドジャンプ) ↓ トレーニングメニューの作成 ↓ トレーニングの実施 ↓ トレーニング効果を評価 マッチスイッチを使って トレーニングの質・量をコントロールする (跳躍高,接地時間,低下率をチェック) トレーニング現場での使用方法 測定方法 1)測定の前日(前々日)に,ウエイトトレーニング,激しいトレー ニングを行わない. 2)1ヶ月~2ヶ月単位で,定期的に計測を行う. トレーニング方法 1)着地時姿勢,からだの動作についても指導する. 2)メニューを修正しながら,長期的にトレーニングを続けること が大切. 短期的にパフォーマンスが改善する.そのあと一時的にプラ トーになるが,長期的に実施していくと,さらにパフォーマン スが改善する. ドロップジャンプ(DJ) B:ドロップジャンプ(カウンタームーブメント型) できるだけ高く跳ぶ C:リバウンドドロップジャンプ(バウンス型) 接地時間を短く,できるだけ高く跳ぶ →今回の講習会では,評価方法が確立している, リバウンドドロップジャンプを取り扱います. リバウンドドロップジャンプ測定では, 1.跳躍高(m)=(1/8)*9.81*(滞空時間(sec))2 2.接地時間 3.RDJ-index=跳躍高(m)/接地時間(sec) 3項目が出力されます. RDJ-indexとは,リバウンドドロップジャンプ中の接地時間と 滞空時間の2変数によって算出される, 短時間で行われる下肢のパワー発揮能力を評価する方法 (図子ほか,1993) リバウンドドロップジャンプ(RDJ)の決定要因 垂直跳とRDJは低い相関関係にあり,異なる能力(体力要因)である と考えられている. ①接地時間を短くする能力と②高い跳躍高を獲得する能力は独立した能 力であることが報告されている(図子・高松,1995;田内ほか,2002) ①接地時間を短くする能力 1)足関節の筋群の伸張性収縮力(筋力) 2)接地に対する空間的時間的な予測能力 ※接地する瞬間の下肢・体幹の姿勢,足関節の固定が影響している. ②高い跳躍高を獲得する能力 1)最大筋力や瞬発力 ※最大筋力,力の立ち上がり DJ測定の注意点 • 台高は30㎝からスタートする (体力レベルが高い集団を測定する時には, 台高を大きくてもよい.安全性に注意する) • 腰が水平に下りる. • 下肢の傷害予防を考えると,接地するときに床をたたくような 動作をしないように注意する (大きな地面反力が出るため,力学的に大きな負荷がかか る) • 接地時間と跳躍高について,フィードバックしながら測定す る. • 測定回数は,記録が安定するまで行う.(3-5回くらいが目 安) • RDJ-indexの最大値を分析に用いる. リバウンドジャンプ(RJ) • リバウンドドロップジャンプ(RDJ)とリバウンドジャンプ(RJ)には高い相 関がある(r=0.905). 台高設定をしなくてよい,動作が容易に実施できることから,RJを用いた 研究が多く実施されている(田内ほか,2005;遠藤ほか,2007;岩竹ほ か,2008a,2008b;大宮ほか,2009). • RDJとRJは垂直跳と比較して,足関節の関与が大きい動作である. • 問題点:測定条件によって落下する高さが変化するため, 位置エネルギーが異なり,受け止めるべき伸張負荷が変動する. →実験ではドロップジャンプのほうが条件を制御できる. 測定方法 • 立位姿勢から,その場で連続して跳躍する運動. • できるだけ接地時間を短くして,できるだけ高く跳ぶ. • 「6回ジャンプしてください」と指示した方がわかりやすい 垂直跳(CMJ) ①動作制限なし(基本な測定) ②腕振り動作なし(手は腰に) ③反動動作なし(スクワットジャンプ) 測定の注意点 • 自然に着地する.膝,股関節を深く曲げて着地すると, 実際の跳躍高より高く評価されてしまう. • 抜重によるチャタリング(跳躍高が1㎝とか表示される)が 生じる時には,ソフトの設定を変更する.
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